勤怠と就業規則、齟齬を出さない初期設定|労務DXの最短ルート

齟齬の8割は就業規則の曖昧さと初期パラメータの未決から発生。 はじめに「規程の確定 → システム設定 → 3ケースでの検証」の順に進める。 特に所定労働時間・端数処理・休憩付与・みなし残業の4点は最優先で固める。

なぜ“最初”が大事か

給与や36協定、割増計算に直結。後から修正すると過去分再計算が必要になり、現場の信頼を失う。 現場運用(打刻・申請)と数字(賃金台帳)が一致してこそDXの定着が進む。

ステップ0:前提の洗い出し(30分でOK)

会社区分:本社/店舗/工場など 雇用区分:正社員/パート・アルバイト/嘱託 労働時間制:通常/変形労働時間制(1か月/1年)/フレックス/裁量 シフト運用の有無:固定/シフト/交替 打刻手段:ICカード/スマホ/PC/生体/タイムレコーダ

ステップ1:就業規則を“数値”に変換(決める10項目)

項目

規程の書き方の例

システム設定のキー

1. 所定労働時間

1日8時間・1週40時間

所定:8:00/週40:00

2. 所定労働日

月〜金(週5)

稼働日:月〜金

3. 休憩

6時間超45分/8時間超60分(自動付与)

休憩自動:45/60

4. 遅刻早退の丸め

1分単位(丸め無)or 15分丸め

丸め:出退勤1分/遅刻早退15分 など

5. 時間外の起算

所定超過から/週40超から

時間外起算:日基準or週基準

6. 深夜

22:00〜5:00

深夜帯:22:00-05:00

7. 休日の定義

毎週日曜+会社カレンダー

休日:日曜+カレンダー

8. 代休・振替

事前振替のみ有効/代休は2か月内取得

振替フラグ/代休期限60日

9. みなし残業

職群A:20h/月

固定残業:20:00/月

10. 端数処理

1分未満切上げ/30分単位締め

端数:切上げ/端数単位30分

ポイント:規程に「おおむね」「原則」など曖昧語があると設定不能。数値に置き換えて明文化してから先へ。

ステップ2:勤怠システムの初期設定(例:Office Station)

画面名は参考。使っている勤怠に読み替えてOK。

会社カレンダー 祝日取込 → 会社独自の休日を追加(棚卸・社休日 等)。 勤務体系(雇用区分ごとに) 所定時間/休憩自動付与/丸め/時間外起算/深夜帯。 シフトテンプレ 9-18/10-19/夜勤 22-7 等を登録。 固定残業(みなし) 対象職群・時間数・控除ロジック(みなし超過分は割増計算)。 申請ワークフロー 休暇・残業・打刻修正の承認ルート(現場→上長→管理)。 打刻と本人確認 打刻端末紐付け/位置情報ON(スマホ)/二重打刻防止。 権限 マネージャは部門配下のみ閲覧、個人は自分だけ。 エクスポート 給与計算に渡すCSVフォーマットを確定(列名/端数処理)。

ステップ3:3ケースで検証(必須)

標準日:9:00-18:00/休憩60分 → 総労働8h、残業0h 残業日:9:00-20:30 → 時間外2.5h、深夜0.5h(丸め通りか) 休日出勤:日曜8h → 休日労働8h、代休 or 割増の判定

さらに**遅刻早退・中抜け・シフト跨ぎ(21-翌6)**も1人ずつテスト。

画面のスクショ+CSVを残し、賃金台帳と数字一致を確認。

ステップ4:規程⇄システムの“対応表”を作る(配布用)

ステップ5:ロールアウト手順(現場が迷わない導入)

管理者説明30分:対応表・月次締め手順・FAQ配布 現場周知15分:打刻ルール・申請締切・ミス時の連絡先 パイロット1か月:1部門で運用 → 設定微修正 全社展開:初月のみ毎週ミニ監査(未申請・打刻抜け・乖離リスト)

ありがちな齟齬と回避策

休憩自動付与が過剰:5.5h勤務でも45分入ってしまう → 6h超で付与に修正 週40超の計算漏れ:日別で0hでも週合計で超過 → 週基準の集計をON みなし残業の二重計上:固定+実残業を全加算 → “超過分のみ”ルールに 丸めと実打刻の差:端数切上げが過大 → 丸め単位の現実運用を確認

チェックリスト(コピペ用)

□ 規程を数値で確定した(10項目)
□ 勤怠の会社カレンダーを確定した
□ 勤務体系(区分別)を作った
□ 申請ワークフローを有効化した
□ 固定残業の控除ロジックを設定した
□ 3ケースのテストが通った(標準/残業/休日)
□ CSVと賃金台帳の数値一致を確認した
□ 対応表を配布し、現場説明を実施した

FAQ

Q. 変形労働時間制でもこの流れでいい?

A. まずカレンダーに法定労働時間の総枠を設定し、シフトテンプレと週平均40hの検証を追加すればOK。

Q. 打刻漏れが多い

A. 打刻修正の期限と承認者を明文化。月末2営業日前を締切に。

Q. 在宅勤務の位置情報は必須?

A. 監督実効性の観点から原則ON。例外は申請で。

相談の流れ(こもれび社労士事務所)

設計MTG(60分):規程の数値化と対応表の下書き 初期設定代行:勤務体系/ワークフロー/給与CSV テスト&立上げ:3ケース検証・現場説明・初月監査

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