障害年金で「2級だと思ったのに3級」だったら?|審査請求と額改定請求の違い

障害厚生年金を請求して、 「自分では2級だと思っていたのに、結果は3級だった」 ということがあります。
このとき、 「状態が重いのだから、すぐに額改定請求をして2級に変更してもらえばいいのでは?」 と考える方もいるかもしれません。
しかし、ここで最初に確認したいのが、 「最初から2級相当だったと考えるのか」、 それとも 「3級と決定された後に状態が悪化したのか」 という違いです。
最初の決定時点ですでに2級相当だったと考えるのであれば、 中心となる手続は審査請求です。
一方、3級決定後に障害状態が悪化したのであれば、 中心となるのは額改定請求です。
額改定請求には原則として「1年」の制限があります。 1年を待たずに請求できる例外もありますが、 精神障害そのものを直接対象とした例外は、現在の省令には掲げられていません。
動画で解説|2級だと思ったのに3級だったら?
「最初から2級だった場合」と「3級決定後に悪化した場合」の違いから、審査請求と額改定請求の使い分けを解説しています。
1.「最初から2級」と「後から悪化」は違う
3級という決定に納得できない場合、まず整理したいのは、 「いつの障害状態について2級だと考えているのか」です。
| 状況 | 中心となる手続 | 考え方 |
|---|---|---|
| 最初の決定時点ですでに2級相当だった | 審査請求 | 当初の3級処分そのものが適切だったかを争う |
| 3級決定後に状態が悪化した | 額改定請求 | その後の障害状態の増進を理由に上位等級を求める |
| 3級決定後、短期間で急激に悪化した | 原則として額改定請求。ただし1年ルールに注意 | 精神障害の悪化だけでは、原則として1年前の例外にはならない |
つまり、 「3級だったから額改定請求」 と機械的に考えるのではなく、 最初の3級決定を争うのか、その後の悪化を問題にするのかを分ける必要があります。
1分で確認|3級だったら、すぐ額改定請求?
2.最初から2級だったなら審査請求
「3級という決定が出たが、当時の状態から考えて、最初から2級だったはずだ」 という場合は、額改定請求ではなく、 当初の処分に対する審査請求が問題になります。
審査請求は原則として、 処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内 に行います。
3級の決定通知が届いたら、通知書を保管するとともに、 いつ決定を知ったのかが分かる日付も確認しておきましょう。
この場合に問題となるのは、 現在さらに悪化しているかどうかではなく、 当初の決定時点で2級相当の障害状態にあったかです。
3級の決定後に状態が悪化したのではなく、当初から、
- 家族から日常的に多くの援助を受けていた
- 身の回りのことを一人で十分に行えなかった
- 就労を継続できる状態ではなかった
- 診断書以外の資料からも重い生活上の制限が確認できる
3.3級決定後に悪化したなら額改定請求
一方、3級とされた当時の判断そのものには問題がなく、 その後に障害状態が悪化して2級相当になった という場合は、額改定請求が中心となります。
障害厚生年金には1級・2級・3級があるため、 3級の受給者が障害状態の増進を理由として、 2級など上位等級への額改定を求めることができます。
ただし、いつでも自由に請求できるわけではありません。 ここで重要になるのが、いわゆる 「1年ルール」です。
障害厚生年金3級を受給している方が65歳以後に額改定請求をする場合は、 受給権の発生時期や、過去の障害等級などによって取扱いが異なることがあります。
65歳前後で額改定請求を検討する場合は、 年金事務所等で請求の可否を個別に確認することをおすすめします。
4.額改定請求の「1年ルール」
額改定請求は原則として、 障害年金の受給権が発生した日、またはその後に障害の程度について診査を受けた日から1年を経過した日後 でなければ行うことができません。
起算点は通知書の到達日ではなく、障害年金の受給権が発生した日、 またはその後に障害の程度について診査を受けた日です。
実際の起算日については、年金証書、額改定通知書、 障害状態確認届に関する書類等を確認し、必要に応じて年金事務所に照会してください。
障害状態確認届の診断書提出や職権による等級改定など、 実際に障害の程度について診査が行われた経過がある場合には、 その診査日が起算点として問題になることがあります。
5.1年を待たなくてよい例外がある
ただし、障害状態が明らかに増進した一定の場合には、 1年を待たずに額改定請求できる例外があります。
現行省令について、 障害厚生年金3級から上位等級への請求に関係する状態を実務上整理すると、 27区分として整理できます。
たとえば、次のような状態です。
- 一定の重い視力・視野障害
- 一定の重い聴力障害
- 喉頭の全摘出
- 上肢・下肢や指の一定の欠損
- 四肢等の完全麻痺
- 心臓移植、人工心臓等の装着
- 一定の心臓再同期医療機器の装着
- 人工透析を一定期間継続している状態
- 一定の人工肛門・尿路変更等の状態
- 人工呼吸器を一定期間常時装着している状態
現行省令の状態を、障害厚生年金3級からの額改定請求という観点から整理した場合の区分です。
また、例外に該当したからといって、 自動的に2級や1級になるわけではありません。
あくまで「1年を待たずに額改定請求できる」という意味であり、 その後、改めて障害等級の審査が行われます。
6.精神障害を直接対象とした例外はない
ここが、精神障害で障害年金を受給している方にとって重要な点です。
現在の省令に定められた1年前の額改定請求の例外には、 精神障害そのものを直接対象とした状態は掲げられていません。
たとえば、
- うつ病
- 双極性障害
- 統合失調症・妄想性障害
- 発達障害
- 知的障害
- 精神障害として評価される高次脳機能障害
- 精神症状を中心とする器質性精神障害
などについて、 精神症状や日常生活能力が悪化したこと自体を理由とする1年前の例外は設けられていません。
「1年を待たずに額改定請求できる例外の中に、精神障害を直接対象としたものはない」
となります。
ただし、 「精神障害で年金を受給している人は、どんな場合でも絶対に例外を利用できない」 とまで言うのは正確ではありません。
身体障害を併存し、その身体状態が省令上の状態に該当する場合には、 例外や併合改定など別の制度上の検討が必要になることがあります。
7.精神状態が急激に悪化した場合は?
では、3級決定後に精神状態が急激に悪化した場合はどうでしょうか。
たとえば、
- 精神科へ入院することになった
- 自傷や希死念慮が強くなった
- 家族の常時援助が必要になった
- 仕事を続けられず休職・退職した
- 一人での生活を維持できなくなった
といった大きな変化が生じることがあります。
これらは障害状態を考えるうえで非常に重要な事情になり得ますが、 それだけで1年前の額改定請求の例外に該当するわけではありません。
精神障害だけの増進であれば、 原則として額改定請求の1年ルールを確認する必要があります。
ただし、「1年たつまで何もできない」という意味でもありません。
- 当初から2級相当だった可能性があれば審査請求を検討する
- 悪化後の診療記録を残す
- 家族からどのような援助を受けているか整理する
- 就労・休職・退職までの経過を残す
- 次回の障害状態確認届に現在の実態を適切に反映できるよう準備する
- 年金事務所等で記録上の診査日を確認する
といった対応を進めることはできます。
8.「当初から2級」として3級処分が覆った裁決例
精神障害について、 「3級だったが、決定時点ですでに2級相当だったのではないか」 という点を考えるうえで参考になる裁決があります。
当初の3級処分について、障害認定日時点ですでに2級相当だったとして争われた事例です。
平成27年(厚)第1101号・平成28年7月29日裁決
この事案では、うつ病について障害厚生年金3級とされた処分が争われました。
社会保険審査会は、診断書の数字だけを見るのではなく、 日常生活の実態や家族の援助、就労状況などを含めて検討し、 障害認定日時点で2級相当と判断しました。
| 傷病 | うつ病 |
|---|---|
| 原処分 | 障害厚生年金3級 |
| 争点 | 障害認定日時点ですでに2級相当だったか |
| 日常生活能力の程度 | (3)。医師の補足では(3)とも(4)とも取れる状態 |
| 生活状況 | 日中は臥床がちで、家族から多くの援助を受けていた |
| 就労 | 就労支援で短時間の作業を試したものの、体調を崩し継続できなかった |
| 結論 | 原処分を取り消し、障害認定日時点から2級 |
これは、 「3級になった後に悪化したので2級へ額改定された事例」 ではありません。
「最初の決定時点ですでに2級相当だった」 として、当初の3級処分が争われた事例です。
つまり、 「2級だと思っていたのに3級だった」 という場合に、必ずしも額改定請求だけを考えるわけではないことが分かります。
9.精神障害の額改定では何を見る?
精神障害の額改定請求でも、 単に「症状が悪くなった」と伝えれば2級になるわけではありません。
精神の障害用診断書などから、たとえば次のような事項が確認されます。
- 診断名や現在の症状
- 発病から現在までの病歴・治療経過
- 入院・外来などの治療状況
- 日常生活能力の判定
- 日常生活能力の程度
- 家族等から受けている援助
- 居住状況・単身生活の実態
- 就労の有無
- 仕事内容や勤務時間
- 職場で受けている配慮・援助
- 欠勤・遅刻・早退などの状況
日常生活能力は7項目
精神の障害用診断書では、日常生活能力について主に次の7項目が評価されます。
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応
- 社会性
さらに、「日常生活能力の程度」について全体的な評価が行われます。
「日常生活能力の判定」の平均値と 「日常生活能力の程度」を組み合わせた等級の目安はありますが、 最終的には診断書等の情報をもとに総合的に判断されます。
そのため、
- 平均が○以上なら必ず2級
- 「日常生活能力の程度」が(4)なら必ず2級
- 働いていたら2級にならない
- 一人暮らしなら2級にならない
日常生活能力については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→ 障害年金の「日常生活能力」はどう審査される?診断書の判定・程度・追加照会まで解説
10.額改定で2級になったら、いつから増額される?
額改定請求によって上位等級に認められた場合、 原則として 額改定請求をした月の翌月分から 年金額が増額されます。
たとえば、2026年10月に額改定請求をして2級と認められた場合、 原則として2026年11月分から改定されます。
症状が悪化した日や、診断書の現症日に自動的に遡るわけではありません。
額改定請求
→ 原則として請求月の翌月分から増額
当初の3級処分に対する審査請求等が認められ、 「最初から2級だった」と判断された場合
→ 当初の受給権発生時点まで効果が及ぶことがあります。
11.額改定請求の診断書にも注意
額改定請求では、原則として 請求書提出日前3か月以内の現症日 が記載された診断書が必要です。
ここで注意したいのは、 「診断書を受け取ってから3か月」ではなく、 診断書に記載された現症日を確認することです。
また、1年を待たず請求できる例外に該当したとしても、 そのことと上位等級に認められるかどうかは別問題です。
例外状態に該当して額改定請求が受け付けられ、障害の程度について実体的な診査が行われたものの、 上位等級に該当しないとして非改定となった場合には、 その診査日を基準として、次の額改定請求までの1年制限が問題となる可能性があります。
そのため、 「早く出せるから、とりあえず出しておこう」 と考えるのではなく、 現在の障害状態や診断書、生活実態を整理して検討することが重要です。
12.まとめ|まず「最初から2級」か「後から悪化」かを分ける
障害厚生年金について、 「2級だと思っていたのに3級だった」 という場合、すぐに額改定請求をすればよいとは限りません。
- 当初の決定時点ですでに2級相当だった
→ 3級処分に対する審査請求を検討 - 3級決定後に障害状態が悪化した
→ 額改定請求を検討 - 額改定請求
→ 原則として受給権が発生した日またはその後の診査日から1年経過後 - 1年前でも請求できる例外
→ 省令所定の状態に限定 - 精神障害
→ 精神障害そのものを直接対象とした1年前の例外はない - 例外に該当
→ 自動的に2級・1級になるわけではない - 精神障害の等級
→ 日常生活能力の数字だけではなく、治療経過、援助、就労、生活実態などを総合的に確認
特に精神障害の場合、 症状は同じ診断名でも生活への影響が大きく異なることがあります。
「3級だった」という結果だけを見て次の手続を決めるのではなく、 当初の決定時点の状態と、その後の変化を時系列で分けて整理すること が重要です。
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決定通知、診断書、これまでの経過などを確認しながら、 どの時点の障害状態が問題になるのかを整理していきます。
LINEで相談する※個別の等級認定や審査結果を保証するものではありません。具体的な手続は、決定内容、診査日、診断書、生活状況等によって異なります。
参考にした主な公的資料
- 国民年金法 第34条
- 厚生年金保険法 第52条
- 国民年金法施行規則
- 厚生年金保険法施行規則
- 社会保険審査官及び社会保険審査会法 第4条
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
- 日本年金機構「障害の程度が変わったとき」
- 日本年金機構「障害年金の額改定請求のご案内」
- 日本年金機構「障害年金ガイド」
- 厚生労働省 社会保険審査会 公開裁決
※本記事は2026年9月時点で確認した法令・公的資料をもとに作成しています。制度改正等により取扱いが変更される場合があります。
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