労災が不支給になった方へ|認定されなかったことと、苦しみがなかったことは違います

労災が不支給になった方へ|結果だけで、ご自身を責めないでください。

労災を申請し、長い時間をかけて結果を待った末に、「不支給」という通知を受け取る。そのとき、これまでの苦しみや、職場で起きたことまで否定されたように感じる方もいらっしゃると思います。

申請に至るまでに、何度も当時のことを思い出し、資料を探し、説明を重ねてきた方もいるでしょう。だからこそ、結果を受け止めるのは簡単ではありません。

最初にお伝えしたいことがあります。労災として認定されなかったことと、あなたが経験した苦しみがなかったことは、同じではありません。

この記事では、精神障害の労災が不支給となったとき、その結果が制度上何を意味するのか、理由を確認する方法、そして今後の選択肢について、社会保険労務士の立場から整理します。

まず、お伝えしたいこと

  • 不支給は、労災保険の支給要件についての判断です。経験した苦痛のすべてを評価するものではありません。
  • ただし、病気の発病や職場の出来事がどこまで認められたかは、個別の決定理由を確認しないと分かりません。
  • 理由を知りたい場合は、労働基準監督署への説明依頼や保有個人情報の開示請求という方法があります。
  • 審査請求を検討する場合は、原則として処分を知った日の翌日から3か月の期限に注意が必要です。

1.不支給は、苦しみのすべてを否定する判断ではありません

労災保険の不支給決定は、申請された給付について、法令や認定基準上の支給要件を満たすと判断されなかったことを意味します。

それは、あなたのつらさの大きさや、日々の生活で抱えてきた困難のすべてに、結論を出す手続ではありません。

「あんなにつらかったのに」「仕事に行けなくなるほどだったのに」。そう感じることと、労災認定の結論が一致しない場合があります。

一方で、不支給という結果だけでは、病気の発病や職場の出来事が、行政の判断でどこまで認められたのかは分かりません。認められた点と、要件を満たさないと判断された点を分けて確認する必要があります。

【約1分で解説】労災が不支給になった方へ

労災の不支給決定と、経験した苦しみは同じものではありません。

2.精神障害の労災では、何を判断するのか

精神障害の労災認定では、主に次の3つの要件を確認します。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること。
  2. 原則として発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したとは認められないこと。

「個体側要因」については、精神障害の既往歴などがある場合に、その内容を確認します。既往歴や私生活上の負担があるというだけで、直ちに労災の対象外になるわけではありません。

これは、誰かの苦しみを点数化して、その価値を決めるための基準ではありません。労災保険として給付するために、仕事と発病との関係を判断する枠組みです。

そのため、職場での出来事があったことと、その出来事による心理的負荷が労災認定基準上の「強」と評価されることは、必ずしも同じではありません。

また、発病時期の判断によって評価対象となる期間が変わる場合もあります。ハラスメントなどが以前から継続していた場合は、発病前おおむね6か月より前の出来事も含めて検討されることがあります。

参考:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準」(PDF)

3.「心理的負荷が強に至らない」とは、どういうことか

精神障害の労災では、業務による心理的負荷を「強」「中」「弱」の3段階で評価します。

この評価は、ご本人が感じた苦痛の大きさを、そのまま「強・中・弱」に置き換えるものではありません。職種や職責、年齢、経験などが似た労働者の立場から、出来事とその後の状況を総合的に検討します。

例えば、仕事上の出来事や負担が認められても、総合評価が「中」にとどまり、「強」に至らないとして不支給となる場合があります。

この場合、「心理的負荷が全くなかった」と判断されたこととは異なります。

もっとも、不支給の理由は一つではありません。出来事の事実認定、発病の有無や時期、医学的判断などが争点となる場合もあります。通知を受け取った段階で「証拠が足りなかっただけ」「会社の説明が採用されたから」と決めつけることは避けたいところです。

自分の経験を理解するためにも、まずは何が理由だったのかを確かめることが大切です。

4.不支給の理由を知りたいとき

まずは、決定した労働基準監督署に説明を求める

不支給決定通知書を保管し、決定をした労働基準監督署に理由の説明を求めることができます。

精神障害の事案であれば、「発病や発病時期をどう判断したのか」「どの出来事を認めたのか」「心理的負荷の評価はどうだったのか」といった点を確認することが考えられます。

一度にすべてを質問する必要はありません。聞きたいことをメモしておき、体調に合わせて確認してもよいと思います。

詳しい調査資料を確認するには、保有個人情報の開示請求もある

労基署の説明だけでは判断過程が分かりにくい場合、労働局への保有個人情報開示請求を検討できます。調査復命書や添付資料など、決定の根拠に関する文書が対象となり得ます。

ただし、第三者の個人情報などは不開示・部分開示となる場合があり、希望する資料のすべてが開示されるとは限りません。また、開示請求は不支給決定を取り消す手続ではありません。

開示・不開示の決定は原則30日以内ですが、補正や期限の延長があり、資料を受け取るまでに時間がかかる場合があります。

開示請求の窓口や必要書類は、決定した労基署を管轄する労働局の個人情報保護窓口で確認できます。

参考:神奈川労働局「保有個人情報開示制度」

5.審査請求をするかどうかは、自分で決めてよい

不支給決定に納得できない場合には、労働者災害補償保険審査官への審査請求という制度があります。

ただ、不支給になったら必ず審査請求をしなければならない、ということではありません。理由を確認してから考える方もいれば、体調や生活を優先し、いったん手続から離れる方もいるでしょう。

どちらの選択も、軽々しく評価できるものではありません。

期限について、ひとつだけ大切なこと

労災保険給付の決定に対する審査請求は、原則として処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です。正当な理由がある場合の例外はありますが、期限があることを前提に確認してください。

保有個人情報の開示請求をしても、それだけで審査請求の期限が自動的に止まるわけではありません。審査請求を少しでも検討する場合は、開示資料を待つ間も、期限と手続について管轄の労働者災害補償保険審査官に早めに確認することが大切です。

気持ちの整理と、手続の期限の確認は、分けて考えて構いません。審査請求をするか迷っている場合も、まず期限を確認し、残された期間の中で検討してください。

参考:労働保険審査官及び労働保険審査会法(e-Gov法令検索)

【動画で詳しく解説】労災が不支給になった方へ

不支給決定の意味や理由の確認方法、今後の選択肢を社労士が解説します。

6.今、できることを一つずつ

不支給通知を受け取った直後は、何をしたらよいのか分からなくなることもあります。そんなときは、すべてを一度に進めなくても構いません。

  • 通知書と封筒を保管する。 決定を知った日が分かるよう、受け取った日をメモしておきます。
  • 審査請求の期限を確認する。 審査請求を検討する可能性がある場合は、理由の説明や開示資料を待つ前に、期限を確認します。
  • 理由を確認する。 必要に応じて、決定した労基署へ説明を求めます。
  • 資料を取り寄せるか考える。 判断過程を詳しく確認したい場合は、開示請求を検討します。
  • 体調と生活に合わせて考える。 確認した期限を踏まえながら、手続を続けるかどうかも含め、ご自身の状況に合わせて今後の対応を考えてよいのです。

何かを進めることだけが、前に進むことではありません。必要な期限を確認したうえで、いったん休むことも、自分に必要な選択かもしれません。

7.最後に|認定結果だけで、あなたの経験のすべては決まりません

労災の不支給という結果は、重く受け止められるものです。制度上の判断であると分かっていても、気持ちが追いつかないことはあると思います。

だからといって、今すぐ気持ちを切り替える必要はありません。

不支給決定の理由を知りたいと思うことも、納得できず審査請求を考えることも、ここで一区切りにしようと思うことも、それぞれに事情があります。

労災として認定されなかったことと、あなたが経験した苦しみがなかったことは、同じではありません。

どうか、認定結果だけで、ご自身のこれまでの経験のすべてを否定しないでいただけたらと思います。

不支給決定後の状況整理について

「不支給理由をどこから確認すればよいか分からない」「開示請求や審査請求について、まず整理したい」という方は、公式LINEからご相談いただけます。

こもれび社労士事務所では、初回の状況整理は無料です。現在の状況やお困りの点を伺い、当事務所で対応できる内容をご案内します。

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審査請求を無理におすすめすることはありません。今後の進め方を、ご自身の状況に合わせて考えるための相談先としてご利用ください。

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参考資料(公的機関)

※本記事は2026年10月時点の公表資料を基にした、精神障害の労災不支給に関する一般的な制度説明です。個別の不支給理由、審査請求期間の起算日、開示の対象・範囲、手続の可否は事案によって異なります。具体的な判断には、決定通知書や関係資料の確認が必要です。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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