通院先が突然閉院したら傷病手当金はどうなる?転院・空白期間の対応

傷病手当金の受給中に通院先が閉院し、新しい病院へ転院する様子を描いた水彩画

「通院していた病院が突然閉院してしまった。傷病手当金はどうなるの?」

傷病手当金を受給している途中で、通院先の閉院・長期休診などにより、 医師に申請書を書いてもらえなくなることがあります。

特に注意したいのが、前の医療機関の最終受診日と、 転院先の初診日との間に「空白期間」が生じるケースです。

ただし、受診や医師証明に空白が生じたからといって、 その事実だけで傷病手当金が当然に終了するとは限りません。 大切なのは、その期間も療養のため労務不能な状態が続いていたのか、 そして、それをどのような資料で確認してもらえるのかです。

病院が突然閉院したら、傷病手当金はどうなる?

傷病手当金の支給要件の一つは、 健康保険法第99条にいう 「療養のため労務に服することができないこと」です。

申請にあたっては、原則として医師または歯科医師による 労務不能期間などについての意見が必要になります。 厚生労働省も、労務不能かどうかは療養担当者の意見等と、 被保険者の仕事内容などを踏まえて判断する考え方を示しています。

そのため、通院していた医療機関が突然閉院し、 医師に傷病手当金支給申請書を記載してもらえなくなると、 実務上は大きな問題になります。

ここで重要なのは、「医師の証明を取得できないこと」と 「実際に働ける状態だったこと」は同じではない、という点です。

医療機関の閉院によって証明資料が不足している場合は、 「労務不能ではなかった」と直ちに決まるわけではありません。

一方で、労務不能だったことを保険者が確認できる資料が不足すれば、 結果として支給が認められない可能性があります。

転院した場合、どの医師に書いてもらう?

転院した場合には、前の医療機関と新しい医療機関で、 それぞれ実際に診療した期間について医師の意見を受ける取扱いを 採用している健康保険組合があります。

たとえば、健康保険組合の公式案内の中には、 医療機関ごとに初診日以降の期間について証明を受ける方法や、 転院前後で申請書を分ける方法を案内しているものがあります。

一方で、1つの医療機関が通算した期間について証明できる場合には、 複数の申請書を必要としない取扱いを示している健康保険組合もあります。

注意:
「新しい医師は法律上、初診日前の期間を絶対に証明できない」 という全国一律の明文ルールが確認できるわけではありません。 反対に、「紹介状があれば必ず初診日前まで証明してもらえる」 ともいえません。

初診日前の状態について医学的な意見を示せるかどうかは、 前医の診療情報やその後の経過などを踏まえた 医師の専門的な判断になります。

前医と転院先の間に「空白期間」ができたら?

傷病手当金では、労務不能期間のすべての日に診察を受けていることが 支給要件になっているわけではありません。

たとえば1か月の労務不能期間について、 その30日間すべてに通院するわけではありません。

したがって、 「診察を受けていない日がある=その日は当然に不支給」 という単純な関係ではありません。

ただし、転院先の初診前で、前医からも傷病手当金申請書への証明を 受けられない期間については、 「その期間も労務不能だったことを何によって確認するのか」 という問題が生じます。

空白期間について確認しておきたい資料

  • 前の医療機関の診療録(カルテ)
  • 診療情報提供書・紹介状
  • 処方内容・お薬手帳・調剤記録
  • 過去の傷病手当金支給申請書
  • 診断書・休業に関する医師の指示
  • レセプトなどの診療関係資料
  • 閉院・休診を確認できる案内
  • 転院予約日や、初診まで時間が空いた事情が分かる記録
  • 休職・欠勤・給与など勤務状況が分かる資料

これらは、空白期間について病状や療養状況を説明するための 補完資料となる可能性があります。

ただし、診療情報提供書やカルテがあれば、 傷病手当金申請書の医師意見が必ず不要になる、という意味ではありません。

実際にどの資料を受け付け、どのように審査するかについては、 加入している保険者へ確認する必要があります。

前の病院が申請書を書けない場合は?

突然の閉院、長期休診、医師の死亡などによって、 前医から通常どおり傷病手当金申請書の医師意見を 取得できないことがあります。

現時点で、こうした事情があれば全国一律に 「医師意見を省略できる」「本人の申立書だけで支給される」 とする一般的な特例があるとは確認できません。

前医に連絡が取れる場合は、傷病手当金申請書への記載の可否だけでなく、 診療情報提供書、診療録の写し、検査結果、処方内容などを 取得できないか確認します。

前医に連絡が取れない場合は、承継医療機関、医療法人本部、 旧医療機関を管轄する保健所、転院先に保存されている紹介状などから、 診療情報の保管先を確認します。

診療情報提供書や診療録の写しには、前医が実際に診察した時点の症状、 治療内容、療養上の指示、転院の経緯などが記載されていることがあります。 これらは、空白期間を含む病状経過を保険者へ説明する補完資料となる可能性があります。

医師に「この期間を必ず就労不能と書いてください」と求めるのではなく、 前医の診療経過や資料から、どの範囲まで医学的な意見を示すことができるのかを 確認することが大切です。

閉院した病院のカルテはどうなる?

医師法第24条では、 診療録について原則として5年間の保存義務が定められています。

そのため、医療機関が閉院したからといって、 カルテが直ちに処分されることを前提にする必要はありません。 ただし、閉院後に誰がどこで保管しているか、実際に記録が残っているか、 患者が写しを取得できるかは、医療機関の形態や閉院時の事情によって異なります。

自治体によっては、診療所の廃止時に、 閉院後の診療録の保管方法や問い合わせ先を確認する運用もあります。

カルテの保管先が分からないとき

  1. 旧医療機関のホームページ、閉院告知、電話案内などを確認する
  2. 医療法人本部・系列病院・承継した医療機関がないか確認する
  3. 転院先に診療情報提供書などが保存されていないか確認する
  4. 旧医療機関を管轄する保健所へ、閉院後の問い合わせ先等について相談する
  5. 保管先が分かったら、診療録や処方内容など必要な診療情報の開示を相談する

なお、保健所がカルテそのものを保管しているとは限りません。 自治体や閉院時の状況によって異なります。

退職後の傷病手当金では特に注意

退職後も一定の要件を満たす場合には、 資格喪失後も傷病手当金の継続給付を受けられることがあります。 基本的な要件は、 協会けんぽの傷病手当金案内でも確認できます。

この場合、在職中の申請以上に注意したいのが、 労務不能状態の「継続性」です。

状況 考えるべきポイント
実際に就労可能な状態まで回復した 資格喪失後の継続給付に影響する可能性があります。
労務不能は続いているが、閉院により医師の証明が取れない 労務不能そのものとは別に、どの資料でその状態を確認してもらうかが問題になります。
資料不足により保険者が労務不能と認めなかった 空白期間だけでなく、その後の継続給付への影響も含め、処分理由を確認する必要があります。
「退職後の傷病手当金は、医師証明が1日でも空いたら、 その後すべて自動的に打ち切られる」 と単純に考えないことが重要です。

医師証明を取得できないことと、 実際に労務可能な状態へ回復したことは別の問題です。

一方、保険者が空白期間について労務不能だったと確認できず、 その結果として継続性を認めない場合には、 後の期間まで不支給となる可能性があります。

そのため、退職後の継続給付では、 「空白期間だけの問題なのか」 「その後の継続給付まで影響するという判断なのか」 を保険者に具体的に確認することが大切です。

健保から「打ち切り」と言われたら確認したいこと

電話で「このままだと打ち切りになります」などと説明を受けると、 とても不安になると思います。

その場合は、「打ち切り」という言葉だけで判断せず、 具体的に何を意味しているのか確認しましょう。

  • 証明できない期間だけが不支給になるという意味なのか
  • その後の資格喪失後継続給付も支給されないという意味なのか
  • その理由は「医師意見がないこと」なのか、「労務可能だったと判断すること」なのか
  • 診療情報提供書やカルテなど追加資料を提出して審査してもらえるのか
  • どのような追加資料があれば判断できるのか

電話で確認した場合には、 確認した日、担当部署、担当者、回答内容をメモしておくこともおすすめします。

突然閉院したときの対応を順番に整理

  1. 前医の最終受診日を確認する
    最後に診察を受けた日と、すでに医師証明を受けている期間を確認します。
  2. できるだけ早く転院先を確保する
    診療情報提供書、処方内容、お薬手帳などがあれば持参します。
  3. 新しい医師に事情を正確に説明する
    傷病手当金を受給中であること、突然の閉院で転院したこと、 前医の最終受診日などを伝えます。
  4. 前医から取得できる資料を確保する
    カルテ、診療情報提供書、処方記録、過去の診断書などを確認します。
  5. 空白期間について医師がどこまで医学的な意見を示せるか確認する
    初診日を変更したり、事実と異なる診察歴を記載してもらうのではなく、 前医資料等から判断できる範囲を相談します。
  6. 加入先の健保へ具体的に確認する
    「突然の閉院」「前医最終受診日」「転院先初診日」 「取得できる補足資料」を伝え、必要な手続きを確認します。
  7. 提出した資料と健保の回答を保存する
    後日、不支給理由の確認や審査請求を検討する場合にも重要になります。

よくある質問

Q. 転院まで1週間空いたら、その1週間は必ず不支給ですか?

必ず不支給になると一律にはいえません。 ただし、その期間について労務不能だったことをどのような医学的資料等で 確認してもらえるかが問題になります。 加入先の保険者に具体的な取扱いを確認してください。

Q. 新しい病院に、初診日前の期間まで書いてもらえますか?

全国一律に「絶対に書けない」とする単純なルールではありませんが、 初診日前の期間について意見を示せるかどうかは、 前医の診療情報や病状経過などを踏まえた医師の判断になります。 医師に遡及記載を求めるのではなく、判断可能な範囲を相談するのがよいでしょう。

Q. 診療情報提供書があれば、傷病手当金申請書の医師欄の代わりになりますか?

診療情報提供書は病状の継続性などを説明する重要な資料になり得ますが、 それだけで法定の医師意見に必ず代えられるとは限りません。 保険者へ確認が必要です。

Q. 退職後の傷病手当金は、1日空いたら全部終了ですか?

「医師証明が1日ない」という事実だけで、 その後の給付が全国一律に自動終了すると単純化することはできません。 実際に労務可能な状態だったのか、労務不能は続いていたものの 証明資料だけが不足しているのかを区別して考える必要があります。

まとめ|「空白ができた=終了」と決めつけず、資料を残す

傷病手当金を受給している途中で病院が突然閉院すると、 「医師の証明が取れない」「転院まで空白ができる」 という通常とは異なる問題が生じます。

しかし、証明資料が不足していることと、 実際に労務可能な状態だったことは同じではありません。

まずは前医と転院先の受診日を整理し、 診療情報提供書、カルテ、処方記録など取得できる資料を確保したうえで、 加入先の健康保険へ具体的な取扱いを確認することが大切です。

特に退職後の継続給付では、 空白期間だけの不支給なのか、 その後の継続給付にも影響する判断なのかによって、 確認すべき内容が変わります。

LINE相談の前に、次の情報だけ分かる範囲で整理しておくとスムーズです。

  • 通院先が閉院・休診した日、または最後に受診した日
  • 転院先を受診した日、または受診予約日
  • 傷病手当金の申請済み期間・未申請期間
  • 退職日と、資格喪失後の継続給付を受けているかどうか
  • 手元にある紹介状、診断書、申請書、健保からの案内

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こもれび社労士事務所では、傷病手当金の手続きに関連するご相談のほか、 メンタル不調に伴う労災や障害年金について、LINEを中心にご相談をお受けしています。

何から確認すればよいか分からない場合でも大丈夫です。 健保から届いた書面、傷病手当金申請書、受診日が分かるメモなどを、 分かる範囲でLINEに送ってください。短文やスクリーンショットでも構いません。

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主な参考資料

※本記事は2026年9月17日時点で確認できる法令・行政資料等をもとに、 一般的な考え方を整理したものです。 実際の支給可否や必要書類は、個別の状況や加入する保険者の審査によって異なります。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です

「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。

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