中小企業が知らずにやりがちな「違法な労務管理」3選|社労士が実例でわかりやすく解説

中小企業が見落としがちな違法な労務管理3選のチェックリストとノートパソコンの写真|こもれび社労士事務所

中小企業で起こりやすい違法な労務管理3選|社労士が実例で解説

「うちは小さい会社だし、そこまで厳しく見られないでしょ?」
社会保険労務士としてご相談を受けていると、そんな“思い込み”から、気付かないうちに法律違反になってしまっているケースをよく見かけます。

労務管理のミスは、従業員とのトラブルや、行政からの是正指導・調査につながるだけでなく、経営者ご自身の時間とエネルギーを大きく削ってしまう問題でもあります。

この記事では、新潟で中小企業の労務相談をお受けしている社労士として、「悪気はないけれど、結果的に違法になってしまっている」ことが多い労務管理を3つに絞って解説します。

「自社は大丈夫かな…?」と感じたところがあれば、早めに見直すことでトラブルの芽を小さいうちに摘むことができます。


なぜ「知らなかった」ではすまされないのか?

労働基準法や社会保険のルールは、中小企業か大企業かに関わらず、すべての会社に同じように適用されます。

  • 従業員がハローワークや労基署に相談する
  • 退職時にトラブルになり、弁護士や労働組合が入る
  • 匿名の通報(いわゆるホットライン)から調査が入る

きっかけはさまざまですが、「普段は問題なく回っていた会社」ほど、いざトラブルになるとダメージが大きくなりがちです。

逆に言えば、よくある違反ポイントを押さえておくだけで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。


違法な労務管理その1:年次有給休暇を「実質的に取らせていない」

よくあるパターン

  • 「うちは有休ないから」と何となくの慣習で言ってしまっている
  • 有休はあるが、申請しづらい雰囲気になっている
  • 毎年ほとんど使わせず、退職時にまとめて買い取る運用になっている
  • 年5日の有休取得義務(使用者による確実な取得確保)ができていない

ここが法律違反になるポイント

正社員・条件を満たすパートさんには、法律で決められた日数の年次有給休暇を与える義務があります。
さらに現在は、年5日以上の有休を「実際に取得させる」ことが会社の義務になっています。

口では「うちは自由に有休取っていいよ」と言っていても、

  • 誰も取っていない
  • 取得状況を把握していない
  • 会社側から時季指定していない

という状態だと、実質的には義務を果たしていないと判断される可能性があります。

どう改善すればいい?

  • 従業員ごとの有休残日数・取得状況をきちんと把握する
  • 年5日の取得が難しい場合は、会社から計画的に取得日を指定する
  • 就業規則に有休のルールを整理し、説明のうえ周知する

「有休を取らせる」ことは会社にとって負担に見えるかもしれませんが、体調不良やメンタル不調による長期休職を防ぐ予防策にもなります。


違法な労務管理その2:残業代の未払い・固定残業の運用ミス

よくあるパターン

  • 「月給に残業代も含まれているから」と説明しているが、契約や給与明細に内訳がない
  • タイムカードはあるが、実際の支払いと連動していない
  • 管理職という名目で残業代を一切払っていない(でも実態は一般社員とほぼ同じ)

ここが法律違反になるポイント

「固定残業代(みなし残業代)」自体は違法ではありません。
しかし、以下のような“運用ミス”があると、結果的に未払い残業代と判断されることがあります。

  • 就業規則や雇用契約書に固定残業の時間数・金額が明記されていない
  • 固定残業時間を超えた分の残業代を支払っていない
  • 基本給部分と固定残業部分の区別が給与明細から分からない

未払い残業代の請求は、過去2〜3年分をまとめて請求されることも珍しくありません。
1人あたり数十万円〜数百万円の負担になるケースもあります。

どう改善すればいい?

  • 雇用契約書・就業規則を見直し、固定残業代のルールを明確にする
  • タイムカードや勤怠システムで実労働時間をきちんと把握する
  • 固定残業時間を超えた分は、ルールに沿って追加で支払う

最近は、勤怠管理と給与計算を一体で管理できるクラウドシステムも増えています。
「人手に頼った集計」から「システムで自動集計」へ切り替えるだけで、ミスと手間の両方を減らすことができます。


違法な労務管理その3:労働条件通知書・就業規則があいまいなまま運用している

よくあるパターン

  • 採用時に口頭だけで条件を伝えている(書面やデータがない)
  • 昔作った就業規則をほとんど読んだことがなく、実態と合っていない
  • パートさん・アルバイトさん用のルールが整理されていない

ここが法律違反になるポイント

従業員を採用したとき、会社には労働条件通知書(労働条件を明示した書面等)を渡す義務があります。
また、常時10人以上の労働者がいる事業場には、就業規則の作成・届出義務があります。

書面がない・あいまいなまま運用していると、

  • 残業代や給与の支払いをめぐるトラブル
  • 解雇・雇止めの妥当性
  • 休職・復職のルール

こういった場面で会社側の主張が通りづらくなるリスクがあります。

どう改善すればいい?

  • 採用時には必ず、書面または電子データで労働条件通知書を交付する
  • 実態に合った就業規則を整備し、従業員に説明・周知する
  • パート・アルバイト用の就業規則や雇用契約も整える

就業規則は、ただ作ればよいものではなく、「会社と従業員のトラブルを減らすためのルールブック」です。
自社の実態に合ったものを作ることで、日々の運用がぐっとラクになります。


「うちは大丈夫かな…?」と思ったら、早めのご相談がおすすめです

今回ご紹介した3つのポイントは、「悪意はないけれど、結果的に違法になってしまっている」ことが多い部分です。

  • 有休の付与・管理が何となくで運用されている
  • 残業代の計算が合っているか自信がない
  • 就業規則や雇用契約書が昔のままで不安

もし1つでも当てはまるところがあれば、「まだ大きなトラブルになる前」に見直しておくのがおすすめです。

こもれび社労士事務所では、新潟エリアの中小企業さま向けに、労務の現状チェックからルール整備・クラウドシステムを使った運用まで、一貫してサポートしています。

まずは「今のやり方で大丈夫か」を一緒に確認しませんか?

「いきなり顧問契約までは…」という方でも大丈夫です。
現在のルールや運用を拝見し、どこにリスクがあり、どこから直せばよいかをわかりやすくお伝えします。

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※本記事は執筆時点の法令等をもとに一般的なポイントをまとめたものです。
実際の対応は、会社の状況や就業規則などによって異なりますので、個別のご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。