精神障害の労災はいつ決まる?|審査期間と認定・不認定の関係を公的資料で解説

精神障害の労災の審査期間と認定・不認定の関係、令和6年度の平均処理期間277日を解説するイメージ

「精神障害の労災を申請して、もう半年以上経っています」

「1年近く結果が出ないということは、不支給になりそうなのでしょうか?」

精神障害の労災申請では、調査が長期間に及ぶことがあります。

結果を待っている側からすると、時間が経つほど、

「ここまで長いのは、認定が難しいからではないか」

と不安になるのも自然です。

逆に、

「これだけ長く調査しているのだから、認定される可能性が高いのでは?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、公表されている資料を確認すると、精神障害の労災について、 審査期間の長さだけから認定・不認定を予測できるデータは確認できません。

一方で、精神障害の労災調査そのものに、かなりの時間を要していることは公的資料から確認できます。

この記事のポイント

・令和6年度の精神障害事案の平均処理期間は277日(約9.1か月)
・「平均277日」は、すべての案件が9か月程度で終わるという意味ではない
・精神障害事案について、請求受付から当初決定までの中央値は、今回確認した公表資料では確認できない
・「1年を超えた案件の割合」などの期間分布も、公表資料では確認できない
・精神障害について、支給・不支給別の平均処理期間は確認できない
・したがって「長い=不支給」「長い=認定」とは判断できない
・半年、1年と結果が出ない場合は、期間だけでなく「何の調査が残っているのか」を確認することが重要

1.精神障害の労災は結果が出るまで何か月かかる?

まず、現在確認できる公的な数字を見てみましょう。

2026年5月29日の衆議院厚生労働委員会における厚生労働省の答弁では、 令和6年度の精神障害事案の平均処理期間は277日 と説明されています。

1か月を約30.4日として換算すると、

277日
=約9.1か月

となります。

したがって、

「精神障害の労災は、令和6年度には平均で約9か月かかっていた」

というところまでは、公的資料をもとに説明できます。

注意

これは令和6年度の「平均」です。個別の労災請求について「9か月で結果が出る」という意味ではありません。

2.「平均277日」と「標準処理期間8か月」は別のもの

精神障害の労災について調べていると、 「標準処理期間8か月」 という数字を目にすることがあります。

厚生労働省の過去の政策評価資料では、精神障害事案について標準処理期間8か月という目安が示されていました。

ただし、これは過去の政策評価資料に記載された行政上の目安です。この記事では、2026年9月時点で全国共通の現行ルールとして8か月が運用されていることまでは確認できていません。

しかし、

平均処理期間と標準処理期間は同じものではありません。

標準処理期間は行政上の処理の目安です。

そのため、

  • 8か月を過ぎれば自動的に不支給になる
  • 8か月以内なら認定される
  • 8か月を過ぎれば違法になる

という意味ではありません。

個別の事案では、調査する出来事の数、関係者、医療記録、労働時間、会社との事実関係の食い違いなどによって、必要な調査量が大きく変わります。

3.精神障害の労災処理期間はどう変化してきた?

確認できた公的資料をもとに、精神障害事案の処理期間の推移を整理すると、次のようになります。

年度 平均処理期間等 約月数
平成16年度 341日 約11.2か月
平成17年度 326日 約10.7か月
平成18年度 319日 約10.5か月
平成19年度 289日 約9.5か月
平成20年度 278日 約9.1か月
平成22年度 平均8.6か月 約8.6か月
平成23年度 255日 約8.4か月
平成24年度 245日 約8.1か月
平成25年度 223日 約7.3か月
平成26年度 224日 約7.4か月
平成28年度 216日 約7.1か月
平成30年度 219日 約7.2か月
令和元年度 239日 約7.9か月
令和2年度 255日 約8.4か月
令和3年度 251日 約8.2か月
令和4年度 261日 約8.6か月
令和6年度 277日 約9.1か月

平成23年度の255日から平成28年度には216日まで短縮していました。

ところが、その後は再び長くなり、令和6年度には277日となっています。

年度比較を見る際の注意

古い資料では「請求から支給決定まで」、近年では「請求から決定まで」など資料上の表現に違いがあります。そのため、すべての年度について完全に同じ集計定義で比較できるとは限りません。また、表にない年度は、今回確認した公表資料から単年度の数値を特定できなかった年度です。

4.平均277日なら「半分くらいは9か月以内」に終わる?

ここにも注意が必要です。

平均値と中央値は違います。

平均処理期間が277日であっても、それだけでは「半数の事案が277日以内に終わっている」とは分かりません。

半数がどの程度の期間で決定されているかを知るには中央値が参考になります。しかし、今回確認した厚生労働省の公表資料・国会答弁では、精神障害事案について、請求受付から当初決定までの中央値は確認できませんでした。

また、今回確認した公表資料では、精神障害事案について、

  • 1年を超えた案件の割合
  • 最短・最長の処理期間
  • 処理期間の詳しい分布

も確認できませんでした。

したがって、平均277日という数字だけから、

「半数くらいの案件は277日以内に終わっている」

と単純にいえるわけではありません。

少数の非常に長い案件が平均を押し上げているのか、多くの案件が9か月前後かかっているのかも、平均値だけでは判断できません。

5.審査が長いと不支給になりやすい?

ここが、この記事で最も重要なポイントです。

精神障害の労災を申請して半年、9か月、1年と経過すると、

「これだけ時間がかかっているということは、不支給になりそうなのでは?」

と考えてしまうかもしれません。

しかし、今回確認した公表資料では、精神障害について、

  • 支給決定事案だけの平均処理期間
  • 不支給決定事案だけの平均処理期間
  • 3か月・6か月・9か月・1年超などの期間別認定率
  • 1年以上かかった案件の支給・不支給の内訳
  • 処理期間と認定確率との関係

を示した公的データは確認できませんでした。

精神障害の労災については、審査期間が長いという事実だけから、不支給になる可能性が高いとはいえません。
結論だけ知りたい方へ

精神障害の労災について、審査期間が長いことだけを理由に、
不支給になりやすいとも、認定されやすいともいえません。

精神障害に限定した「支給・不支給別の平均処理期間」や
「1年超事案の認定率」は、公表資料では確認できません。

6.逆に「長く調査している=認定されそう」でもない

反対方向の推測にも注意が必要です。

「不支給ならすぐ決められるはずだから、長く調査しているのは認定の可能性があるからでは?」

と考えることもできます。

しかし、これも公的データからは確認できません。

精神障害の労災では、事実関係そのものを確定するために時間がかかることがあります。

たとえば、本人と会社の説明が食い違っていれば、上司、同僚、人事担当者などへの聴取や、メール、チャット、勤怠記録などの確認が必要になることがあります。

調査量が多いことと、最終的に心理的負荷が「強」と評価されることは別の問題です。

「長い=不支給」でもなければ、
「長い=認定されそう」でもありません。

7.労災全体では「不支給の方が時間がかかる」というデータもある

ここは少し興味深いところです。

2026年5月29日の国会答弁では、令和3年度から令和7年度に決定された初回の療養補償等給付全体について、疾病の処理期間は、

決定 平均処理期間
支給決定 約40日
不支給決定 約120日

と説明されています。

厚生労働省は、支給要件を満たすことが明確な場合には、それ以上の調査を行わず支給決定できる一方、不支給となる場合には他の認定要件についても確認する必要があり、時間を要することがある旨を説明しています。

ただし、この数字を精神障害の労災にそのまま当てはめることはできません。

重要

約40日・約120日という数字は「精神障害だけ」の集計ではありません。一般の疾病などを含む労災全体の数字です。そのため、「精神障害でも不支給は認定の3倍時間がかかる」と説明することはできません。

8.なぜ精神障害の労災調査には時間がかかるのか

精神障害の労災では、単に診断書を確認して認定・不認定を決めるわけではありません。

発病の有無や発病時期、仕事による心理的負荷などについて、多方面から事実関係を確認する必要があります。

典型的には、次のような調査が行われます。

調査 主な確認内容
請求人本人への聴取 出来事、勤務状況、症状、受診経過など
事業場への調査 業務内容、配置、指示系統、ハラスメント対応など
関係者への聴取 上司、同僚、人事担当者、目撃者など
労働時間の確認 タイムカード、PCログ、入退館記録、メールなど
電子資料の確認 メール、チャット、録音、業務日報など
医療機関への照会 診療録、初診時の症状、診断根拠、発病時期など
既往歴の確認 過去の受診歴、再発か新たな発病かなど
医学的判断 対象疾病、発病時期、症状経過など
心理的負荷の評価 出来事の有無、強度、継続性、複数出来事の評価など
専門医の意見 医学的判断が必要な事項など

特に、

  • 本人と会社の説明が食い違っている
  • 複数の関係者から話を聞く必要がある
  • 客観的な労働時間の把握が難しい
  • メールやチャットなど大量の資料を確認する必要がある
  • 発病時期がはっきりしない
  • 複数の出来事を総合的に評価する必要がある

といった場合には、確認すべき事項が増えます。

ただし、ここでも、

「調査項目が多い=認定される可能性が高い」

という意味ではありません。

9.6か月・9か月・1年を超えると特別な管理になる?

「6か月を超えたら署長管理になる」

「1年を超えたら厚生労働省に報告される」

といった話を聞くことがあるかもしれません。

今回確認した公表資料では、現在全国共通で、

  • 3か月で特定の管理に移行する
  • 6か月で署長管理になる
  • 9か月で労働局への報告が必要になる
  • 1年で本省への報告が必要になる
  • 一定期間を超えれば必ず本人へ進捗通知する

とする現行の公開ルールは確認できませんでした。

一方で、厚生労働省がシステムを活用した事案の進行管理や、調査体制の整備、労働局への支援・指導を行っていることは確認されています。

注意

審査請求後の長期未決事案については別途の進行管理に関する通知がありますが、これは労働基準監督署が行う当初の労災認定調査とは別の手続です。本記事では、両者を混同しないよう区別しています。

公表資料で確認できないことを断定しない

「6か月を超えれば署長管理」「1年を超えれば本省管理」などと一律に説明するのは避けた方がよいでしょう。

10.半年以上結果が出ないとき、労基署に確認していい?

結果が出ない状態が続いている場合、担当の労働基準監督署へ進捗状況を問い合わせること自体に問題はありません。

ただし、

「認定されそうですか?」

と結果の見込みを聞くよりも、

  • 現在、大きくどの調査段階にあるのか
  • 自分の側で未提出・未回答のものはないか
  • 本人への追加聴取の予定があるか
  • 追加資料が必要か
  • 医療機関など外部からの回答待ちなのか
  • 今後どのような手続が予定されているか
  • 決定時期について大まかな見通しを示せるか

といった点を確認する方が実務的です。

11.労基署への問い合わせ例

問い合わせる場合には、たとえば次のように伝えるとよいでしょう。

○月○日に精神障害について労災請求をしています。

差し支えない範囲で、現在の調査段階、私の側で追加対応が必要な事項、今後予定されている調査、決定時期のおおよその見通しを教えていただけますでしょうか。

ただし、問い合わせをすれば、すべての調査内容を教えてもらえるわけではありません。

会社や関係者がどのような説明をしたのか、第三者の個人情報、内部での評価、専門医の具体的な意見などは回答されないことがあります。

また、医療機関や関係者からの回答時期にも左右されるため、決定予定日を確約してもらえるとは限りません。

12.結果が遅いなら追加資料をどんどん出した方がいい?

これも注意したいところです。

結果がなかなか出ないと、

「何か足りないのではないか」

「もっと資料を出した方が認定されやすいのではないか」

と考えてしまうことがあります。

しかし、 長期化しているという理由だけで、大量の資料や意見書を繰り返し提出することが適切とは限りません。

追加資料を提出することで、既に提出された資料との関係を改めて整理する必要が生じることもあります。

追加提出を検討しやすいのは、たとえば、

  • 申告した出来事を裏付ける新しい客観資料が見つかった
  • 労働時間や発病時期などについて重要な誤りを訂正する必要がある
  • 新たな関係者や証拠の所在が判明した
  • 労基署から不足している点を指摘された
  • 本人と会社の説明が対立し、争点を絞った補充説明が必要になった

といった場合です。

迷う場合には、提出する前に担当者へ、

「この点について追加資料を提出した方がよいでしょうか」

と確認する方法もあります。

13.1年以上結果が出ないのは珍しい?

ここも、数字を正確に扱う必要があります。

今回確認した公表資料では、

精神障害の労災請求のうち、1年以上かかった案件が何%あるのかは確認できませんでした。

したがって、

「1年以上かかることは珍しくない」

と割合まで推測して説明することはできません。

正確には、

精神障害事案の平均処理期間が令和6年度に277日であることは確認できますが、1年を超えた案件の件数・割合を示す公的な期間分布は、今回確認した資料では確認できませんでした。

と説明するのが適切でしょう。

14.「1年かかっている=不支給」と考えなくていい

ここまでを整理すると、最も重要なのは、

精神障害の労災では、何か月かかっているかだけで、認定・不認定を予測することはできない

という点です。

令和6年度の平均処理期間は277日、約9.1か月でした。

しかし、

  • 1年超の割合
  • 支給事案だけの平均期間
  • 不支給事案だけの平均期間
  • 処理期間別の認定率

は、精神障害に限定した公表資料では確認できません。

そのため、

「長いから不支給になりそう」

とも、

「ここまで長く調査しているから認定されそう」

ともいえません。

15.見るべきなのは「何か月経ったか」より「何の調査が残っているか」

精神障害の労災申請では、結果を待つ期間が長くなるほど、不安が大きくなります。

しかし、処理期間そのものを認定可能性の指標として考えるより、

  • 現在どの段階まで調査が進んでいるのか
  • 本人側に未提出のものがないか
  • 追加聴取が予定されているのか
  • 医療照会など外部からの回答を待っているのか
  • 追加資料が必要なのか
  • 今後どのような手続が残っているのか

を確認する方が重要です。

「何か月待っているか」だけを見るのではなく、

「現在どの調査段階にあり、何がまだ終わっていないのか」

を確認することが大切です。

動画でも解説しています

精神障害の労災で「1年結果が出ないと不支給なのか?」について、 本編とショート動画でも分かりやすく解説しています。

本編|精神障害の労災、1年結果が出ないと不支給?

ショート|労災申請から1年、まだ結果が出ない…不支給のサイン?

よくある質問

精神障害の労災は平均何か月かかりますか?

令和6年度の精神障害事案の平均処理期間は277日で、約9.1か月です。ただし、これは平均値であり、個別の案件が9か月程度で決定されることを意味するものではありません。

1年以上結果が出ないと不支給になりやすいですか?

そのように判断できる公的データは確認できません。精神障害について、1年以上かかった案件の支給・不支給内訳や、期間別の認定率は公表資料では確認できません。

逆に、長く調査されていれば認定される可能性が高いですか?

そうともいえません。調査期間が長いこと自体は、心理的負荷が「強」と評価されたことを意味しません。

半年以上結果が出ない場合、労基署に問い合わせても大丈夫ですか?

進捗を問い合わせること自体に問題はありません。「認定されそうか」と聞くより、現在の調査段階、自分側で未提出のものがないか、追加資料の必要性、今後の手続、おおまかな見通しなどを確認するとよいでしょう。

結果が遅い場合、追加資料を提出した方がいいですか?

長期化しているという理由だけで大量の資料を追加する必要はありません。新しい客観資料が見つかった場合、重要な誤りを訂正する場合、労基署から不足点を指摘された場合などに、追加提出を検討するとよいでしょう。

まとめ|審査期間の長さだけでは労災の結果は分からない

精神障害の労災請求について、令和6年度の平均処理期間は277日、約9.1か月でした。

一方で、精神障害に限定した、

  • 支給決定事案の平均処理期間
  • 不支給決定事案の平均処理期間
  • 1年を超えた案件の割合
  • 処理期間別の認定率

などは、今回確認した公表資料では確認できませんでした。

したがって、

審査が長引いているから不支給になるとは限りません。

一方で、長く調査されているから認定される可能性が高いともいえません。

半年、1年と結果が出ない場合には、期間そのものから結果を予測するのではなく、 「現在どの段階にあり、何の調査がまだ残っているのか」 を確認していくことが重要です。

主な参考資料

資料上の注意

年度によって「請求から支給決定まで」「請求から決定まで」など集計上の表現が異なる資料があります。また、精神障害について、1年超の割合、支給・不支給別平均処理期間、処理期間別認定率などは、今回確認した公表資料では確認できませんでした。そのため、本記事では確認できない数値を推測して補っていません。


精神障害の労災申請についてご相談をお考えの方へ

精神障害の労災では、審査に時間がかかっているという事情だけで、認定・不認定を判断することはできません。

大切なのは、申請からの期間だけではなく、これまで提出した資料、労基署から確認されている事項、現在の調査状況などを整理して考えることです。

こもれび社労士事務所では、うつ病、適応障害、PTSDなど精神障害の労災申請について、これまでの経過や資料を確認しながらご相談をお受けしています。

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※本記事は2026年9月時点で確認できる公表資料をもとに、精神障害の労災請求における処理期間と認定結果との関係を一般向けに整理したものです。個別事案の処理期間や認定結果を予測するものではありません。実際の調査内容や必要資料は事案によって異なります。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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