2023年改正でメンタル労災はどう変わった?|申請しやすくなったポイントを解説

2023年改正でメンタル労災はどう変わった?|申請しやすくなったポイントを解説
2023年の精神障害の労災認定基準の改正をイメージした、木目のデスク上に無地の書類とノート、ペンが置かれた落ち着いた写真風アイキャッチ画像
2023年改正のやさしい解説

2023年改正でメンタル労災はどう変わった?|申請しやすくなったポイントを解説

2023年9月、厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」が改正されました。ニュースでは「パワハラの労災認定が拡大」といった見出しもありましたが、実務ではどこが変わり、どんな点で申請しやすくなったのでしょうか。

この記事では、本人申請やご家族からの相談を前提に、主な改正ポイントを「以前との違い」とあわせてかみ砕いて解説します。

最初に結論

2023年の改正は、精神障害の労災認定の「入り口」を大きく広げたというより、評価の枠組みや例示を見直して、現場で判断しやすくした改正といえます。

  1. パワハラなどの具体例が増え、「どこから労災になりうるか」が見えやすくなりました。
  2. 心理的負荷評価表の構成が整理され、複数の出来事を総合評価しやすくなりました。
  3. 医学意見の聴き方や手続の運用が見直され、審査の納得感が高まりやすくなりました。

ポイント1 パワハラの具体例が増えた

改正の象徴的な変更点の一つが、パワーハラスメントに関する具体例が心理的負荷評価表に明示されたことです。これにより、「どんな上司の言動がどの程度の心理的負荷と見なされるか」が、以前より読み取りやすくなりました。

特に、優越的な関係を背景とした言動のうち、人格否定的な叱責、見せしめ的な叱責、無視・隔離など、実務で頻出する行為が例示されています。

改正前

「ハラスメント」がぼんやりしていた

抽象的な表現が多く、パワハラに当たるのか、指導の範囲なのかが見えにくい場面がありました。

改正後

具体的なパワハラ例が明記

6類型のパワハラを念頭に置いた具体例が示され、評価表を見ながら自分のケースを当てはめやすくなりました。

申請しやすく

「たぶんパワハラ?」から一歩前へ

本人申請でも、「この行に近い」「この具体例に似ている」と説明しやすくなり、相談への第一歩を踏み出しやすくなりました。

ここがポイント:改正によって、これまでグレーだった出来事が急に全部「強」になるわけではありませんが、「評価表のどこに置くか」を共有しやすくなったことは、実務上大きな変化です。

ポイント2 心理的負荷評価表の構成が整理された

2023年改正では、心理的負荷評価表そのものの構成が見直されました。具体的出来事の見直しや、類似する出来事の整理が進み、複数の出来事を総合して評価する考え方が明確にされています。

これにより、「一つひとつは中程度でも、全体としては強い心理的負荷になっている」というケースを、表上も説明しやすくなりました。

出来事の整理

過去の運用を踏まえ、実態に合うように具体的出来事の分類が見直されました。

複数出来事の総合評価

複数の出来事が組み合わさるケースについて、評価の考え方がより明文化されています。

現場感覚とのすり合わせ

近年のメンタル不調事案の傾向を踏まえたうえで、評価表がアップデートされた形です。

長期ハラスメントとの相性も良くなった

長期間のハラスメントや、パワハラと長時間労働など複数要因が重なるケースでは、「出来事をバラバラに見る」のではなく、全体としての心理的負荷を評価する考え方がより意識されるようになりました。

ポイント3 近年の職場リスクに対応した出来事の追加

改正では、新型コロナウイルス感染症対応のような感染症関連業務や、カスタマーハラスメント(カスハラ)など、近年の職場で問題になっている出来事も評価表に反映されています。

これにより、「昔の表には載っていないから対象外では?」という不安を抱えたままになっていた職場リスクにも光があたりやすくなりました。

感染症対応

感染リスクの高い業務や、過度な心理的負荷を伴う対応についても、評価の枠組みが示されました。

カスタマーハラスメント

顧客からの著しい迷惑行為など、これまで十分に想定されていなかった出来事が位置づけられました。

その他の新たなリスク

テレワークやオンラインコミュニケーションなど、働き方の変化も含めた評価が求められる土台が整えられました。

ポイント4 医学意見の位置づけや手続の合理化

精神障害の労災認定では、これまでも専門医の意見を踏まえた判断が行われてきましたが、改正では医学的意見の収集や活用に関する手続も整理されました。

これにより、「医師がこう書いているのに、なぜ違う判断になるのか」といった不信感が生じにくくなるような運用が期待されています。

本人側から見た影響

  • 診断書や意見書の位置づけがより明確になり、準備すべき資料のイメージがつきやすくなりました。
  • 医師にも、認定基準の枠組みを意識してもらいやすくなってきています。

とはいえ:改正後も、診断書があれば必ず認定されるわけではありません。出来事、症状、業務との関係を、資料全体で説明することが重要なのは変わりません。

改正を踏まえて、本人申請で意識したいこと

2023年改正によって、評価表や具体例は充実しましたが、「感情だけを書けばいい」という意味ではありません。むしろ、表を前提にしながら、どの行・どの強度に近いのかを意識して整理することが重要になっています。

出来事を具体的出来事に当てはめる

パワハラ、長時間労働、配置転換、カスハラなど、評価表上のどこに近いのかを考えながら時系列を作ります。

強・中・弱の差を意識する

単発か反復か、人前かどうか、改善されたかどうかなど、「強」に近づく事情を拾いもらさないようにします。

複数の出来事の重なりを見る

パワハラだけ、長時間労働だけで見るのではなく、全体としての心理的負荷を意識して整理します。

「改正後なら通りやすい?」と考える前に

2023年改正をきっかけに、「昔はあきらめたけれど、今ならどうなのか」と考える方も増えています。ただ、改正の有無にかかわらず、労災認定では出来事と症状の時系列、資料の整合がとても重要です。

もし今、「パワハラや長時間労働はあったが、自分のケースが改正後の評価表でどう見られるのか分からない」という状態でしたら、時系列や出来事を送っていただければ、改正後の基準を前提に、どのあたりに位置づけられそうかのラフな整理をお手伝いします。

※ 「改正のニュースは見たけれど、自分のケースに当てはまるか分からない」という段階でも大丈夫です。

参考:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改正について」等の公表資料や各種解説を踏まえて構成しています。個別事案への適用は、最新の通達や専門家の確認をおすすめします。

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