労災の後遺障害面談では何を聞かれる?労基署で状態を正確に伝えるための準備

労災によるけがや病気の治療が進み、障害(補償)等給付を請求した後、 労働基準監督署から「一度、障害の状態についてお話を聞かせてください」 といった連絡を受けることがあります。
一般に「後遺障害の面談」と呼ばれることがありますが、 これは正式な制度名称というより、 労働基準監督署が請求内容や残っている障害の状態について、 本人へ確認を行う場面を指して使われることが多い言葉です。
連絡を受けると、 「何を聞かれるのだろう」 「うまく説明できなかったら等級に影響するのでは」 「診断書と違うことを言ったらまずいのでは」 と不安になる方も少なくありません。
労働基準監督署での確認方法、質問内容、必要資料などは、 傷病の内容や請求内容、個別事情によって異なります。 全国すべてのケースで同じ「後遺障害面談」が実施され、 同じ質問をされるわけではありません。
そのためこの記事では、「こう答えれば○級になる」といった面談対策ではなく、 実際に残っている症状や日常生活・仕事への影響を、 誤解なく伝えるために何を整理しておけばよいかを中心に、 社会保険労務士が解説します。
・症状だけでなく、日常生活や仕事にどのような支障が残っているかを整理します。
・診断書に回答を「合わせる」のではなく、実際の状態を具体的に説明することが大切です。
・既に提出した資料の内容も、事前に確認しておきましょう。
・分からないことや記憶が曖昧なことを、無理に断定する必要はありません。
動画でも解説しています
労災の後遺障害について労働基準監督署から面談・確認の連絡が来た場合に、 何を聞かれるのか、どのような準備をしておけばよいのかを、 社労士が動画で分かりやすく解説しています。
1.労基署から後遺障害の面談連絡が来たら
労災保険では、業務災害や通勤災害による傷病が「治ゆ」した後に一定の障害が残った場合、 障害(補償)等給付の対象となる可能性があります。
障害(補償)等給付を請求すると、 提出された請求書や診断書などをもとに、 労働基準監督署が残っている障害の状態を確認していきます。
その過程で、請求人本人から事情や症状を確認する必要があると判断された場合には、 面談などによる確認が行われることがあります。
障害の状態を確認する調査の一環として連絡されている場合があります。 まずは慌てず、何について確認したいのかを把握しましょう。
連絡を受けた際には、少なくとも次の事項をメモしておくと安心です。
- 面談の日時
- 場所
- 担当部署・担当者名
- 持参するよう案内された資料
- 面談のおおよその目的
- 本人以外の同席について確認が必要か
体調上、指定された日時への出席が難しい場合などは、 無断で欠席するのではなく、早めに担当する労働基準監督署へ相談するとよいでしょう。
2.後遺障害の面談では何を確認される?
面談の内容は個別の事案によって異なるため、 「必ずこの質問をされる」と決まっているわけではありません。
ただ、障害等級を判断するためには、 どのような障害が残っているのかを把握する必要があります。
そのため、たとえば次のような事項について確認されることが考えられます。
- 現在残っている症状
- 痛み・しびれ・可動域制限などの状態
- 治療の経過
- 治ゆ・症状固定となった時期
- 現在の通院や服薬の状況
- 受傷前と比べてできなくなったこと
- 日常生活への影響
- 仕事への影響
- 復職、休職、配置転換などの状況
- 既に提出された診断書や資料との関係
身体障害であれば、障害の部位、可動域、痛みやしびれ、 動作への影響などが問題になることがあります。
一方、精神障害では、残っている精神症状に加えて、 日常生活や仕事を行う能力にどの程度の支障があるのかが重要になります。
「症状があるか・ないか」だけではなく、 その症状によって実際の生活や仕事に何が起きているか まで整理しておくと、自分の状態を説明しやすくなります。
3.「症状があります」だけで終わらせない
面談前の整理で特に大切なのが、 抽象的な症状を、実際の生活場面まで具体化することです。
たとえば「腕が痛い」という説明だけでは、 どの程度の支障なのか相手には十分伝わらないことがあります。
| 抽象的な説明 | 具体的に整理した説明の例 |
|---|---|
| 腕が痛くて仕事がつらい | 右腕を肩より上に上げると痛みが強くなり、高い場所の商品を補充する作業を続けることが難しい |
| 足が痛くて歩きにくい | 長時間歩くと痛みが強くなり、外出時には途中で座って休むことがある |
| 眠れず集中できない | 夜間に何度も目が覚め、日中は長時間作業を続けると集中力が落ち、作業を中断することがある |
| 家事が大変 | 掃除機をかけると腰痛が強くなるため、家族に頼むことが増えている |
| 人と話すのがつらい | 強い不安が出るため、職場で複数人との打合せを続けることが難しく、発言できないことがある |
※上記は説明方法の例です。実際の症状や支障をそのまま伝えることが大切であり、 等級を意識して症状を誇張することを勧めるものではありません。
具体的に整理するときには、 「できる・できない」だけでなく、 どの程度ならできるのか、どのくらい続けると難しくなるのか、 誰かの援助が必要なのかまで考えてみると整理しやすくなります。
4.面談前に準備しておきたいもの
面談に持参する必要がある資料は、 労働基準監督署からの案内を優先してください。
そのうえで、自分の状況を整理するためには、 次のような資料を確認しておくと役立つことがあります。
- 労働基準監督署から届いた案内・通知
- 障害(補償)等給付支給請求書の控え
- 障害(補償)等給付請求用の診断書の控え
- これまで提出した申立書や資料
- 通院先・受診時期・治療経過が分かる記録
- 現在の服薬状況
- 日常生活上の支障を整理したメモ
- 仕事上の支障を整理したメモ
- 復職・配置転換・勤務時間短縮などが分かる資料
- 労基署へ確認したい事項を書いたメモ
すべての請求人に上記資料の提出や持参が必要という意味ではありません。
5.診断書と本人の説明はどう考える?
面談前に診断書を確認しておくことは大切です。
ただし、 「診断書に書かれている内容に自分の回答を合わせる」ことが目的ではありません。
本来整理すべきなのは、 現在、本当にどのような症状や障害が残っているのかです。
そのうえで、診断書や過去に提出した資料と事実関係に食い違いがないかを確認しておきます。
① 実際に残っている症状を確認する
↓
② 日常生活・仕事への影響を具体化する
↓
③ 診断書や提出済み資料を確認する
↓
④ 食い違いがある場合は、その理由を整理する
たとえば、診断書作成後に症状が変化した、 診察時間が短く生活状況まで十分伝えられていなかった、 自分でも当時は支障の程度をうまく説明できていなかった、 ということもあり得ます。
食い違いがあるからといって、無理にどちらかへ話を合わせるのではなく、 なぜ違いが生じているのかを事実に沿って整理することが大切です。
身体障害の請求では、2026年6月から診断書様式が改正されています
身体に残った障害について障害(補償)等給付を請求する場合、 請求書には、医師または歯科医師が記入した診断書を添付します。
この障害(補償)等給付請求用の診断書については、 2026年6月1日から改正後の様式が使用されています。
改正後の様式では、障害の部位や状態をより適切に把握できるよう、 部位ごとの障害の有無や検査結果などの記載欄が見直されています。 身体障害の請求を予定している方は、主治医へ作成を依頼する前に、 労働基準監督署または厚生労働省の案内で現在の様式を確認しておくとよいでしょう。
必要となる書類や確認方法は、傷病の内容や請求状況によって異なります。 労働基準監督署から個別の案内がある場合には、その案内を優先してください。
労基署との面談前に、状況を整理しておきたい方へ
「何を説明すればよいか分からない」
「診断書と自分の症状の説明が合っているか不安」
「仕事や日常生活への影響をうまく整理できない」
という段階からご相談いただけます。
6.後遺障害の面談で避けたい説明
面談には「正解の答え」が用意されているわけではありません。
大切なのは、 等級を取るための回答を作ることではなく、 実際の状態をできるだけ正確に伝えることです。
特に、次のような説明には注意しましょう。
- 希望する等級を意識して、実際より症状を重く説明する
- 反対に、遠慮して実際より軽く説明する
- 何を聞かれても「大丈夫です」「普通です」だけで終わらせる
- 日常的にできていることを隠す
- 記憶が曖昧なのに推測で断定する
- 診断書に書かれているからという理由だけで、実態と異なる説明をする
日付や治療経過などをその場で正確に思い出せない場合には、 推測して答えるよりも、「資料を確認しないと分かりません」と伝える方が、 事実関係を正確に整理できます。
7.うつ病・PTSDなど精神障害の場合に整理しておきたいこと
精神障害で労災認定された後も症状が残る場合には、 身体障害とは異なる観点で障害の状態が評価されます。
精神症状の有無だけでなく、 日常生活や仕事を行う能力にどの程度支障が残っているのかが重要になります。
面談などで状態を説明する際には、 たとえば次のような事項を整理しておくとよいでしょう。
- 睡眠の状態
- 不安・抑うつ・意欲低下などの症状
- 集中力や記憶力の変化
- 外出や通勤ができるか
- 決まった時間に行動できるか
- 仕事を一定時間継続できるか
- 人との会話や意思疎通への支障
- 職場で周囲と協力して仕事ができるか
- 困ったことが起きたとき自分で対応できるか
- 家族などからどの程度の援助を受けているか
たとえば「復職できた」という事実があっても、 それだけで支障がないとは限りません。
短時間勤務になっている、 業務内容を大きく軽減してもらっている、 周囲の支援がなければ勤務継続が難しい、 欠勤や早退が続いているなど、 どのような条件や配慮のもとで働いているのかも重要な情報になります。
一方で、できていることを隠す必要もありません。 実際にできていることと、 配慮や援助がなければ難しいこと、 継続すると症状が強くなることなどを、 事実に沿って分けて整理することが大切です。
8.面談が終わった後はどう進む?
面談が終わったからといって、 その場ですぐに障害等級が決まるとは限りません。
事案によっては、提出済みの診断書や検査結果、 本人から確認した内容などを踏まえて調査が進められます。
また、必要に応じて追加の資料や確認を求められることもあります。
※上記は一般的なイメージです。すべての事案が同じ順序・方法で進むわけではありません。
9.非該当や想定より低い障害等級だった場合は?
障害(補償)等給付の決定が届いたら、 「何級だったか」だけを見るのではなく、 決定内容をきちんと保管し、確認することが大切です。
障害等級の決定や不支給決定に納得できない場合には、 労災保険審査官への審査請求を検討できる場合があります。
労災保険給付の決定についての審査請求は、 原則として決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。
そのため、決定通知が届いたら、 「納得できないけれど、しばらく様子を見よう」と長期間放置せず、 早めに決定内容を確認することをおすすめします。
ただし、 希望していた等級と違ったからという理由だけで、 審査請求をすれば結果が変わるわけではありません。
認定された障害の内容、 診断書や検査結果、 障害等級認定基準との関係などを確認し、 どこに争点があるのかを整理したうえで検討する必要があります。
10.まとめ|面談は「等級を取るため」ではなく、状態を正確に伝える準備を
労働基準監督署から後遺障害に関する面談や確認の連絡が来ると、 「何を言えばよいのだろう」と不安になるかもしれません。
しかし、大切なのは、 希望する障害等級に合わせて回答を作ることではありません。
実際に残っている症状、 日常生活への影響、 仕事への影響を一つずつ整理し、 既に提出した診断書や資料も確認したうえで、 自分の状態をできるだけ正確に伝えることが基本です。
② 日常生活のどの場面で困っているか
③ 仕事にどのような支障があるか
④ 診断書や提出済み資料に何が書かれているか
⑤ 労基署から何を持参・準備するよう案内されているか
症状が複数ある場合や、 治療期間が長い場合、 精神障害や高次脳機能障害などで生活上の支障を言葉にするのが難しい場合には、 面談前に時系列や生活状況を整理しておくだけでも、 説明しやすくなることがあります。
労災の後遺障害・障害給付について相談したい方へ
こもれび社労士事務所では、 労災認定後に症状が残っている方や、 労基署から障害に関する面談・追加確認の連絡を受けた方について、 現在の症状、日常生活・就労への影響、提出資料などを整理しながらご相談をお受けしています。
「まだ依頼するか決めていない」 「まず、自分の状況を整理したい」 という段階でも大丈夫です。
LINEで相談するよくある質問
Q.労災の後遺障害では必ず面談がありますか?
必ず同じ形式の面談が行われるわけではありません。 傷病の内容や提出資料などによって確認方法は異なります。 労働基準監督署から案内があった場合には、その内容に沿って準備してください。
Q.面談でうまく話せないと不利になりますか?
大切なのは上手に話すことではなく、 実際の症状や生活・仕事への影響をできるだけ正確に伝えることです。 緊張しやすい場合には、あらかじめ要点をメモに整理しておくとよいでしょう。
Q.診断書と違うことを言ってはいけませんか?
診断書に回答を合わせる必要はありません。 実際の状態を説明することが基本です。 ただし、診断書と現在の状態に違いがある場合には、 症状の変化など、その理由を整理しておくと説明しやすくなります。
Q.面談では何を持っていけばよいですか?
必要な持参物はケースによって異なるため、 労働基準監督署から届いた案内を最優先してください。 自分の確認用として、診断書や請求書など提出済み資料の控え、 症状や生活状況を整理したメモなどを確認しておくと役立つことがあります。
Q.障害等級に納得できない場合はどうすればよいですか?
障害等級の決定など労災保険給付に関する決定に不服がある場合には、 労災保険審査官への審査請求を検討できます。 原則として、決定を知った日の翌日から起算して3か月以内という期限があるため、 決定通知を受け取ったら早めに内容を確認しましょう。
本記事は、厚生労働省が公表している 「障害(補償)等給付の請求手続」、 障害(補償)等給付請求用診断書、 障害(補償)等給付に係る診断書様式等に関する検討会資料、 労災保険審査請求制度等を確認して作成しています。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
※ 個人のご相談(労災・後遺障害・障害年金)/全国対応(LINE・オンライン)
※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


