精神障害の障害年金|支給・不支給の分かれ目は?認定されるケースとの違いを解説
障害年金|精神障害

精神障害で障害年金を請求するとき、 「どんな状態なら支給されるのか」 「どこからが不支給になるのか」 と気になる方は少なくありません。
ただ、精神障害の障害年金では、 診断名、働いているかどうか、一人暮らしかどうか、通院回数など、 一つの事情だけで支給・不支給が決まるわけではありません。
日常生活能力、症状や治療経過、家族などからの援助、 生活環境、就労状況などを踏まえて総合的に判断されます。 厚生労働省の障害認定基準でも、精神の障害について、 症状、治療・病状の経過、具体的な日常生活状況などを踏まえて 総合的に認定する考え方が示されています。
この記事では、 精神障害の障害年金で「支給」と「不支給」の分かれ目を考えるとき、 どのような点を確認するのかを、 障害基礎年金と障害厚生年金の違いも含めて整理します。
結論|支給・不支給は一つの事情では決まらない
精神障害の障害年金では、 「働いている」「一人暮らしをしている」「入院歴がない」 といった一つの事情だけで支給・不支給が決まるわけではありません。
精神障害については、病名だけではなく、症状、治療経過、具体的な日常生活状況、 家族や福祉サービスからの援助、就労実態などを確認しながら 総合的に障害の程度が判断されます。
そのため、 「うつ病だから2級」 「一人暮らしだから不支給」 「働いているから2級にはならない」 「B型を利用しているから2級」 といった単純な判断はできません。
特に境界にあるケースでは、 本人が何をできるかだけではなく、 その生活や就労がどのような援助・配慮によって成り立っているのか を具体的に整理することが重要です。
精神障害の障害年金|2級・3級・非該当の基本的な違い
障害認定基準では、精神障害について、 おおむね次のような位置づけが示されています。
| 等級 | 基本的な位置づけ |
|---|---|
| 1級 | 日常生活を自力で行うことが極めて困難な程度 |
| 2級 | 日常生活が著しい制限を受ける程度 |
| 3級 | 労働が著しい制限を受ける程度 |
| 非該当 | 障害年金の等級に該当する程度に至らないと判断された場合 |
ただし、これは大きな枠組みです。 実際には診断書の日常生活能力、病状、生活環境、 就労の状況などを総合して判断されます。
日本年金機構は、精神障害の認定に関して 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を公表しており、 日常生活能力の数字だけで機械的に等級を決める仕組みではありません。
障害基礎年金では「2級か、2級非該当か」が重要
精神障害の障害年金を考えるとき、 障害基礎年金と障害厚生年金では大きな違いがあります。
障害基礎年金には3級がありません。
そのため、障害厚生年金であれば3級となり得る状態でも、 障害基礎年金では2級に該当しなければ 障害基礎年金としては非該当となります。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでも、 目安表の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には 「2級非該当」として扱うことが示されています。
したがって、20歳前傷病などの障害基礎年金では、 「2級と3級の境目」ではなく、 実質的に「2級と2級非該当の境目」になるケースがある という点に注意が必要です。
日常生活能力の数字だけで支給・不支給は決まる?
精神の障害用診断書には、 「日常生活能力の判定」と 「日常生活能力の程度」という項目があります。
日常生活能力の判定では、食事、清潔保持、金銭管理・買い物、通院・服薬、 対人関係、安全保持・危機対応、社会性などの項目について 日常生活上の能力が評価されます。
さらに、それらとは別に日常生活能力全体を5段階で示す 「日常生活能力の程度」があります。
等級判定ガイドラインでは、これらを組み合わせた 「障害等級の目安」が示されています。
ただし、 「程度(3)なら2級」 「判定平均2.5以上なら支給」などと 数字だけで判断することはできません。
ガイドラインの目安表自体にも、 「2級又は3級」 「3級又は3級非該当」 といった複数の可能性が示される領域があります。
障害基礎年金の場合、この「2級又は3級」の領域は、 「2級又は2級非該当」 となり得ます。
つまり、まさにこのような境界領域では、 日常生活能力の数字以外の情報が重要になります。
支給・不支給の境目では何を見る?
精神障害の障害年金で境界にある場合には、 診断書の数字だけではなく、次のような事情を総合して確認します。
- 現在どのような精神症状があるか
- 症状がどの程度持続・反復しているか
- 通院・服薬など治療がどのように行われているか
- 日常生活を自力でどこまで維持できているか
- 家族や福祉サービスからどのような援助を受けているか
- 一人暮らしの場合、実際には誰が生活を支えているか
- 働いている場合、どのような条件・配慮で就労できているか
- 欠勤・遅刻・早退・休職などがあるか
- 職場で上司や同僚のフォローが必要か
- 日常生活能力の数字と実際の生活状況に整合性があるか
大切なのは、 「できる・できない」だけでなく、 どの程度の援助があればできるのか、 どのくらい安定して続けられるのか という点です。
一人暮らしでも障害年金は支給される可能性がある?
「一人暮らしができているなら、 障害年金は不支給になるのでは?」 と心配される方もいます。
しかし、一人暮らしをしているという事実だけで、 日常生活能力が十分であると決まるわけではありません。
例えば一人暮らしであっても、家族が定期的に訪問して食事や金銭管理を助けている、 訪問看護を利用している、ヘルパーの支援がある、通院に家族が同行している、 行政手続を家族が代わっている、といったケースがあります。
また、現に援助を受けていない場合でも、 日常生活を維持するために援助が必要な状態と判断される場合があります。
そのため、独居の場合には 「一人で住んでいるか」ではなく、 「生活がどのように維持されているか」 を具体的に確認することが重要です。
家族と同居している場合、援助はどう見られる?
反対に、家族と同居しているからといって、 それだけで障害が重いと判断されるわけでもありません。
精神の障害用診断書では、日常生活能力について、 単身で生活するとした場合に可能かどうか という視点で評価することが示されています。
家族と暮らしている場合には、 実際に誰がどのような援助をしているかを整理することが重要です。
- 食事を誰が準備しているか
- 入浴や着替え、清掃に声かけが必要か
- 金銭や通帳を誰が管理しているか
- 薬の準備や飲み忘れ確認を誰がしているか
- 通院予約や医師への説明を家族が補助しているか
- 買い物や公共交通機関の利用を一人で行えるか
- 行政・金融機関などの手続きを一人で行えるか
- 症状が悪化したとき、自分から援助を求められるか
本人から見ると「普通に生活できている」と感じていても、 実際には家族が多くを担っていることもあります。
働いていても障害年金は支給される?
「働いていると障害年金はもらえない」 と思われることがありますが、これも一律ではありません。
障害認定基準では、現に仕事に従事している場合でも、 就労していることだけをもって日常生活能力が向上したものとは捉えず、 仕事内容、就労状況、職場で受けている援助、 他の従業員との意思疎通などを確認して判断する考え方が示されています。
一方で、就労状況は重要な判断材料です。
精神障害では、単に「会社に勤めている」という事実だけではなく、 次のような就労の実態を確認します。
- 勤務日数・勤務時間
- 仕事内容が限定されているか
- 欠勤・遅刻・早退の状況
- 休職を繰り返していないか
- 業務量を減らしてもらっているか
- 上司や同僚から継続的な支援があるか
- 対人関係や意思疎通に困難があるか
- 就労後に日常生活が大きく崩れていないか
例えば、仕事の日は何とか出勤できていても、 帰宅後や休日はほとんど横になっている、 家事や食事を家族に頼っている、といった場合もあります。
このように、就労と日常生活を分けずに、 生活全体としてどの程度の制限があるのか を確認することが大切です。
一般就労・障害者雇用・A型・B型はどう見られる?
働き方によっても、障害年金の相談ではよく質問があります。
| 働き方 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 一般就労 | 勤務状況、仕事内容、配慮、欠勤、支援の有無 |
| 障害者雇用 | 障害者雇用という事実だけでなく、実際に受けている配慮や援助 |
| 就労継続支援A型 | 利用頻度、作業内容、欠席状況、支援の必要性 |
| 就労継続支援B型 | 通所状況、作業内容、支援内容、日常生活全体の状態 |
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、 障害者雇用や就労継続支援などを利用している場合も、 就労の種類だけではなく、受けている援助や配慮、 実際の就労状況を確認する考え方が示されています。
「B型だから2級」 「A型だから3級」 「一般就労だから不支給」 と一律に決めることはできません。
診断書が軽く見える場合に確認したいこと
障害年金の相談では、 「実際の生活はかなり大変なのに、 診断書を見ると軽く書かれている気がする」 という相談もあります。
例えば、診断書上、日常生活能力の多くが 「できる」「おおむねできる」とされ、 家族援助や福祉サービスの利用もほとんど記載されていない場合、 書面上は日常生活上の制限が比較的軽い状態として読まれる可能性があります。
また、一般就労を長期間安定して続けており、 欠勤や業務上の配慮について特段の記載がない場合には、 その就労実態も判断材料になります。
ただし、こうした記載があるから必ず不支給になる、 という意味ではありません。
大切なのは、診断書の記載が実際の生活状況を適切に反映しているかを確認することです。
家族が食事や金銭管理を全面的に支えている、 服薬管理に援助が必要、働いていても大きな配慮を受けている、 といった事情がある場合には、それが診断書上どのように記載されているか確認しておくとよいでしょう。
診断書と病歴・就労状況等申立書の内容が違う場合
診断書と病歴・就労状況等申立書は、 一字一句同じ内容にするための書類ではありません。
診断書は、医師が医学的な観点から病状や障害状態を記載する書類です。
一方、病歴・就労状況等申立書は、本人や家族の視点から、 発病から現在までの病歴、日常生活や就労の経過を補う役割があります。
そのため、診断書と申立書では、 表現の仕方や記載される詳しさに違いが生じることがあります。
ただし、初診日、受診歴、入院歴、就労歴、 家族からの援助の有無などについて 説明しにくい食い違いがある場合には、 事実関係を時系列で確認しておくことが重要です。
診断書と申立書は、 「完全に同じにする」のではなく、 それぞれの役割を踏まえながら、 全体として生活実態や病歴が矛盾なく伝わるか を確認します。
診断書と申立書の内容が異なる場合の考え方については、 次の記事でも詳しく解説しています。
通院・服薬・入院歴は支給・不支給にどう影響する?
通院回数や入院歴についても、 一つの事情だけで判断されるものではありません。
| 事情 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 通院 | 回数だけでなく、治療内容、症状の変動、通院に援助が必要か |
| 服薬 | 自分で適切に管理できるか、家族の確認や準備が必要か |
| 入院 | 入院の有無だけでなく、理由、期間、回数、退院後の状態 |
| 治療中断 | なぜ中断したのか、中断中の症状・生活・就労状況 |
| 長期治療 | 治療期間だけでなく、治療してもどのような生活上の制限が残っているか |
例えば、 「入院歴がないから不支給」 「長年通院しているから支給」 という単純な判断はできません。
精神障害では、治療の経過と、 現在の日常生活・就労にどのような制限が残っているかを 一緒に見ることが重要です。
通院が途切れた期間を病歴・就労状況等申立書にどう書くかについては、 次の記事も参考にしてください。
支給方向・非該当方向で確認したいポイント
以下は、 「この状態なら支給」 「この状態なら不支給」 と判定する表ではありません。
書類を確認するときに、 どのような生活実態が記載されているかを見るための目安 としてご覧ください。
| 観点 | 障害状態を検討するうえで確認したい例 | 比較的軽い方向に読まれ得るため確認したい例 |
|---|---|---|
| 食事・清潔 | 声かけや援助がなければ食事・入浴・清掃を継続できない | 自発的かつ安定して食事・清潔・家事を行えている |
| 金銭管理 | 家族が通帳や生活費を管理している | 本人が継続的に収支や支払いを管理できている |
| 通院・服薬 | 予約、同行、服薬準備・確認などが必要 | 受診・服薬を安定して一人で管理できている |
| 社会生活 | 対人交流、外出、行政手続、危機対応に援助が必要 | 対人関係や外出、各種手続きを安定して一人で行えている |
| 家族援助 | 家族の援助が生活維持の前提になっている | 援助がなくても生活が安定して維持されている |
| 一人暮らし | 家族・訪問看護・福祉サービス等の援助を受けている | 生活全般を長期間安定して単独で維持している |
| 就労 | 配慮、支援、業務制限、欠勤・休職等がある | 長期間安定して通常勤務し、特段の配慮や制限が確認しにくい |
この表だけで実際の等級や支給・不支給を予測することはできません。 個別の認定は、診断書などの資料全体を踏まえて総合的に判断されます。
障害年金を請求する前に整理しておきたいこと
支給・不支給の結果を事前に断定することはできません。 ただし、請求前に生活実態を整理しておくことは重要です。
- 食事や家事を実際には誰が担っているか
- 金銭管理を一人で行えているか
- 服薬・通院に援助が必要か
- 外出や手続きを一人で行えるか
- 家族や福祉サービスから受けている援助
- 一人暮らしの場合、生活を支えている人やサービス
- 勤務時間・仕事内容・欠勤状況
- 職場で受けている配慮やフォロー
- 仕事をした後の日常生活への影響
- 診断書と実際の生活状況に大きなズレがないか
障害年金では、 「できないことを大げさに書く」のではなく、 実際の生活でどのような援助を受け、 どのような条件で生活・就労が成り立っているのかを 正確に整理することが大切です。
よくある質問
Q. 働いていたら障害年金は不支給になりますか?
働いていることだけで直ちに不支給になるわけではありません。 勤務時間、仕事内容、欠勤、職場での配慮や援助、 就労後の日常生活への影響なども含めて確認します。
Q. 一人暮らしだと2級は難しいですか?
一人暮らしという事実だけで決まるものではありません。 家族、訪問看護、福祉サービスなどの援助を受けながら生活している場合や、 実際には援助が必要な状態である場合には、 その生活実態を具体的に確認することが重要です。
Q. 日常生活能力の程度が(3)なら2級ですか?
必ず2級になるわけではありません。 等級判定ガイドラインには複数の等級候補が示される領域があり、 診断書の他の項目も含めて総合的に判断されます。
Q. 入院歴がなければ不支給ですか?
入院歴の有無だけで支給・不支給が決まるわけではありません。 症状、治療経過、現在の日常生活や就労上の制限などを総合的に確認します。
Q. 診断書と申立書の内容が少し違うと不支給になりますか?
両書類は役割が異なるため、表現の仕方や記載される詳しさに違いが生じることがあります。 ただし、初診日、受診歴、入院歴、就労歴、家族援助などに 説明しにくい食い違いがある場合には、事実関係を確認しておくことが大切です。
Q. B型を利用していれば2級になりますか?
B型を利用していることだけで等級は決まりません。 通所状況、作業内容、支援の必要性、欠席、 日常生活全体の状態などを踏まえて判断されます。
障害年金の支給・不支給の分かれ目が気になる方へ
精神障害の障害年金では、診断書の日常生活能力、 家族から受けている援助、働き方、 病歴・就労状況等申立書の内容などを一つずつ整理することが大切です。
「自分の場合は2級に該当するのか分からない」 「働いていることが不利にならないか心配」 「診断書が実際の生活より軽く見える」 「申立書をどう整理すればよいか分からない」 といった場合には、申請前に一度整理しておくと安心です。
こもれび社労士事務所では、精神障害の障害年金について、 LINEで全国からご相談を承っています。
ご相談の段階で、必ず障害年金を請求する必要はありません。 現在の状況や書類を整理したうえで、今後の進め方を検討できます。
参考資料
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
- 日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」等
- 日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」
- 日本年金機構「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」
- 日本年金機構「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」
※本記事は、厚生労働省および日本年金機構が公開している障害認定基準、 精神の障害に係る等級判定ガイドライン、精神の障害用診断書等をもとに、 精神障害による障害年金の支給・不支給を考える際の一般的なポイントを解説したものです。 実際の認定は、症状、治療経過、生活環境、家族等からの援助、就労状況、 診断書その他の提出資料等を踏まえて個別に判断されます。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
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