士業は、なぜ「記事」を書くほど不安になるのか― 社労士倫理と情報発信のあいだで考えたこと ―

社労士の職業倫理と情報発信について考えるイメージ(信頼と専門性を象徴するビジュアル)

士業は、なぜ「役に立つ記事」を書くほど不安になるのか

― 社労士倫理と情報発信のあいだで考えたこと ―

こもれび社労士事務所 読みもの 煽らない情報発信 職業倫理

はじめに:役に立つほど不安になる

「役に立つ記事を書こう」と思えば思うほど、士業はときどき、理由のない不安に立ち止まります。

ここまで書いていいのか。説明しすぎではないか。誰かの判断を、知らないうちに誘導していないか。

とくに、労災・後遺障害・障害年金のように人生や生活に直結するテーマでは、そのブレーキは強くなります。 制度の仕組みを伝えたい。落とし穴を先に知ってほしい。けれど同時に「煽っていないか」という緊張感も生まれる。

この記事は、誰かを批判するためのものではありません。
同じ立場で悩む士業の方、そして「この人は信用できるのか」と迷いながら情報を探している方に向けた、 考えたことの記録です。

不安の正体①「誤解させたくない」

情報発信でいちばん怖いのは、「間違い」そのものよりも、 読まれ方のズレだと感じています。

こちらは一般論として丁寧に書いたつもりでも、読む側の状況が切迫しているほど、 “都合のいい一文”だけが強く残ってしまうことがあります。

たとえば、こういうズレ

  • 「できること」の説明が、いつの間にか「必ずできる」に変換される
  • 「注意点」が、「脅し」のように受け取られてしまう
  • 「例」が、「これが正解」に固定化される
だから私は、断定を避けます。
可能性は説明する。けれど、結果を約束しない。
そして「個別事情で変わる」という前提を必ず添えるようにしています。

不安の正体②「期待をつくりすぎたくない」

士業の支援は、ときに強い言葉と相性がいい。だからこそ慎重になります。

「これで通ります」「等級が取れます」
こうした言葉は、一瞬で心を軽くします。けれど同時に、現実を単純化してしまうことがあります。

制度は、想像以上に“個別事情”で動きます。
同じ診断名でも、初診日の証明、就労状況、生活上の支障、書類の整合など、 判断の前提が変われば結果も変わり得ます。

私が目指しているのは、不安を煽ることではありません。 期待を過度につくらず、それでも必要な情報は届けることです。

不安の正体③「判断材料を奪いたくない」

相談者の方が本当に欲しいのは、「正解」ではなく、 自分の状況を判断できる材料だと思っています。

けれど発信が強すぎると、読む側の判断が「その通りにする」へ傾いてしまうことがあります。 それは支援ではなく、誘導に近づく。

私がよく意識しているのは、この線

  • 判断を奪わず、選択肢を増やす
  • 不安を増やさず、整理の筋道をつくる
  • 「こうすべき」より「こういう見え方がある」を伝える
社労士の役割は、「話を作ること」ではありません。
事実・経過・生活への影響を、制度の評価軸に沿って“正しく伝わる形”に整理することだと考えています。

誤解のないように:私が“しないこと”

誤解のないように、ひとつだけはっきりさせておきたいことがあります。

社労士が関与するからといって、事実と異なる内容を書いたり、症状を誇張したりすることはありません。 それは制度以前に、専門職として許されない行為です。

依頼を受けたお客様に対して、「本来評価されるべき状態が、きちんと評価されてほしい」という気持ちは当然あります。 ただ、そこでやるべきことは、話を盛ることではなく、 的確な状態を病院や労基署に“伝わる形”で届ける設計です。

認定を“取らせるために話を作る”のではありません。
本来評価されるべき状態が、きちんと評価されるように設計する。
それが、私が大切にしている一線です。
(補足)「伝わる形」とは、具体的に何をするの?
  • 事実・経過・支障を時系列で整理し、抜け漏れや矛盾を減らす
  • 診断書・申立書・提出資料の“ズレ”を整える(同じ事実が同じ意味で読めるようにする)
  • 「毎日」「たまに」など曖昧語を減らし、頻度・所要時間・援助の有無を具体化する
  • 照会対応は、意図を読み違えないよう論点を整理し、必要な範囲で提出する

どれも「嘘」ではなく、事実を歪めない整理です。

苦情が増えることを、私はこう捉えている

近年、社労士の職業倫理に関する苦情や指摘が増えてきていることも、事実として受け止める必要があります。

ただ私は、それを「士業が信用されなくなった兆し」だとは捉えていません。
むしろ、社労士という専門職に対して社会から求められる役割や期待が高まってきた結果だと感じています。

制度が複雑になり、働き方や病気、家族構成も多様化する中で、社労士の関与が人生に与える影響は以前より大きくなりました。 だからこそ、説明の一言、書類の一行、判断の方向性に、厳しい目が向けられるようになったのだと思います。

私はこの状況を「萎縮すべきもの」ではなく、より誠実であることを求められている段階だと受け止めています。
役に立つ情報を伝えたい。けれど越えてはいけない一線は越えない。
その緊張感を持ちながら、これからも仕事と発信に向き合っていきたいと思います。

まとめ:緊張感を持ちながら、届けたい

士業が「役に立つ記事」を書くほど不安になるのは、弱さではなく、 その情報が誰かの人生に直結すると知っているからだと思います。

私自身も、発信するたびに「これで誤解されないか」「煽りになっていないか」を確認します。 それでも、困っている方が必要な情報にたどり着けるように、できる限り分かりやすく伝えたい。

そのために、私は「盛る」ではなく「整える」を選びます。
事実を歪めず、制度の評価軸に沿って伝わる形に設計する。
それが、こもれび社労士事務所の基本姿勢です。

「この人なら、一度話してみてもいいかも」と思った方へ

いきなり依頼を決める必要はありません。
今の状況を整理するだけでも構いません。
私ができるのは、事実を歪めず、制度の中でどう評価されるかを一緒に考えることだけです。

※売り込みはしません。相談だけでも大丈夫です。
※本記事は一般情報です。個別事情により対応方針は変わります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「書類の向こうに、人生がある。」その前提を忘れずに、誠実に向き合っていきます。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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