先回りするほど、支援になるとは限らない|個人案件の進め方を見直した理由

個人の方からご相談を受けていると、 「できるだけご本人の負担を減らしたい」と考えることがあります。
私自身、これまでそのためには、 専門家側でできるだけ先回りして調査し、必要になりそうなことを整理しておくこと が大切だと考えていました。
しかし、ある業務経験をきっかけに、 この考え方を少し見直すことにしました。
「先回りすること」と「ご本人の負担を減らすこと」は、 必ずしも同じではない。
「できるだけこちらで進めよう」と考えていました
心身の調子を崩している方にとって、 過去の出来事を思い出したり、勤務先や医療機関に確認したり、 書類を一つずつ準備したりすることは、大きな負担になることがあります。
そのため私は、 ご本人に何度も調べてもらったり、考えてもらったりするより、 こちらで調べられることは先に調べ、必要になりそうな資料や確認事項も整理しておいた方がよい と考えていました。
特に、時間が経過している案件では、 申請書を作り始める前に、 「どのような記録が残っている可能性があるのか」 「どこに確認すればよいのか」 「どの資料を優先して確認するのか」 といった、確認資料の整理も重要です。
専門家としては、 後になって必要な資料がないことが分かるより、 早い段階で確認しておいた方がよいと考えます。
ただ、ここには別の問題がありました。
専門家には「全体」が見えていても、ご本人には見えていない
専門家側では、 「まずこれを確認して、その結果によって次にこれを調べる」 という全体の流れを頭の中で描いています。
しかし、ご本人から見えているのは、 そのとき届いた質問や確認事項、文書だけかもしれません。
そうすると、専門家にとっては必要な準備でも、
- なぜ、今これを確認するのか
- 何のためにこの文書を送るのか
- どこまで確認すればよいのか
- この後、何をする予定なのか
が十分に共有されていなければ、 ご本人にとっては 「次々と確認することが増えていく」 ように感じられる可能性があります。
これは、ご本人の理解力の問題ではありません。
専門家側の「情報の出し方」と「仕事の進め方」の問題として考える必要がある。
今回、私はそこを改めて考えることになりました。
「説明したか」ではなく、「目的と順序を共有できたか」
説明そのものを増やせば解決するわけでもないと思います。
たくさん説明すれば、それだけ読む量も増えます。 質問を増やせば、それだけ過去を思い出したり、 判断したりする負担も増えます。
大切なのは、 情報量を増やすことではなく、「今どこにいて、なぜこれをするのか」が分かること なのだと思います。
たとえば、資料を確認していただく前に、
「今は、申請書を完成させる段階ではありません。」
「まず、どの資料が残っているかを確認する段階です。」
「ここが確認できたら、次に出来事と資料を照合していきます。」
とお伝えするだけでも、 同じ確認作業の受け止め方は変わるかもしれません。
手厚い支援とは、作業量を増やすことではない
今回、私が一番考え直したのはここです。
調査する量を増やすこと。 先に文書を作ること。 将来必要になりそうなことまで確認しておくこと。
これらは専門家側の「作業量」という意味では、 手厚い支援かもしれません。
しかし、ご本人の立場から考えれば、 必ずしもそれだけが「手厚さ」ではありません。
専門家が複雑な部分を引き受けながら、
ご本人には「今必要なこと」が分かる状態にする。
その方が、個人の方を支援する仕事では大切なのではないかと、 今は考えています。
仕事の進め方を見直すきっかけ
ある業務経験をきっかけに、 当事務所では個人案件の進め方を見直すことにしました。
個別の案件内容や、ご依頼者様とのやり取りを紹介することはしません。
この経験について書く目的は、 「どちらが正しかったのか」を説明することではなく、 専門家側の仕事の進め方に、改善できる点がなかったかを考えるため です。
今後は「全体を見せて、詳細は小分けに」
今後、こもれび社労士事務所では、 特に確認事項が多い個人案件について、 次のような流れをこれまで以上に意識して進めていきます。
-
まず全体像を共有する
何を目指し、どのような段階を経て進めるのかを最初にお伝えします。 -
「なぜ今これをするのか」を説明する
現在の段階の目的と、確認する理由をお伝えします。 -
今必要なことに絞って確認する
将来必要になるかもしれない確認事項まで、一度にお願いしないようにします。 -
確認結果を共有する
分かったこと、まだ分からないこと、次に確認すべきことを整理します。 -
次の段階を確認してから進む
大きな方針変更や外部への提出などについては、目的を共有したうえで進めます。
もちろん、すべての作業について毎回確認を求めるという意味ではありません。
専門家としてこちらで引き受けるべき複雑な作業は引き受けながら、 ご本人が「今、何をしているのか分からない」という状態にならないようにする ことを大切にしたいと思います。
専門家として、経験から仕事の仕組みを変えていく
実務をしていれば、 自分では良いと思っていた方法を見直す必要が出てくることもあります。
今回、私が改めて考えたのは、
ご依頼者様の負担を減らすとは、
専門家ができるだけ多く先回りすることではなく、
複雑な手続きをこちらで整理し、
今必要な説明と確認に絞りながら、
目的と順序を共有して進めること。
ということです。
今回の経験を、 今後ご相談いただく方への支援をより分かりやすく、 より負担の少ないものにするために活かしていきたいと思います。
※本記事は、特定のご依頼内容、ご依頼者様、ご相談経過を紹介するものではありません。 個人案件における支援の進め方について、当事務所が実務経験を通じて見直した考え方と運用方針を記載しています。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


