障害年金はカルテがないと申請できない?初診日を証明できない場合の対処法

障害年金を申請しようとして、昔通っていた病院へ問い合わせたところ、
「カルテはすでに廃棄されています」
と言われてしまうことがあります。
特に、初診日が10年、20年以上前にある方や、子どもの頃から精神科・心療内科へ通院していた方では珍しくありません。
そのようなとき、
「初診の病院にカルテがないなら、障害年金はもう申請できないのでは?」
と不安になる方もいらっしゃいます。
しかし、初診時のカルテが残っていないからといって、直ちに障害年金を請求できないと決まるわけではありません。
紹介状、転院先のカルテ、お薬手帳、医療保険の給付記録、第三者証明など、残っている資料から初診日を確認できる可能性があります。
この記事では、障害年金の初診病院にカルテが残っていない場合に、何を確認し、どのような順番で資料を整理していけばよいのかを、社会保険労務士が実務の視点から解説します。
初診の病院にカルテがない=障害年金を申請できない、ではありません
障害年金では、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師等の診療を受けた日(初診日)を確認することが重要です。
現在診断書を書いてもらう医療機関と初診時の医療機関が異なる場合などには、通常、初診時の医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらい、初診日を確認します。
ところが、昔の医療機関では、
- カルテの保存期間が経過している
- 病院が閉院している
- 医療機関が移転・統合している
- 当時の診療録が残っていない
などの理由により、受診状況等証明書を作成してもらえないことがあります。
その場合でも、日本年金機構には「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類があり、初診日の確認につながる他の資料とあわせて申立てを行う方法があります。
ポイント
「カルテがない」という事実だけで障害年金を諦めるのではなく、まずはほかに初診日や受診経過を確認できる資料が残っていないかを探すことが大切です。
なぜ障害年金では初診日の証明が重要なのか
障害年金において初診日は、単に受診歴を確認するためだけのものではありません。
初診日によって、
- 障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを検討するか
- 保険料納付要件をどの時点で確認するか
- 20歳前傷病に該当するか
- 障害認定日がいつになるか
など、請求の前提となる重要な事項が変わります。
そのため、
「最初の病院のカルテがないから、次の病院を初診日にすればよい」
と自己判断することはおすすめできません。
最初の医療機関で証明できない場合には、別の資料を使って本来の初診日をどのように整理できるかを検討する必要があります。
まず最初の医療機関に確認したいこと
「昔の病院だからカルテは残っていないだろう」と思っていても、まずは医療機関へ確認してみることをおすすめします。
確認したいのは、たとえば次のような内容です。
- 当時のカルテが残っているか
- 受診状況等証明書を作成できるか
- 診療録以外に受診歴を確認できる記録が残っていないか
- 紹介状や診療情報提供書の控えが残っていないか
- 病院が統合・移転している場合、記録が引き継がれていないか
カルテそのものが残っていなくても、別の記録から受診歴が確認できることがあります。
また、病院が名称変更・統合している場合には、現在の医療機関に過去の記録が引き継がれていることもあります。
カルテがない場合に確認したい資料
初診時の医療機関から受診状況等証明書を取得できない場合には、他の資料から初診日や当時の受診状況を確認できないか検討します。
1.紹介状・診療情報提供書
転院したことがある方は、次の医療機関に前の病院からの紹介状が残っていないか確認する価値があります。
紹介状には、
- 前医の受診開始時期
- 当時の症状
- 診断名
- 治療内容
- 転院までの経過
などが記載されていることがあります。
初診病院のカルテがなくても、転院時の紹介状から過去の受診経過を確認できる場合があります。
2.転院先・その後の病院のカルテ
最初の病院だけでなく、その次、そのまた次の医療機関のカルテも重要です。
たとえば転院先の初診時カルテに、
「○年前から○○クリニックへ通院」
「○歳頃から精神科治療を開始」
「前医で○○と診断」
などと記載されている場合があります。
初診病院の記録がないケースでは、こうした後の医療記録から過去の受診歴をたどることが重要になることがあります。
3.お薬手帳・薬歴
昔のお薬手帳が残っている場合は、大切に保管しておきましょう。
お薬手帳には、
- 処方年月日
- 医療機関名
- 薬局名
- 薬剤名
などが記録されていることがあります。
お薬手帳だけで必ず初診日が認められるわけではありませんが、当時すでに医療機関を受診し治療を受けていたことを整理する手掛かりになる場合があります。
4.診察券
昔の診察券が残っている場合も保管しておきましょう。
診察券だけでは初診日そのものが記載されていないこともありますが、医療機関名や患者番号などから、当時の受診について追加確認できる場合があります。
5.健康保険・国民健康保険の給付記録
日本年金機構の「受診状況等証明書が添付できない申立書」でも、初診日を確認するための資料として、医療保険の給付に関する記録などを添付することが想定されています。
保存状況は時期や保険者によって異なりますが、古い受診について確認できる記録がないか問い合わせることも検討できます。
6.障害者手帳申請時の診断書など
精神障害者保健福祉手帳や身体障害者手帳などを取得している場合、申請時に提出した診断書等に過去の受診歴が記載されていることがあります。
自治体に診断書の写しが残っているか、本人が取得できるかについて確認してみるのも一つの方法です。
7.学校・施設・勤務先などに残っている記録
20歳前から症状や通院歴があるケースでは、
- 学校の記録
- 児童相談所や福祉施設等の記録
- 当時の通院に関する記録
- 勤務先の休職・欠勤記録
などが受診経過を確認するための補助資料となる場合があります。
ただし、どの資料が必要かはケースごとに異なりますので、最初からすべてを集める必要があるとは限りません。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」とは?
初診時の医療機関で受診状況等証明書を作成してもらえない場合、日本年金機構には、
「受診状況等証明書が添付できない申立書」
という書類があります。
この申立書には、
- 傷病名
- 受診していた医療機関
- 受診期間
- 証明書を添付できない理由
- 参考として添付できる資料
などを記載します。
重要なのは、この申立書を書けば自動的に初診日が認められるわけではないということです。
日本年金機構の案内でも、一番古い受診歴のある医療機関の受診状況等証明書を添付できない場合には、申立書とともに、医療保険の給付記録など初診日を確認できる資料を添付することとされています。
つまり、
「証明書が取れない理由」+「初診日を裏付ける資料」
をセットで整理することが重要です。
第三者証明を使える場合もあります
医療機関の証明などから初診日を確認することが難しい場合には、状況によって第三者証明を検討することがあります。
日本年金機構には、
「初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)」
という所定の様式があります。
これは、初診日の頃に、
- 通院していることを直接見ていた
- 当時、本人や家族から受診について聞いていた
など、当時の受診状況を知っていた第三者に申立てをしてもらい、初診日を推定できるか審査するための資料です。
第三者証明には要件があり、誰に書いてもらってもよいわけではありません。
また、第三者証明を提出すれば必ず初診日が認められるというものでもありません。
ほかの客観的資料とあわせて、どのように初診日を整理できるかを検討することが大切です。
第三者証明は「最後に知人へ頼めば何とかなる」というものではありません。
まずは医療機関の記録、紹介状、薬歴、保険給付記録など、客観的な資料が残っていないかを確認し、そのうえで必要に応じて第三者証明を検討するのが基本です。
初診の病院が閉院している場合はどうする?
初診時の病院そのものが閉院している場合もあります。
この場合も、すぐに「証明不能」と決めるのではなく、
- 病院が移転・名称変更していないか確認する
- 別の医療法人や医療機関へ診療記録が引き継がれていないか確認する
- 転院先のカルテや紹介状を確認する
- お薬手帳など本人側に残っている資料を確認する
- 医療保険等の記録を確認できないか検討する
- 必要に応じて第三者証明などを検討する
という順番で整理するとよいでしょう。
資料は手当たり次第に集めればよいわけではありません
初診日を証明できないと分かると、不安になって、
「とにかく昔の資料を全部集めなければ」
と思ってしまう方もいます。
しかし、実務では資料をやみくもに集めるより、受診歴を時系列にして、どこが不足しているのかを確認してから必要な資料を探す方が整理しやすいです。
たとえば、次のような順番です。
- これまでの受診歴を時系列で書き出す
- 最初の医療機関に記録が残っているか確認する
- 転院先の紹介状・カルテを確認する
- お薬手帳など本人が持っている資料を確認する
- 不足する部分だけ追加資料を探す
- 必要に応じて第三者証明等を検討する
この進め方にすると、
「何のためにこの資料を取るのか」
が分かりやすくなります。
初診日が複雑なケースでは、資料の「量」より「つながり」が重要です。
紹介状、お薬手帳、転院先のカルテなどを時系列につなげ、「いつから・どこで・どのような症状について治療を受けていたのか」を整理していきます。
20歳前から通院している場合は特に注意
発達障害や精神疾患の障害年金では、
- 小学生や中学生の頃から症状があった
- 20歳前から精神科へ通院していた
- 昔と現在で診断名が違う
- 成人後に現在の診断名がついた
というケースがあります。
このような場合、現在の診断名がついた医療機関だけではなく、20歳前の受診歴までさかのぼって初診日を確認する必要が生じることがあります。
初診日が20歳前にある場合には、20歳前傷病による障害基礎年金を検討することになりますので、初診日の整理は特に重要です。
昔のカルテが残っていない場合でも、当時のお薬手帳、紹介状、その後のカルテ、学校・施設等の記録などから経過を確認できる可能性があります。
なお、「現在の診断名がついた日=初診日」とは限りません。 診断名が途中で変わっている場合の初診日の考え方については、別の記事でも詳しく解説しています。
よくある質問
Q.カルテの保存期間が過ぎていたら、障害年金は申請できませんか?
カルテが残っていないことだけを理由に、直ちに障害年金を請求できないと決まるわけではありません。
紹介状、転院先のカルテ、お薬手帳、医療保険の給付記録など、初診日を確認できるほかの資料がないかを検討します。
Q.初診の病院が廃院しています。どうすればいいですか?
まず、病院が名称変更や移転をしていないか、診療記録が別の医療機関等へ引き継がれていないか確認します。
それでも証明できない場合には、転院先の記録など他の資料から初診日を整理できないか検討します。
Q.お薬手帳しか残っていません。使えますか?
お薬手帳だけで初診日が確定するとは限りませんが、受診時期、医療機関、処方内容などを確認するための重要な資料になる場合があります。
ほかの資料と組み合わせて検討することが大切です。
Q.診察券だけでも初診日の証明になりますか?
診察券だけで初診日が確認できるとは限りません。
ただし、医療機関名や患者番号など、受診歴を調査する手掛かりになる場合がありますので、捨てずに保管しておきましょう。
Q.受診状況等証明書が取れなければ、次の病院を初診日にできますか?
受診状況等証明書を取得できないという理由だけで、次の医療機関が初診日になるわけではありません。
本来の初診日について、ほかの資料から確認できないか検討する必要があります。
Q.第三者証明があれば必ず認められますか?
いいえ。
第三者証明は、初診日の確認資料の一つとして審査されるものです。
内容や他の資料との整合性なども含めて判断されますので、提出しただけで必ず初診日が認められるわけではありません。
まとめ|「カルテがない」で諦める前に、残っている資料を整理しましょう
障害年金では初診日の確認が重要ですが、初診の病院にカルテが残っていないケースもあります。
そのような場合でも、
- 紹介状・診療情報提供書
- 転院先のカルテ
- お薬手帳・薬歴
- 診察券
- 医療保険の給付記録
- 障害者手帳関係の診断書
- 学校・施設等の記録
- 第三者証明
などから初診日を整理できる可能性があります。
大切なのは、手当たり次第に資料を集めるのではなく、
「どこまで受診歴を確認できていて、どの部分の証明が不足しているのか」
を整理したうえで、必要な資料を探していくことです。
初診の病院にカルテが残っていない方へ
「昔の病院に問い合わせたらカルテがないと言われた」
「初診の病院がすでに閉院している」
「お薬手帳や紹介状しか残っていない」
という場合でも、すぐに障害年金の請求を諦める必要はありません。
こもれび社労士事務所では、受診歴を時系列で整理し、受診状況等証明書、紹介状、お薬手帳、転院先の診療記録など、現在残っている資料を確認しながら、初診日の証明方法と請求方針を一緒に整理しています。
まだ資料が全部そろっていない段階でもご相談いただけます。
「カルテがない」「初診日が分からない」という段階でも大丈夫です。
※障害年金の初診日の認定や必要となる証明資料は、個別の受診歴、加入していた年金制度、提出資料等によって異なります。本記事は一般的な制度・実務上の考え方を解説するもので、個別の受給可否や初診日の認定を保証するものではありません。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


