厚生労働省の精神障害労災認定基準の3つのポイント

パワハラでうつ病になったとき、労災で見られる3つのポイント
パワハラによるメンタル不調と労災申請をイメージした、木目のデスク上のノートと万年筆、労災申請書類の写真風アイキャッチ画像
個人申請向けガイド

パワハラでうつ病になったとき、労災で見られる3つのポイント

パワハラが原因でうつ病や適応障害を発症した場合でも、すべてのケースが自動的に労災認定されるわけではありません。実務では、認定基準に沿って「精神障害の発病」「業務による強い心理的負荷」「業務外要因との関係」が丁寧に確認されます。

この記事は、本人申請を検討している方向けに、できるだけ専門用語をかみ砕いて整理した解説ページです。

最初に結論

パワハラによるメンタル不調で労災が認められるかどうかは、主に次の3点で見られます。

  1. 対象となる精神障害を発病しているか。
  2. 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷があったか。
  3. 私生活上の出来事や既往歴など、業務外の要因で説明される事案ではないか。

厚生労働省の精神障害の労災認定基準でも、この枠組みで判断されます。2023年9月の改正では、心理的負荷評価表の見直しや認定手続の一部合理化も行われました。

ポイント1 精神障害の発病があるか

まず前提になるのは、うつ病、適応障害、急性ストレス反応など、認定基準の対象となる精神障害を実際に発病していることです。単に「つらい」「会社に行けない気がする」という状態だけでは足りず、医師の診断名や受診経過が重要になります。

実務上のコツ:初診時の説明はとても重要です。いつ頃から、誰のどんな言動が続き、仕事や睡眠にどんな影響が出たのかを、時系列で簡潔に伝えられるよう準備しておくと、その後の申請資料とも整合が取りやすくなります。

  • 初診日、通院先、診断名、休職開始時期を整理する。
  • 診断書や診療録の内容と、申立書の内容が大きく食い違わないようにする。
  • 「いつから症状が出たか」が曖昧なままだと、発病時期の認定で不利になりやすい。

ポイント2 業務による強い心理的負荷があるか

次に大切なのは、発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められるかどうかです。精神障害の労災認定では、出来事の有無だけではなく、その強度、継続性、反復性、周囲との関係性まで見られます。

1

どんな言動があったか

暴言、人格否定、過大要求、無視、隔離、見せしめ的叱責など、具体的な言動を特定できるかが重要です。抽象的に「つらかった」だけでは、評価表に落とし込みにくくなります。

2

どれくらい続いたか

1回限りか、繰り返しか、長期間かで重みが変わります。メール、チャット、録音、メモ、日記などで継続性を示せると強くなります。

3

就業環境への影響

その結果、出勤困難、不眠、涙が止まらない、欠勤・休職に至ったなど、仕事にどんな支障が出たかも大切です。単なる不快感にとどまらないことを示す必要があります。

なお、職場のパワーハラスメントは、一般に「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「就業環境が害されるもの」の3要素をすべて満たすかで整理されます。労災の場面では、このパワハラ該当性と、精神障害認定基準上の心理的負荷の強さの両面が関わってきます。

ポイント3 業務外の要因ではないか

労災認定では、仕事がつらかったことだけではなく、私生活上の大きな出来事や既往歴によって発病したと説明されないかも確認されます。たとえば家族の重大疾病、離婚、借金問題など、業務外の心理的負荷が強いと評価される事情がある場合は、その影響との比較が問題になります。

これは「私生活に何かあれば必ず不支給」という意味ではありません。重要なのは、仕事上の出来事が発病の主要な要因としてどこまで位置づけられるかを、資料全体で示せるかどうかです。

誤解しやすい点:既往歴がある人でも、直近の業務上出来事によって再発・増悪したと評価できるケースはあります。だからこそ、発病前後の経過を雑にせず、時系列で丁寧に整理することが大切です。

本人申請で最低限そろえたいもの

  1. 出来事の時系列表。
  2. 診断書、受診歴、休職資料。
  3. メール、チャット、録音、業務指示書などの客観資料。
  4. 同僚や家族など、経過を知る人の補足資料。
  5. 会社が協力しない場合を含めた申請方針の整理。

特に個人申請では、「何が起きたか」を感情ではなく事実で並べることが重要です。読む側が一目で流れを追える資料にすると、相談や申請の初動がかなり変わります。

今は請求件数も増えている

厚生労働省公表資料では、2024年度の精神障害に関する労災請求件数は3,780件、支給決定件数は1,055件で、いずれも過去最多とされています。職場の対人関係やパワハラを含む「職場環境」に関する要因の増加も指摘されており、個人で情報を集めて相談先を探す人が増えている背景があります。

そのため、これから申請を考える方に向けた情報発信では、「感情論」よりも「何を、どの順番で、どの資料で示すか」を具体的に書くことがとても大切です。

ご相談を検討中の方へ

パワハラによるメンタル不調の労災申請は、出来事の整理、初診時の説明、診断書との整合、証拠の配置で結果が変わりやすい分野です。ご自身で進める前に、時系列や証拠の並べ方だけでも一度整理しておくと、見通しが立ちやすくなります。

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参考:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」、厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」、2025年公表の精神障害に関する労災補償状況等。

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