20歳前の初診日、最初の病院の証明は不要?18歳6か月前の受診特例を社労士が解説
障害年金|20歳前初診・初診日証明

執筆:こもれび社労士事務所|社会保険労務士 近藤 明久
「子どもの頃に受診した病院のカルテが、もう残っていない」「17歳で通った別の病院なら証明書を取れるが、最初の病院の証明も必要なのだろうか」。20歳前に病気やけがで初めて受診した方の障害年金請求では、こうした問題が生じることがあります。
実は、20歳前に初診日がある障害基礎年金には、一定の条件を満たす場合、最初の医療機関の受診状況等証明書を追加提出せずに初診日を確認する取扱いがあります。重要な目安の一つが「18歳6か月前」です。
なお、「17歳」そのものが制度上の固定的な基準年齢というわけではありません。 ここで重要なのは、2番目以降の医療機関の受診日が18歳6か月前にあるかどうかです。
ただし、17歳の受診証明があれば必ず障害年金を受け取れる、という制度ではありません。 初診日証明の簡素化と、障害状態・等級・支給開始時期の審査は別です。この記事では、制度の条件と注意点を整理します。
1.20歳前初診の証明が簡素化される制度とは
障害年金の請求では、原則として、請求する傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日)を確認します。通常は最初の医療機関で「受診状況等証明書」を取得しますが、古い受診ではカルテの保存期間が過ぎていることもあります。
こうした場合に備え、初診日を明らかにする書類が取得できないときの取扱いが整備されてきました。さらに、2019年2月の通知改正により、20歳前初診の障害基礎年金について、2番目以降の医療機関の受診日を利用する簡素化が設けられています。
これは、一定の条件のもとで初診時の医療機関の受診状況等証明書を追加提出せず、本人が申し立てた初診日を確認する手続上の取扱いです。病気の同一性、障害認定日、障害状態などの審査が省略されるわけではありません。
2.10歳で初診、17歳で別の病院を受診した場合
日本年金機構の公表資料には、10歳でA病院を初診、17歳でB病院を受診した例が示されています。これは公的資料の一般的な説明例であり、当事務所の相談者の事例ではありません。
初めて受診。現在はカルテがなく、証明書を取得できない。
同じ傷病について受診。受診日を証明できる。
このような場合、B病院の受診日前に厚生年金等の加入期間がないことなど、一定の条件を満たすときは、A病院の受診状況等証明書を追加提出せずに、本人が申し立てた初診日を確認する取扱いがあります。
「17歳の病院が本当の初診日になる」という意味ではありません。 最初の受診に関する本人の申立てと、B病院の客観的な受診記録などを踏まえ、20歳前初診として取り扱えるかを確認する仕組みです。
3.18歳6か月前の受診特例で確認する条件
① 2番目以降の医療機関の受診日が18歳6か月前にあること
原則的な障害認定日は初診日から1年6か月を経過した日です。2番目以降の医療機関の受診日が18歳6か月前にあれば、その受診日を基準に考えても、障害認定日が20歳到達日以前となることを確認できます。
② その受診日前に厚生年金等の加入期間がないこと
この条件は重要です。単にB病院を受診した当日に厚生年金へ加入していなかっただけでは足りません。B病院の受診日より前に厚生年金等の加入期間がないかを確認します。
ここでいう「厚生年金等」には、厚生年金保険の被保険者期間などが含まれます。20歳前であっても、初診日が厚生年金保険の被保険者期間中などにある場合は、障害厚生年金の対象となり得ます。20歳前初診だからといって、常に「20歳前傷病による障害基礎年金」の取扱いになるわけではありません。
③ 同じ傷病についての受診であること
転院先での受診が、請求する障害の原因となった傷病に関するものかも重要です。別の病気で受診した記録があるだけでは、当然に初診日証明を簡素化できません。診療録や申立書などの整合性も確認されます。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 17歳で2番目の病院を受診 | 条件を満たせば簡素化の対象となり得る |
| 18歳5か月で受診 | 条件を満たせば対象となり得る |
| 18歳8か月で受診 | 20歳前の症状固定など、別の条件の確認が必要 |
| 17歳の受診前に厚生年金加入期間あり | この簡素化の条件を満たさない可能性が高く、通常の初診日確認方法等を検討 |
※18歳6か月ちょうどの境界日や個別の日付計算は、年金事務所等への確認が必要です。
【動画解説】20歳前の初診日証明と18歳6か月前の受診特例
子どもの頃のカルテが残っていない場合、障害年金の初診日をどのように確認するのでしょうか。18歳6か月前の受診特例と、その適用条件を動画で詳しく解説しています。
4.18歳6か月以降の受診でも対象になる場合は?
2番目以降の医療機関の受診が18歳6か月以降でも、20歳到達日以前に傷病が治った、または症状が固定したことを確認できる場合には、簡素化の対象となり得ます。
ただし、ここでいう症状固定は、通院をやめた日や、本人が「もう改善しない」と感じた日と同じではありません。医学的な経過や資料に基づく判断が必要です。
症状固定日を本人の判断だけで決めることはできず、診療録や診断書などから、治療による改善が見込めない状態に至ったことを確認できるかが問題になります。
なお、年金制度上の「20歳に達した日」は、通常の言い方でいう20歳の誕生日の前日です。日付の境界に関わるケースでは特に注意が必要です。
5.最初の病院のカルテがない場合、何を確認する?
18歳6か月前の簡素化を使えない場合でも、初診病院のカルテがないことだけで請求を諦める必要はありません。 初診日を確認するため、ほかの客観資料や第三者証明などを検討します。
以下は、初診日を確認するために検討され得る資料の例です。どの資料をどの程度評価するかは、作成時期、記載内容、他資料との整合性などを踏まえて個別に判断されます。
- 転院先の診療録に記載された過去の受診歴
- 紹介状・診療情報提供書
- 当時の診断書、障害者手帳申請時の医療資料
- 診察券、入院記録、医療機関・薬局の領収書
- レセプトなど健康保険の給付記録
- お薬手帳などの記録
- 要件に合う第三者証明
紹介状があれば初診日を証明できる?
紹介状は、当時の医療機関、受診時期、傷病名、治療経過などを確認する参考資料となる可能性があります。しかし、紹介状が1通あれば必ず初診日が認められるとはいえません。 作成時期、記載の根拠、他資料との整合性などが重要です。
第三者証明を使う場合の注意点
20歳前初診の障害基礎年金では、第三者証明によって当時の受診状況を確認できる場合があります。原則として複数の第三者による証明が想定され、三親等以内の親族は第三者証明を行う者として認められません。当時の受診状況を直接把握していた医療従事者については、1名の証明でも医証と同等に扱われる場合があります。
本人から最近聞いた話をそのまま書いてもらうのではなく、証明する方が当時どのような事実を見聞きしていたのかを具体的に整理することが大切です。
【60秒で解説】昔のカルテがない!障害年金の初診日は証明できる?
最初の病院が閉院していたり、カルテが残っていなかったりする場合でも、初診日を確認できる方法があります。ポイントをショート動画で紹介します。
6.病歴・就労状況等申立書も簡素化できる?
20歳前初診の簡素化により、2番目以降の医療機関の証明を使う場合、発病からその証明書を発行する医療機関の受診日までの経過を、申立書の1つの欄にまとめて記載できる取扱いがあります。
ただし、その受診日より後の期間まで一括してよいわけではありません。受診した医療機関や受診していない期間などに応じ、通常の記載方法で経過を整理します。実際の提出書類は最新の記載要領を確認してください。
7.初診日証明ができても、障害年金が認められるとは限らない
最も重要な点は、初診日の確認と、障害等級に該当するかどうかの判断は別だということです。
障害認定日請求
20歳前初診の障害基礎年金では、初診日から1年6か月を経過した日などの障害認定日が20歳到達日以前であれば、原則として20歳到達日時点の障害状態を確認します。その時点で障害等級1級または2級に該当していたことを、診断書等で示す必要があります。
20歳前に初診日および障害認定日がある場合は、原則として20歳到達日前後3か月以内の障害状態(現症)が記載された診断書により、20歳到達日時点の障害状態を確認します。診断書の作成日と、診断書に記載される現症日は異なるため、請求時には対象となる現症日を確認することが大切です。
障害認定日請求が認められれば過去にさかのぼって支給対象となる場合がありますが、過去の年金には原則5年の時効があります。20歳前に初診日があるからといって、必ず20歳から現在までの全期間分が支給されるわけではありません。
事後重症請求
障害認定日には等級に該当せず、その後に障害状態が重くなった場合などには、事後重症請求を検討します。事後重症請求では、原則として請求日の翌月分から支給対象となり、20歳当時までさかのぼることはできません。
また、20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、所得による支給制限など、通常の障害年金とは異なる点もあります。具体的な請求方法や必要な診断書の時期は、個別の事情に応じて確認が必要です。
8.よくある質問
Q.17歳の病院の証明書があれば、最初の病院の証明は必ず不要ですか?
A.必ずではありません。請求傷病との関係、受診日前の厚生年金等の加入期間など、所定の条件を確認します。
Q.転院先の証明書に、もっと古い初診日の記載がありません。
A.それだけで簡素化が使えなくなるとは限りません。ただし、同一傷病の受診経過や本人の申立てと資料の整合性などは確認されます。
Q.18歳6か月ちょうどの受診は対象ですか?
A.公的資料は「18歳6か月前」と「18歳6か月以降」を区別しています。境界日の扱いや症状固定の要件は、年金事務所等に確認するのが安全です。
Q.昔の紹介状しか残っていません。請求できますか?
A.紹介状が参考資料となる可能性はあります。作成時期、記載内容、他資料との整合性を確認し、必要に応じて別の資料も検討します。
Q.20歳当時の診断書がありません。遡及請求は無理ですか?
A.障害認定日頃の障害状態を示す資料が必要になるため、難しくなる場合があります。ただし、直ちに不可能と決めつけず、当時の医療記録や請求傷病の性質を確認します。
Q.20歳前の初診なら、必ず障害基礎年金ですか?
A.いいえ。初診日が厚生年金の被保険者期間中であれば、障害厚生年金の対象となる場合があります。
Q.最初の病院が廃院していても請求できますか?
A.廃院だけで請求が不可能になるわけではありません。転院先の記録、当時の医療資料、第三者証明など、利用できる方法を検討します。
Q.17歳の病院の受診状況等証明書に、最初の病院の名前が書かれていません。
A.それだけで直ちに取扱いの対象外になるとは限りません。2番目以降の医療機関の受診日、請求する傷病との関係、病歴・就労状況等申立書などを踏まえ、受診経過に不自然な点がないか確認します。
Q.18歳6か月前に受診していれば、20歳当時の診断書は不要ですか?
A.いいえ。18歳6か月前の受診証明は、主として初診日確認の取扱いに関わるものです。20歳到達日時点で障害等級に該当していたかを判断するには、原則として20歳到達日前後3か月以内の障害状態(現症)が記載された診断書が必要です。初診日証明の簡素化によって、障害状態の審査まで省略されるわけではありません。
Q.初診日証明を簡素化できれば、20歳からの年金をすべて受け取れますか?
A.いいえ。初診日の確認とは別に、20歳到達日時点などの障害状態を示す必要があります。また、過去分の年金には原則として5年の時効があります。
9.初診日の証明に不安がある方へ
「最初の病院のカルテがない」「転院先の証明書だけでよいか分からない」「20歳前の受診歴が古く、どう整理すればよいか分からない」といった場合は、まずいつ、どの医療機関で、どの傷病について受診したかを整理することが大切です。
こもれび社労士事務所では、障害年金の初診日証明、病歴・就労状況等申立書、障害認定日請求などに関するご相談をお受けしています。ご事情を伺い、対応可能なサポート内容や費用をご案内します。
※資料分析・書類作成などは有料となる場合があります。契約前に業務範囲と費用をご案内します。認定・支給結果を保証するものではありません。
参考資料・公的な確認先
本記事は、日本年金機構・厚生労働省が公表する 障害年金の初診日証明に関する資料や通知をもとに、 制度の基本的な考え方を整理しています。
- 厚生労働省 「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を 添えることができない場合の取扱いについて」 (平成27年9月28日付・年管管発0928第6号)
- 厚生労働省 「初診日証明の取扱いに関する改正通知」 (平成31年2月1日付・年管管発0201第7号・第8号)
- 日本年金機構 「障害年金の初診日証明書類のご案内」
- 日本年金機構 「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」
- 日本年金機構 公式サイト
- 厚生労働省 公式サイト
- e-Gov法令検索 (国民年金法・国民年金法施行規則)
※制度の適用条件や必要書類は、 請求時点の法令・通知・日本年金機構の案内に基づき、 個別に確認する必要があります。
まとめ|最初の病院の証明が取れなくても、確認できる方法があります
20歳前初診の障害基礎年金には、18歳6か月前の2番目以降の医療機関の受診証明などを利用し、最初の医療機関の受診状況等証明書を追加提出せずに初診日を確認できる取扱いがあります。ただし、厚生年金等の加入歴、同一傷病の受診経過、障害認定日などの条件を確認する必要があります。
「カルテがない=障害年金は請求できない」でも、「17歳の証明がある=必ず受給できる」でもありません。 初診日を示す資料と、障害状態を示す資料を分けて、丁寧に整理することが大切です。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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