AI時代に選ばれる社労士とは。北村庄吾先生の「スナック社労士」と労災の現場から考えたこと

私が社会保険労務士試験を受験していた頃、大変お世話になった先生がいます。
「年金博士」としても知られ、長年にわたり社労士受験指導や実務の第一線で活躍されてきた、 北村庄吾先生です。
先日、北村先生のAIに関するセミナーや動画を拝見しました。
そこで一番衝撃を受けたのは、AIの性能や便利な使い方ではありませんでした。
「AI時代に、人から選ばれる社労士とはどのような存在なのか」
という、社労士の仕事そのものに対する考え方でした。
「スナック社労士」という考え方
北村先生は、AI時代に人から選ばれる社労士の姿を、 「スナック社労士」という印象的な言葉で表現されていました。
私なりに理解すると、これは単に話し好きな社労士や、親しみやすい社労士という意味ではありません。
AIは、すでにさまざまな仕事を手伝えるようになっています。
- 必要な情報を調査する
- 大量の資料を要約する
- 文章や書類の下書きを作成する
- 時系列や論点を整理する
正確な答えを出したり、情報を分かりやすく整理したりする能力は、これからさらに高まっていくでしょう。
しかし、それでも最後に残るものがあります。
「この先生だから相談したい」
という、人と人との関係性です。
専門知識だけではなく、その人の人間性や話し方、安心感、これまで積み重ねてきた対話によって選ばれる。
北村先生のいう「スナック社労士」とは、そのような存在なのだと私は受け止めました。
労災・障害年金の現場で、毎日感じていること
私は現在、精神疾患に関する労災申請や障害年金のご相談を中心にお受けしています。
その中で、依頼者の方から届くのは、制度や書類についての質問だけではありません。
「先生、会社から電話が来ました。」
「このまま申請しても大丈夫でしょうか。」
「病院に診断書をお願いするのが怖いです。」
このようなメッセージが届くことがあります。
法律や制度についての一般的な説明だけであれば、AIもかなりの範囲まで答えられるようになっています。
しかし、その方が今どのような状況にあり、何を恐れ、何に迷っているのかは、一般論だけでは分かりません。
それまでに伺ってきた経緯や、体調、会社との関係、病院とのやり取りを踏まえて、初めて分かることがあります。
だから私は、すぐに結論だけを返すのではなく、
「まずは、会社からどのような連絡があったのか、一緒に整理しましょう。」
「病院へのお願いの仕方も、一緒に考えていきましょう。」
とお伝えすることがあります。
正しい答えを伝えるだけではなく、依頼者の方が次の一歩を踏み出せる状態になるまで、一緒に整理する。
それも、社労士の大切な役割だと思っています。
AIは、申立書作成の「補助者」です
私自身も、日々の実務でChatGPTやClaude、Perplexity、NotebookLMなど、目的に応じて複数のAIを活用しています。 AIによって得意なことは異なるため、用途に応じて使い分けています。
例えば、労災申請や障害年金の支援では、依頼者の方から長い経緯を伺い、それを時系列で整理する必要があります。
つらい体験について、本人が最初から順序立てて説明できるとは限りません。
思い出したことが数日後に追加されることもありますし、一つの出来事でも、業務上の事実、ご本人の受け止め方、体調への影響、受診までの経緯などを分けて整理しなければならないことがあります。
そのようなとき、AIは非常に心強い補助者になります。
- 長い経緯を時系列に整理する
- 重複している内容を整理する
- 言葉にしづらい体験を要素ごとに整理する
- 申立書や説明資料のたたき台を作成する
- 確認すべき事項や不足資料を洗い出す
こうした作業は、AIを活用することで以前より効率的に進められるようになりました。
ただし、AIが作成した文章をそのまま申請書類として提出することはありません。
どの事実を重視するのか。
その表現が、ご本人の実感と一致しているか。
医療記録や客観的な資料と矛盾していないか。
労働基準監督署や日本年金機構に誤解なく伝わる内容になっているか。
そうした点を確認し、依頼者の方と一緒に何度も見直しながら仕上げていきます。
AIは、申立書を書いてくれる存在ではありません。
より良い申立書を依頼者の方と一緒につくるための「補助者」です。
最後に判断し、依頼者の方と確認しながら責任を持って仕上げるのは、社労士である私の仕事です。
AIのおかげで、依頼者とのLINEに丁寧に向き合えるようになりました
AIを使うようになって、単に書類作成が速くなっただけではありません。
申立書の骨子を考えたり、長い文章を整理したりする時間が短くなった分、依頼者の方とのやり取りに時間を使えるようになりました。
AIは、私の代わりに依頼者と向き合ってくれるわけではありません。
AIは、私が依頼者と向き合う時間をつくってくれる存在です。
「先生、大丈夫でしょうか。」
「会社からまた連絡が来るのが怖いです。」
「自分の説明で伝わるか不安です。」
そのような一言に、以前よりも落ち着いて、丁寧に向き合えるようになりました。
効率化によって依頼者との関係を薄くするのではなく、効率化によって、より深く人に向き合う。
私にとって、AIを使う意味はそこにあります。
AIでは代替しづらい、社労士の役割
労災申請や障害年金の手続きでは、制度上の正解だけでは決められないことがあります。
申請するかどうか迷っている方もいます。
会社との関係が悪化することを恐れている方もいます。
医師に何をどこまで伝えてよいか、分からなくなっている方もいます。
そのようなときに必要なのは、単に正解を示すことだけではありません。
事実を一緒に整理すること。
選択肢とリスクを分かりやすく伝えること。
本人が納得して決められるように支えること。
「怖い」と言える場所になること。
AIが高度になっても、依頼者との間に積み重ねられた信頼関係まで、簡単に置き換えられるものではないと思います。
むしろ、AIが正確な情報や文章を短時間で作れる時代だからこそ、 「誰に相談するか」が、これまで以上に大切になるのかもしれません。
「AIを使える社労士」になることが目的ではありません
AIを使えること自体が、社労士の価値になるとは思っていません。
新しいツールをたくさん知っていることや、文章を速く作れることだけが大切なのでもありません。
大切なのは、AIを使って何を実現したいのかです。
「AIを使う社労士」ではなく、
「人に向き合う時間を増やせる社労士」でありたい。
私はそう考えています。
依頼者のお役に立ち続けるために、AIを学ぶ
社労士試験の受験時代にお世話になった北村庄吾先生。
長年、社労士業界の第一線を走ってきた先生が、64歳になっても新しいAIを本気で学び、研究されている姿から、私は大きな刺激を受けました。
そこから私が受け取ったのは、単なる「AIに詳しくなろう」というメッセージではありません。
AIを使いこなすことが目的ではありません。
AIを活用しながら、これからも依頼者のお役に立ち続けたい。
その気持ちこそが、これからの社労士にとって一番大切なのではないかと思いました。
私も同じ気持ちです。
AIを学ぶのは、仕事を減らすためではありません。
一人でも多くの依頼者に寄り添い、不安を一緒に整理し、お役に立ち続けるためです。
依頼者から届く、
「先生、大丈夫でしょうか。」
という一言に、これからも丁寧に向き合い続けたいと思っています。
まとめ
AIは、調査や要約、文書作成を助けてくれる心強い存在です。
その一方で、不安を知り、状況を一緒に整理し、その方が納得できる道を考えるのは、人と人との対話の中で行われます。
私は、AIを味方につけながら、人にしかできない仕事をこれまで以上に丁寧に続ける社労士でありたいと思っています。
AIを学び続ける理由は、AIに詳しい社労士になるためではありません。
AIを活用しながら、
これからも依頼者のお役に立ち続けるためです。
労災申請・障害年金について、一人で整理することが難しい方へ
精神疾患に関する労災申請や障害年金の手続きでは、つらかった出来事や生活状況を、何度も思い出して説明しなければならないことがあります。
最初から、すべてを順序立てて話せなくても大丈夫です。
思い出したことを少しずつ伺いながら、一緒に整理していきます。
「申請できるか分からない」「何から始めればよいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


