障害年金の初診日とは?「診断名がついた日」とは限らない|診断名が途中で変わった場合も解説

障害年金の初診日と診断名が変わった場合の考え方を解説するイメージ

障害年金の申請では、「初診日」がとても重要です。

ところが、実際にご相談を受けていると、

  • 子どもの頃は「神経症」など別の診断名だった
  • 大人になってからASD(自閉スペクトラム症)やADHDなどの発達障害と診断された
  • 厚生年金に加入して働き始めてから、現在の診断名がついた
  • 最初に受診した病院のカルテがもう残っていない

といったケースは珍しくありません。

このような場合に、

「今の診断名が初めてついた病院が、障害年金の初診日になるのでは?」

と思われる方もいらっしゃいます。

しかし、障害年金の初診日は、単純に「現在の診断名が初めてついた日」で決まるとは限りません。

この記事では、障害年金の初診日の基本的な考え方と、途中で診断名が変わった場合に何を確認すればよいのかを、社会保険労務士が実務の視点から解説します。

障害年金の「初診日」とは?

障害年金における初診日とは、一般に、

「障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」

をいいます。

ここで重要なのは、「現在の診断名が初めてついた日」とは限らないという点です。

たとえば、現在は発達障害や精神疾患の診断を受けている方でも、それ以前から関連する症状について医療機関を受診していた場合があります。

その場合は、現在の診断名だけを見るのではなく、

  • 以前はどのような症状があったのか
  • 何を理由に医療機関を受診したのか
  • 当時どのような診断や治療を受けていたのか
  • その後の症状や治療がどのようにつながっているのか

といった経過を確認しながら、障害年金上の初診日を整理していく必要があります。

ポイント
「診断名が変わったから、そこから別の病気として初診日を取り直せる」と単純に判断できるわけではありません。以前の症状や診療内容、現在の傷病との関係を資料に基づいて確認することが大切です。

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「今の診断名がついた日=初診日」とは限らない理由を短く解説しています。

なぜ障害年金では初診日がそれほど重要なのか

初診日は、単なる「最初に病院へ行った日」ではありません。

障害年金では、初診日によって、どの年金制度に基づいて請求することになるのかが変わる可能性があります。

20歳前に初診日がある場合

20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、一定の障害状態に該当すれば、20歳前傷病による障害基礎年金を検討することになります。

この場合、通常の障害年金で問題となる保険料納付要件はありません。

一方で、20歳前傷病による障害基礎年金には所得による支給制限など、通常の障害基礎年金とは異なる取扱いもあります。

厚生年金加入中に初診日がある場合

会社員などとして厚生年金に加入している期間中に初診日がある場合は、要件を満たせば障害厚生年金を請求できる可能性があります。

障害基礎年金が原則1級・2級を対象としているのに対し、障害厚生年金には1級・2級に加えて3級があります。

そのため、

「初診日が20歳前なのか」「国民年金加入中なのか」「厚生年金加入中なのか」

は、障害年金を検討するうえで非常に重要なポイントになります。

「厚生年金に入ってから診断された」=障害厚生年金とは限らない

ここは特に誤解されやすいところです。

たとえば、次のような経過があったとします。

  • 子どもの頃から不登校、強迫症状、チックなどがあった
  • 子どもの頃から精神科や心療内科を受診していた
  • 当時は「神経症」など別の診断名だった
  • 成人後、会社員として厚生年金に加入した
  • その後、別の病院でASDやトゥレット症候群などの診断を受けた

この場合、

「ASDやトゥレット症候群と診断されたのは厚生年金加入後だから、その病院を初診日にして障害厚生年金を請求できる」

と直ちに判断できるわけではありません。

子どもの頃の症状や診療と、現在の障害との関係がどのようなものなのかを確認する必要があります。

診断名が変わっていても、症状や治療の経過が連続している場合もあります。

反対に、以前の傷病と現在請求しようとしている傷病が別のものとして整理される場合もあります。

そのため、診断名だけではなく、実際の症状・受診経過・治療内容を時系列で確認することが大切です。

🎥 動画で詳しく解説しています

初診日の基本、診断名が途中で変わった場合、20歳前の受診歴や厚生年金加入後に診断された場合の考え方を詳しく解説しています。

途中で診断名が変わったときに確認したい資料

初診日や傷病の経過を整理するときは、現在の診断書だけでは判断できないことがあります。

実務では、残っている資料をできるだけ確認し、受診の流れを時系列でつなげていきます。

1.受診状況等証明書

現在診断書を書いてもらう医療機関と、初診時の医療機関が異なる場合などに、初診日を確認するために重要となる書類です。

最初の医療機関にカルテが残っている場合は、まず受診状況等証明書を作成してもらえるか確認することが一つの方法です。

2.紹介状・診療情報提供書

転院先のカルテに、前の病院からの紹介状が残っていることがあります。

そこに、

  • 以前の医療機関の受診時期
  • 当時の症状
  • 診断名
  • 治療内容
  • 転院までの経過

などが記載されていれば、受診歴を整理するうえで重要な資料となることがあります。

3.お薬手帳・薬歴

昔のカルテが残っていなくても、お薬手帳が保管されているケースがあります。

お薬手帳だけで必ず初診日を証明できるわけではありませんが、

  • いつ頃から治療を受けていたのか
  • どこの医療機関へ通っていたのか
  • どのような薬が処方されていたのか

を確認する手掛かりになります。

4.転院先のカルテ

最初の病院のカルテが廃棄されていても、次の病院のカルテに、

「○年前から○○クリニックへ通院」
「○歳頃から症状あり」

などの記載が残っている場合があります。

初診病院だけを確認して終わるのではなく、その後の医療機関に過去の受診歴を示す記録が残っていないか確認することも重要です。

5.精神障害者保健福祉手帳などの関係書類

精神障害者保健福祉手帳を取得している方の場合、自治体に手帳申請時の診断書等が保管されていることがあります。

保存状況や開示の取扱いは個別に確認する必要がありますが、過去の障害状態や治療経過を確認するための参考資料となる場合があります。

6.その他の初診日を確認できる資料

初診時の医療機関による証明が取得できない場合でも、それだけで直ちに障害年金の請求ができなくなるとは限りません。

日本年金機構でも、初診時の医療機関による証明を得ることが難しい場合について、状況に応じた初診日証明書類が用意されています。

そのため、カルテがない場合には、「もう無理だ」と判断する前に、ほかにどのような資料が残っているかを整理することが大切です。

資料は「たくさん集めればよい」とは限りません

初診日が複雑なケースでは、「とにかく昔の資料を全部取り寄せなければ」と考えてしまう方もいます。

しかし、実際には、まず中心となる資料を確認してから、不足している部分を補う資料を追加していく方が効率的なことがあります。

たとえば、

  1. 受診歴を時系列で整理する
  2. 初診と思われる医療機関の記録が残っているか確認する
  3. 受診状況等証明書や紹介状を確認する
  4. 内容が不足していれば、お薬手帳や転院先カルテなどを確認する
  5. それでも初診日の証明が難しい場合に、ほかの資料を検討する

というように、資料の内容を見ながら順番に進めることが重要です。

初診日が複雑なケースほど「資料の量」より「資料同士のつながり」が重要です。

紹介状、受診状況等証明書、お薬手帳、診療録などを個別に見るだけではなく、「いつ、どのような症状で受診し、その後どのように治療が続いたのか」を一つの経過として整理していきます。

初診日を自己判断で決めてしまうことには注意が必要です

障害年金では、初診日によって加入していた年金制度や保険料納付要件などの確認内容が変わります。

そのため、

  • 厚生年金に入ってから診断名がついたから、そこを初診日にする
  • 昔の病院のカルテがないから、次の病院を初診日にする
  • 昔と現在で診断名が違うから、別の病気として扱う

といった判断を、診療経過を確認せずに行うことはおすすめできません。

まずは、

  • 最初に症状が出た時期
  • 最初に医療機関を受診した時期
  • 当時の症状・診断名
  • その後の転院歴
  • 治療が途切れた期間
  • 現在の診断に至った経過

を時系列で整理してみることが大切です。

20歳前から症状がある方は、特に初診日の確認が重要です

発達障害や精神疾患の障害年金相談では、

「子どもの頃から症状はあったが、現在の診断名がついたのは成人してから」

というケースがあります。

この場合、成人後の診断日だけを見るのではなく、子どもの頃の受診歴までさかのぼって確認する必要が生じることがあります。

また、20歳前傷病として障害年金を請求する場合には、初診日の確認だけでなく、障害認定日頃(原則として20歳到達日頃など)の障害状態をどのように確認するかも重要になります。

当時の診断書を作成できない場合には、過去にさかのぼる障害認定日による請求が難しくなることもあります。

その場合でも、現在の障害状態をもとに事後重症による請求を検討できることがありますので、「昔の診断書がない=障害年金を請求できない」とは限りません。

よくある質問

Q.現在の診断名がついた日が初診日ではないのですか?

必ずしもそうではありません。

障害年金では、一般に現在の障害の原因となった傷病について初めて医師等の診療を受けた日を基準に初診日を検討します。

以前は別の診断名だった場合でも、症状や治療経過などを確認する必要があります。

Q.昔は「神経症」、今は「発達障害」と診断されています。初診日は変わりますか?

診断名が変わったという事情だけでは判断できません。

以前の症状・診療内容と現在の傷病との関係、治療経過などを資料に基づいて確認する必要があります。

Q.厚生年金に加入してから現在の診断名がつきました。障害厚生年金になりますか?

現在の診断名が厚生年金加入後についたというだけで、必ず障害厚生年金になるわけではありません。

それ以前に関連する症状について受診している場合、その受診日が障害年金上の初診日となる可能性があります。

Q.初診の病院にカルテがありません。申請できませんか?

カルテがない場合でも、直ちに請求できないと決まるわけではありません。

紹介状、転院先の診療記録、お薬手帳など、受診時期や治療経過を示す資料が残っていないか確認します。

初診時の医療機関による証明を取得できない場合には、状況に応じて別の初診日証明資料を検討することもあります。

Q.20歳頃の診断書がありません。障害年金は無理ですか?

障害認定日頃の診断書が作成できない場合、過去にさかのぼる障害認定日による請求が難しくなることがあります。

ただし、現在の障害状態をもとに事後重症による請求を検討できる場合があります。

初診日、当時の医療記録、現在の障害状態などを確認したうえで請求方法を整理することが大切です。

まとめ|診断名ではなく「受診の経過」から初診日を整理することが大切です

障害年金の初診日は、「現在の診断名が初めてついた日」だけで判断するものではありません。

特に、

  • 子どもの頃から精神症状や発達上の困難があった
  • 途中で診断名が変わっている
  • 複数の精神科・心療内科を受診している
  • 20歳前から通院している
  • 厚生年金加入後に現在の診断名がついた
  • 初診の病院のカルテが残っていない

といった場合は、初診日を自己判断する前に、受診歴や資料を整理することをおすすめします。

初診日や診断名の経過が複雑な方へ

初診の病院が閉院している、カルテが残っていない、子どもの頃と現在で診断名が違うといった場合でも、すぐに障害年金の請求を諦める必要はありません。

こもれび社労士事務所では、受診状況等証明書、紹介状、お薬手帳、診療記録、手帳関係書類など、現在残っている資料を確認しながら、初診日・受診経過・請求方針を一緒に整理しています。

「自分の場合、どこが初診日になるのか分からない」
「昔と今で診断名が違う」
「最初の病院にカルテが残っていない」

という段階でもご相談いただけます。

一つずつ資料を確認しながら、どのように障害年金の請求を進めることができるか整理していきます。

初診日や受診歴が整理できていない段階でも大丈夫です。

※障害年金の初診日や傷病の取扱いは、個別の受診歴、診療内容、加入していた年金制度、提出資料等によって判断が異なります。本記事は一般的な制度・実務上の考え方をご案内するもので、個別の受給可否を保証するものではありません。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です

「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。

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