障害基礎年金は住む県で結果が違った?|大分24.4%・栃木4.0%の厚労省調査

障害基礎年金の地域差|大分県24.4%・全国平均12.5%・栃木県4.0%を示した厚労省調査

「障害年金は、住んでいる県によって認定されやすさが違った」

そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

実は、これは単なる噂ではありません。

大分県 24.4%
栃木県 4.0%

厚生労働省が公表した調査では、 障害基礎年金の新規請求について、 都道府県ごとの不支給割合に20.4ポイントもの差が確認されました。

ただし、ここには非常に重要な注意点があります。

2010~2012年度、障害基礎年金の審査業務が全国1か所に集約される前の 歴史的な調査結果です。

なお、当時も市区町村が障害等級を審査・認定していたわけではありません。 障害基礎年金のみの請求は市区町村が受付窓口となる場合がありましたが、 書類の審査・決定は日本年金機構の都道府県ごとの事務センター等で行われていました。

この記事では、厚生労働省の調査資料や審議会資料をもとに、 なぜこれほどの地域差が生じたのか、 その後どのような制度改正が行われたのか、 そして現在の障害年金申請では何が重要なのかを整理します。

先に結論

  • 2010~2012年度の障害基礎年金の不支給割合は、全国平均12.5%
  • 最も高かった大分県は24.4%
  • 最も低かった栃木県は4.0%
  • 最高と最低では20.4ポイント差があった
  • 特に精神障害・知的障害の認定で地域による傾向の違いが確認された
  • この問題を受け、2016年に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が実施された
  • その後、認定業務も全国1か所の体制へ一元化された
  • ガイドライン施行後、地域差を示す標準偏差は10.9から3.5へ縮小した
  • したがって、24.4%・4.0%を「現在の県別不支給率」として使うことはできない

動画で解説|障害基礎年金はなぜ県によって差があった?

大分24.4%・栃木4.0%という地域差がなぜ生じたのか、その後のガイドライン策定・認定業務の一元化まで解説しています。

大分24.4%・栃木4.0%は本当だった?

結論からいうと、 厚生労働省の資料で確認できる数字です。

日本年金機構は2014年9月から12月にかけて、 障害基礎年金の認定事務について地域差の実態を調査しました。

その結果、2010年度から2012年度までの3年度について、 都道府県ごとの事務センター等で取り扱われた障害基礎年金の新規請求を見ると、 不支給割合には大きな差がありました。

最も高い

大分県

24.4%

全国平均

全国

12.5%

最も低い

栃木県

4.0%

厚生労働省の原表では、3年間の計として、 99,021件に対して不支給が12,339件、 全国平均は12.5%とされています。

重要:
「大分24.4%、栃木4.0%」は現在の数字ではありません。 2010~2012年度の3年度集計です。

24.4%と4.0%は何を表す数字?

この数字を正しく理解するには、 「何を分母にした数字なのか」を確認する必要があります。

大分24.4%、栃木4.0%という数字は、 社会保険審査官や社会保険審査会における 審査請求・再審査請求の結果ではありません。

当時、都道府県ごとの事務センター等で行われていた 障害基礎年金の新規裁定における不支給決定の割合です。

つまり、問題となったのは市区町村ごとの差ではなく、 日本年金機構の都道府県ごとの事務センター等における認定傾向の差でした。

数字 正確な意味 注意点
24.4%・4.0% 2010~2012年度の障害基礎年金新規裁定における都道府県別不支給割合 現在の県別不支給率ではない
12.5% 同じ3年度集計の全国平均 精神障害だけの数字ではない
約1万2,000件 2010年度・2012年度を対象とした詳細なサンプル分析 3年度の全決定件数ではない

「不支給割合」と「等級非該当割合」も同じではない

もう一つ注意したいのが、 不支給割合と等級非該当割合を混同しないことです。

地域差調査では、都道府県全体の不支給割合とは別に、 傷病別に「障害の程度が等級に該当しない」と判断された割合なども分析されています。

そのため、別の資料に掲載された精神・知的障害の等級非該当割合を、 そのまま「その県の障害基礎年金の不支給率」として紹介するのは正確ではありません。

地域差が目立った精神・知的障害

地域差を詳しく調べる中で、 特に重要な問題として浮かび上がったのが 精神障害・知的障害の認定でした。

厚生労働省は、 都道府県全体の不支給割合と、 精神障害・知的障害について障害の程度が2級に達せず 不支給となる割合が、 地域的に概ね同じ傾向を示していたとしています。

障害区分 調査から見えたこと
精神障害・知的障害 都道府県全体の不支給割合との関係が比較的明瞭
肢体障害 県全体の不支給割合と必ずしも同じ傾向ではなかった
内部障害など 事例数等の問題もあり、明確な傾向を判断しにくい部分があった

「日常生活能力の程度」で何が起きていた?

精神障害・知的障害の地域差を考えるうえで、 特に重要だったのが診断書の 「日常生活能力の程度」です。

調査では、不支給割合の低い地域と高い地域で、 日常生活能力の評価をどのように等級判定につなげていたかに 違いが確認されました。

不支給割合が低い地域

「日常生活能力の程度(2)」付近から 2級として認定される傾向がみられました。

不支給割合が高い地域

概ね「日常生活能力の程度(3)」以上が 2級認定の一つの目安となる傾向がみられました。

これは「程度(3)なら必ず支給」「程度(2)なら不支給」という意味ではありません。
問題になったのは、同じ診断書上の評価を等級判定へ結び付ける傾向が地域によって異なっていたことです。

精神障害では、血液検査や画像検査のような一つの数値だけで 障害等級を決めることはできません。

症状、治療状況、日常生活上の制限、 家族等から受けている援助、就労状況などを踏まえて 総合的に判断する必要があります。

その評価の幅が、当時の分散した認定体制の中で 地域ごとの認定傾向の違いとして現れたことが、 地域差問題を考える重要なポイントです。

1分で解説|障害年金の地域差はなぜ生じた?

なぜ地域差が生じたのか

ここで注意したいのは、 「認定医のさじ加減だけが原因だった」 と単純化しないことです。

調査から確認されたのは、 認定結果や診断書の評価に地域による傾向の違いがあったということです。

当時、障害基礎年金のみの請求は市区町村が受付窓口となる場合がありました。 しかし、市区町村が障害等級を審査・認定していたわけではありません。

書類の審査・決定は、日本年金機構の都道府県ごとの事務センター等で行われ、 障害認定医が障害認定基準に基づき、障害等級について専門的な判断を行っていました。

つまり、当時問題となった「地域差」は、 市区町村ごとの判断の差ではなく、 日本年金機構の都道府県ごとの事務センター等における認定傾向の差です。

また、精神障害・知的障害では、 日常生活能力などを総合的に評価する必要があるため、 全国共通のより具体的な判断の目安を整備する必要性が浮かび上がりました。

地域差があったことと、 特定の認定医個人が原因だったことは同じではありません。
調査結果から、特定の医師個人を地域差の原因と断定することはできません。

地域差から「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」へ

地域差の問題を受け、 厚生労働省は2015年に 「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」を設置しました。

その検討を経て、 2016年に 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」 が策定され、同年9月から実施されました。

時期 出来事
2014年9~12月 日本年金機構が地域差の実態を調査
2015年1月 障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果を公表
2015年2月~ 専門家検討会で全国共通の判断の目安を検討
2016年9月 精神の障害に係る等級判定ガイドラインを実施
2016年10月~ 障害年金センターへの認定業務集約を段階的に開始
2017年4月 障害年金の認定業務を全国1か所の体制へ一元化

ガイドラインは「自動判定表」ではない

ガイドラインでは、 診断書の 「日常生活能力の程度」「日常生活能力の判定」の平均 を組み合わせて、障害等級の目安を示しています。

しかし、目安だけで機械的に等級が決まるわけではありません。

現在の病状・状態像、療養状況、生活環境、就労状況なども考慮し、 診断書等の記載内容全体から 個別の事案に即して総合的に評価する 仕組みです。

ガイドライン後、地域差はどこまで縮小した?

厚生労働省は、 ガイドライン施行後の認定状況についても検証しています。

2017年度から2019年度までの新規裁定を見ると、 92%のケースで、ガイドラインの「障害等級の目安」と実際に認定された等級が一致 していました。

精神・知的障害に係る障害基礎年金
都道府県別支給決定割合のばらつき

標準偏差 10.9 → 3.5

ガイドライン施行前と施行後3年間の比較で、地域差が縮小

これは、精神・知的障害に係る障害基礎年金の 都道府県別支給決定割合のばらつきが縮小したことを示す数字です。

標準偏差は、 各都道府県の数字が平均からどの程度ばらついているかを見る指標です。

数字が小さくなったということは、 都道府県間の認定結果のばらつきが縮小した ことを意味します。

「92%」は支給率ではありません。
ガイドラインが示す障害等級の目安と、 実際に認定された障害等級が一致した割合です。

24.4%が何%になった、という比較ではない

ここにも数字の注意点があります。

大分24.4%・栃木4.0%は、 2010~2012年度の障害基礎年金全体の不支給割合です。

一方、標準偏差10.9から3.5という検証は、 精神障害・知的障害に係る障害基礎年金の支給決定割合 を比較したものです。

指標も対象も同一ではないため、 「大分24.4%がガイドライン後に○%になった」 という直接比較はできません。

現在も住む県によって結果が違う?

ここが、現在障害年金を申請する方にとって最も重要なところです。

障害基礎年金のみの請求は、現在も住所地の市区町村役場で受け付けてもらえる場合があります。 ただし、市区町村が診断書を審査したり、障害等級や支給・不支給を決定したりするわけではありません。

障害状態の認定や支給決定に関する事務は日本年金機構が行います。 現在は、障害年金の審査業務が障害年金センターに集約され、 2017年4月から全国1か所の体制へ一元化されています。

つまり、現在は次のように理解するのが正確です。

  • 市区町村:障害基礎年金のみの請求における受付窓口となる場合がある
  • 日本年金機構:書類の審査、障害状態の認定、支給決定に関する事務を行う
  • 障害年金センター:現在の障害年金審査業務が集約されている拠点

したがって、

「今も大分県では24.4%が不支給になる」
「栃木県に住んでいれば認定されやすい」

といった説明はできません。

大分24.4%、栃木4.0%という数字は、 全国共通のガイドラインや認定業務の集約化が必要になった背景を示す歴史的な資料 として理解するのが適切です。

現在の障害年金申請で確認したいこと

現在の認定実務では、かつてのような都道府県別の認定体制ではなく、 診断書や申立書などに実際の障害状態や生活実態が適切に表れているかを確認することが重要です。

  • 初診日がいつなのか
  • 診断書の対象期間と請求方法が整合しているか
  • 「日常生活能力の判定」が実際の生活状況を反映しているか
  • 「日常生活能力の程度」と個々の7項目に大きな不整合がないか
  • 一人で生活するとした場合の能力として評価されているか
  • 家族や支援者から受けている援助が診断書等に反映されているか
  • 就労している場合、仕事内容や職場での配慮・援助が具体的に分かるか
  • 病歴・就労状況等申立書と診断書に大きな矛盾がないか
  • ガイドラインの「目安」だけで等級を断定していないか

関連記事|現在の日常生活能力の審査を詳しく解説

現在の精神障害の障害年金では、 「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」が重要な判断材料になります。 等級の目安、家族の援助、一人暮らし、就労、追加照会まで詳しく解説しています。

→ 障害年金の「日常生活能力」はどう審査される?

まとめ|「大分24.4%・栃木4.0%」は現在の県別不支給率ではない

  • 2010~2012年度の障害基礎年金の不支給割合は、全国平均12.5%でした。
  • 最も高かった大分県は24.4%、最も低かった栃木県は4.0%でした。
  • 最高と最低では20.4ポイントの差がありました。
  • 特に精神障害・知的障害の認定で地域による傾向の違いが確認されました。
  • この地域差を背景として、精神の障害に係る等級判定ガイドラインが策定されました。
  • ガイドラインは自動判定表ではなく、総合評価のための全国共通の目安です。
  • ガイドライン施行後3年間では、92%のケースで目安と実際の認定等級が一致しました。
  • 地域差を示す標準偏差は10.9から3.5へ縮小しました。
  • 認定業務はその後全国1か所の体制へ一元化されています。
  • したがって、24.4%・4.0%を現在の県別不支給率として使うことはできません。

「住む県によって障害年金の結果が違う」 という問題は、実際に厚生労働省が調査し、 制度の見直しにつながった重要な出来事でした。

ただし、その数字だけを現在に当てはめると、 制度を誤って理解することになります。

現在の申請で特に確認したいのは、 診断書や申立書に、実際の日常生活上の制限や援助の状況が適切に表れているか という点です。

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主な出典


※本記事は、厚生労働省・日本年金機構等が公表している資料をもとに、 障害基礎年金の認定にかつて確認された地域差と、その後の制度改正について解説したものです。 個別の障害年金の支給・不支給や障害等級を保証するものではありません。

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