労災の後遺障害で一番多いのは何級?|14級・12級で55%、13級はなぜ少ない?

労災の後遺障害で多い等級を14級・12級・13級のグラフで示したアイキャッチ

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労災の後遺障害で一番多い等級は何級なのか。 14級・12級で55%を占める理由や、13級が少ない背景、 実際の公開事例を動画で解説しています。

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労災でけがや病気の治療を続けたものの、痛み、しびれ、動かしにくさなどが残った場合、 障害(補償)等給付の対象になることがあります。

いわゆる「労災の後遺障害」です。

では、実際には何級の支給決定が一番多いのでしょうか。

「軽い14級が一番多いのでは?」と思う方もいるかもしれません。 ところが、令和6年度の集計値を確認すると、分布は単純に 「14級、13級、12級……」という順番にはなっていません。

厚生労働省資料に基づく令和6年度の集計では、
障害(補償)等給付の支給決定は19,968件とされています。
最多は14級6,099件、次が12級4,971件でした。
この2等級だけで11,070件、全体の55.44%を占めます。

一方、その間にある13級は596件、全体の2.98%にとどまります。

なぜ、このような分布になるのでしょうか。

この記事では、厚生労働省の統計・障害等級認定基準と、労災保険審査官の決定事案、 労働保険審査会の公開裁決をもとに、 どの等級が多いのか、どのような障害が多いのか、そして件数の多い12級と14級では何が問題になるのか を整理します。

労災の後遺障害で一番多いのは14級

厚生労働省資料に基づく令和6年度の「障害(補償)等給付支給決定件数」の集計値では、 1級から14級までの合計は19,968件とされています。

等級別に並べると、次のようになります。

順位 等級 支給決定件数 構成比
114級6,099件30.54%
212級4,971件24.89%
310級2,422件12.13%
411級2,071件10.37%
58級1,109件5.55%
69級1,015件5.08%
713級596件2.98%
87級433件2.17%
91級383件1.92%
105級261件1.31%
116級254件1.27%
122級153件0.77%
133級112件0.56%
144級89件0.45%

この数字を見ると、 障害等級は「軽い等級ほど順番に件数が多くなる」という分布ではない ことが分かります。

14級と12級だけで全体の55%を占める

特に目立つのが14級と12級です。

  • 14級:6,099件(30.54%)
  • 12級:4,971件(24.89%)
  • 合計:11,070件(55.44%)

つまり、令和6年度の集計値では、 障害(補償)等給付の支給決定の半数以上が12級または14級 でした。

ただし、ここから直ちに 「労災の後遺障害は12級か14級になりやすい」 と個別事案について判断することはできません。

等級ごとに対象となる障害の種類が異なるためです。

14級と12級で55%?ショート動画で解説

なぜ14級と12級が多く、その間の13級は少ないのでしょうか。

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では、なぜ13級は596件しかないのか?

ここで気になるのが13級です。

14級は6,099件、12級は4,971件なのに、 その間の13級は596件しかありません。

これは一見すると不思議ですが、 障害等級は単純に 「症状が少し重くなるたびに14級→13級→12級」 と上がっていく仕組みではありません。

各等級には、それぞれ異なる種類・程度の障害が定められています。 そのため、たとえば局部の神経症状について、 14級の一つ上が13級になる、という関係ではありません。

ここは誤解しやすいポイントです

痛みやしびれなどの局部の神経症状では、 労災の障害等級表上、主に 14級9号と12級12号 が問題になります。
「14級の次だから13級」という仕組みではありません。

したがって、13級が少ない理由を単純に 「13級程度の症状の人が少ないから」 と説明することは適切ではありません。

どの種類の障害が各等級に配置されているのかも含めて、 数字を見る必要があります。

一番多い障害系列は「神経系統の機能又は精神」

では、どのような障害が多いのでしょうか。

同じ集計値では、 「神経系統の機能又は精神」の障害が6,296件 で最多でした。

順位 障害系列・部位 件数
1神経系統の機能又は精神6,296件
2上肢(上肢・手指)4,748件
3下肢(下肢・足指)1,898件
4せき柱・その他体幹骨1,210件
5外貌(上下肢醜状を含む)303件
6耳166件
7眼157件
8胸腹部臓器55件
9口37件
10鼻0件

※上肢・下肢は複数系列をまとめた部位集計であり、この表の各項目を単純合計して全体件数を算出することはできません。

14級の約70%が「神経系統の機能又は精神」

さらに注目したいのが14級です。

14級6,099件のうち、 「神経系統の機能又は精神」の系列は4,269件でした。

14級6,099件のうち
神経系統の機能又は精神

4,269件

約70.0%

この系列には、痛みやしびれなどの局部の神経症状も含まれます。

ただし、4,269件をすべて 「14級9号」そのものの件数とみなすことはできません。

この集計値は「神経系列×14級」の数字であり、 併合・準用等級などが含まれる可能性があるためです。

労災の14級9号と12級12号はどのくらいある?

号別については、厚生労働省「令和6年度労災保険事業年報」の 障害補償一時金受給者数から別の数字を確認できます。

障害 人数 等級全体 割合
12級12号
局部にがん固な神経症状を残すもの
1,049人 12級4,818人 21.77%
14級9号
局部に神経症状を残すもの
4,093人 14級5,862人 69.82%

ここで注意が必要です。

この年報の数字は「受給者」を基に作成された一時金の統計であり、 先ほどの「支給決定件数」とは定義が異なります。

そのため、 6,099件と5,862人、4,971件と4,818人を 同じ母集団の数字として混ぜて計算することはできません。

「12級13号」と検索した方へ|労災では12級12号です

交通事故の自賠責後遺障害では「12級13号」と呼ばれることがあります。 しかし、労災保険の障害等級表では、 局部にがん固な神経症状を残すものは12級12号です。

労災では、局部の神経症状について主に 12級12号と14級9号が問題になります。 制度ごとに号数が異なるため、自賠責の説明をそのまま労災に当てはめない注意が必要です。

労災保険
12級12号:局部にがん固な神経症状を残すもの
14級9号:局部に神経症状を残すもの

この記事では、労災保険の等級表に従って12級12号と表記します。

では、痛みやしびれが残れば14級になる?

ここからが実際の申請では重要です。

14級9号の人数が多いからといって、 「痛みやしびれが残っていれば14級になる」わけではありません。

公開された決定・裁決を見ると、

  • 受傷状況
  • 受傷直後からの症状
  • 診療録上の症状の経過
  • MRI・CT・レントゲン等の画像
  • 知覚障害
  • 筋力
  • 腱反射
  • 筋萎縮
  • 可動域
  • 既往症・加齢性変化
  • 治療経過
  • 医師の医学的意見

などが問題になっています。

重要なのは、 一つの検査結果だけで機械的に等級が決まっているわけではない という点です。

実例① 頚部痛・しびれが残っても14級だった事例

平成26年労第160号では、 外傷性頚部捻挫・腰部挫傷後に、 頚部痛や左上肢・肩・手のしびれなどが残っていました。

MRIでは頚椎の直線化や軽度側弯がみられましたが、 頚髄や椎間板に明確な異常はなく、 反射は正常、筋萎縮や他覚的な知覚障害も確認されませんでした。

鑑定医は神経根障害の可能性を完全には否定しなかったものの、 客観的な裏付けに乏しいと評価しました。

結果

常時疼痛は認められましたが、 12級を裏付ける器質的・客観的所見には乏しいとして、 14級9号の判断が維持されました。

実例② 画像上の異常があっても12級とは限らない

平成26年労第420号では、 左母指基節骨の剥離骨折後に運動時痛が残っていました。

画像上、剥離骨折は確認されていました。 しかし可動域制限はなく、最終的には14級の判断が維持されています。

つまり、

「画像に異常がある」
=
「12級になる」

という単純な関係ではありません。

実例③ 12級が認められた事例では何が見られた?

一方、労災保険審査官の公開決定事案には、 疼痛・しびれなどの神経症状が12級相当と評価された例や、 関節機能障害と合わせて12級が認められた例があります。

右足関節脱臼骨折後に疼痛、しびれ、知覚低下等が残った事例では、 画像上の関節面の変形に加えて、 浮腫性腫脹、放散痛、異常知覚などが確認されていました。

別の指の負傷事例では、 画像上の骨萎縮や軟部組織萎縮が、 長期間続く疼痛を裏付ける他覚的所見として評価されています。

※右足関節脱臼骨折の事例では、神経症状も12級相当と評価されましたが、 関節機能障害との関係から最終的な等級は12級7号として整理されています。

公開事例から読み取れること

12級となった事例では、 単に本人が強い痛みを訴えているだけではなく、 画像・臨床所見・症状の部位や程度などが具体的に結び付けて評価されていました。

ただし、これは公開された事例から読み取れる傾向であり、 「この所見が一つあれば必ず12級になる」という意味ではありません。

MRIでヘルニアが見つかっても非該当になることがある

さらに注意したいのが、 画像所見と業務災害との因果関係です。

平成29年労第453号では、 MRIで腰椎椎間板ヘルニア、X線で腰椎の変形が確認されていました。

しかし、既往の腰痛や退行変性なども検討され、 長く残った疼痛について当該災害との相当因果関係が否定されました。

つまり、

MRIに異常がある
↓
その異常が存在することは確認できる
↓
しかし、それだけで「今回の労災による後遺障害」と決まるわけではない

ということです。

12級・14級・非該当を分けるのは「MRIだけ」ではない

今回確認した公開事例を横断すると、 次のような違いが実際の判断理由として現れています。

見るポイント 12級方向で評価された例 14級にとどまった例 非該当方向の例
画像 関節面変形、骨・軟部組織萎縮など 異常があっても症状との結び付きが弱い 正常範囲の変化、退行変性等
症状との一致 画像・臨床所見と症状が対応 自覚症状はあるが客観的裏付けが乏しい 後から症状が変化・出現
神経学的所見 異常知覚、浮腫、萎縮など 反射正常、筋萎縮なし等でも常時痛を評価 異常所見に乏しい、検査の信頼性に問題
医師の意見 画像・診察・鑑定と整合 診断名だけでは上位等級の根拠にならない 検査等の医学的根拠に乏しい

ただし、この表は公開事例から確認できた傾向を整理したものであり、 12級・14級・非該当を機械的に判定するチェックリストではありません。

実は「症状固定前」の診療経過も重要

後遺障害というと、 症状固定時に作成する診断書だけに目が向きがちです。

しかし、公開裁決を見ると、 それまでの診療経過そのものが判断材料になっています。

たとえば平成30年労第171号では、 施術録に症状がない旨の記録があり、その後に長期間の受診空白がありました。 再受診後には、それまでなかった症状も現れていました。

こうした経過が検討され、 後から訴えられた症状と当初の災害との関係が問題になっています。

また別の事例では、 鎮痛薬の実際の服用状況が 「疼痛がほとんど常時残っていたのか」 を判断する事情として使われています。

症状固定の日だけを見ればよいわけではありません

受傷後から症状固定まで、 どの症状を、いつから、どの程度訴え、どのような検査・治療を受けてきたのか という経過が、後の障害等級判断で問題になることがあります。

「この症状なら14級」「MRI異常なら12級」とは言えない

今回、統計と公開事例を横断して確認すると、 インターネット上で見かけることのある単純な説明には注意が必要です。

よくあるイメージ 実際には
痛みが残れば14級症状の残存、経過、医学的説明、災害との関係等が問題になる
MRIに異常があれば12級画像だけでなく症状・神経学的所見等との整合性が問題になる
ヘルニアがあれば認定既往・変性所見や災害との因果関係も検討される
主治医が12級相当と書けば12級医師の意見も含め、医学資料全体から判断される
長く通院すれば認定される治療期間だけでは災害由来の残存障害を証明できない

まとめ|最多は14級。でも「何級になるか」は数字だけでは分からない

この記事のポイント
  • 令和6年度の集計値では、障害(補償)等給付の支給決定は19,968件とされている
  • 最多は14級6,099件(30.54%)
  • 2位は12級4,971件(24.89%)
  • 12級+14級だけで全体の55.44%
  • 13級は596件(2.98%)で、等級順に件数が並んでいるわけではない
  • 「神経系統の機能又は精神」の障害が6,296件で最多
  • 14級の約70%が同系列
  • 労災の神経症状は12級12号と14級9号が重要
  • MRI等の画像所見だけで等級が決まるわけではない
  • 症状固定前からの診療経過も判断材料になることがある

統計を見ると、12級と14級が非常に多いことは分かります。

しかし、個別のケースで何級に該当するかを考える場合には、 単に傷病名や「痛い」「しびれる」という症状だけを見るのではなく、 受傷から症状固定までの経過、画像、神経学的所見、診療録、既往・変性所見などを資料と対応させて確認すること が重要になります。

労災の後遺障害・障害等級について整理したい方へ

「痛みやしびれが残っているが、障害補償の対象になるのか分からない」
「12級と14級の違いが分からない」
「症状固定と言われたが、このまま進めてよいのか不安」という方へ。

診断書、画像・検査結果、診療経過などを確認しながら、
現在どの点を確認しておく必要があるのかを一緒に整理します。

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※特定の障害等級の認定を保証するものではありません。
※個別の傷病・症状・医学資料等を確認したうえで対応内容をご案内します。

よくある質問

労災の後遺障害で一番多いのは何級ですか?

令和6年度の集計値では14級が6,099件で最多、次いで12級が4,971件でした。両者で全体の55.44%を占めます。ただし、これは個別事案で12級・14級になりやすいことを意味するものではありません。

なぜ13級より12級の方が多いのですか?

障害等級は、同じ種類の症状を軽い順に14級、13級、12級と並べたものではありません。各等級に異なる種類・程度の障害が定められているためです。今回確認した公表資料だけから、13級が少ない理由を一つに特定することはできません。

痛みやしびれが残れば14級9号になりますか?

痛みやしびれが残っていることだけで自動的に14級9号になるわけではありません。受傷状況、症状の経過、医学的所見、災害との因果関係などが個別に検討されます。

MRIに異常があれば12級になりますか?

MRI等に異常があることだけで12級になるとは限りません。公開事例でも、画像所見があっても14級にとどまった事例や、画像上ヘルニアがあっても当該災害との因果関係が認められなかった事例があります。

労災では12級13号ではないのですか?

労災保険の現行障害等級表では、「局部にがん固な神経症状を残すもの」は12級12号です。自賠責の後遺障害等級では12級13号とされているため、インターネットで調べる際には制度を混同しないよう注意が必要です。

統計を見る際の注意

本記事で紹介した19,968件、14級6,099件、12級4,971件等は、 令和6年度の障害(補償)等給付に関する集計値として確認した数字です。

ただし、厚生労働省ウェブサイト上で公開されている 「令和6年度労働者災害補償保険事業年報」には、 この数字と同一の定義・同一表番号の統計表を確認できませんでした。

公開年報の第6-14表は、障害補償一時金の受給者を基に作成した統計であり、 本記事前半の支給決定件数とは定義が異なります。

両者は誤りではなく、 「支給決定件数」と「受給者を基にした統計」という定義の違い があります。

主な参考資料

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者災害補償保険事業年報」
  • 同年報 第6-14表「障害補償一時金受給者数(等級別、号別)」
  • 厚生労働省「労災保険データ集」
  • 厚生労働省「障害等級認定基準について」
  • 厚生労働省「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準関係資料」
  • 労災保険審査官決定事案
  • 労働保険審査会「裁決事案一覧」

ご注意: 本記事は2026年10月時点で確認できる厚生労働省資料、障害等級認定基準、公開された決定・裁決等をもとに一般的な制度と傾向を整理したものです。 障害等級は、傷病名だけではなく、残存症状、医学的所見、受傷との因果関係、診療経過等を踏まえて個別に判断されます。 また、公開されている労働保険審査会の裁決は最新年度までを網羅するものではないため、過去の公開事例を現在のすべての事案に一般化することはできません。

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