障害年金はなぜ「目安2級」でも3級・不支給になる?厚労省調査の具体例から見る判断ポイント

障害年金で目安2級でも3級・不支給となる場合の判断ポイントを表現した水彩画風イラスト

精神障害の障害年金では、診断書の 「日常生活能力の程度」「日常生活能力の判定」を組み合わせることで、 障害等級の「目安」が示されます。

では、目安が2級なら、そのまま2級になるのでしょうか。

実際には、目安だけで障害等級が決まるわけではありません。 厚生労働省が公表した「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」には、 目安と実際の認定結果が異なった事案について、 審査資料を個別に確認した結果や審査担当職員へのヒアリング内容が掲載されています。

そこには、 一般雇用で働いていること、一人暮らしをしていること、 周囲から受けている援助、診療記録の内容など、 等級判断を考えるうえで参考になる具体的な事情が出てきます。

この記事では、厚生労働省の調査報告書で紹介された具体例をもとに、 「目安2級」でも3級や非該当となることがあるのはなぜかを、 実務上の注意点とともに整理します。

最初に:事例だけで自分の等級を予測することはできません

本記事で紹介する事例は、厚生労働省の調査報告書に掲載された、 審査担当職員へのヒアリング内容などを要約したものです。 厚生労働省が、個別事案を正式な認定事例集として公表したものではありません。

障害年金の認定は、傷病名、加入している年金制度、診断書、 病歴・就労状況等申立書、日常生活、就労、援助や支援の状況などを踏まえて 個別に判断されます。

同じような事情が一つあったからといって、 同じ等級や結果になることを示すものではありません。

動画で解説|「目安2級」でも3級・不支給になる?

この記事の内容を、厚生労働省の調査報告書に掲載された具体例をもとに、 動画でも分かりやすく解説しています。

1.「障害等級の目安」とは?

精神障害の障害年金では、 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が設けられています。

診断書に記載される 「日常生活能力の程度」と、 食事、清潔保持、金銭管理などに関する 「日常生活能力の判定」の平均を組み合わせ、 障害等級の目安を確認します。

大切なのは「目安=最終的な等級」ではないことです。

ガイドラインでは、まず障害等級の目安を確認したうえで、 診断書のその他の記載内容や具体的な生活状況などを踏まえ、 総合的に評価する仕組みになっています。

たとえば、組み合わせによっては 「2級又は3級」という目安になる場合があります。

ここから最終的に2級と判断されるのか、3級と判断されるのかは、 目安以外の事情も含めて検討されます。

障害基礎年金の場合は注意

障害基礎年金には3級がありません。 そのため、障害厚生年金であれば3級に相当する状態でも、 障害基礎年金では2級に該当しなければ 年金の支給対象にならない場合があります。

2.目安と最終的な障害等級が違うことがある

厚生労働省は、令和6年度に決定された障害年金について 無作為抽出調査を行いました。

精神障害の非該当事案を確認すると、非該当85件のうち64件で、

  • 障害等級の目安より下位の等級に判断されて非該当となったケース
  • 目安が2つの等級にまたがり、下位の等級に判断されて非該当となったケース

が確認されています。

64件 ÷ 85件 75.3%

※75.3%は、精神障害の非該当事案85件のうち、 「目安より下位」または 「2つの等級にまたがる目安から下位」とされた64件の割合です。 請求者全体に占める割合ではありません。 また、厚生労働省の診断書種類別集計では、 1人が複数枚の診断書を使用した場合、診断書ごとに件数が計上されています。

つまり、この75.3%は 「精神障害の請求者の75.3%が目安より低く認定された」 という意味ではありません。

あくまで、今回の抽出調査で 精神障害の非該当となった85件の内訳を見た数字です。

令和6年度調査後、認定手続の見直しが行われています

この調査を受け、日本年金機構では、 職員が事前確認票に等級案を記載する運用の廃止、 不支給事案に対する複数の認定医による審査、 認定理由の記載改善などが進められました。

また、令和6年度以降の不支給事案14,841件について点検が行われ、 444件、約3.0%が支給に変更されています。

ただし、この約3.0%は新規請求全体の支給率ではなく、 一度不支給となった事案を点検した結果です。

では、目安と実際の判断が異なった事案では、 どのような事情が確認されていたのでしょうか。

3.事例① 一般雇用でも就労状況の中身が確認されたケース

厚労省調査報告書・審査担当職員ヒアリングの要旨

障害等級の目安は2級でしたが、 最終的には3級と判断された事例です。

診療録には症状が落ち着いていることや、 買い物ができていることなどが記載されていました。

一方で、一般雇用で働いているものの、 仕事内容は比較的単純なもので、欠勤も多い状況が確認されていました。

こうした事情を含めて、 労働には制限がある状態として3級と判断されています。

「一般雇用だから3級」と読むのは適切ではありません

この事例から、 「一般雇用で働いていれば2級にならない」と結論づけることはできません。

精神障害の等級判定では、就労しているという事実だけではなく、

  • どのような仕事をしているか
  • 仕事の難易度や責任の程度
  • 勤務日数・勤務時間
  • 欠勤・遅刻・早退の状況
  • 職場から受けている援助や配慮
  • 職場での意思疎通の状況

など、実際の就労状況を確認することが重要です。

4.事例② 一人暮らしでも生活状況が確認されたケース

厚労省調査報告書・審査担当職員ヒアリングの要旨

この事例も、障害等級の目安は2級でしたが、 最終的には3級と判断されています。

一人暮らしで、福祉サービスを利用していない状況でした。

その一方で、日常生活状況について別途確認された内容から、 一定の日常生活を送れている事情が確認され、 それらを含めて判断されています。

一人暮らしだけで等級は決まりません

「一人暮らしができている=障害が軽い」と単純に判断することはできません。

一人暮らしをしていても、実際には家族から定期的な援助を受けていたり、 食事・掃除・金銭管理などに大きな困難があったりすることがあります。

反対に、独居という事実だけでは、日常生活上の制限の程度は分かりません。

見るべきなのは「独居か同居か」だけではありません。

実際にどのような生活をしており、何が自分でできて、 何に援助や支援が必要なのかを具体的に確認することが重要です。

5.事例③ 就労・通勤などが確認されたケース

厚労省調査報告書・審査担当職員ヒアリングの要旨

目安より下位の判断となった事例では、 一人暮らしで福祉サービスを利用していないことに加え、 就労状況も確認されていました。

診断書には、意思疎通の難しさや支援が必要である旨の記載がある一方で、 その具体的な状況が十分に確認できない部分がありました。

また、飲食店で週4日程度勤務し、援助を受けずに仕事をしていることや、 片道約1時間の通勤をしていることなども確認されています。

診断書の評価と具体的な生活状況との関係

この事例で注目したいのは、 「週4日働いていたから非該当になった」という単純な話ではないことです。

診断書に「援助が必要」「意思疎通が難しい」と記載されていても、 実際にどのような場面で、どの程度の援助が必要なのかが 審査上確認されることがあります。

診断書の評価と、病歴・就労状況等申立書などに記載された 具体的な生活・就労状況を整合的に整理しておくことが重要です。

6.事例④ 日常生活への援助の程度が確認されたケース

厚労省調査報告書・審査担当職員ヒアリングの要旨

障害等級の目安は2級でしたが、 最終的に3級と判断された事例です。

一人暮らしで、日常生活では一定の援助が必要とされ、 診断書にも状態が不安定で生活に困難がある旨が記載されていました。

一方で、認定医は、日常生活能力の判定平均が比較的低いことや、 家庭内の生活はできるものの、ときどき援助が必要とされていること、 ヘルパーを利用していないことなどを踏まえ、3級と判断していました。

支援サービスを使っているかだけではありません

障害年金では、「ヘルパーを利用しているから重い」 「福祉サービスを使っていないから軽い」と機械的に判断されるわけではありません。

確認したいのは、

  • 現在、誰からどのような援助を受けているか
  • 家族などによる声かけや見守りがあるか
  • 食事、清潔保持、金銭管理などで援助が必要か
  • 現在受けている援助や、生活を維持するために必要な支援は何か

といった生活の実態です。

7.事例⑤ 診療記録の確認後、2級となったケース

厚労省調査報告書・職員ヒアリングで言及された例

厚生労働省の調査報告書では、審査担当職員へのヒアリングの中で、 当初は不支給となったものの、 その後の事後重症請求で2級となったケースについて言及されています。

職員の説明によると、診断書の書きぶりには大きな変化がみられなかったものの、 入院記録があったことからカルテ照会を行い、 その結果、2級に転じたケースがあったとされています。

※これは、厚生労働省が認定内容を事例集として公表したものではなく、 審査担当職員へのヒアリングで紹介された例です。

「入院歴があれば2級になる」という意味ではありません

この事例は、入院していたという事実だけで 2級になったことを示すものではありません。

入院記録が確認されたことを契機にカルテ照会が行われ、 追加で確認された情報も含めて判断された例として読む必要があります。

診断書以外の診療記録が事実確認につながることもある

障害年金では診断書が非常に重要ですが、 審査の過程で必要に応じて診療記録などが確認されることがあります。

過去の状態を確認する必要がある場合には、 医療機関に当時のカルテや入院時の記録が残っていないか、 確認を検討する意味があります。

具体的にどのような資料が残っている可能性があるか、 また、それらを請求手続でどのように考えるかについては、 次の関連記事で詳しく説明しています。

8.5つの事例から見えてくること

厚生労働省の調査報告書で紹介された事例を並べてみると、 障害等級は一つの事情だけで決められているわけではないことが分かります。

就労

働いているかどうかだけではなく、仕事内容、勤務状況、欠勤、援助や配慮などを確認します。

一人暮らし

独居そのものではなく、実際の日常生活能力や援助・支援の状況を確認します。

福祉サービス

利用の有無だけではなく、現在受けている支援や必要とされる支援を確認します。

診断書

数字だけではなく、日常生活や就労についての具体的な記載内容も重要です。

診療記録

必要に応じて、カルテや入院記録などが事実確認の材料になる場合があります。

全体の整合性

診断書、申立書、就労状況などを含め、資料全体から状態が確認されます。

60秒で確認|なぜ「目安」通りに決まらない?

「目安2級なら必ず2級になるの?」というポイントを、 ショート動画で簡潔に解説しています。

9.申請前に確認したいポイント

今回の厚生労働省の調査から考えると、 精神障害の障害年金を申請するときには、 「診断書の数字が何点か」だけを見るのではなく、 次のような点を確認しておくことが大切です。

  • 日常生活の困りごとが具体的に伝わっているか
    「できる・できない」だけでなく、声かけ、見守り、家族の援助なども含めて確認します。
  • 就労している場合、その実態が伝わっているか
    勤務時間、仕事内容、欠勤、職場の配慮や援助なども重要です。
  • 一人暮らしの実態が伝わっているか
    独居という形式だけではなく、食事、掃除、金銭管理、通院などの実際の状況を整理します。
  • 受けている援助・必要な支援が整理されているか
    家族、職場、福祉サービスなどからどのような援助を受けているかを確認します。
  • 診断書と申立書の内容に大きなずれがないか
    同じ事実を一字一句同じように書くという意味ではなく、 実際の状態がそれぞれの資料から適切に伝わるかを確認します。
「2級になる書き方」を作ることが目的ではありません。

大切なのは、実際の日常生活・就労・援助の状況を整理し、 医師にも現在の状態を適切に伝えたうえで、 事実に沿った資料を提出することです。

10.まとめ|「目安」だけでは障害等級は決まらない

精神障害の障害年金では、 「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」から 障害等級の目安が示されます。

しかし、目安はあくまで等級判定の出発点の一つです。

厚生労働省の調査報告書で紹介された事例を見ると、

  • 一般雇用での実際の働き方
  • 欠勤などの勤務状況
  • 一人暮らしの実態
  • 家族や周囲からの援助
  • 福祉サービス等の利用状況
  • 診断書と具体的な生活状況との関係
  • 必要に応じて確認される診療記録

など、さまざまな事情が確認されています。

そのため、 「診断書の数字だけを見て2級だと思った」 「働いているから障害年金は無理だと思った」 といった一部分だけで判断するのではなく、 日常生活・就労・援助の実態を資料全体から確認することが大切です。

障害年金の申請について相談したい方へ

こもれび社労士事務所では、精神障害を含む障害年金のご相談に対応しています。

「診断書を受け取ったが、内容をどう見ればよいか分からない」
「働いているので対象になるのか不安」
「日常生活の状況をどう整理すればよいか分からない」

といった場合も、現在の資料や状況を確認しながら整理します。

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参考資料・出典

※本記事は2026年9月時点で公表されている資料をもとに作成しています。 個々の認定結果は、診断書や申立書などの内容を踏まえて個別に判断されます。

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