障害年金で精神疾患が複数ある場合、病歴・就労状況等申立書は分ける?傷病名の書き方を解説

障害年金の診断書を確認すると、 「精神疾患の診断名が複数書かれている」 「以前は1つだった病名が、現在の診断書では複数になっている」 「治療の途中で別の診断名が追加されている」 ということがあります。
そこで迷いやすいのが、 「精神疾患が複数あるなら、病歴・就労状況等申立書も傷病ごとに分ける必要があるのか」 という点です。
日本年金機構の病歴・就労状況等申立書には、 「請求する病気やけがが複数ある場合は、それぞれ用紙を分けて記入してください。」 という案内があります。
ただし、 診断書に複数の診断名が書かれていることと、 障害年金の請求において「請求する病気やけが」が複数あることは、 必ずしも同じ意味ではありません。
精神疾患では、治療経過の中で診断名が追加・変更されたり、 複数の精神疾患が診断書に記載されたりすることがあります。
結論からいうと、 「診断名が2つあるから申立書も2枚」 「診断名が3つあるから3枚」 と、病名の数だけで機械的に決めるものではありません。
まず確認したいのは、 今回の障害年金で何を請求する傷病としているのか、 各傷病の発症時期・初診日・受診経過がどのように整理されているのか という点です。
その確認の結果、 今回の請求において 請求する病気やけがが複数あると整理される場合には、 日本年金機構の案内に従い、 それぞれ用紙を分けて記入します。
反対に、 診断書に複数の診断名があるというだけで、 直ちに診断名の数だけ申立書を作成することを示した 一律の取扱いは、公開されている資料では確認できません。
精神疾患が複数あると病歴・就労状況等申立書も複数必要?
最初に、今回の最も重要なポイントを整理します。
「診断書に複数の診断名がある」 という事実だけで、 病歴・就労状況等申立書の枚数を決めるものではありません。
精神科・心療内科の治療では、
- 初診時と現在で診断名が変わっている
- 治療途中で別の診断名が追加されている
- 現在の診断書に複数の精神疾患が併記されている
- 複数の診断名について発症時期や初診日が異なっている
といったことがあります。
こうした場合は、 「病名が何個あるか」より先に、 今回の障害年金で何を請求する傷病としているのか、 それぞれの傷病について発病・初診・治療の経過がどうなっているのか を確認することが大切です。
日本年金機構の申立書には「複数ある場合は用紙を分ける」と書かれている
日本年金機構の病歴・就労状況等申立書には、 次のような案内があります。
日本年金機構の病歴・就労状況等申立書の案内
「請求する病気やけがが複数ある場合は、 それぞれ用紙を分けて記入してください。」
今回の請求において、 請求する病気やけがが複数あると整理される場合には、 日本年金機構の案内に従い、 それぞれ用紙を分けて記入します。
ここで注意したいのは、 日本年金機構の案内が 「診断名が複数ある場合」 ではなく、 「請求する病気やけがが複数ある場合」 としていることです。
精神疾患では、 診断書に複数の診断名が記載されていても、 それだけで申立書の枚数を決めるのではなく、 発症時期、初診日、受診・治療経過などを確認する必要があります。
「診断名の数=申立書の枚数」とは限らない
たとえば、現在の精神の障害用診断書に、 複数の精神疾患が記載されていたとします。
この場合に、 「病名が3つ書いてあるから、申立書を3枚作ればよい」 と直ちに判断するわけではありません。
反対に、 「同じ精神科で治療しているから、 すべて1枚にまとめてよい」 と一律に判断することもできません。
確認したいのは、たとえば次のような点です。
- それぞれの症状がいつ頃から現れたのか
- 複数の精神疾患が同時期に発症しているのか
- 後から別の症状・診断が加わったのか
- 初診年月日は共通しているのか
- 傷病ごとに異なる初診年月日が記載されているのか
- 同じ受診・治療経過の中で診断名が追加・変更されたのか
こうした事実関係を確認したうえで、 今回の請求で申立書をどのように整理するかを検討します。
複数の精神疾患がある場合に、病歴・就労状況等申立書をどう整理するか、動画でも分かりやすく解説しています。
精神の障害用診断書では「同時期発症」と「逐次発症」が区別されている
日本年金機構の 「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」では、 複数の精神疾患がある場合について、 同時期に発症している場合と 順に発症している場合とで、 診断書の記載方法が分けられています。
複数の精神疾患が同時期に発症している場合
同時期に複数の精神疾患が発症している場合には、 診断書の傷病名欄に記載された傷病のうち、 最も古い傷病の発生年月日を記載し、 それらの傷病のいずれかについて初めて医師の診療を受けた日を 初診年月日として記載する方法が示されています。
複数の精神疾患が順に発症している場合
複数の精神疾患が順に発症している場合には、 傷病名に番号を付し、 傷病ごとの発生年月日と初診年月日が分かるように 段書きで記載する方法が示されています。
この記載要領は、 医師が精神の障害用診断書をどのように記載するか を示したものです。
したがって、 「同時期発症なら申立書は必ず1枚」 「逐次発症なら診断名の数だけ申立書を分ける」 という申立書の枚数を直接定めたルールではありません。
申立書を分けるか決める前に確認したい8項目
複数の診断名がある場合、 最初から申立書の枚数を決めるより、 次の順番で資料を確認すると整理しやすくなります。
-
診断書の傷病名
精神の障害用診断書の「障害の原因となった傷病名」に、 どの診断名が記載されているかを確認します。 -
各傷病の発生年月日
複数の傷病について同じ発生年月日が記載されているのか、 傷病ごとに異なる年月日が示されているのかを確認します。 -
初診年月日
複数の傷病について共通する初診年月日として記載されているのか、 傷病ごとに異なる初診年月日が示されているのかを確認します。 -
最初に現れた症状
初診前にどのような症状があり、 何をきっかけに医療機関を受診したのかを確認します。 -
診断名が追加・変更された時期
初診時から複数の診断名があったのか、 それとも治療の途中で新しい診断名が追加されたのかを確認します。 -
医療機関・治療経過
同じ精神科治療の中で診断名が変化したのか、 別の医療機関で別の症状について治療が始まったのかを確認します。 -
受診状況等証明書との関係
初診医療機関で作成された受診状況等証明書の傷病名、 発病年月日、初診年月日と、 診断書の記載がどのようにつながっているのかを確認します。 -
今回の障害年金で何を請求する傷病としているのか
最終的には、 今回の障害年金請求でどの病気やけがを請求対象としているのかを確認します。
「申立書を何枚作るか」は最初に決めるのではなく、 傷病名・発病時期・初診日・治療経過を確認したあとに検討する、 という順番が大切です。
診断書に病名がいくつもあって、申立書を何枚作ればよいか迷っていませんか?
「診断書に複数の病名が書かれている」 「昔と現在で診断名が違う」 「初診日は同じなのか別なのか分からない」 「申立書を傷病ごとに分けるべきか判断できない」 という場合は、 書き始める前に資料全体を整理する方法があります。
こもれび社労士事務所では、 診断書、受診状況等証明書、受診歴などを確認しながら、 傷病名・発病時期・初診日・診断名の変遷を 時系列で整理しています。
全国対応。LINEからご相談いただけます。
書類の写真やPDF、短い説明からでも大丈夫です。
病歴・就労状況等申立書を分けることを検討するケース
日本年金機構の案内では、 今回の請求において請求する病気やけがが複数ある場合には、 それぞれ用紙を分けて記入します。
精神疾患については、たとえば次のような事情がある場合、 請求する病気やけがをどのように整理するのか を慎重に確認した方がよいでしょう。
- それぞれの傷病について発症時期が異なっている
- 傷病ごとに初診日が異なる可能性がある
- それぞれ別の医療機関・受診経過がある
- 後から、それまでとは異なる症状について新たな治療が開始されている
- 診断書上も傷病ごとの発生年月日・初診年月日が区別されている
- 一つの申立書だけでは、それぞれの発病・初診・治療経過が分かりにくくなる
ただし、 これらの事情が一つあるだけで、 「必ず別の請求傷病になる」 と判断できるものではありません。
各傷病の関係については、 診療内容や医学的な経過も踏まえて確認する必要があります。
同じ精神科治療の中で診断名が追加・変更された場合はどう考える?
精神科・心療内科では、 治療経過の中で診断名が変わったり、 新しい診断名が追加されたりすることがあります。
たとえば、
- 初診時と現在で診断名が違っている
- 治療を続ける中で別の診断名が追加された
- 症状の評価が進み、診断書に記載される傷病名が変化した
といったケースです。
このような場合に、 診断名が追加されたという事実だけで、 自動的に新しい障害年金上の初診日が生じる と整理できるとは限りません。
反対に、 後から付いた診断名だからという理由だけで、 必ず以前の傷病と同じものとして扱えるとも限りません。
最初に現れた症状、 初診時の診療内容、 その後の症状・治療の経過、 各傷病の発症時期や初診年月日の記載を確認します。
昔と現在で診断名が違う場合の初診日の考え方については、 次の記事で詳しく解説しています。
PTSD・解離性障害・双極性障害など複数の診断名がある場合
たとえば、精神の障害用診断書に、
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 解離性障害
- 双極性障害
など、複数の診断名が記載されていることがあります。
この場合も、 診断名の数だけを見て申立書の枚数を決めるのではありません。
まず確認したいのは、
- 各症状がいつ頃から現れていたのか
- 複数の精神疾患が同時期に発症したと記載されているのか
- 順に発症したと記載されているのか
- それぞれの初診年月日はどのように記載されているのか
- 同じ精神科治療の中で診断名が追加されたのか
- 診断書・診療経過上、それぞれの傷病がどのように位置付けられているのか
という点です。
PTSD・解離性障害・双極性障害など、 特定の診断名の組み合わせであれば必ず同じ傷病、 または必ず別の傷病として扱われるという意味ではありません。
個々のケースについて、 症状、発症時期、診療内容、初診日、 その後の治療経過などを確認する必要があります。
病歴・就労状況等申立書の「傷病名」には何を書く?
申立書を作る際には、 上部の「傷病名」欄についても迷いやすいところです。
日本年金機構の記載要領では、 申立書の傷病名について、 「障害年金を請求する傷病(診断書の傷病)」を記入する と案内されています。
ただし、
- 初診時の傷病名
- 受診状況等証明書の傷病名
- 障害認定日頃の診断書の傷病名
- 現在の診断書の傷病名
がすべて同じとは限りません。
とくに、認定日頃の診断書と現在の診断書で傷病名が異なる場合に、
- 必ず認定日頃の診断書に合わせる
- 必ず現在の診断書に合わせる
- 両方に記載されたすべての病名を必ず書く
といった具体的な一律の書き方は、 公開されている日本年金機構の資料では確認できません。
そのため、 今回何を障害年金の請求傷病としているのか、 診断書にどの傷病が記載されているのか、 発病から現在までの経過がどのようになっているのかを確認しながら整理します。
認定日頃の診断書と現在の診断書で病名が違う場合については、 次の記事で詳しく解説しています。
複数の精神疾患がある場合、申立書を書く前に確認したいこと
診断書に複数の精神疾患が記載されている場合は、 いきなり申立書を書き始めるより、 まず手元の資料を並べて確認した方が整理しやすくなります。
- すべての診断書に記載された傷病名
- 各傷病の発生年月日
- 各傷病について記載された初診年月日
- 初診時の症状・診療内容
- 受診状況等証明書の傷病名・発病年月日・初診年月日
- 医療機関ごとの受診期間
- 診断名が追加・変更された時期
- 転院・入院・救急受診の経過
- 通院していなかった期間
- 学校生活・就労状況の変化
- 日常生活上の支障
- 各資料の間に説明できない食い違いがないか
病歴・就労状況等申立書は、 発病から現在までの病歴や就労状況等を 時系列で整理して記載する書類です。
そのため、複数の診断名がある場合も、 病名だけを並べるのではなく、 「いつ、どのような症状があり、どこを受診し、 どのように診断・治療されてきたのか」 が分かるように整理することが大切です。
通院していなかった期間の書き方については、 次の記事で詳しく解説しています。
障害年金で通院していない期間はどう書く?病歴・就労状況等申立書の記載ポイント
発病日の考え方についてはこちらをご覧ください。
複数の精神疾患と病歴・就労状況等申立書についてよくある質問
Q.診断書に精神疾患が3つ書いてあります。申立書も3枚必要ですか?
診断名が3つ書かれているという理由だけで、 直ちに申立書を3枚作ると判断するものではありません。
日本年金機構の様式では、 「請求する病気やけがが複数ある場合」は、 それぞれ用紙を分けて記入するよう案内されています。
そのため、 まず今回の請求する病気やけががどのように整理されるのか、 発病時期・初診日・治療経過などを確認します。
Q.同じ精神科で診断名が途中から増えました。別の申立書が必要ですか?
診断名が追加されたという事実だけでは判断できません。
新しい診断名に関する症状がいつからあったのか、 初診年月日がどのように記載されているのか、 それまでの治療経過とどのような関係にあるのかを確認します。
Q.複数の病名の初診日が全部同じなら、申立書は1枚でいいですか?
初診日が同じという一つの事情だけで、 必ず1枚でよいと判断することはできません。
傷病の発症時期、診療内容、診断書上の記載、 今回の障害年金でどの病気やけがを請求しているのかも含めて確認します。
Q.後から付いた診断名は、新しい初診日になりますか?
新しい診断名が付いた日が、 そのまま障害年金上の新しい初診日になるとは限りません。
最初の受診時の症状や診療内容、 その後の治療経過、 各傷病の関係などを確認する必要があります。
Q.認定日用と現在用の診断書で病名の数が違います。
障害認定日頃と現在では、 診断名が追加・変更されていることがあります。
病名の数が違うという理由だけで書類を機械的に統一せず、 それぞれの診断書が示す時点と、 診断名が変化した経過を確認することが大切です。
Q.申立書を分けるか分からないとき、先に複数枚作っておいた方がいいですか?
先に枚数を決めるより、 診断書、受診状況等証明書、受診歴などを確認し、 それぞれの傷病の発病時期・初診日・治療経過を整理する方がよいでしょう。
その整理をしたうえで、 今回の請求する病気やけがが複数あるのかを確認します。
複数の診断名があり、申立書をどう作ればよいか分からない方へ
精神障害の障害年金では、 診断書を確認して初めて、 「病名が複数ある」 「以前の診断書とは病名が違う」 「発病日や初診日も違う」 と気づくことがあります。
特に、
- 診断書に複数の精神疾患が記載されている
- 初診時と現在で診断名が違う
- 途中から新しい診断名が追加されている
- 傷病ごとに発生年月日の記載が違う
- 初診日が一つなのか複数なのか分からない
- 申立書を傷病ごとに分けるべきか迷っている
- 認定日用と現在用の診断書でも傷病名が違う
- 受診状況等証明書の病名も診断書と違う
といったケースでは、 申立書を書き始める前に、 医療資料と受診経過を時系列で整理すると 確認すべきポイントが見えやすくなります。
複数の診断名があるとき、申立書をどう作るか一緒に整理しませんか
こもれび社労士事務所では、 精神の障害用診断書、 受診状況等証明書、 病歴・就労状況等申立書などを確認しながら、 傷病名、発病時期、初診日、診断名の追加・変更、 受診・治療経過を整理します。
診断書の内容を認定されやすい表現へ変更することや、 医師の医学的判断をこちらから指定することはありません。
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参考資料
- 日本年金機構「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」
- 日本年金機構「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」
- 日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」
- 日本年金機構「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
※本記事は、日本年金機構・厚生労働省が公開している資料をもとに、 複数の精神疾患が診断書に記載されている場合の 病歴・就労状況等申立書の整理方法について一般的に解説したものです。 診断名が複数あることだけで、 請求する病気やけがが複数あるかどうかを 一律に判断できるものではありません。 実際の取扱いは、傷病、発症時期、初診日、診療内容、 各傷病の関係、受診経過、提出資料等によって異なる場合があります。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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