初診時にパワハラを医師へ話していないと労災は難しい?後から申請する場合の考え方

「初診のとき、医師にパワハラのことを話していませんでした」
「眠れない、仕事がつらいとは伝えましたが、上司から何を言われたかまでは説明していません」
「当時は労災申請を考えていなかったので、仕事が原因だという話をほとんどしていませんでした」
精神障害の労災を後から検討する方から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、 初診時に「パワハラを受けた」と医師へ詳しく話していなかったという理由だけで、労災申請ができなくなるわけではありません。
精神科や心療内科を初めて受診した時点では、強い不安や不眠、抑うつなどによって、 職場で起きた出来事を時系列で詳しく説明できないこと もあります。
また、その時点では本人自身が「これはパワハラだった」「労災になるかもしれない」と整理できていない場合もあります。
一方で、初診時に何を医師へ伝えていたのかは、 発病時期や症状の経過、仕事上の出来事との関係を確認するうえで重要な事情の一つ です。
そのため、 「初診で話していないから無理」と考えるのでも、「後から説明すれば問題ない」と考えるのでもなく、当時の記録とその後の経過を事実に沿って整理すること が大切です。
この記事では、初診時にパワハラや仕事上の出来事を十分に医師へ話していなかった場合、精神障害の労災申請でどのように考えればよいのかを社労士が解説します。
初診時にパワハラを話していなくても、それだけで労災が無理になるわけではありません
精神障害の労災では、 初診時に「パワハラ」という言葉を使ったかどうかだけで認定・不認定が決まるわけではありません。
例えば、実際には上司から厳しい叱責や人格否定的な言動を受けていたとしても、初診では、
「仕事に行くのがつらい」
「夜眠れない」
「職場の人間関係で悩んでいる」
「仕事のことを考えると動悸がする」
といった症状や大まかな事情だけを伝えていることもあります。
特に初診時は、
- 自分でも何が起きているのか整理できていない
- 診察時間の中で細かな経緯まで説明できなかった
- 職場の出来事より症状を中心に話した
- パワハラという言葉を使うことにためらいがあった
- その時点では労災申請を考えていなかった
ということも考えられます。
したがって、 初診時に「パワハラ」という言葉を使っていなかったという一点だけで、労災認定の可否を一律に判断することはできません。
ただし、初診時の説明は重要な資料の一部です
では、初診時に何を話したかは重要ではないのでしょうか。
そうではありません。
精神障害の労災では、主治医の意見や診療録などの医学的資料をもとに、 どの精神障害を、いつ頃発病したのか が医学的に検討されます。
また、労働基準監督署は、
- 本人の説明
- 会社の説明
- 関係者の説明
- メールやチャット
- 勤怠記録
- 会社への相談記録
- 診療録や主治医意見
などを確認しながら、職場で実際に何が起きたのかを調査します。
そのため、 初診時に何を伝えていたか、その後の診察で何を話したか、労災申請でどのような出来事を説明しているか の関係は確認しておきたいポイントです。
初診時には「仕事がつらい」としか話していない場合
例えば、初診時のカルテには、
「仕事のストレスが強い」
とだけ記載されていたとします。
一方、労災申請では、
「上司から複数回、他の社員の前で人格を否定するような叱責を受けた」
と説明するケースも考えられます。
この場合、 表現が違うことだけで直ちに矛盾と決まるわけではありません。
初診時には大まかに「仕事のストレス」と説明し、その後の診察や労災申請の準備の中で、具体的な出来事を整理していくこともあります。
ただし、 後になって説明が具体的になった経緯を、自分でも確認しておくこと は大切です。
後からパワハラを医師へ話した場合はどう考える?
初診では話せなかったものの、2回目、3回目の診察などで、
「実は上司からこういうことを言われていた」
「職場で繰り返し叱責を受けていた」
「会社に相談しても改善されなかった」
と具体的に説明することもあります。
この場合も、 「初診では言っていないのに、後から言ったから信用されない」と一律に考える必要はありません。
大切なのは、
- いつ頃から具体的な出来事を医師へ話すようになったのか
- なぜ初診時には詳しく話せなかったのか
- その説明は当時の他の資料とも整合するのか
- 仕事上の出来事と症状の変化にどのような時間的関係があるのか
などを、実際の経過に沿って確認することです。
初診時に話していなかったからといって、後から説明を作るのは避ける
「初診時に話していないと不利かもしれない」と不安になると、
「今から医師に、初診時からパワハラが原因だったことにしてもらえないか」
「労災申請に合うように説明をそろえた方がいいのではないか」
と考えてしまうことがあります。
しかし、 過去の事実を申請内容に合わせて変えることは避けるべきです。
重要なのは、記録を書き換えることではなく、
- 初診時に実際に何を話したのか
- 当時どのような精神状態だったのか
- いつから具体的な職場の出来事を話したのか
- 当時どのような資料が残っているのか
を確認し、 そのままの経過を説明できる状態にしておくこと です。
初診時の説明を補うために確認したい資料
初診時のカルテだけでは、職場で起きた出来事が詳しく分からない場合もあります。
そのような場合は、当時の状況を確認できる資料がないか見直してみましょう。
例えば、
- 上司や会社とのメール
- 社内チャット
- LINEやSMS
- 録音
- 会社へ相談した記録
- 人事・コンプライアンス窓口への相談
- 家族や友人へ当時送ったメッセージ
- 日記やメモ
- 勤怠記録
- 休職や欠勤に関する記録
などがあります。
大切なのは、 後から新しい話を作ることではなく、当時すでに存在していた資料や記録を確認すること です。
「パワハラ」という言葉より、実際に何が起きたかを整理する
精神障害の労災では、 本人や医師が「パワハラ」と呼んでいるかどうかだけで心理的負荷が決まるわけではありません。
例えば上司からの言動については、
- 具体的に何を言われたのか
- いつ起きたのか
- どの程度繰り返されたのか
- 誰かが見聞きしていたのか
- 人格や人間性を否定するような内容だったのか
- 会社へ相談した後も続いたのか
といった具体的な事情が重要になります。
そのため、 「初診でパワハラという言葉を使ったか」だけにこだわるより、実際の出来事を具体的に整理すること が重要です。
発病時期との関係も確認しておく
精神障害の労災では、 発病前おおむね6か月の業務上の出来事 が重要になります。
そのため、初診日だけを見るのではなく、
- 不眠が始まった時期
- 食欲が落ちた時期
- 動悸や強い不安が出始めた時期
- 遅刻や欠勤が増えた時期
- 出勤できなくなった時期
- 精神科・心療内科を受診した時期
- 休職した時期
などの経過も確認しておくとよいでしょう。
これらは発病日を機械的に決めるものではありませんが、 発病時期を医学的に検討する際の重要な手がかりになります。
カルテをまだ確認していない場合は?
労災申請を考え始めた段階では、自分のカルテに何が書かれているのか分からない方も多いと思います。
この場合も、 「パワハラと書いてあるはず」「たぶん何も書かれていない」と推測だけで判断しないこと が大切です。
まずは、自分が当時どのような経緯で受診し、医師に何を伝えていたかを思い出せる範囲で整理してみましょう。
労災申請を具体的に検討する中で、必要に応じて診療記録の内容を確認し、 当時の医療記録と、仕事上の出来事や症状の経過を照らし合わせていく という考え方が大切です。
診療録の内容を確認したい場合は、受診している医療機関へ診療情報の開示手続を確認します。 医療機関ごとに、申請方法、本人確認書類、費用、交付までの期間が異なることがあります。
初診時に仕事のことを詳しく話しておらず、不安な方へ
「初診では不眠のことしか話していない」
「カルテにパワハラと書かれていない」
「後から労災申請を考え始めたので、当時の説明と申請内容が違って見えないか心配」
このような場合でも、 初診時の一部分だけを見て、労災申請ができる・できないと判断する必要はありません。
こもれび社労士事務所では、 仕事上の出来事、症状の経過、初診時の状況、その後の診療内容、手元に残っている資料 を確認しながら、申請前の事情整理からご相談をお受けしています。
まだカルテを取得していない段階でも構いません。 分かる範囲で現在の状況をLINEからお送りください。
カルテに「パワハラ」と書いていない場合はこちら
初診時の説明だけでなく、 カルテそのものに「パワハラ」という記載がないことが心配 という方もいると思います。
「パワハラ」という言葉がカルテにない場合の考え方については、次の記事で詳しく解説しています。
診断書に「仕事が原因」と書いてある場合はこちら
反対に、 診断書には「仕事が原因」と書かれているので認定されると思っている という方は、次の記事も参考にしてください。
まとめ
初診時に、 「パワハラを受けた」「仕事が原因だ」と詳しく医師へ話していなかったという理由だけで、精神障害の労災申請ができなくなるわけではありません。
一方で、初診時の診療内容は、発病時期や症状の経過などを確認する重要な資料の一部です。
そのため、
- 初診時には何を伝えていたのか
- なぜ詳しい出来事を話していなかったのか
- その後いつ頃から具体的な事情を話したのか
- 職場では実際に何が起きていたのか
- 当時のメールや相談記録などに何が残っているのか
- 仕事上の出来事と症状の経過がどうつながっているのか
を時系列で確認していくことが大切です。
「初診時に話していなかったから直ちに不利になる」と決めつけず、かといって後から説明を作るのでもなく、当時の記録と実際の経過をそのまま整理すること が重要です。
後から労災申請を考え始めた方へ
精神障害の労災では、初診時の一言だけではなく、 仕事上の出来事、発病までの経過、診療内容、当時の資料を全体として整理すること が大切です。
こもれび社労士事務所では、 「当時は労災を考えていなかった」 「医師へ仕事のことを詳しく話していない」 「今から申請できるのか分からない」 という段階からご相談いただけます。
まずはLINEで、分かる範囲の経緯をお送りください。
参考資料
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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