労災の再審査請求書を出したらどうなる?公開審理・意見書・裁決までの流れ

労災の再審査請求について、公開審理・意見書・裁決までの流れを示した水彩風イメージイラスト

「労災の審査請求が棄却された。再審査請求をすると、今度はどこで何を調べるの?」「審査官の意見書は送られてくる?」「審査会が指定する公開審理の場所へ出席しないといけない?」――再審査請求には、最初の審査請求とは異なる手続があります。

労災保険の再審査請求を扱うのは、厚生労働省の労働保険審査会です。審査会は、審査官の決定や原処分の資料、当事者の主張を検討し、必要に応じた調査や原則公開の審理を経て裁決します。ただし、本人の指定場所への出席が常に必要なわけではなく、会社や主治医への再調査も一律には行われません。

先に結論
  • 再審査請求は、原則として審査官の決定書謄本が送付された日の翌日から2か月以内に行います。
  • 審査会へ提出する意見書として法令に規定されているのは原処分庁の意見書です。「審査官の意見書」が当然に届く仕組みとは区別します。
  • 本案の審理は原則公開ですが、通常の審理期日に本人が必ず出席しなければならないわけではありません。
  • 審査官の決定後は、再審査請求と原処分取消訴訟の関係、特に出訴期間に注意が必要です。
最初の審査請求について知りたい方へ

この記事では、審査官の決定後に行う 「再審査請求」を解説しています。 最初の審査請求書を提出した後の流れ、 原処分庁意見書、会社や主治医への追加調査については、 次の記事で詳しく説明しています。

労災の審査請求書を出したらどうなる? 原処分庁意見書・医師照会・結果までの期間

動画で解説|労災の再審査請求書を出したらどうなる?

再審査請求書を提出した後の手続について、 公開審理・意見書・追加調査・裁決までの流れを 社会保険労務士が動画で解説しています。

再審査請求書を出した後の流れ

最初の審査請求は労働局の労働者災害補償保険審査官が判断します。一方、再審査請求は合議制の労働保険審査会が審理します。基本的な流れは次のとおりです。

  1. 再審査請求書の提出・形式審査
    期限、対象処分、請求の趣旨などを確認し、不備があれば補正を求められることがあります。
  2. 関係者への通知と資料の収集
    原処分庁の意見書、審査官の決定書、調査資料、請求人の主張・証拠などを検討します。
  3. 必要に応じた追加調査
    参考人への審問、文書の提出、医学的鑑定などが検討されることがあります。
  4. 審理期日の指定・原則公開の審理
    当事者・代理人等が意見を述べる機会があります。一定の場合には非公開となります。
  5. 非公開の合議
    審査会の合議体が資料と審理内容を検討します。
  6. 裁決書の送達
    原処分の取消し、棄却、却下などの結論が文書で示されます。

※これは一般的な本案審理の概略です。不適法な請求が審理前に却下される場合や、個別の進行が異なる場合があります。

再審査請求書はどこに出す?地方在住でも指定場所へ行く?

再審査請求書は、労働保険審査会へ直接郵送する方法があります。調査資料で確認された送付先は次のとおりです。提出前には公式ページで最新の所在地と提出方法を再確認してください。

労働保険審査会(送付先)
〒105-0011
東京都港区芝公園1-5-32
労働委員会会館8階

また、請求人の住所・居所を管轄する労基署長、原処分をした労基署長、審査請求の決定をした審査官などを経由して提出できる仕組みがあります。期限が近い場合は、提出先・到達日を確認できる方法を選びましょう。

再審査請求は、審査官の決定書謄本が送付された日の翌日から原則2か月以内です。請求書の「趣旨」では、単に審査官決定を取り消してほしいと書くのではなく、労基署長が行った原処分の取消しを求めることを明確にします。

地方在住でも、本人が必ず指定場所へ出席するわけではない

審査会が審理期日と場所を指定して通知します。通常の審理期日では、本人・代理人は出席して意見を述べることができますが、期日の通知を受けただけで本人に一律の出席義務が生じるわけではありません。書面で主張・証拠を提出し、代理人が出席する方法も考えられます。

オンライン出席について:
公開審理に一般的なオンライン出席を認める現行の公式案内は、今回の調査では確認できませんでした。遠方での出席が難しい場合は、オンライン・電話での参加を当然の権利と考えず、審査会に個別確認してください。

「審査官の意見書」は届く?原処分庁意見書との違い

ここは混同しやすいポイントです。審査官が審査請求について作成する正式な判断文書は「決定書」です。再審査請求の開始に伴い、審査官自身が「意見書」を作成して本人に送る一般的な法定義務は、今回の調査では確認できませんでした。

書類誰が作る?本人への提供
審査官の決定書労災保険審査官謄本が送付される
原処分庁意見書原処分をした労基署長等再審査段階での自動送付義務は確認できず、閲覧等の申立てを検討
労働者代表・事業主代表の意見書制度上の代表者自動送付の明文規定は確認できず
審理調書審査会の事務を処理する職員当事者による閲覧制度がある
裁決書労働保険審査会謄本が送達される

労働保険審査官及び労働保険審査会法施行令25条は、再審査請求の通知を受けた原処分庁が遅滞なく意見書を提出することを定めています。これは審査官の決定書とは別の書類です。

意見書の内容を確認したいとき:審査会に対し、原処分庁意見書や別添資料について、閲覧・写し交付を求められる対象に含まれるか、対象外部分の有無、申立方法を確認しましょう。法令上、再審査請求の開始時に原処分庁意見書が請求人へ自動送付される規定は確認できません。「意見書が必ず自宅に届く」と想定して待つだけにはしないことが大切です。

公開審理は必ず行われる?本人が欠席したらどうなる?

労働保険審査官及び労働保険審査会法43条は、審理の原則公開を定めています。ただし、補正できない不適法な請求が審理前に却下される場合もあるため、「どんな請求でも必ず公開審理がある」とは言い切れません。また、当事者の申立てにより非公開とされる場合があります。

出席するのは誰?

  • 請求人・代理人:出席して意見を述べることができます。
  • 原処分庁:原処分をした労基署長等が相手方となり、審理では原処分庁側が意見を述べることがあります。
  • 労働者代表・事業主代表:法律に基づいて指名された制度上の代表者であり、当該会社の社長や従業員代表とは限りません。
  • 勤務先会社・同僚:当然に当事者として出席するわけではありません。利害関係者としての参加や参考人としての関与などが考えられます。

請求人・代理人は、審査長の許可を得て原処分庁へ質問することができます。ただし、会社や主治医などに自由に反対尋問できる制度ではありません。

公開審理を欠席したら棄却される?

通常の審理期日を欠席しただけで、自動的に取下げや棄却になるという規定は確認できません。ただし、書面での主張が十分か、期日までに提出すべき資料がないかを確認しましょう。

通常の期日通知と「審理のための処分」は別です。
審査会から審理のための処分として出頭等を求められた場合には、通常の任意の期日出席とは異なる法的効果が問題になります。正当な理由なく応じないことのないよう、通知の内容を確認してください。

60秒で解説|公開審理に出席しないと不利になる?

再審査請求の公開審理には、 本人が必ず出席する必要があるのでしょうか。 通常の審理期日と個別の出頭要求の違いを、 ショート動画で解説しています。

会社・同僚・主治医への追加調査はある?

審査会は必要な限度で、参考人の審問、報告徴収、文書提出命令、鑑定、立入検査、関係機関への調査嘱託などを行うことができます。ただし、再審査請求をすれば会社や医師に必ず再照会するわけではありません。

請求人側から「審理のための処分」を申し立てる場合は、単に「会社をもう一度調べてほしい」とするのではなく、誰に、どの資料・事実を、なぜ確認する必要があるかを整理することが重要です。

申立ての具体例:「審査官決定は○月○日の面談で威圧的な発言がなかったと判断しているが、録音と同席者の説明が食い違う。録音の該当箇所を示したうえで、同席者への確認を求める」といった形です。所定の「審理のための処分の申立書」(様式第5号)を確認してください。

病歴などを公開したくない場合は?

公開審理については、当事者から非公開を申し立てる仕組みがあります。「審理非公開申立書」(様式第12号)等を利用し、病歴、家族情報、被害内容など、公開による具体的な不利益を整理します。ただし、申立てれば必ず非公開になるわけではありません。

原処分庁意見書や調査資料を見て反論できる?

再審査請求の裁決前であれば、法律所定の範囲で審査会に提出された資料について、閲覧や写しの交付を求める制度があります。ただし、第三者の利益を害するおそれ等の正当な理由により、全部または一部が制限される場合があります。

確認したい資料の例は、再審査段階の原処分庁意見書、別添資料、審査官決定書、審査官段階から引き継がれた調査資料、追加の医学資料・鑑定書などです。すべての資料が当然に送付・交付されるわけではないため、対象と申立方法を審査会へ確認してください。

なお、審理期日の経過を記録した審理調書については、法律上、当事者の閲覧が定められています。ほかの提出資料と同じ範囲で写しの交付まで当然に認められるとは限りません。

反論書では「審査官決定のどこが違うか」を明確にする

再審査請求は、最初の審査請求書をそのまま書き直すだけでは争点がぼやけることがあります。審査官の決定書にある認定事実・採用証拠・判断基準の当てはめを分けて確認しましょう。

決定書の判断検討したい点考えられる資料
時間外労働が少ない対象期間や集計方法に漏れはないか勤怠、PCログ、メール
上司の指導は通常範囲言動の内容・頻度・継続性が反映されているか録音、面談記録、陳述書
発病は特定の月初診日と実際の症状出現時期を混同していないか診療録、症状経過の記録

反論の基本は、①決定書の該当箇所、②争う事実や評価、③根拠資料、④求める追加調査、⑤原処分を取り消すべき理由、の順に整理することです。再審査請求で求めるのは、原則として原処分の取消しである点も忘れないようにしましょう。

再審査請求の裁決まで何か月?最新の公表統計

「再審査請求は平均何か月で終わるのか」という疑問について、今回の調査で確認した最新の厚生労働省公表統計には、平均処理期間や中央値が掲載されていません。したがって、「通常6か月」「平均1年」などと一律には断定できません。

調査資料によると、2026年3月31日現在の令和7年度・労災保険事件の公表値は次のとおりです。

区分件数
請求件数607件
裁決件数562件
取下件数16件
年度末残件数376件
原処分取消し15件
棄却514件
却下33件

出典: 厚生労働省・労働保険審査会(統計資料掲載ページ) 「労働保険再審査関係統計表」 (令和7年度、2026年3月31日現在)。
※請求件数と裁決件数は同一の事件群を示すものではありません。 また、年度末残件376件は係属残件であり、 「長期未決376件」を意味するものではありません。

これらの件数だけでは、個々の事件の審理期間も、請求人の事案でどのような結論になるかも推測できません。資料収集や医学的判断、公開審理の調整などによって進行は異なります。

再審査請求と取消訴訟は並行できる?

労災保険給付の原処分取消訴訟には、原則として審査官の決定を経るという審査請求前置の仕組みがあります。一方、労働保険審査会の裁決まで待つことが、常に訴訟の条件となるわけではありません。審査官決定後は、再審査請求、原処分取消訴訟、両方の並行を検討できる場合があります。

また、最初の審査請求をした日から3か月を経過しても審査官の決定がない場合、棄却されたものとみなして再審査請求に進む仕組みがあります。一定の場合には審査官決定を待たず訴訟を提起できる例外もあります。

重要:取消訴訟の出訴期間に注意してください。
原処分取消訴訟には、行政事件訴訟法14条に基づく出訴期間があります。 原則として、処分があったことを知った日から6か月以内、 処分の日から1年以内ですが、適法な審査請求等を経た場合には、 裁決を知った日などを起算点とする特則があります。

労災保険の審査請求・再審査請求では、 どの決定・裁決を経ているかによって、 具体的な期限の確認が必要です。 再審査請求をしたから必ず期限が延びる、 あるいは常に審査官決定日から6か月で期限が切れる、 と一律には判断できません。

取消訴訟を検討している場合は、 審査官の決定書・審査会の裁決書に記載された教示と 現行法令を確認し、早めに行政訴訟を扱う弁護士へ相談してください。

裁決の結果は?取消し・棄却・却下の違い

結果意味
原処分の全部・一部取消し原処分の全部または一部が取り消される
棄却本案を審理した結果、原処分の取消しを認めない
却下期限や方式などの手続要件を満たさず、本案判断に進まない

裁決は裁決書によって行われ、その謄本が請求人に送達されます。裁決は、裁決書の謄本が送達された時に効力を生じます。原処分が取り消された場合、給付に関する後続の処理は原処分庁が裁決の趣旨に従って進めます。審査会から直ちに給付金が振り込まれるという意味ではありません。

よくある質問

Q.再審査請求書は東京へ郵送するのですか?

労働保険審査会へ直接郵送できます。所定の労基署長や審査官を経由する提出方法もあります。提出前に最新の宛先と期限を確認してください。

Q.審査官の意見書が本人に届くのですか?

審査官の正式な判断文書は決定書です。再審査請求段階で法令上提出が定められているのは原処分庁の意見書であり、審査官作成の「意見書」が当然に届く制度とは区別する必要があります。

Q.原処分庁意見書は自動的に送られてきますか?

再審査段階で請求人への自動送付を義務付ける明文規定は今回の調査では確認できませんでした。審査会に閲覧・写し交付の対象や申立方法を確認してください。

Q.新潟など地方在住でも、指定された公開審理の場所へ出席が必要ですか?

通常の審理期日について本人の出席が一律に必須というわけではありません。書面提出や代理人出席を検討できます。ただし、審理のための処分による出頭要求とは区別してください。

Q.オンラインで公開審理に参加できますか?

一般的なオンライン出席を保障する公式案内は今回の調査では確認できませんでした。個別に審査会へ確認してください。

Q.会社や主治医への再調査は必ずありますか?

いいえ。必要に応じて追加調査が行われる可能性はありますが、全事件で再調査が実施されるわけではありません。

Q.公開審理を非公開にできますか?

当事者は非公開を申し立てられますが、必ず認められるとは限りません。病歴等の具体的な事情を整理して申立方法を確認しましょう。

Q.再審査請求中に裁判を起こせますか?

審査官の決定を経ていれば、再審査請求と原処分取消訴訟を並行できる場合があります。出訴期間の起算点と例外を個別に確認してください。

まとめ|再審査請求で確認したいこと

  • 再審査請求は、労働保険審査会が扱う第2段階の不服申立てです。
  • 審査官決定書と、原処分庁が提出する意見書は別の書類です。
  • 本人の出席や追加調査は一律ではなく、書面・証拠・資料閲覧の準備が重要です。
  • 訴訟も検討する場合は、再審査請求とは別に出訴期間を確認します。

再審査請求では、審査官決定のどの事実認定、証拠評価、判断基準の適用が問題なのかを具体的に示すことが大切です。まずは決定書と根拠資料を照らし合わせ、争点を整理しましょう。

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※原処分の取消しや再審査請求の結果を保証するものではありません。取消訴訟の代理・出訴期間の個別判断は弁護士へご相談ください。

参考資料

※本記事は2026年10月9日を基準とした調査資料に基づく一般的な制度解説です。公表資料から確認できなかった運用や平均処理期間は断定していません。実際の提出方法、審理日程、閲覧対象、法改正、各種期限は公式案内・現行法令・通知書等でご確認ください。

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