精神障害の障害年金で不支給が増えた?厚労省調査から見る2級・3級・非該当の分かれ目

「精神障害の障害年金は、以前より不支給になりやすくなったのでしょうか」
うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害などで障害年金を検討している方にとって、 「2級になるのか」「3級なのか」「働いていたら不支給になるのか」は、 とても気になるところだと思います。
厚生労働省は、令和6年度に決定された障害年金について、 新規裁定1,000件を無作為抽出して認定状況を調査しました。
令和5年度の障害年金業務統計では、精神障害の等級非該当割合は6.4%でした。 厚生労働省も、令和6年度の調査について、 精神障害の非該当割合の上昇が大きいと整理しています。
ただし、この数字だけを見て 「精神障害の障害年金が一律に厳しくなった」 と結論づけることはできません。
この記事では、厚生労働省の調査報告書と 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」をもとに、 2級・3級・非該当の判断で何が見られているのかを整理します。
1.令和6年度調査で精神障害の非該当割合は12.1%
厚生労働省は、令和6年度に決定された障害年金について、 新規裁定1,000件を無作為抽出して調査しました。
診断書の種類別に見ると、結果は次のとおりです。
| 診断書の種類 | 件数 | 等級非該当 | 非該当割合 |
|---|---|---|---|
| 精神障害 | 703件 | 85件 | 12.1% |
| 外部障害 | 194件 | 21件 | 10.8% |
| 内部障害 | 131件 | 27件 | 20.6% |
この統計は個別の病名ごとの集計ではなく、 診断書の種類による区分です。 また、精神の障害用診断書には知的障害も含まれます。
そのため、「うつ病だけの不支給率」「双極性障害だけの不支給率」 「発達障害だけの不支給率」を示す数字ではありません。
さらに、1人について複数の診断書が使われている場合には、 診断書ごとに件数が計上されるため、 上の件数の合計は新規裁定1,000件とは一致しません。
2.令和5年度6.4%から「増えた」といえる?
厚生労働省の調査報告書では、 精神障害の等級非該当割合について、次の数字が示されています。
厚生労働省は、この結果について、 令和5年度と比較して 「精神障害の非該当割合の上昇が大きい」 と整理しています。
令和6年度の12.1%は、無作為抽出した新規裁定1,000件を分析した調査結果です。 一方、令和5年度の数字は障害年金業務統計に基づくものです。
また、割合が上昇したという事実だけから、 「認定基準が厳しくなった」 「精神障害を不支給にする方針になった」 といった原因まで断定することはできません。
重要なのは、単に「何%だったか」だけではなく、 実際に非該当となった事案で、どのような判断が行われていたのか です。
3.非該当85件のうち75.3%で確認されたこと
今回の厚生労働省調査で、特に注目したいのがこの部分です。
精神障害で等級非該当となった85件について、 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の 障害等級の目安との関係が確認されました。
この64件は、次の2つを合わせたものです。
| ガイドラインの目安との関係 | 件数 | 85件中 |
|---|---|---|
| 目安より下位の等級に判断され、非該当 | 32件 | 37.6% |
| 目安が2つの等級にまたがり、下位の等級に判断され、非該当 | 32件 | 37.6% |
| 合計 | 64件 | 75.3% |
これは、 精神障害で申請した人の75.3%が不支給になった という意味ではありません。
精神障害の診断書区分703件のうち非該当だった85件をさらに分析し、 その85件の中で64件が上記2類型に該当した、という数字です。
つまり今回の調査は、 ガイドライン上の「目安」と、最終的な認定結果が必ず一致するわけではない ことを改めて示しています。
4.「障害等級の目安」はどのように決まる?
精神障害・知的障害の障害年金では、 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が使われています。
診断書に記載される主な項目のうち、 次の2つの組み合わせから 「障害等級の目安」が示されます。
日常生活能力の程度
精神障害によって日常生活がどの程度制限されているかを、 診断書上で5段階により評価します。
日常生活能力の判定
食事、清潔保持、金銭管理、通院・服薬、 対人関係、安全保持、社会性などの項目について評価し、 その平均を用います。
この2つを組み合わせた表から、 「1級」「2級」「2級又は3級」「3級」などの目安が示されます。
たとえば、 「日常生活能力の判定平均が2.5以上なら2級」 「日常生活能力の程度が(3)なら2級」 というように、1つの数字だけで等級が自動的に決まるものではありません。
5.「目安2級」でも必ず2級になるわけではない
ガイドラインの表は、あくまで 「障害等級の目安」です。
最終的な等級は、その目安だけで機械的に決めるのではなく、 診断書などに記載された内容を踏まえて 総合的に評価されます。
日常生活能力の程度・判定などを確認
ガイドラインの表に当てはめる
療養・生活環境・就労・支援状況なども考慮
そのため、 「目安が2級だから必ず2級になる」わけではありません。
反対に、働いている、一人暮らしをしている、といった 1つの事情だけを取り出して 「だから障害年金は無理」と判断するのも適切ではありません。
6.障害基礎年金と障害厚生年金で結果が違うことがある
精神障害の障害年金を考えるときに、 非常に重要なのが 障害基礎年金と障害厚生年金の違いです。
| 障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
|---|---|---|
| 1級 | あり | あり |
| 2級 | あり | あり |
| 3級 | なし | あり |
たとえばガイドラインの目安が 「2級又は3級」となる場合があります。
障害厚生年金であれば、総合評価の結果として3級になる可能性があります。 一方、障害基礎年金には3級がありません。
ガイドラインでは、障害基礎年金について、 目安の表で「3級」となる部分は 「2級非該当」として扱います。
そのため、同じような診断書の評価であっても、 どの制度で請求するかによって 「3級」と「非該当」という違いが生じることがあります。
7.働いているだけで不支給になるわけではない
精神障害の障害年金について、 ご相談で特に多いのが 「働いていたら障害年金はもらえませんか」 という質問です。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、 労働に従事していることだけをもって、 直ちに日常生活能力が向上したと捉えない考え方が示されています。
実際には、仕事の種類や内容、就労状況、職場で受けている援助、 他の従業員との意思疎通の状況なども確認したうえで、 日常生活能力を判断するとされています。
実際には、たとえば次のような事情が確認されます。
- どのような仕事をしているか
- 仕事内容や業務量はどうか
- 勤務日数・勤務時間はどうか
- 欠勤・遅刻・早退などはあるか
- 職場からどのような配慮を受けているか
- 仕事を続けるために、周囲からどのような援助や配慮を受けているか
- 職場で意思疎通ができているか
- 就労によって帰宅後や休日の生活にどのような影響が出ているか
雇用形態や収入額だけではなく、 実際にどのような状態で働いているのかを見ることが重要です。
8.一人暮らし・福祉サービスの有無も単独では決まらない
同じように、 「一人暮らしだから障害年金は難しい」 と単純に考えることもできません。
一人で暮らしているように見えても、 実際には家族から食事や買い物の援助を受けていたり、 金銭管理を手伝ってもらっていたり、 通院や行政手続きを支援してもらっていることがあります。
また、福祉サービスを利用していない場合でも、 「利用していない=援助が必要ない」 とは限りません。
生活環境を見るときのポイント
- 一人暮らしになった経緯
- 家族・親族から受けている援助
- 食事・掃除・洗濯・買い物の実際
- 金銭管理や各種手続きができているか
- 通院・服薬を自分だけで管理できるか
- 福祉サービスを利用していない理由
- 現在受けている援助や、生活を維持するために必要な支援は何か
表面的な「独居」「サービス利用なし」という情報だけではなく、 その背景にある実際の生活状況が重要になります。
9.日常生活では、受けている援助や必要な支援も確認されます
精神障害の障害年金では、 日常生活の場面で「できているか」だけでなく、 どのような援助や支援を受けながら生活しているのか も重要な確認事項になります。
たとえば、食事、服薬、通院、金銭管理などができているように見えても、 家族からの声かけ、準備、同行、見守りなどが継続的に必要なことがあります。
ガイドラインでは、独居であっても家族等の援助や福祉サービスを受けることで生活できている場合や、 現に受けていなくても支援が必要な状態にある場合には、 その支援の状況や必要性を踏まえて判断する考え方が示されています。
診断書や病歴・就労状況等申立書では、 何ができるかだけでなく、どのような援助・配慮があって生活が成り立っているのか を、実態に即して整理することが大切です。
10.今回の調査から申請前に確認したいこと
今回の厚生労働省調査から分かるのは、 精神障害の障害年金を 「診断書の数字だけ」で判断するのは難しい ということです。
日常生活能力の程度・判定
診断書の評価と実際の生活状況に大きなズレがないか。
生活環境
一人暮らしかどうかだけでなく、家族等の援助の実態まで整理する。
就労状況
働いているかどうかだけでなく、仕事内容・配慮・欠勤・援助などを見る。
療養状況
症状の経過、通院、服薬、必要に応じて確認される診療記録などを整理する。
診断書以外の資料との整合性
病歴・就労状況等申立書などと診断書の内容が食い違っていないか確認する。
大切なのは、認定されるように状態を重く見せることではありません。
実際の生活や就労で困っていること、 受けている援助や配慮を、診断書や申立書に正確に反映できているか を確認することです。
「目安2級」でも3級・非該当になるのはなぜ?
厚生労働省の調査報告書には、 一般就労、一人暮らし、福祉サービス、診療録などを踏まえて 判断された匿名事例も掲載されています。
次の記事では、公的資料に掲載された実例をもとに、 目安と実際の認定結果が分かれたポイントを詳しく見ていきます。
まとめ|「数字」だけで2級・3級・非該当は決まらない
- 令和6年度調査では、精神障害の診断書区分703件のうち85件、12.1%が等級非該当だった
- 厚生労働省は、令和5年度6.4%と比較して精神障害の非該当割合の上昇が大きいと整理している
- ただし、この結果だけから「審査が一律に厳格化された」と断定することはできない
- 精神障害の非該当85件のうち64件、75.3%は、ガイドラインの目安との関係で下位等級側に判断された事案だった
- 75.3%は「精神障害の申請者の75.3%が不支給」という意味ではない
- ガイドラインの障害等級はあくまで「目安」であり、最終的には総合評価される
- 一般就労や一人暮らしだけで直ちに非該当となるわけではない
- 障害基礎年金には3級がないため、「2級又は3級」の目安では制度の違いが結果に影響することがある
障害年金の診断書を見ると、 「日常生活能力の判定平均はいくつか」 「程度は(3)か(4)か」 と数字に目が向きがちです。
しかし、精神障害の認定では、 生活・療養・就労・援助の実態を含めて確認することが重要です。
診断書や生活状況を一緒に整理します
「自分の状態は障害年金の対象になるのか分からない」
「診断書の内容をどう見ればよいか分からない」
「働いているので申請できるか心配」
こもれび社労士事務所では、 診断書だけでなく、これまでの経過や日常生活、就労状況などを確認しながら、 障害年金の申請を検討します。
LINEで相談する全国対応/LINEで資料を確認しながらご相談いただけます
主な公的資料
- 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」
- 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書 概要」
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
※本記事は公表されている資料をもとに制度・統計を一般的に解説したものです。 個別の障害等級や認定結果を保証するものではありません。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
※ 個人のご相談(労災・後遺障害・障害年金)/全国対応(LINE・オンライン)
※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


