社労士が実践した “良い借金・悪い借金” の見極め方|キャッシュフローを軽くする経営判断

「借金は悪」ではなく、「借金の質」を整える ― 開業社労士としての経営判断
こもれび社労士事務所の近藤です。
社労士として中小企業のご相談をお受けする一方で、私自身も「ひとつの小さな事業」として、この事務所と不動産事業を運営しています。
今日は少し踏み込んで、「借金との付き合い方」について、私自身の経営判断を交えながらお話ししてみたいと思います。
テーマは、
「借金は減らせばいいという話ではなく、“良い借金”と“悪い借金”をどう見分けるか」
です。
「借金=悪」ではない。でも、すべての借金が味方ではない
経営者の方とお話ししていると、
- 「借金はできるだけ早くゼロにしたい」
- 「一方で、手元資金は減らしたくない」
- 「レバレッジといわれても、正直よくわからない」
という、本音をよく耳にします。
実は、私自身も同じ葛藤を抱えていました。
複数のローンを抱える中で、あるとき「この借入は、事業にとってプラスになっていないのではないか?」と感じるものが出てきたのです。
それは、事業や不動産といった資産に紐づいていない、無担保で金利の高いローン(数百万円規模)でした。
金額としては決して小さくはありません。しかし、じっくり眺めてみると、
- 売上や家賃収入を増やしてくれるわけではない
- 資産価値が増えるわけでもない
- 毎月のキャッシュアウトだけが続いている
という、いわば「事業の肩に乗っている重り」のような存在でした。
良い借金と悪い借金 ― 見分けるシンプルな視点
借金は「あるかないか」だけで判断すると、どうしても感情的になります。
私が意識しているのは、次のシンプルな問いです。
- その借入は、売上や生産性を高めるためのものか?
- その借入によって、将来のキャッシュフローがプラスになっているか?
これに「はい」と言える借入は、“良い借金”です。
例えば、
- 収益物件の購入資金(家賃で返済できるローン)
- 業務効率を大きく高めるシステム導入(労務DXなど)
- 売上拡大に直結する設備投資
一方で、
- 資産や事業に紐づかない消費的な借入
- 金利が高く、返済しても何も積み上がらない借入
- 「何となく不安だから」という理由だけで残している借入
こういったものは、“悪い借金”になりやすい借入です。
私自身の経営判断 ― 無担保ローンを一括返済した理由
先ほど触れたように、私自身も複数のローンを抱える中で、
「これは事業にとってプラスになっていない」と判断した無担保ローンがありました。
金利は3%台、残りの返済期間は十数年。
このまま返済を続ければ、将来支払う利息だけで百数十万円規模になる試算でした。
このとき、あらためて自分に問い直しました。
- この借入は、事務所や物件の価値を高めてくれているだろうか?
- この借入を残すことで、売上やキャッシュフローが増えるだろうか?
- それとも、毎月の固定費と心理的な負担を増やしているだけだろうか?
正直に向き合ってみると、答えは明確でした。
「このローンは、事業を前に進めるためのものではない」。
そこで私は、手元資金に一定の余裕があることも確認したうえで、一括返済を決断しました。
一括返済をしたことで、当然ながら通帳の残高はガクっと減りました。
しかし同時に、
- 毎月の返済が1本、まるごと消えた
- 将来支払うはずだった利息がなくなった
- 「無担保の重たい借入がない」という精神的な安心感が生まれた
- 金融機関から見た借入状況も、よりシンプルで健全になった
結果として、「手元の現金は減ったのに、事業としての自由度は増えた」感覚があります。
手元資金を減らす不安と、キャッシュフローを軽くする安心
経営者の皆さまが一番不安に感じられるのは、
「もしものときのために、手元のお金は減らしたくない」
というお気持ちだと思います。私もまったく同じでした。
ただ、今回の判断を通じて強く感じたのは、
- 「通帳の数字」だけが安心ではないということ
- 毎月の固定費(返済額)が軽くなることも、大きな安心になる
- 「必要なら、そのときに“意味のある借入”をすればよい」という考え方
無理に借金ゼロを目指す必要はありません。
しかし、「悪い借金」をいつまでも抱え続ける必要もありません。
大切なのは、
- 万一に備えた一定の現金はきちんと残しておく
- そのうえで、「将来のキャッシュフローを軽くする返済」は前向きに検討する
- どうしても必要なときは、その時点で目的のはっきりした借入を利用する
というバランスの取り方だと感じています。
社労士としてお伝えしたいこと ― お金と労務は「セット」で考える
社労士の仕事は、「人」と「お金」の両方にまたがっています。
給与・社会保険・労務管理・労務DX…。
どれも、「人に安心して働いてもらうために、お金の流れを整える仕事」だと感じています。
借入の整理も、その一部です。
- 毎月の返済が重すぎると、給与・賞与・採用にしわ寄せが来る
- 資金繰りの不安は、経営者のメンタルにも大きく影響する
- 経営者の不安は、そのまま現場の雰囲気にも伝わってしまう
だからこそ私は、「借金は良い・悪い」ではなく、
- この借入は、会社や事務所にとって味方になっているか?
- それとも、ただ静かに体力を奪っているだけではないか?
という視点でご一緒に整理していきたいと思っています。
まとめ ― 借金の「額」ではなく、「質」と「役割」を見直す
最後に、今回お伝えしたかったポイントをあらためてまとめます。
- 借金は「ある/なし」ではなく、「事業の味方かどうか」で見る
- 売上や資産価値、将来のキャッシュフローを増やす借入は“良い借金”
- 資産や売上に結びつかず、金利負担だけが続く借入は“悪い借金”になりやすい
- 手元資金を守ることも大切だが、「毎月の重たい返済を軽くする安心」も同じくらい大切
- 必要になれば、その時に「目的のはっきりした借入」を検討すればよい
私自身も、ひとりの経営者として悩みながら選択をしてきました。
もし、
- 返すべきか迷っている借入がある
- 手元資金と返済のバランスをどう考えればよいかわからない
- 借入と人件費・労務コストをセットで見直したい
といったお悩みがあれば、「お金と労務の両面」から一緒に整理していけたらと思います。
こもれび社労士事務所では、
日々の労務相談や手続き代行だけでなく、経営者の方の「心の重さ」も含めて軽くしていけるような関わり方を大切にしています。
「うちの借入は、味方なのか重りなのか?」
そんなモヤモヤが少しでもあるようでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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