障害年金の遡及請求で入院記録は使える?認定日頃の状態を確認する資料

障害年金の遡及請求で入院記録やカルテ、退院時サマリーなどを確認する様子を表現した水彩画風イラスト

「障害認定日頃に精神科へ入院していました。入院記録が残っていれば、 障害年金を遡って請求できますか?」

障害年金の遡及請求を検討している方から、このようなご相談をいただくことがあります。

結論からいうと、障害認定日頃の入院記録や退院時の資料は、 当時の症状、治療経過、日常生活・就労への影響を整理する手がかりになることがあります。

ただし、「入院していた」「入院記録が残っている」という事実だけで、 障害年金の等級に該当していたことや、遡及請求が認められることが決まるわけではありません。

障害認定日による請求では、原則として障害認定日以後3か月以内の現症を示す診断書が重要になります。 なお、20歳前に初診日がある場合には、障害認定日頃の診断書について 障害認定日前後3か月以内の現症を示す診断書を用いる取扱いがあります。 そのうえで、カルテ、入院記録、退院時サマリー、紹介状、過去の診断書などを確認し、 認定日頃の状態を整理していくことになります。

この記事では、障害年金の遡及請求で入院記録をどのように考えればよいのか、 どの資料を確認しておきたいのかを、社会保険労務士が解説します。

障害年金の遡及請求で入院記録は使える?

障害年金で一般に「遡及請求」と呼ばれているものは、 障害認定日による請求を行い、障害認定日時点で障害等級に該当していたと認められる場合に、 過去の一定期間についても年金の支給を受けるものです。

認定日頃に入院していた場合、その入院に関する資料には、 当時の症状、治療内容、入院理由、生活状況、退院時の状態などが記録されていることがあります。

そのため、障害認定日頃の状態を整理するための資料として確認する意味があります。

ただし、今回確認した日本年金機構等の公開資料では、 入院診療録、退院時サマリー、看護記録などを、 障害認定日頃の診断書の代わりとして一律に使用できるという取扱いは確認できません。

「入院資料があるから遡及請求できる」と考えるのではなく、 認定日頃の診断書を中心として、入院資料をどのように整理に役立てられるか と考えるのが適切です。

遡及請求で中心になるのは「障害認定日頃の診断書」

入院記録を考える前に、まず押さえておきたいのが診断書です。

障害認定日による請求では、原則として、 障害認定日以後3か月以内の現症を示す診断書が必要になります。

ただし、20歳前に初診日がある場合には、障害認定日頃の診断書について 障害認定日前後3か月以内の現症を示す診断書 を用いる取扱いが示されています。

また、障害認定日から1年以上経過して障害認定日による請求をする場合には、 認定日頃の診断書に加えて、 請求日前3か月以内の現症を示す診断書も必要になります。

1
障害認定日頃の状態を確認

原則として認定日以後3か月以内の現症を示す診断書を確認します。 20歳前に初診日がある場合は、認定日前後3か月以内となる取扱いがあります。

2
入院記録などを確認

当時の症状・治療・生活状況などを整理します。

3
現在の状態も確認

認定日から1年以上経過している場合は、現在の診断書も必要になります。

つまり、入院記録は重要な手がかりになり得ますが、 遡及請求の中心となる資料は、あくまで認定日頃の障害状態を示す診断書です。

入院記録から確認できる可能性があること

入院関係の資料には、外来診療だけでは分かりにくい情報が残っていることがあります。

確認したい事項 記録されている可能性がある内容
入院理由 どのような症状・状態から入院が必要と判断されたのか
当時の症状 抑うつ、不安、意欲低下、幻覚・妄想などの症状やその程度
治療内容 服薬、検査、面接、療養上の指導など
生活状況 食事、清潔保持、服薬、対人関係等に関する記録が残っている場合があります
援助の状況 医療スタッフや家族からどの程度の支援を受けていたかに関する記録
就労・就学 休職、退職、欠勤、就学困難等についての記録
退院時の状態 症状の改善・残存状況、退院後の通院や支援の必要性
転院・紹介 前医・後医とのつながりや治療経過

こうした情報が認定日頃の記録として残っていれば、 当時の状況を振り返る際の手がかりになる場合があります。

「障害認定日頃に入院していた=2級以上」ではありません

ここは、特に誤解されやすいところです。

精神科に入院していたという事実だけで、 障害年金2級以上になるという基準はありません。

精神の障害については、障害認定基準に基づき、 症状、治療や病状の経過、具体的な日常生活状況などを踏まえて総合的に認定されます。

たとえば、同じ「入院」という事実があっても、

  • 何のために入院したのか
  • どの程度の症状だったのか
  • どのくらい援助が必要だったのか
  • 入院期間はどのくらいだったのか
  • 退院後はどのような生活だったのか
  • 就労・就学はどのような状態だったのか

などは人によって異なります。

そのため、入院歴は重要な事情の一つになり得ますが、 入院歴だけから障害等級を判断することはできません。

精神障害では、入院中の何を確認する?

精神の障害用診断書では、日常生活能力について複数の項目から確認します。

主な項目は、次の7つです。

  • 適切な食事
  • 身辺の清潔保持
  • 金銭管理と買い物
  • 通院と服薬
  • 他人との意思伝達・対人関係
  • 身辺の安全保持・危機対応
  • 社会性

入院中の看護記録などに、これらと関係する具体的な状況が記録されていることがあります。

たとえば、食事を自分で取れていたか、清潔保持に援助が必要だったか、 服薬管理ができていたか、他者との関係にどのような困難があったか、 危機対応のためにどのような支援が必要だったか、などです。

ただし、看護記録の内容をそのまま障害年金の 「日常生活能力の判定」の数字に置き換える公式なルールはありません。

また、病院は医療スタッフによる支援がある環境です。 入院中にできていたことだけを見て、 退院後の日常生活でも同じようにできると考えることは適切ではありません。

入院前、入院中、退院後の生活をつなげて確認することが大切です。

遡及請求で確認しておきたい入院関係資料

過去に入院歴がある場合には、病院へいきなり障害年金の診断書を依頼する前に、 どのような資料が残っているか確認してみる方法があります。

※記録の種類や記載内容は、入院先の医療機関、診療科、入院時期等によって異なります。 下記は、資料が残っている場合に確認したい主な項目です。

資料 確認したいポイント
診療録(カルテ) 症状、診断、治療内容、病状経過、生活・就労状況
入院記録 入院理由、入院期間、治療経過、退院時の状態
退院時サマリー 診断、入院経過、治療、退院時の状態、今後の治療方針
看護記録 食事、清潔、服薬、対人面、援助、安全面等の具体的状況
過去の診断書 当時の傷病名、症状、生活・就労への影響
診療情報提供書・紹介状 前医・後医、症状、診断、治療経過、転院理由
処方・治療記録 治療時期、服薬内容、治療の継続性

すべてが必要というわけではありません。 また、これらの資料が単独で認定日頃の診断書の代わりになるという意味でもありません。

何が残っているかを確認し、認定日頃の状態をどこまで確認できるかを見る ことが第一歩です。

昔のカルテがあれば、認定日頃の診断書を書いてもらえる?

「昔のカルテが残っているなら、障害認定日頃の診断書も必ず書いてもらえる」 とは限りません。

過去の診療録や入院記録に、

  • 当時の症状
  • 治療内容
  • 病状の経過
  • 生活状況
  • 就労状況

などが記録されていれば、 医師が過去時点の状態を確認する際の資料になる場合があります。

しかし、実際に認定日頃の診断書を作成できるかどうかは、 残っている診療記録や当時の診療状況等によって異なります。

カルテがあることと、障害年金の認定日頃の診断書を作成できることは、 必ずしも同じではありません。

そのため、最初から「障害年金の遡及請求用の診断書を書いてください」と依頼するのではなく、 まず当時の記録がどの程度残っているか確認してから進める 方法も考えられます。

遡及請求を検討している方へ

昔のカルテや入院資料を、どう確認すればよいか分からない場合

こもれび社労士事務所では、資料を確認しながら、 初診日・障害認定日・認定日頃の状態を整理するご相談をお受けしています。

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カルテや入院記録が残っていない場合はどうする?

昔の入院について問い合わせたところ、 「カルテはすでに残っていません」と言われることもあります。

この場合、まず注意したいのは、 初診日の証明と、障害認定日頃の障害状態の証明は分けて考える必要がある という点です。

初診日については、初診医療機関の証明が取得できない場合に、 一定の参考資料を用いて確認する取扱いがあります。

一方で、認定日頃の診断書が作成できない場合に、 初診日と同じ仕組みで入院資料や第三者証明を代用できるという一般的な取扱いは、 今回確認した公開資料では確認できません。

ただし、当時の医療記録が一部残っていない場合でも、

  • 過去の診断書の控え
  • 紹介状・診療情報提供書
  • 退院時に渡された資料
  • 他院に残っている診療録
  • 処方内容が分かる資料
  • 傷病手当金関係の資料

などから当時の経過を整理できる場合があります。

昔のカルテは何年間保存される?

「カルテは5年で必ずなくなる」と思われている方もいますが、 少し整理が必要です。

医師法では、医師が作成した診療録について5年間の保存義務が定められています。

また、保険医療機関及び保険医療養担当規則では、 患者の診療録について完結の日から5年間保存することとされています。

記録 主な保存期間 注意点
医師が作成した診療録 5年 医師法第24条の保存義務
保険医療機関の患者の診療録 完結の日から5年 保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条
保険医療機関の帳簿・書類その他の記録 完結の日から3年 ただし、患者の診療録は完結の日から5年
診療に関する諸記録 文書の種類により異なる 医療法施行規則上、原則2年とされる記録等があります

5年は「5年経過後に必ず廃棄しなければならない」という意味ではありません。

医療機関によっては、保存義務期間を超えてカルテ等が残っていることもあります。 一方で、退院時サマリー、看護記録、紹介状などについて、 すべて一律に「必ず5年間残っている」と考えることもできません。

数年以上前の受診・入院であっても、 最初から「もう残っていないだろう」と決めつけず、医療機関へ確認してみる ことが大切です。

病院へ問い合わせる前に確認したいチェックリスト

遡及請求を検討している場合には、次のような点を整理してから病院へ問い合わせると、 状況を把握しやすくなります。

  • 障害年金上の初診日はいつ頃か
  • 障害認定日はいつになるか
  • 入院した時期はいつからいつまでか
  • 入院先の医療機関はどこか
  • 障害認定日と入院時期はどのくらい近いか
  • 当時の診療録が残っているか
  • 入院記録が残っているか
  • 退院時サマリー等が残っているか
  • 過去の診断書の控えが残っているか
  • 紹介状・診療情報提供書が残っているか
  • 入院前後に別の医療機関を受診していないか
  • 当時の休職・退職・欠勤等が分かる資料がないか
  • 傷病手当金を受けていなかったか
  • 現在の診断名と当時の診断名が同じか違うか

大切なのは、一つの資料だけで判断するのではなく、 受診・入院・休職・生活状況などを時系列でつなげて確認することです。

よくある質問

障害認定日頃に入院していれば、遡及請求できますか?

入院していたという事実だけで、遡及請求が認められるわけではありません。

障害認定日頃の診断書を中心に、当時の症状、日常生活状況、 治療経過などを確認する必要があります。

精神科に入院していたら障害年金2級になりますか?

入院歴だけで2級と決まる基準はありません。

症状、治療・病状の経過、日常生活能力、生活環境、 就労状況などを踏まえて総合的に判断されます。

退院時サマリーだけでも遡及請求できますか?

退院時サマリーは、当時の診断や治療経過、退院時の状態を確認する手がかりになる場合があります。

ただし、退院時サマリーだけで障害認定日頃の診断書を不要にできるという一般的な取扱いは確認できません。

看護記録は障害年金に役立ちますか?

食事、清潔保持、服薬、対人関係、安全面などについて具体的な記録があれば、 当時の生活状況を整理する手がかりになる場合があります。

ただし、看護記録の内容から障害年金の日常生活能力の評価を 機械的に決める公式な換算基準はありません。

カルテが残っていれば認定日頃の診断書を書いてもらえますか?

カルテが残っていることは重要ですが、それだけで認定日頃の診断書を必ず作成してもらえるとは限りません。

記録の内容、当時の診療状況、医療機関の判断等によって異なります。

5年以上前の入院なら、カルテはもうありませんか?

診療録には5年間の保存義務がありますが、5年を過ぎたら必ず廃棄しなければならないという意味ではありません。

保存義務期間を超えて資料が残っている医療機関もありますので、実際の保存状況を確認する必要があります。

昔のカルテがないと遡及請求はできませんか?

「カルテがない=必ず遡及請求できない」と一律に判断することはできません。

まず、認定日頃の診断書を作成できるか、どの医療資料が残っているか、 前後の医療機関にどのような記録があるかなどを確認する必要があります。

まとめ|入院記録は「認定日頃の状態を整理する手がかり」として確認する

障害年金の遡及請求では、 障害認定日頃にどのような状態だったのかを確認することが重要です。

認定日頃に入院していた場合、診療録、入院記録、退院時サマリー、 看護記録、紹介状、過去の診断書などが残っていれば、 当時の症状や治療経過、生活状況を整理する手がかりになる場合があります。

ただし、

  • 入院していたから2級になる
  • 入院記録があれば遡及請求できる
  • 退院時サマリーがあれば診断書はいらない
  • カルテがあれば医師は必ず過去の診断書を書ける

というものではありません。

障害認定日頃の診断書を中心に、医療記録、入院前後の治療経過、 日常生活や就労の状態を時系列で整理することが大切です。

特に、認定日から長い年月が経過している場合には、 いきなり診断書を依頼する前に、 まずどの資料が残っているのかを確認することから始めると整理しやすくなります。

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こもれび社労士事務所では、 障害年金の初診日、障害認定日、過去の診断書、 カルテ・入院記録などを整理しながら、 障害認定日による請求を検討するご相談をお受けしています。

「昔の精神科入院の記録が残っている」 「認定日頃の診断書を書いてもらえるか分からない」 「昔と現在で病名が違う」 「どの資料から確認すればよいか分からない」 という段階でもご相談いただけます。

まずは現在分かっている受診歴や、お手元にある資料から整理していきます。

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参考資料

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