傷病手当金は通算1年6か月|復職して再休職したらどうなる?

傷病手当金の通算1年6か月と復職・再休職の関係を示すイメージ

うつ病、適応障害、その他の病気やけがで休職し、 傷病手当金を受けている方の中には、 いったん復職したものの、体調が悪化して再び休職する という方もいます。

そのときによく出てくるのが、

「一度復職したら、傷病手当金の残りはなくなる?」
「また休職したら、最初から1年6か月もらえる?」
「復職していた期間も1年6か月に含まれる?」
「退職後に再び悪化した場合も同じ?」

という疑問です。

先に結論

2022年1月から、傷病手当金の支給期間は 「支給開始日から通算して1年6か月」 となりました。

そのため、在職中にいったん復職し、 傷病手当金が支給されなかった期間がある場合には、 原則としてその期間は残りの支給日数を減らしません。

同一傷病で再び労務不能となった場合、 支給可能日数が残っていれば、 その残りを受給できる場合があります。

ただし、退職後の「資格喪失後の継続給付」は別です。

退職後に傷病手当金を継続して受けている人が いったん労務可能となった場合には、 その後、同じ傷病で再び労務不能になっても、 原則として継続給付は復活しません。

「在職中の復職」と「退職後の回復」を同じように考えないことが重要です。

1.傷病手当金の「通算1年6か月」とは?

傷病手当金は、 業務外の病気やけがの療養のため仕事ができず、 給与を受けられない場合などに支給される健康保険の給付です。

現在の健康保険法では、 同一の疾病または負傷、およびそれによって発した疾病について、 支給開始日から「通算して1年6か月」 が支給期間とされています。

ここで重要なのが、 「支給開始日からカレンダー上で1年6か月経過したら必ず終了する」 という意味ではない ことです。

現在は、傷病手当金の支給対象となった日数を通算して支給期間を管理する仕組みです。

途中で復職した日や、給与との調整によって傷病手当金が全額支給されなかった日があれば、 原則としてその日は支給可能日数を消費しません。

2.2022年の改正で何が変わった?

2022年1月1日から、 傷病手当金の支給期間が通算化されました。

項目 改正前 改正後
基本的な考え方 支給開始日から暦上1年6か月 支給開始日から通算1年6か月
途中で復職 復職していても期間が進む 傷病手当金が支給されなければ、原則として残日数は減らない
再休職 当初の暦上の満了日まで 残日数があれば、当初の1年6か月を超えて支給される場合がある

この改正によって、 治療しながら一時的に復職する人について、 より柔軟に所得保障を受けられる仕組みになりました。

古い情報には注意してください。

インターネット上には現在でも、 「傷病手当金は支給開始から1年6か月経てば終了」 という改正前の説明が残っていることがあります。

3.「1年6か月=548日」ではない

ここも意外と知られていません。

傷病手当金の 「通算1年6か月」は、一律に548日という意味ではありません。

最初の支給開始日から暦に従って1年6か月を数え、 その期間に相当する日数を 総支給可能日数として確定します。

そのため、 支給開始日によって総日数は異なります。

厚生労働省Q&Aの例

2022年3月4日が支給開始日の場合、 2023年9月3日までの 549日間 が支給期間として示されています。

別の公表資料では、 支給開始日によって547日、546日となる例も示されています。

したがって、 「自分にはあと何日残っているのか」を確認するときには、 単純に548日から引くのではなく、 最初の支給開始日と実際の支給済日数 を確認する必要があります。

4.復職した期間はどうなる?

在職中に復職して、 その期間について傷病手当金が支給されなかった場合には、 原則として残りの支給日数は減りません。

傷病手当金を受給
↓
支給された日数だけ残日数が減る
↓
いったん復職
↓
傷病手当金が支給されない
↓
原則として残日数は減らない
↓
同一傷病で再休職
↓
要件を満たせば残日数の範囲で再受給できる場合がある

復職期間が10日、3週間、2か月など、 期間の長さだけによって取扱いが変わるという 一律の基準は公表資料では確認できません。

5.復職後に再休職した場合

同一傷病で再び休職した場合に、 残りの傷病手当金を受給するためには、 主に次のような点を確認します。

  • 被保険者資格が継続しているか
  • 同一傷病またはそれによって発した疾病なのか
  • 療養のため労務不能なのか
  • 傷病手当金の支給可能日数が残っているか
  • 休業期間について給与が支払われているか
  • 医師の意見や事業主証明などで労務不能期間を確認できるか

つまり、 「以前に傷病手当金をもらっていたから、自動的に再開される」わけではありません。

再休職した期間について、 改めて支給要件を満たしているかが確認されます。

6.具体例|3か月受給→2か月復職→再休職

分かりやすくするため、 次の例で考えてみます。

モデルケース
  • 初回支給開始日:2026年4月1日
  • この開始日を基準に計算した総支給可能日数:548日
  • 同一傷病
  • 被保険者資格は継続
  • 復職中は傷病手当金の支給なし
期間 状態 残日数
2026年4月1日~6月30日 傷病手当金を91日受給 457日
2026年7月1日~8月31日 62日間復職・傷病手当金なし 457日のまま
2026年9月1日~ 同一傷病で再休職 要件を満たせば残457日を使用

このケースでは、 復職した62日間について傷病手当金が支給されていないため、 原則としてその62日間は残日数を減らしません。

そのため、 再休職後に支給要件を満たし続ければ、 当初のカレンダー上の「1年6か月後」を超えて 傷病手当金が支給されることがあります。

※上記は制度を理解するための単純化したモデルです。 実際の支給日数・支給期間は支給開始日、支給歴、報酬等によって異なります。

▶ 動画でも分かりやすく解説しています

7.再休職したら待期3日はやり直す?

傷病手当金では、 最初に連続する3日間の待期を完成する必要があります。

では、一度復職したあと再び同じ病気で休職した場合、 もう一度3日間待たなければならないのでしょうか。

同一傷病について最初の待期がすでに完成している場合は、 一般に、再休職のたびに新たな待期3日を取り直す扱いにはなりません。

ただし、 後の傷病が本当に「同一傷病」なのか、 別の傷病として扱われるのかによって、 確認が必要になる場合があります。

ここは、 「休んでいるか」と「傷病手当金が実際に支給されたか」を 分けて考える ことが重要です。

休業日の状況 傷病手当金 残日数
報酬なし 全額支給 1日減る
報酬が傷病手当金日額以上 全額不支給 減らない
報酬が傷病手当金日額未満 差額支給 1日減る
復職して実際に勤務 原則として支給対象外 減らない
「有給休暇を使った=必ず1日消費」ではありません。

給与との調整によって傷病手当金が全額不支給となった日は、 原則として支給期間を減らしません。

一方、給与との差額として傷病手当金が一部でも支給された場合には、 その日は支給期間を1日消費します。

9.再発は「同一傷病」になる?

傷病手当金では、 「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病」 について支給期間を考えます。

しかし、 同一傷病かどうかは 診断書に書かれた病名だけで決まるものではありません。

たとえば、

  • 前回の傷病手当金終了時の症状
  • その後の治療経過
  • 通院や服薬の状況
  • 復職後の勤務状況
  • 通常の生活ができていた期間
  • 前後の疾病の医学的な関係

などを踏まえて判断されます。

「診断名が同じ=必ず同一傷病」ではありません。
「診断名が違う=必ず別傷病」でもありません。

最終的には、 個別の治療経過などを踏まえて保険者が判断します。

10.社会的治癒とは?

同一傷病を考える際に、 「社会的治癒」 が問題になることがあります。

医学的に完全に治っていなくても、 症状が消失または安定し、 相当期間にわたって一般の人と同じように勤務・生活できていた場合には、 その後の再燃を新たな傷病として扱うことがあります。

公表されている社会保険審査会の事例では、 長期間にわたって通常勤務・社会生活を続けていたことなどから、 社会的治癒が認められた例があります。

「○か月復職すれば社会的治癒」という固定基準は確認できません。

数日、数週間、数か月復職したという期間だけで、 自動的に別傷病になるわけではありません。

11.別の病気で休職した場合は?

傷病手当金の支給期間は、 基本的に疾病等ごとに判断されます。

そのため、 医学的・制度上、本当に別の傷病と判断されれば、 以前の病気の残日数とは別に、 新しい傷病について支給期間が問題となる場合があります。

ただし、 病名が違っていても、 以前の病気から直接発した疾病などと判断されれば、 同じ支給期間の枠で扱われることがあります。

病名を変えれば新しく1年6か月になる、という制度ではありません。

12.重要|退職後の傷病手当金は別ルール

今回の記事で、 特に注意していただきたいところです。

ここまで説明してきた 「復職している間は残日数を減らさず、 再休職したときに残りを使える場合がある」 という考え方は、 主として被保険者資格が続いている在職中の話です。

退職後に受ける傷病手当金は、 健康保険法上の 「資格喪失後の継続給付」 です。

状況 在職中 資格喪失後
一時的に労務可能になる 無支給期間として残日数を温存できる場合がある 継続給付の継続性が切れる
その後、同一傷病で再び労務不能 残日数の範囲で再支給の可能性 原則として再支給されない

厚生労働省のQ&Aでは、 資格喪失後の継続給付については、 一時的に労務可能となった場合、 治癒したかどうかにかかわらず、 その後、同一傷病で再び労務不能になっても 傷病手当金を支給しない という取扱いが示されています。

「まだ残日数があるから、退職後も再発すればまた使える」とは限りません。

在職中の通算化と、 資格喪失後の継続給付を混同しないことが重要です。

退職日に出勤した場合にも注意

資格喪失後も傷病手当金を継続して受けるためには、 資格喪失時点で傷病手当金を受けているか、 受けられる状態にあることなどが必要です。

そのため、 退職日に実際に出勤して労務可能な状態だった場合には、 原則として資格喪失後の継続給付の入口要件を満たしません。

一方、 退職日に年次有給休暇を取得しているケースでは、 単に「出勤していない」という形式だけではなく、 実際に療養のため労務不能だったのかなどを確認する必要があります。

なお、退職後に新たな会社へ就職して健康保険の被保険者となった場合に、 新たな傷病について傷病手当金を受けられるかは、 以前の資格喪失後継続給付とは別に判断されます。

13.傷病手当金「通算1年6か月」のよくある誤解

よくある誤解 実際の考え方
1年6か月=必ず548日 支給開始日により総支給可能日数は異なる
1年6か月経過すれば必ず終了 無支給期間があれば、それを超えて支給される場合がある
復職期間も残日数が減る 傷病手当金が支給されなければ原則減らない
再休職したら待期3日をやり直す 同一傷病で待期完成済みなら一般に取り直さない
有給を使えば必ず1日減る 全額不支給なら原則減らない。差額支給なら減る
同じ診断名なら必ず同一傷病 治療経過や社会的治癒なども含めて判断
違う診断名なら必ず別傷病 医学的な関連性などから同一・関連傷病となる場合がある
退職後も残日数があれば再発時に使える 資格喪失後に一度労務可能になると、同一傷病の継続給付は原則復活しない

▶ 1分で確認|復職したら傷病手当金の残りは消える?

14.復職・再休職するときに確認しておきたい資料

傷病手当金の残日数や同一傷病性について確認する場合には、 少なくとも次の資料・情報を時系列で整理しておくと分かりやすくなります。

  • 最初に傷病手当金が支給された日
  • これまでの支給決定通知書
  • 傷病手当金が実際に支給された期間
  • 復職した日と再休職した日
  • 出勤簿・勤怠記録
  • 給与明細・賃金台帳
  • 有給休暇を取得した期間
  • 通院・服薬の経過
  • 医師が労務不能と判断した期間
  • 退職している場合は資格喪失日と退職日の勤務状況
「いつ休んだか」だけではなく、 「その日に傷病手当金が実際に支給されたか」を確認することがポイントです。

15.まとめ|復職しても傷病手当金の残りが消えるとは限らない

2022年1月から、 傷病手当金の支給期間は 「支給開始日から通算して1年6か月」 となりました。

  • 1年6か月は一律548日ではない
  • 在職中の復職期間に傷病手当金が支給されなければ、原則として残日数は減らない
  • 同一傷病で再休職した場合、残日数の範囲で再受給できる場合がある
  • 同一傷病で待期完成済みなら、一般に待期3日を取り直さない
  • 給与との調整で全額不支給なら残日数は減らないが、差額支給なら減る
  • 同一傷病かどうかは診断名だけでは決まらない
  • 退職後の資格喪失後継続給付は在職中とは別に考える
特に重要なのは、「在職中」と「退職後」を分けて考えることです。

在職中であれば、一時的に復職した期間を挟んでも、 傷病手当金の残日数を使える場合があります。

一方、資格喪失後の継続給付では、 いったん労務可能となると、 同一傷病についてその後の給付が復活しないのが原則です。

復職・再休職を繰り返しているケースでは、 支給開始日、支給済日数、復職期間、給与、 治療経過などによって結論が変わります。

「1年6か月だからもう終わり」 「まだ残日数があるから必ずもらえる」 と単純に判断せず、 時系列で整理することが大切です。

傷病手当金の支給期間・再休職でお困りの方へ

こもれび社労士事務所では、 傷病手当金の支給期間や再休職、 退職後の継続給付などについて、 個別の資料を確認しながら整理しています。

「一度復職したが、また休職することになった」
「傷病手当金があと何日残っているのか分からない」
「以前と同じ病気として扱われるのか知りたい」
「退職後も傷病手当金を受けられるのか確認したい」

といった場合には、 支給決定通知書、勤務状況、治療経過などを確認しながら整理します。

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参考資料

※本記事は、健康保険法、健康保険法施行規則、厚生労働省・全国健康保険協会等の公表資料をもとに、傷病手当金の支給期間について一般的な制度を整理したものです。実際の支給可否、同一傷病性、労務不能の判断、資格喪失後の継続給付等は、加入している保険者が個別の事実関係・医学的資料等を踏まえて判断します。

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