主治医から「労災はやめた方がいい」と言われました。それでも申請できますか?

心療内科や精神科の主治医に労災申請について相談したところ、
「傷病手当金がもらえるなら、労災申請はしなくてもよいのでは」
「労災は手続きが大変ですよ」
「治療費が10割負担になる可能性がありますよ」
「それは弁護士に相談する話です」
「入院もしていないので、労災は難しいのでは」
このような説明を受けて、その場では納得したものの、後から不安になっていませんか。
「主治医がそう言うなら、労災申請は無理なのだろう」と諦めかけている方も少なくありません。
主治医から「労災はやめた方がいい」と言われました。それでも申請できますか?
結論からお伝えすると、主治医から消極的な意見を言われたという理由だけで、労災申請を諦める必要はありません。
もちろん、主治医の意見を無視してよいという意味ではありません。
主治医は、病気の診断や治療、現在の症状、働ける状態かどうかなどを医学的に判断する大切な専門家です。
一方で、精神障害が仕事によって発病したものとして労災保険の対象になるかどうかは、提出された資料や関係者への調査などを踏まえ、労働基準監督署長が労災保険制度の基準に沿って判断します。
主治医が労災認定の可否を最終的に決めるわけではありません。
なぜ主治医が労災申請に消極的なことがあるのでしょうか
主治医が労災申請に消極的だったとしても、直ちに「労災になる可能性がない」と判断されたとは限りません。
医師と労働基準監督署では、担当する役割と判断する対象が異なるからです。
主治医の主な役割
- 病気の診断と治療
- 症状や経過の把握
- 就労できる状態かどうかの医学的判断
- 患者さんの治療上の負担への配慮
労働基準監督署の主な確認事項
- 対象となる精神障害を発病しているか(診断名、症状、発病時期など)
- 発病前のおおむね6か月間に業務上の強い心理的負荷があったか(パワハラ、長時間労働、配置転換など)
- 業務以外の出来事や個体側要因をどのように評価するか
- 会社、本人、医療機関などの資料を総合してどう判断するか
主治医は治療の専門家ですが、すべての医師が精神障害の労災認定基準や、労災保険の請求実務に詳しいとは限りません。
また、労災申請に伴って医師の証明や医療機関側の事務対応が必要になることもあるため、治療や事務負担を考慮して慎重な説明をされる場合もあります。
そのため、主治医の発言は大切に受け止めながらも、「医学的な評価」と「労災保険制度上の評価」を分けて整理することが重要です。
労災かどうかを最終的に判断するのは労働基準監督署長です
精神障害の労災申請では、主治医の診断や診療録は重要な資料になります。
しかし、主治医の一言だけで認定・不認定が決まるものではありません。
労働基準監督署では、一般的に次のような資料や事情を確認します。
- 診断名、初診日、発病時期、症状の経過
- 長時間労働、パワハラ、配置転換、業務上の重大な失敗などの出来事
- 会社や関係者からの聞き取り
- 勤務記録、メール、チャット、録音、日記などの資料
- 発病前後の勤務状況や生活状況
- 既往歴や業務以外の出来事
これらを総合して、厚生労働省の認定基準に沿って判断されます。
したがって、「主治医が難しいと言ったから申請できない」「主治医が賛成してくれないから受け付けてもらえない」とは限りません。
主治医からよく言われる言葉を、どう考えればよいのでしょうか
「傷病手当金がもらえるなら、労災申請はしなくてもよいのでは」
傷病手当金と労災保険の休業補償等給付は、どちらも休業中の生活を支える制度ですが、制度の目的や対象が異なります。
傷病手当金は、原則として業務外の病気やけがによる休業を対象とする健康保険の給付です。
一方、仕事が原因で発病した病気やけがは、労災保険の対象として検討されます。
そのため、単に「傷病手当金を受けられるから、労災を考える必要がない」とは言い切れません。
ただし、労災認定前の生活保障をどのように確保するかは重要な問題です。実際の手続きは、現在の受給状況や健康保険者の取扱いを確認しながら進める必要があります。
「治療費が10割負担になるので、健康保険のままの方がよい」
業務上の病気やけがには、原則として健康保険ではなく労災保険を使用します。
すでに健康保険を使用して受診している場合には、後から労災扱いへ切り替える過程で、健康保険と労災保険との間の調整や精算が必要になることがあります。
また、医療機関が労災保険指定医療機関ではない場合などには、いったん自己負担したうえで後から請求する取扱いになることもあります。
そのため、治療費の取扱いは一律ではなく、医療機関、加入している健康保険、労働基準監督署への確認をしながら進めることが大切です。
「必ずすぐに10割を用意しなければならない」とは限りません。
治療費の精算が心配な場合は、申請を諦める前に、具体的な切替え方法を確認することが大切です。
「それは弁護士に相談する話です」
労災申請は、会社に対して損害賠償を請求する手続きとは異なります。
暴行や安全配慮義務違反に関する損害賠償、会社との交渉、訴訟などは弁護士へ相談する分野になります。
一方、労災保険給付の請求や、申請に必要な事実関係・資料の整理は、社会保険労務士が対応できる分野です。
状況によっては弁護士との連携が必要になることもありますが、「弁護士の話と言われたから、労災申請そのものができない」ということではありません。
「入院もしていないので、精神の労災は難しい」
精神障害の労災認定基準に、「入院していなければ認定しない」という要件はありません。
入院の有無は症状や治療経過を確認する一つの事情にはなりますが、それだけで労災の可否が決まるわけではありません。
外来通院を続けながら自宅療養している場合でも、対象となる精神障害を発病し、業務による強い心理的負荷が認められれば、労災として検討されます。
「過去にも精神科へ通院しているので難しい」
既往歴があるからといって、それだけで労災申請ができなくなるわけではありません。
過去の症状が落ち着いていたのか、今回の業務上の出来事の後に新たに発病したのか、または症状が悪化・再燃したのかなどを、具体的な経過に沿って確認します。
既往歴を隠すのではなく、以前の状態と今回の発病・悪化後の状態を区別して整理することが重要です。
主治医が労災実務に詳しくない場合でも、治療は継続しながら整理できます
主治医が労災制度に詳しくなかったり、労災申請に消極的だったりしても、直ちに転院しなければならないわけではありません。
主治医には、まず現在の症状や治療、働けない状態について医学的に診てもらうことが大切です。
そのうえで、労災保険制度上の出来事の整理や申請手続きについては、労働基準監督署や労災実務に対応する専門家へ確認するという分担も可能です。
なお、労災保険指定医療機関であっても、そのこと自体が個々の医師の精神障害の労災認定基準や申請実務への精通を意味するものではありません。
社会保険労務士と主治医が日常的に直接連絡を取り合う制度になっているわけではありません。
必要に応じて、本人の同意のもとで、医師へ伝える内容を整理した資料を作成したり、診断書等を依頼する際の要点をまとめたりすることで、医療機関への負担や行き違いを減らしながら進めます。
主治医から否定的な説明を受けたときに、まず行うこと
その場ですぐに「申請する」「申請しない」を決めなくても大丈夫です。
まずは、次の事項だけでも整理してみてください。
- 職場で何があったのか
パワハラ、長時間労働、配置転換、重大なトラブルなど - その出来事がいつ起きたのか
正確な日付が分からなければ、おおよその時期でも構いません - いつ頃から症状が現れたのか
不眠、食欲低下、動悸、涙が出る、出勤できないなど - いつ初めて医療機関を受診したのか
- 裏付けになりそうな資料があるか
メール、LINE、チャット、録音、勤怠記録、日記など
この整理をしたからといって、必ず労災申請をしなければならないわけではありません。
まずは、制度上検討できる事情があるのかを確認し、その後に、申請の負担、治療への影響、傷病手当金、会社との関係なども含めて判断すればよいのです。
「申請するか決めてから相談」ではなくても大丈夫です
「労災になる可能性があるのか知りたい」「主治医から難しいと言われて止まっている」という段階で、制度上の見通しを整理する方法もあります。
私自身も、主治医に相談した際に戸惑った経験があります
詳細は本記事では控えますが、私自身も、主治医に労災について相談した際、弁護士への相談を案内されるなど、労災制度について詳しい説明を受けられなかった経験があります。
労災保険指定医療機関であっても、そのこと自体が個々の医師の精神障害の労災認定基準や申請実務への精通を意味するものではありません。
当時の私も、主治医の反応を受けて、「やはり労災申請は難しいのだろうか」と感じました。
しかし、主治医が労災制度に詳しいかどうかと、実際に労災認定の対象となり得るかどうかは別の問題です。
だからこそ、同じように主治医から消極的な説明を受けた方に、次のことをお伝えしたいと思っています。
先生に「難しい」と言われても、そこで諦めなくて大丈夫です。
まずは、医学的な評価と労災制度上の評価を分けて、状況を整理してみましょう。
主治医に反対され、労災申請を迷っている方へ
主治医から否定的な説明を受けると、
- 自分が大げさに考えすぎているのではないか
- 入院していない自分には申請する資格がないのではないか
- 会社で受けた出来事は大したことではないのではないか
- 専門家に相談しても断られるのではないか
と不安になってしまう方もいらっしゃいます。
しかし、つらい状態の中で、ご自身だけで認定基準や証拠、傷病手当金との関係まで判断するのは簡単ではありません。
こもれび社労士事務所では、無理に労災申請を勧めることはしていません。
まずは、職場で起きたこと、症状が出た時期、受診までの経過、現在お持ちの資料などを確認し、制度上どのように整理できるのかを一緒に考えます。
まだ申請を決めていない段階でも、ご相談いただけます
「主治医に難しいと言われた」
「傷病手当金と労災のどちらを考えるべきか分からない」
「入院していないので無理だと言われた」
という段階でも大丈夫です。
まだ申請するか決めていない段階でも問題ありません。
まとまった文章でなくても、LINEで短文や箇条書き、資料の写真をお送りいただけます。
LINEで状況を送る(短文でOK)ご相談内容を確認したうえで、対応できる範囲や料金をご案内します。
まとめ
- 主治医から消極的な意見を言われても、それだけで労災申請ができなくなるわけではありません。
- 主治医は治療や医学的判断の専門家、労働基準監督署は労災保険制度上の判断を行う機関であり、評価する軸が異なります。
- 傷病手当金が受けられることだけを理由に、労災申請を考える必要がなくなるとは限りません。
- 入院していないことや既往歴があることだけで、直ちに労災の対象外になるわけではありません。
- 申請を決める前に、職場での出来事と発病までの経過を整理することが大切です。
※この記事は一般的な制度の説明を目的としたものです。実際の認定結果や、傷病手当金・治療費の取扱いは、個別の事情、加入する健康保険、医療機関及び行政機関の判断によって異なります。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


