障害年金は自分で申請できる?|本人・生成AI・社労士の違い

障害年金は自分で申請できるのか、本人・生成AI・社労士の違いを解説するイメージ

「障害年金は、自分で申請できますか?」というご相談をいただくことがあります。

結論からいうと、障害年金は本人が自分で請求できます。社会保険労務士への依頼が必須という制度ではありません。

最近では、生成AIを使って受診歴やメモを整理したり、病歴・就労状況等申立書の下書きを考えたりすることもできます。

では、本人が申請する場合、生成AIを使う場合、社労士へ依頼する場合では、何が違うのでしょうか。

この記事では、単に「専門家に頼んだ方がよい」と説明するのではなく、それぞれができること・できないことと、障害年金の申請で実際に確認するポイントを整理します。

この記事の結論

障害年金は本人でも申請できますし、生成AIも資料整理の補助に使えます。

一方、障害年金では、初診日、加入していた年金制度、保険料納付要件、障害認定日、受診歴、診断書、病歴・就労状況等申立書、日常生活や就労状況など、複数の情報と資料を横断して確認する必要があります。

社労士の役割は、本人の状態を実際以上に重く書くことではなく、請求に必要な事実と資料を確認し、書類全体を整理することにあります。

障害年金は自分で申請できます

まず大前提として、障害年金は本人が自分で請求できる制度です。

日本年金機構は、本人向けに年金請求書、記入例、手続きガイド、必要書類、病歴・就労状況等申立書などを公開しています。年金事務所などで相談しながら準備することもできます。

一方、本人以外が年金相談や手続きを行う場合には、原則として本人が作成した委任状が必要です。病歴・就労状況等申立書を家族などが代筆する場合には、代筆者の氏名、電話番号、請求者との続柄を記載します。

そのため、

  • 社労士に依頼しなければ申請できない
  • 本人が作った書類だから不利になる
  • 専門家が作れば認定されやすくなる

という単純な仕組みではありません。

「自分で申請できる」ことと、「すべてのケースが簡単に申請できる」ことは別です。
障害年金では、文章を書くこと以上に、いつの状態を、どの資料で確認するのかという整理が重要になります。

障害年金では何を確認するの?

障害年金の請求では、まず大きく次のような事項を確認します。

  1. 初診日
    障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日はいつか。
  2. 加入していた年金制度
    初診日に国民年金・厚生年金など、どの制度に加入していたか。
  3. 保険料納付要件
    初診日を基準として、必要な保険料納付要件を満たしているか。
  4. 障害認定日
    原則として初診日から1年6か月を経過した日など、障害状態を確認する基準日はいつか。
  5. 対象となる時点の障害状態
    障害認定日当時、または現在の状態が、障害認定基準上どのような状態にあるか。

このように、現在の症状だけを見る制度ではありません。

特に初診日は、その後の加入制度、保険料納付要件、障害認定日などの起点になるため、非常に重要な確認事項です。

「最初に精神科へ行った日」が必ず初診日とは限りません

精神疾患の障害年金では、「初めて精神科に行った日が初診日ですよね?」と思われることがあります。

しかし、制度上の初診日は、請求する障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。

そのため、最初に精神科を受診した日より前に、同じ傷病や相当因果関係がある傷病について別の診療科を受診していた場合には、その受診歴も確認が必要になることがあります。

傷病名が途中で変わっている場合や、前の傷病との関係が問題になる場合も、受診歴をさかのぼって確認する必要があります。

障害年金では、「いつからつらかったか」と「制度上の初診日」が同じとは限りません。

主な書類は、それぞれ役割が違います

障害年金では複数の書類を使いますが、すべてを本人が作成するわけではありません。

書類 主な作成者 主な役割
年金請求書 請求者 請求傷病、初診日、加入制度、請求方法、口座など、請求の基本事項を記載します。
診断書 医師・歯科医師 傷病、治療経過、現在の症状、障害状態、日常生活能力、就労状況などを医学的に確認する中心資料です。
受診状況等証明書 原則として初診医療機関 現在の診断書作成医療機関と初診医療機関が異なる場合などに、初診日の確認に使います。
病歴・就労状況等申立書 本人側 発病から現在までの受診歴、治療経過、就労状況、日常生活などを時系列で整理します。

つまり、診断書だけを見るわけでも、申立書だけを見るわけでもありません。

それぞれ作成者と役割が異なる資料を、一つの請求として確認していくことになります。

病歴・就労状況等申立書は「うまい文章を書く書類」ではありません

病歴・就労状況等申立書では、発病から現在までの経過を、受診していなかった期間も含めて整理していきます。

長期間にわたって複数の医療機関を受診している場合には、

  • いつ、どの医療機関を受診したか
  • その時期にはどのような症状があったか
  • どのような治療を受けていたか
  • 仕事をしていたか、休職していたか
  • 日常生活ではどのような支障があったか
  • 受診していない期間はなぜ受診していなかったか

などを時系列で確認していきます。

ここで重要なのは、本人の状態を「重く見える文章」にすることではありません。

必要なのは、本人の実際の経過を、他の資料とも確認できる形に整理することです。

精神の障害では「日常生活」が重要な確認事項になります

精神の障害による障害年金では、症状や診断名だけでなく、具体的な日常生活の状態も確認されます。

たとえば、

  • 適切に食事をとれるか
  • 身の回りを清潔に保てるか
  • 金銭管理や買い物ができるか
  • 通院や服薬を管理できるか
  • 他人との意思疎通や対人関係はどうか
  • 安全保持や危機への対応ができるか
  • 社会生活上の手続きなどを行えるか

といった生活場面が確認されます。

ただし、単純に「できる」「できない」だけを見るものではありません。

たとえば、一人で買い物に行けているように見えても、

  • 家族に毎回声をかけてもらっている
  • 買う物を事前に決めてもらっている
  • 金銭管理は家族がしている
  • 一人では不安が強いため同行してもらっている

ということもあります。

そのため、何ができるかだけでなく、誰から、どのような援助を、どのくらい受けているのかまで具体的に整理することが重要です。

働いていたら障害年金を受けられない?

「仕事をしていると障害年金は無理ですか?」という質問もよくあります。

精神の障害では、就労しているという事実だけで直ちに対象外になるわけではありません。

就労している場合には、

  • どのような仕事をしているか
  • 雇用形態
  • 勤務日数・勤務時間
  • 欠勤、遅刻、早退の状況
  • 職場で受けている配慮
  • 周囲からどのような援助を受けているか
  • 意思疎通や臨機応変な対応ができているか
  • 仕事をした後の日常生活にどのような影響があるか

など、実際の就労状況を含めて確認されます。

「働いている=障害年金を受けられない」「一般就労=対象外」と単純に判断することはできません。一方、就労状況は障害状態を確認する重要な要素の一つです。

初診の病院にカルテが残っていない場合は?

障害年金では、初診日が何年も前になることがあります。

そのため、

  • 病院が廃院している
  • カルテが保存されていない
  • 何度も転院している
  • 昔のことで正確な日付を覚えていない

ということもあります。

しかし、最初の医療機関のカルテがないというだけで、直ちに請求できないと決まるわけではありません。

事案によっては、

  • 第三者による証明
  • 診察券
  • 紹介状
  • 健康保険の給付記録
  • 障害者手帳関係の資料
  • 生命保険等の診断書
  • お薬手帳
  • 領収書
  • 2番目以降の医療機関の記録

などを確認していく場合があります。

もちろん、こうした資料を提出すれば必ず希望する初診日が認められるわけではありません。複数の資料の内容や整合性などを踏まえて判断されます。

障害認定日請求と事後重症請求でも確認する時点が違います

障害年金では、「いつの障害状態について請求するのか」も重要です。

障害認定日請求 事後重症請求
主に確認する状態 障害認定日当時 請求時現在
診断書 原則として障害認定日以後3か月以内の現症を示す診断書。認定日と請求日が1年以上離れる場合は、原則として現在の診断書も必要です。 原則として請求日前3か月以内の現症を示す診断書
支給開始 認定された場合、原則として障害認定日の属する月の翌月分から支給対象となります。ただし、請求が遅れた場合、5年を超える過去分は時効により受け取れないことがあります。 認定された場合、原則として請求日の属する月の翌月分から

そのため、単に「今、症状が重い」というだけではなく、障害認定日はいつだったのか、その時期にどの医療機関へ通っていたのか、その頃の状態を確認できる資料があるのかというところまで確認する必要があります。

では、本人・生成AI・社労士は何が違うのでしょうか

ここまで見ると、違いは単純な「文章作成能力」ではないことが分かります。

項目 本人・家族 生成AI 社労士
本人の経験 最もよく知っている 入力されていない事実は分からない 本人・家族から聞き取り、整理する
受診歴の整理 自分で整理できる 時系列表などの下書きを作れる 初診日・認定日・未受診期間などを確認しながら整理する
制度要件の確認 公式資料や年金事務所で確認できる 誤った情報や古い情報を出力する可能性がある 請求類型・必要書類・制度要件を確認する
申立書 本人側で作成できる 要約・分類・文章整理を補助できる 事実や資料を確認しながら作成を支援する
診断書 作成できない 作成・医学的判断はできない 作成・医学的判断はできない
資料間の確認 自分でも可能 入力された資料の表面的な照合を補助できる 不一致や不足が制度上どのような意味を持つか確認する
認定を決める できない できない できない

🎥 動画で解説|障害年金は自分で申請できる?生成AIと社労士の違い

本人申請・生成AIによる資料整理・社労士による申請支援について、それぞれ何が違うのかを動画でも解説しています。

生成AIは障害年金の申請にも使える?

生成AIは、障害年金の資料整理にも活用できます。

たとえば、

  • 複数の医療機関と受診期間を一覧にする
  • 発病・初診・転院・休職・復職などを時系列に並べる
  • 本人や家族の長いメモを整理する
  • 日常生活上の困りごとを項目別に分類する
  • 援助者・援助内容・頻度を表にする
  • 資料の日付や医療機関名の違いをチェックする

といった使い方はできます。

ただし、AIは本人の人生や受診歴を実際に知っているわけではありません。もっともらしい誤った日付や制度説明を出力する可能性もあります。

また、画像化された診療録、手書きメモ、PDFの読み取り結果には誤認識が起こることがあります。AIが抽出した日付、医療機関名、傷病名、受診期間などは、必ず原資料で再確認してください。

AIで作った内容は、本人の記憶、原資料、医療機関の証明、年金記録、最新の制度と照合する必要があります。

診断書やカルテなどの取扱いにも注意が必要です。
障害年金の資料には、氏名、生年月日、基礎年金番号、傷病名、診療情報、家族や勤務先の情報など、非常に重要な個人情報が含まれることがあります。生成AIへ入力する場合は、利用規約、データの保存・学習利用、個人情報の取扱い等を確認し、安易に個人を特定できる診療情報を入力しないことが重要です。

社労士事務所や家族がAIを使う場合も、本人の同意、利用するAIサービスの規約、入力内容が学習に利用されるか、保存・削除の仕組みなどを確認したうえで、必要最小限の情報にとどめることが大切です。

🎥 1分で見る|障害年金、AIで申請できる?それでも社労士に依頼する理由

生成AIでできる資料整理と、社労士が申請を支援する場合の違いを短くまとめています。

社労士がするのは「受給できそうな文章を書くこと」ではありません

では、社労士へ依頼する意味はどこにあるのでしょうか。

たとえば、本人から「10年以上前から精神科に通っています」と聞いたとします。

この一文を読みやすい文章に直すだけなら、本人でも生成AIでもできます。

社労士が支援する場合には、請求に必要な事実・資料・確認事項を整理し、その先の論点を一緒に確認していきます。

  • 最初の受診はいつか
  • その受診が制度上の初診日に当たる可能性があるか
  • 当時どの年金制度に加入していたか
  • 保険料納付要件はどうか
  • 初診医療機関の証明を取得できるか
  • 取得できない場合、ほかに確認できる資料はあるか
  • 障害認定日はいつになるか
  • 認定日頃の医療資料は残っているか
  • 現在の診断書との関係はどうか
  • 病歴・就労状況等申立書の受診歴と矛盾していないか

などを確認していきます。

※実際の初診日、保険料納付要件、障害状態および支給の可否は、日本年金機構が法令・認定基準・提出資料に基づいて判断します。

本人が「経験を記録する」ことと、請求に必要な事実・基準時・資料を一つの申請として整理することは、少し違います。

社労士にもできないことがあります

専門家に依頼したからといって、何でもできるわけではありません。

社労士は、

  • 本人が経験していない事実を作ること
  • 医師に代わって診断すること
  • 医師に代わって傷病名、症状、治療経過、日常生活能力、就労状況、予後などの医学的判断をして、診断書の内容を決定すること
  • 初診医療機関に代わって受診の事実を証明すること
  • 障害等級を決定すること
  • 支給決定を保証すること

診断書は医師が作成し、最終的な認定は審査する側が法令や認定基準、提出資料に基づいて判断します。

社労士に依頼すると認定率は上がる?

ここも慎重に考える必要があります。

「社労士へ依頼すれば認定率が上がる」と一般化できる公的な比較統計は、確認できません。

日本年金機構は障害年金の業務統計を公表していますが、本人申請・家族による手続・社労士代理といった区分ごとの支給割合を比較できる統計にはなっていません。

したがって、「社労士に頼めば受給できる」「専門家なら認定率が上がる」と説明するのは適切ではないと考えています。

専門家ができるのは、認定結果を変えることではなく、必要な事実・資料・基準となる時点を確認し、請求に必要な形へ整理することです。

自分で申請しやすいケース・相談を検討してもよいケース

本人申請が悪いわけではありません。

受診歴が比較的シンプルで、初診日も明確、必要書類も把握できていて、自分で調べながら進められる場合には、本人申請も十分に選択肢になります。

一方、次のような場合は、一度専門家へ相談して整理してみる方法もあります。

  • 初診日がかなり前で、最初の病院にカルテがない
  • 何度も転院していて受診歴が複雑
  • 20歳前から症状や受診歴がある
  • 障害認定日頃の資料が残っているか分からない
  • 認定日請求と事後重症請求のどちらを検討すべきか整理できない
  • 診断書と申立書の受診歴や就労状況に食い違いがある
  • 働いているため、就労状況をどのように整理すればよいか分からない
  • 日常生活で家族から多くの援助を受けているが、自分では説明しにくい
  • 資料が大量にあり、体調的にも自分ですべて整理するのが難しい

「自分でできる」と「全部一人でやらなければならない」は違います

障害年金は自分で申請できます。

生成AIも、時系列やメモを整理するための便利な道具になっています。

だからこそ、これからの専門家の役割は、単に「代わりに文章を書くこと」ではないと考えています。

本人にしか分からない経験があります。医師にしか判断できない医学的な事項があります。行政側が認定基準に基づいて判断する事項があります。

その間にある、

初診日・受診歴・認定日・診断書・申立書・日常生活・就労状況・客観資料を確認し、一つの請求として整理する。

そこが、社会保険労務士が支援できる部分の一つだと考えています。

よくある質問

障害年金の申請は家族が代わりにできますか?

家族が病歴・就労状況等申立書の作成を補助したり、代筆したりすることは可能です。代筆した場合は、代筆者の氏名、電話番号、請求者との続柄を記載します。年金相談や手続きを代理人として行う場合には、原則として本人が作成した委任状が必要です。

うつ病で働いていても障害年金を請求できますか?

就労していることだけで請求できなくなるわけではありません。仕事内容、勤務時間、欠勤・遅刻・早退、職場の配慮、援助の有無、仕事以外の日常生活への影響などを含めて確認されます。

初診日の病院がなくなっている場合はどうすればよいですか?

初診医療機関の証明が得られない場合でも、第三者証明、診察券、紹介状、お薬手帳、健康保険の給付記録、2番目以降の医療機関の受診記録などを確認し、初診日を合理的に推定できるかを検討する取扱いがあります。資料があるから必ず認められるわけではありませんが、最初の医療機関のカルテがないことだけで直ちに請求できないとは限りません。

生成AIで病歴・就労状況等申立書を作ってもよいですか?

生成AIは、メモの要約、受診歴の時系列化、日常生活上の困りごとの分類などに使えます。ただし、AIの出力には誤りが含まれる可能性があるため、初診日、受診期間、傷病名、日常生活の事実などは、本人の記憶や原資料で必ず確認してください。診断書の作成や医学的判断、支給可否の判断をAIが行うことはできません。

障害年金の資料整理からご相談いただけます

「自分で申請できるのか知りたい」
「初診日がかなり前で、資料が残っているか分からない」
「病歴が長く、どこから整理すればよいか分からない」

という段階でも大丈夫です。

最初からきれいな文章にまとめる必要はありません。短文・箇条書き・現在手元にある資料から、まず状況を整理していきます。

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※ご相談内容や資料を確認したうえで、対応可能な範囲をご案内します。受給や等級を保証するものではありません。

まとめ

障害年金は、社会保険労務士へ依頼しなくても本人が自分で請求できます。生成AIも、受診歴や時系列、本人メモなどを整理する補助として活用できます。

一方で、障害年金では、初診日、加入制度、保険料納付要件、障害認定日、診断書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書、日常生活や就労状況などを横断して確認する必要があります。

大切なのは、誰が文章を書いたかではなく、本人の実際の経過と資料が、確認できる形に整理されていることです。

自分で進められるところは自分で進める。AIを使えるところは補助として使う。複雑なところや、自分だけでは整理する負担が大きいところは専門家へ相談する。

そのように、自分の状況に合わせて方法を選んでよいと思います。

参考:
この記事は、日本年金機構・厚生労働省が公開している障害年金の請求案内、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準、精神の障害に係る等級判定ガイドライン、初診日の取扱い、社会保険労務士法、生成AI利用に関する公的な注意喚起等を確認して作成しています。制度・様式は変更されることがあるため、実際の請求時には最新の公式情報をご確認ください。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です

「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。

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