昔と今で診断名が違う場合、障害年金の初診日はどうなる?診断名変更の考え方

障害年金のご相談では、
「昔と今で診断名が違うのですが、初診日はどこになるのでしょうか?」
というご質問をいただくことがあります。
たとえば、
- 子どもの頃は「神経症」「強迫性障害」などと診断されていた
- 成人後にASD(自閉スペクトラム症)やADHDなどの発達障害と診断された
- 以前は「適応障害」、その後「うつ病」と診断された
- 昔と現在で医療機関も診断名も変わっている
といったケースです。
このような場合、
「診断名が変わったのだから、新しい診断名がついた日が障害年金の初診日になるのでは?」
と考える方もいらっしゃいます。
しかし、障害年金の初診日は、単純に「現在の診断名が初めてついた日」で決まるものではありません。
以前の症状や診療内容と、現在障害年金を請求しようとしている傷病との関係を確認しながら、初診日を整理する必要があります。
この記事では、昔と今で診断名が違う場合の障害年金の初診日の考え方、発達障害や精神疾患で診断名が変わったケース、確認したい資料について、社会保険労務士が実務の視点から解説します。
障害年金の初診日は「診断名」だけで決まるものではありません
障害年金における初診日とは、一般に、
障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日
をいいます。
同じ病気やけがについて複数の医療機関へ転院している場合は、原則として一番最初に医師等の診療を受けた日が初診日になります。
そのため、
診断名が途中で変わったという事情だけで、初診日が新しい診断日に変わるとは限りません。
ポイント
障害年金では「何という診断名がついていたか」だけではなく、以前の症状・診療内容と現在の傷病との関係を確認することが重要です。
なぜ昔と今で診断名が変わることがある?
精神疾患や発達障害では、長い治療経過の中で診断名が変わることがあります。
たとえば子どもの頃には、
- 不登校
- 強迫症状
- チック
- 対人関係の困難
- 自傷行為
- 強い不安
などを理由に精神科や心療内科を受診していたものの、当時は現在と異なる診断名が付けられているケースがあります。
その後、成人して別の医療機関を受診し、
- ASD
- ADHD
- トゥレット症候群
- うつ病
など、現在の診断名がつくことがあります。
この場合、現在の診断名が初めてついた日だけを見るのではなく、それ以前の受診が現在の障害とどのように関係しているかを確認する必要があります。
例1|昔は神経症、成人後に発達障害と診断された場合
たとえば、
- 中学生の頃から強迫症状や対人関係の困難があった
- 当時は「神経症」と診断され精神科へ通院していた
- 成人後に別の病院でASDと診断された
というケースを考えてみます。
この場合、
「ASDと診断されたのは成人後だから、その日が初診日」
と直ちに判断することはできません。
中学生頃の症状や診療内容が、現在の発達障害や現在生じている障害状態とどのようにつながっているかを確認する必要があります。
診断名が違っていても、症状や治療経過が連続している場合があります。
例2|適応障害からうつ病に診断名が変わった場合
精神疾患では、
「最初は適応障害と診断されたが、その後うつ病と診断された」
というケースもあります。
この場合も、うつ病と診断された日が当然に新しい初診日になるわけではありません。
最初に適応障害として診療を受けていた時期から症状が継続し、その後診断名が変更されたという経過であれば、最初の受診時期から確認する必要があります。
一方で、以前の傷病がいったん治癒したと考えられる状況があり、その後まったく別の経過で新たな傷病が生じた場合などは、個別に検討が必要になります。
そのため、診断名の変更だけを見て初診日を判断しないことが大切です。
例3|厚生年金に入ってから現在の診断名がついた場合
特に注意したいのが、
「厚生年金加入後に現在の診断名がついた」
というケースです。
障害厚生年金は、原則として厚生年金加入中に初診日のある傷病について、一定の要件を満たした場合に対象となります。
そのため、
「会社員になってからASDと診断されたから、障害厚生年金になるのでは?」
と考える方もいます。
しかし、その診断以前に、現在の障害の原因となった症状について医療機関を受診していた場合には、さらに前の受診日が初診日として問題になることがあります。
初診日が、
- 20歳前
- 国民年金加入期間
- 厚生年金加入期間
のどこにあるかによって、検討する障害年金の種類や保険料納付要件などが変わります。
「厚生年金に入ってから正式な診断名がついた=障害厚生年金」とは限りません。
それ以前の受診歴や症状との関係を確認して、障害年金上の初診日を整理する必要があります。
20歳前に別の診断名で受診していた場合
発達障害や精神疾患では、20歳前から受診歴があるケースも少なくありません。
日本年金機構では、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある病気やけがについて一定の障害状態に該当する場合、20歳前傷病による障害基礎年金を受給できる仕組みがあります。
20歳前に初診日がある場合には、保険料納付要件はありません。
そのため、
「子どもの頃は別の診断名だったので、その受診は障害年金には関係ない」
と自己判断してしまうことには注意が必要です。
昔の症状や診療内容と現在の傷病の関係を確認した結果、20歳前の受診が初診日として重要になることがあります。
診断名が違う場合、何を見て初診日を整理する?
診断名が途中で変わっているケースでは、病名だけを並べても初診日を判断しにくいことがあります。
実務では、次のような内容を時系列で確認します。
- 最初にどのような症状が現れたのか
- 何を理由に最初の医療機関を受診したのか
- 当時どのような診断を受けたのか
- どのような治療や投薬を受けたのか
- 症状はその後も続いていたのか
- 転院の理由は何だったのか
- 現在の診断名に至るまでどのような経過があったのか
つまり、
「病名の一致」よりも、症状・受診・治療の経過を一本の流れとして確認すること
が重要です。
確認しておきたい資料
診断名が変わったケースでは、次のような資料が役立つことがあります。
1.受診状況等証明書
最初に受診した医療機関の初診日や当時の傷病名、受診経過などを確認するための重要な書類です。
現在診断書を書いてもらう病院と初診病院が違う場合には、受診状況等証明書を取得できるか確認します。
2.紹介状・診療情報提供書
転院時の紹介状には、
- 以前の診断名
- 受診開始時期
- 症状
- 治療内容
などが記載されている場合があります。
診断名が変わった経過を確認するうえで、特に重要な資料になることがあります。
3.過去のカルテ・転院先のカルテ
初診病院のカルテだけでなく、その後の病院のカルテも確認する価値があります。
転院先のカルテに、
「○歳頃から症状あり」
「前医では○○と診断」
「○年前から治療継続」
などと記載されている場合があります。
4.お薬手帳
昔のお薬手帳が残っていれば、
- いつ頃から治療を受けていたか
- どの医療機関へ通っていたか
- どのような薬が処方されていたか
を確認できます。
診断名そのものが分からない場合でも、治療経過を整理する重要な手掛かりになることがあります。
5.障害者手帳などの診断書
精神障害者保健福祉手帳などを取得している場合、申請時の診断書に過去の診断名や受診歴が記載されていることがあります。
自治体に診断書の写しが保管されているか確認することも検討できます。
最初の病院にカルテがない場合は?
診断名が変わったケースでは、昔の医療記録がすでに残っていないこともあります。
その場合でも、
- 紹介状
- 転院先のカルテ
- お薬手帳
- 医療保険の記録
- 手帳関係書類
- その他の初診日を確認できる資料
などから受診経過を整理できる可能性があります。
カルテがない場合の初診日の証明方法については、別の記事で詳しく解説しています。
診断名が違えば「別の傷病」として扱われる?
これも一律には判断できません。
診断名が違うからといって、必ず別の傷病として取り扱われるわけではありません。
反対に、診断名が似ているからといって、必ず同じ傷病として扱われるとも限りません。
重要なのは、
- 症状の内容
- 発症・受診の経過
- 治療内容
- 症状の連続性
- 医学的な関係
などを具体的な資料から確認することです。
こうした点は、障害年金請求上の初診日を整理するうえで個別判断が必要になりやすい部分です。
診断名が変わっている場合に避けたい自己判断
特に避けたいのは、次のような判断です。
- 診断名が違うから昔の病院は関係ない
- 現在の診断名がついた病院を初診日にすればよい
- 厚生年金加入後の診断だから障害厚生年金になる
- 昔のカルテがないので次の病院を初診日にする
これらは、実際の診療経過を確認せずに決めることはおすすめできません。
初診日は障害年金の種類や保険料納付要件にも関係するため、最初に受診歴全体を整理してから請求方針を決めることが大切です。
診断名が変わっているケースでは、「病名」より「経過」を整理します。
最初の症状、受診理由、診断名の変化、転院、治療内容を時系列で並べると、どの医療機関の資料を確認すべきかが見えやすくなります。
初診日が変わると障害年金の種類も変わることがあります
初診日がどこにあるかは、受給できる障害年金を検討するうえで重要です。
| 初診日の時期 | 主に検討する障害年金 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 20歳前 | 20歳前傷病による障害基礎年金 | 保険料納付要件なし |
| 国民年金加入中 | 障害基礎年金 | 原則1級・2級 |
| 厚生年金加入中 | 障害厚生年金 | 1級・2級・3級を検討 |
障害厚生年金では、厚生年金加入中に初診日があることが受給要件の一つです。
だからこそ、「どの診断名がいつ付いたか」だけではなく、本当の初診日がどこになるかを慎重に確認する必要があります。
よくある質問
Q.昔は神経症、今は発達障害です。今の病院が初診日ですか?
診断名だけでは判断できません。
昔の症状や診療内容と、現在の発達障害や障害状態との関係を確認する必要があります。
Q.成人後に初めてASDと診断されました。成人後が初診日ですか?
成人後に正式な診断名が付いていても、それ以前に関連する症状について医療機関を受診していた場合には、以前の受診日が初診日として問題になることがあります。
Q.適応障害からうつ病に変わりました。初診日は変わりますか?
診断名が変更されたことだけで初診日が変わるとは限りません。
最初の受診から症状や治療がどのように続いているかを確認します。
Q.厚生年金加入後に今の診断名がつきました。障害厚生年金になりますか?
必ずしもそうとは限りません。
厚生年金加入前に、現在の障害の原因となった傷病について受診していた場合には、その受診日が初診日となる可能性があります。
Q.昔と今の診断名が違う場合、どんな資料を用意すればよいですか?
まずは受診状況等証明書、紹介状、過去・現在の診療記録、お薬手帳などを確認し、受診経過を時系列で整理します。
必要な資料はケースによって異なるため、すべてを最初から集める必要はありません。
Q.昔のカルテがない場合はどうすればよいですか?
紹介状、転院先のカルテ、お薬手帳、手帳関係資料などから初診日や受診経過を確認できないか検討します。
カルテがないだけで直ちに障害年金を諦める必要があるとは限りません。
まとめ|診断名ではなく「症状と受診のつながり」から初診日を考える
昔と今で診断名が違う場合でも、
「現在の診断名がついた日=障害年金の初診日」
とは限りません。
確認したいのは、
- 最初にどのような症状があったか
- 何を理由に最初の医療機関を受診したか
- 当時どのような診断・治療を受けていたか
- その後の症状がどのように続いたか
- 現在の診断名に至るまでどのような経過があったか
という点です。
診断名が変わっているケースでは、病名だけではなく、症状・診療・治療を時系列でつなげて整理することが重要です。
また、初診日が20歳前なのか、国民年金加入中なのか、厚生年金加入中なのかによって、検討する障害年金も変わる可能性があります。
昔と今で診断名が違い、初診日が分からない方へ
「子どもの頃は別の診断名だった」
「成人後に発達障害と診断された」
「厚生年金に入ってから現在の診断名がついた」
という場合でも、診断名だけで初診日を決めるのではなく、これまでの受診歴を確認することが大切です。
こもれび社労士事務所では、受診状況等証明書、紹介状、カルテ、お薬手帳など、現在確認できる資料を見ながら、診断名が変わった経過・初診日・障害年金の請求方針を一緒に整理しています。
まだ昔の病院の資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
「昔と今で病名が違い、どこが初診日か分からない」という段階でも大丈夫です。
※障害年金上の初診日の判断は、診断名だけではなく、個別の症状、受診歴、診療内容、傷病の関係、提出資料等を踏まえて行われます。本記事は一般的な制度・実務上の考え方を解説するもので、個別の初診日や受給可否を保証するものではありません。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
※ 個人のご相談(労災・後遺障害・障害年金)/全国対応(LINE・オンライン)
※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です


