精神障害の労災が多い業種・職種は?|医療・福祉、一般事務を5年データで検証

精神障害の労災について、 「どの業種で多いのか」「介護職や看護師は多いのか」 と気になる方も多いと思います。
厚生労働省は毎年度、「過労死等の労災補償状況」の中で、 精神障害について業種別・職種別の請求件数や支給決定件数を公表しています。
そこで今回は、2025年度(令和7年度。2025年4月から2026年3月まで)を中心に、2021~2025年度の5年間の公表資料を確認し、 どの業種・職種で精神障害に関する労災請求が多いのかを調べました。
さらに、単なる件数ランキングだけではなく、
- 医療・福祉は本当に多いのか
- 介護・福祉と医療ではどのくらい違うのか
- 一般事務の請求が多いというのは本当か
- 5年間でどの業種の請求が増えているのか
- 就業者数を考慮すると見え方は変わるのか
- 「支給決定件数÷決定件数」を認定率と考えてよいのか
まで整理します。
2025年度の請求件数・支給決定件数ともに、業種別では「医療・福祉」が最多でした。
請求は1,288件、支給決定は292件です。
一方、職種を中分類まで見ると、請求件数が最も多かったのは 「一般事務従事者」の833件でした。
ただし、これらはあくまで件数です。 「医療・福祉だから精神障害になりやすい」 「介護職だから労災認定されやすい」 という意味ではありません。
1.2025年度の精神障害の労災は何件?
厚生労働省によると、2025年度の精神障害に関する労災請求は、 全国で4,958件でした。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 請求件数 | 4,958件 |
| 決定件数 | 3,839件 |
| 支給決定件数 | 1,082件 |
「2025年度に4,958件が請求され、その同じ4,958件のうち1,082件が支給決定された」 という意味ではありません。
請求件数はその年度に請求された件数ですが、決定件数・支給決定件数には、 前年度以前に請求された案件も含まれます。
2.業種別では「医療・福祉」が最多
2025年度の精神障害に関する労災を業種別に見ると、 請求件数が最も多かったのは「医療・福祉」でした。
| 業種 | 請求 | 決定 | 支給決定 |
|---|---|---|---|
| 医療・福祉 | 1,288 | 970 | 292 |
| 製造業 | 720 | 549 | 158 |
| 卸売業・小売業 | 645 | 507 | 116 |
| 運輸業・郵便業 | 419 | 328 | 104 |
| 建設業 | 246 | 221 | 98 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 247 | 187 | 64 |
| 情報通信業 | 238 | 199 | 41 |
| 教育・学習支援業 | 160 | 120 | 14 |
2025年度の精神障害に関する労災請求4,958件のうち、
医療・福祉は 1,288件
でした。
全請求件数の約26.0%、およそ4件に1件です。
支給決定についても、医療・福祉は292件で最多でした。
ただし、医療・福祉は働いている人の数自体も非常に多い業種です。 したがって、件数が最多だから「最も精神障害を発症しやすい業種」とは言えません。
3.医療・福祉1,288件の内訳を見る
では、「医療・福祉」の中では、どの分野が多いのでしょうか。
厚生労働省の中分類を見ると、ほぼすべてが 「社会保険・社会福祉・介護事業」と「医療業」 の2つに集中しています。
| 中分類 | 請求 | 支給決定 |
|---|---|---|
| 社会保険・社会福祉・介護事業 | 706件 | 151件 |
| 医療業 | 578件 | 139件 |
| 2区分合計 | 1,284件 | 290件 |
| 医療・福祉全体 | 1,288件 | 292件 |
この2区分だけで、医療・福祉全体の請求件数の99.7%、 支給決定件数の99.3%を占めます。
厚生労働省の最新資料では、中分類について請求件数・支給決定件数は公表されていますが、 中分類ごとの決定件数は公表されていません。
そのため、「151÷706」「139÷578」と計算して認定率を比較することは適切ではありません。
4.職種別では何が多い?一般事務が833件
ここで「業種」ではなく「職種」に切り替えてみます。
職種の大分類では、2025年度の請求件数が最も多いのは 専門的・技術的職業従事者の1,367件です。
| 職種 | 請求 | 決定 | 支給決定 |
|---|---|---|---|
| 専門的・技術的職業従事者 | 1,367 | 1,049 | 296 |
| 事務従事者 | 1,137 | 856 | 165 |
| サービス職業従事者 | 733 | 541 | 174 |
| 販売従事者 | 536 | 406 | 109 |
| 生産工程従事者 | 394 | 329 | 116 |
| 輸送・機械運転従事者 | 237 | 184 | 68 |
さらに中分類まで細かく見ると、少し意外な結果になります。
| 職種(中分類) | 請求件数 | 支給決定件数 |
|---|---|---|
| 一般事務従事者 | 833 | 109 |
| 保健師・助産師・看護師 | 369 | 105 |
| 介護サービス職業従事者 | 296 | 68 |
| 営業職業従事者 | 271 | 59 |
| 商品販売従事者 | 254 | 46 |
| 社会福祉専門職業従事者 | 238 | 41 |
| 自動車運転従事者 | 209 | 64 |
支給決定件数も109件で中分類1位となっています。 保健師・助産師・看護師の105件と近い数字です。
2025年度の公表件数では、一般事務従事者は精神障害に関する労災請求が最も多い中分類でした。
ただし、一般事務従事者の人数規模や、どの業種に多く配置されているかを踏まえずに、 職種固有の発生しやすさまで判断することはできません。
※中分類については決定件数が公表されていないため、請求件数と支給決定件数から「認定率」を計算することはできません。
5.5年間でどの業種の請求が増えた?
単年度だけではなく、2021年度から2025年度までの5年間を比較すると、 主要業種の多くで請求件数が増えています。
| 業種 | 2021年度 | 2025年度 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| 医療・福祉 | 577 | 1,288 | +123.2% |
| 製造業 | 352 | 720 | +104.5% |
| 卸売業・小売業 | 304 | 645 | +112.2% |
| 運輸業・郵便業 | 179 | 419 | +134.1% |
| 情報通信業 | 105 | 238 | +126.7% |
| 建設業 | 122 | 246 | +101.6% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 86 | 247 | +187.2% |
| 教育・学習支援業 | 89 | 160 | +79.8% |
増加率だけを見ると宿泊業・飲食サービス業が大きくなっています。 ただし、2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けた時期でもあり、 低い基準年からの増加であることには注意が必要です。
絶対数で最も大きく増えたのは医療・福祉で、 577件から1,288件へ711件増加しています。
6.働いている人数を考慮すると順位は変わる?
業種別の件数を比べるときに、もう一つ重要なのが 「その業種で何人働いているのか」という分母です。
今回の調査では、厚生労働省の2025年度労災件数と、 総務省「労働力調査」の2025年平均雇用者数を組み合わせて、 雇用者10万人当たりの参考値も試算しました。
精神障害の発生率・罹患率・認定率を示すものではありません。
| 業種 | 雇用者数 | 雇用者10万人当たり請求 (参考試算) |
雇用者10万人当たり支給決定 (参考試算) |
|---|---|---|---|
| 医療・福祉 | 917万人 | 14.05 | 3.18 |
| 運輸業・郵便業 | 330万人 | 12.70 | 3.15 |
| 情報通信業 | 283万人 | 8.41 | 1.45 |
| 製造業 | 999万人 | 7.21 | 1.58 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 371万人 | 6.66 | 1.73 |
| 卸売業・小売業 | 969万人 | 6.66 | 1.20 |
| 建設業 | 400万人 | 6.15 | 2.45 |
| 教育・学習支援業 | 330万人 | 4.85 | 0.42 |
件数だけでは医療・福祉が突出して見えますが、 人数を分母にすると運輸業・郵便業も比較的高い参考値になります。
- 労災件数は年度(4月~翌3月)、雇用者数は暦年(1~12月)
- 労災保険の対象者と労働力調査の対象者が完全には一致しない
- 労災請求されていない精神障害は含まれない
- 支給決定には過年度に請求された案件も含まれる
- 公務災害は労災保険とは別制度
したがって、ここで示した数字は、 業種の人数規模による影響を確認するための参考値として見る必要があります。
7.精神障害の労災「認定率」は計算できる?支給決定÷決定の注意点
2025年度について、 「支給決定件数÷決定件数」を計算すると業種によって差があります。
| 業種 | 決定 | 支給決定 | 支給決定÷決定 |
|---|---|---|---|
| 医療・福祉 | 970 | 292 | 30.1% |
| 製造業 | 549 | 158 | 28.8% |
| 卸売業・小売業 | 507 | 116 | 22.9% |
| 運輸業・郵便業 | 328 | 104 | 31.7% |
| 建設業 | 221 | 98 | 44.3% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 187 | 64 | 34.2% |
| 情報通信業 | 199 | 41 | 20.6% |
| 教育・学習支援業 | 120 | 14 | 11.7% |
たとえば、建設業は44.3%、医療・福祉は30.1%、教育・学習支援業は11.7%です。
しかし、ここから 「建設業なら認定されやすい」「教育なら認定されにくい」 と判断することはできません。
あくまで「当年度に決定された案件のうち、支給決定だった割合」です。
業種ごとに、ハラスメント、長時間労働、事故、証拠状況、発病時期など案件の内容が異なるためです。
また、「支給決定件数÷請求件数」から認定率を計算することは適切ではありません。 分子と分母が同じ案件群ではないためです。
8.どんな出来事で精神障害の労災が認定されている?
2025年度の全業種を対象とした「具体的出来事」別の支給決定件数を見ると、 次のような出来事が上位にあります。
| 具体的出来事 | 決定 | 支給決定 |
|---|---|---|
| 上司等からのパワーハラスメント | 403 | 222 |
| 顧客・取引先・施設利用者等からの著しい迷惑行為 | 240 | 127 |
| セクシュアルハラスメント | 233 | 127 |
| 仕事内容・仕事量の大きな変化 | 353 | 113 |
| 悲惨な事故や災害の体験・目撃 | 164 | 110 |
| 1か月80時間以上の時間外労働 | 90 | 40 |
支給決定件数では、上司等からのパワーハラスメントが222件で最も多くなっています。
2025年度の定例公表資料では、 「業種×具体的出来事」のクロス集計は公表されていません。
したがって、 「医療・福祉ではカスハラが一番多い」 「製造業では長時間労働が多い」 などと最新統計から断定することはできません。
9.なぜ医療・福祉の件数が多い?
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
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