退職時誓約書にサインして大丈夫?パワハラ・労災申請前に確認したい注意点を社労士が解説

退職時に会社から「誓約書にサインしてください」と求められることがあります。 特に、パワハラやメンタル不調で退職する場合、労災申請を考えている方は、 内容を確認せずに署名してよいのか不安になることも少なくありません。
「退職時誓約書にサインしても大丈夫なのか」 「サインしないと不利になるのではないか」 と悩まれる方も少なくありません。
退職時誓約書にすぐサインしてよいとは限りません
結論からいうと、退職時誓約書の中に 「勤務や退職について異議がない」 「今後会社に対して一切請求しない」 といった条項がある場合は、すぐに署名しない方がよいケースがあります。
もちろん、退職時誓約書のすべてが問題になるわけではありません。 貸与物の返却、秘密保持、会社情報の持ち出し禁止などは、一般的に見られる内容です。
しかし、勤務中の出来事や退職に関して、 今後一切異議を述べない、請求しないという内容まで含まれている場合は注意が必要です。
特に注意したい条項
退職時誓約書で特に注意したいのは、次のような条項です。
- 勤務および退職に関して、何らのクレーム・異議がないこと
- 会社および関連会社に対して、今後何らの請求を行わないこと
- 退職後、会社に対して一切の金銭請求をしないこと
- 退職に関する問題はすべて解決済みであること
これらの条項は、会社側としては退職後のトラブルや請求を防ぐため、 いわゆる「清算」を目的として設けているケースが多いと考えられます。
そのため、パワハラ、長時間労働、配置転換、退職強要、メンタル不調などについて、 今後労災申請や損害賠償請求を検討している場合には、慎重に確認する必要があります。
労災申請そのものができなくなるわけではありません
労災保険給付は、会社に対する請求ではなく、労働基準監督署を通じて行う公的な給付請求です。
そのため、退職時誓約書に署名したからといって、 直ちに労災申請ができなくなるわけではありません。
ただし、実務上まったく影響がないとは言い切れません。
会社側が労働基準監督署に対して、 「本人は退職時に勤務や退職について異議がないと確認している」 と説明する材料として、誓約書を示す可能性があるためです。
労災申請では、発症前の出来事や会社で受けた心理的負荷を整理して主張していきます。 その一方で、退職時誓約書に「異議なし」と記載されていると、 会社側から反論材料として使われる可能性があります。
つまり、労災申請の権利自体を失うものではないとしても、 後日の説明や証拠関係で不利に働く可能性があるため、注意が必要です。
会社への損害賠償請求や交渉には影響する可能性があります
退職時誓約書の影響がより大きくなりやすいのは、 会社に対する損害賠償請求や交渉を検討する場面です。
たとえば、パワハラ、安全配慮義務違反、退職強要、未払い残業代などについて、 後日会社に請求しようとした場合、会社側から 「退職時に今後請求しないと約束している」 と反論される可能性があります。
このような条項が常に有効とは限りません。 具体的な効力や無効主張の可否は、誓約書の内容、署名に至った経緯、 労働者の状況、会社側の説明などによって変わります。
そのため、損害賠償請求や誓約書の法的効力そのものについては、 弁護士に相談すべき領域です。
社労士としては、労災申請や傷病手当金などの手続きとの関係を整理することはできますが、 会社に対する損害賠償請求の可否や訴訟対応については、 弁護士の判断が必要になります。
サインしないと退職できないのか
退職時誓約書にサインしないと退職できないのではないか、 と不安になる方もいます。
しかし、退職は労働者の意思表示によって進むものであり、 会社が用意した誓約書に署名しなければ退職できない、というものではありません。
実務上も、誓約書への署名を拒否したことのみを理由に、 退職自体が認められないというケースは通常想定されません。
また、有給休暇の消化や退職手続きについても、 誓約書への署名と当然に結びつけられるものではありません。
会社から急かされた場合でも、内容に不安があるときは、 その場で署名せず、いったん持ち帰って確認することが大切です。
実務上は「保留する」対応が安全です
第4条などに広い清算条項がある場合、 実務上は、すぐに署名せず、いったん保留して内容を整理する対応が安全です。
会社に対しては、強く争う言い方をする必要はありません。 まずは、次のように伝える方法があります。
退職時誓約書を確認いたしましたが、内容について確認したい事項がありますので、 現時点では署名を控えさせていただきます。
必要に応じて専門家にも相談のうえ、改めて回答いたします。
また、秘密保持や貸与物返却には応じる一方で、 「今後一切請求しない」という部分だけは確認したい、 と伝える方法もあります。
会社への返信文案
会社へ返信する場合は、たとえば次のような文面が考えられます。
〇〇様
お世話になっております。
退職時誓約書を確認いたしました。
内容を確認したところ、勤務および退職に関する異議や、 今後の請求に関する条項について、確認したい事項がございます。
そのため、現時点ではこのままの文言での署名は控えさせていただきたく存じます。
なお、貸与物の返却や秘密保持等につきましては、 引き続き適切に対応いたします。
必要に応じて専門家にも相談のうえ、改めてご回答いたします。
何卒よろしくお願いいたします。
社労士が確認できること・弁護士に相談すべきこと
退職時誓約書については、内容によって確認すべき範囲が分かれます。
社労士が整理できること
- 労災申請への実務上の影響
- 傷病手当金や退職後の手続きとの関係
- 会社へどう伝えるかの整理
- 労働基準監督署への申請準備との関係
弁護士に相談すべきこと
- 誓約書の法的効力そのもの
- 損害賠償請求の可否
- 会社との交渉や示談
- 訴訟や代理交渉
労災申請と会社への損害賠償請求は、関係する部分もありますが、別の手続きです。 そのため、社労士と弁護士の役割を分けて考えることが大切です。
退職前後の労災申請で不安な方へ
こもれび社労士事務所では、パワハラやメンタル不調による労災申請について、 退職前後の状況も含めてご相談をお受けしています。
退職時誓約書、傷病手当金、会社への連絡、労働基準監督署への申請準備など、 どこから整理すればよいか分からない場合でも大丈夫です。
「会社から誓約書への署名を求められている」
「労災申請を考えているが、退職書類が不安」
「会社にどう返信すればよいか分からない」
このような場合は、一人で抱え込まず、まずは状況を整理するところから始めましょう。
退職前の対応によって、その後の手続きの進めやすさが変わることもあります。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です

