働く人を孤立させないために――令和7年版「自殺対策白書」から考える職場と地域のケア
働く人を孤立させないために――令和7年版「自殺対策白書」から考える職場と地域のケア
厚労省が公表した令和7年版 自殺対策白書(概要版)を、社労士・現場実務の視点で読み解き、企業と地域がすぐ実装できる打ち手に落とします。
- 自殺者数は長期減少だが、10代・20代は高止まり。2024年の小中高生は529人で過去最多(出典:厚労省『令和7年版 自殺対策白書 概要版』スライド2)。
 - 2024年の総自殺者数は20,320人(前年比▲1,517)で統計開始以来2番目に少ない(同スライド2)。
 - 若年層は「うつ病」など健康問題が主因。有職者では人間関係・仕事疲れも高比率(同スライド8)。
 - 国の実装策:ストレスチェック強化・「こころの耳」・ゲートキーパー研修・自傷未遂レジストリ等(同スライド13〜17)。
 
数字で見る現状(ダイジェスト)
社労士視点:職場で今日から実装できること
1) 「見える化」×「一次予防」――ストレスと労働時間
- ストレスチェックの設計を見直す(若手・新入社員の項目充実、配置転換/人間関係/仕事量の定点観測)。国も職場メンタル対策を推進(出典:同 概要版 スライド16)。
 - 長時間労働の是正(36協定運用・客観的労働時間の把握)。行政は上限規制遵守の相談・支援を実施(出典:同 概要版 スライド16)。
 
2) 「つながり」を仕組みにする――相談・教育・研修
- 相談導線の常設:「産業医・社外EAP・社労士」三位一体。働く人のメンタルヘルス・ポータル「こころの耳」の周知を併用(出典:同 概要版 スライド16)。
 - 管理職研修:ゲートキーパー養成の講師研修が整備。危険兆候の早期把握と適切な声かけへ(出典:同 概要版 スライド13–14)。
 - 入社後の若手ケア:新卒・若手はハイリスク。オンボーディング期の面談と人間関係支援を強化(出典:同 概要版 スライド8)。
 
3) 金銭ストレスにも目を向ける
20代男性有職者では「負債(多重債務)」の割合が高いという分析(出典:同 概要版 スライド8)。金融経済教育推進機構(J-FLEC)により、学校・企業向け講義資料や出張授業が展開(出典:同 概要版 スライド14)。
      企業内では「家計・債務の匿名相談」「給与天引き積立・貸付の規程整備」等のセーフティネットも検討を。
若者を孤立させない:学校・地域の協働
学校:SOSの早期把握
1人1台端末を活用した心の健康観察や危機対応チーム整備の通知が発出(出典:同 概要版 スライド15)。
          大学生では学業不振/進路の悩み(男性)とうつ等の健康問題(女性)が上位(出典:同 概要版 スライド6–7)。
          21歳は男女とも進路の悩みが最多(出典:同 概要版 スライド7)。
地域:居場所と夜間の支援
「夜のユースセンター」等、孤独が高まる時間帯の居場所づくり事例が白書コラムで紹介(出典:同 概要版 スライド19)。
          ひきこもり支援ハンドブックの活用も推進(出典:同 概要版 スライド15)。
※ 自傷・自殺未遂の実態把握に向け、自傷・自殺未遂レジストリ(JA-RSA)が運用。若者では過量服薬が多い傾向(出典:同 概要版 スライド17)。
こもれび社労士事務所の支援メニュー(導入しやすい順)
- 健康経営・メンタル制度の初期設計(就業規則・相談規程・ハラスメント体制・面談導線)
 - ストレスチェック最適化(設問見直し・実施体制・結果の職場改善への接続)
 - 管理職/人事向けゲートキーパー研修(声かけ、エスカレーション、守秘の線引き)(出典:同 概要版 スライド13–14)
 - 若手オンボーディング強化(初期配属サポート・1on1設計・メンター制度)
 - 金融トラブル予防連携(社外専門家・J-FLEC資料の社内展開)(出典:同 概要版 スライド14)
 
参考・出典
本記事は、厚生労働省「令和7年版 自殺対策白書(概要版)」に基づいて構成しています。主要な記述の根拠は本文中に【出典】として明記しています。
厚生労働省|令和7年版 自殺対策白書(概要版・本文PDF) ※ 公式ページが開きます
主な該当箇所:スライド2, 4, 6–8, 13–17, 19。もし今つらい方がいたら(24時間/匿名可の窓口)
命の危険を感じるほどつらいときは、今すぐ専門の窓口につながってください。あなたは一人ではありません。
- いのちの電話(電話/インターネット相談あり)(出典:同 概要版 スライド20)
 - よりそいホットライン / #いのちSOS / 自治体の夜間相談 等
 
※ 会社の同僚・上司・家族に言いづらい時は、匿名の公的/民間窓口の利用が第一歩になります。

