お薬手帳は障害年金の初診日証明に使える?カルテがない場合の活用方法

障害年金の初診日を確認しようとして、昔の病院へ問い合わせたところ、
「カルテがもう残っていません」
と言われてしまうことがあります。
そのようなとき、昔のお薬手帳が手元に残っていれば、
「このお薬手帳を障害年金の初診日の証明に使えないでしょうか?」
という疑問を持つ方もいらっしゃいます。
結論からいうと、お薬手帳は、障害年金の初診日や受診経過を確認するための参考資料として活用できる可能性があります。
実際、日本年金機構の「受診状況等証明書が添付できない申立書」でも、初診時の受診状況を確認する参考資料の一つとして、お薬手帳が挙げられています。
ただし、
「お薬手帳が残っている=それだけで初診日が必ず認められる」
ということではありません。
いつの処方なのか、どの医療機関から処方されたのか、ほかにどのような医療資料が残っているのかなどを確認し、複数の資料を組み合わせて初診日を整理することが重要です。
この記事では、お薬手帳が障害年金の初診日証明でどのように役立つのか、カルテがない場合にどのような資料と組み合わせて確認していくのかを、社会保険労務士が実務の視点から解説します。
障害年金で重要な「初診日」とは?
障害年金における初診日とは、一般に、
障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日
をいいます。
同じ病気やけがで複数の医療機関へ転院している場合には、原則として最初に診療を受けた日が初診日になります。
初診日は、
- 障害基礎年金になるのか
- 障害厚生年金になるのか
- 20歳前傷病に該当するのか
- 保険料納付要件を満たしているか
- 障害認定日がいつになるのか
などを確認する基準となる重要な日です。
そのため、最初の病院のカルテが残っていない場合には、ほかの資料から初診日を確認できないか検討することになります。
お薬手帳は初診日の参考資料として使える?
はい。お薬手帳は、状況によって初診日や受診経過を確認するための参考資料になる可能性があります。
日本年金機構の「受診状況等証明書が添付できない申立書」では、受診状況などを確認できる参考資料として、
- お薬手帳
- 領収書
- 診察券
- 障害者手帳
- 健康保険の給付記録
- 第三者証明
などが挙げられています。
つまり、お薬手帳は単なる服薬管理のためのものではなく、昔の受診歴を確認する資料の一つとして使えることがあるということです。
ポイント
お薬手帳は「初診日の証明書そのもの」ではなく、初診時期や受診経過を確認するための参考資料の一つとして考えるのが適切です。
お薬手帳から何が分かる?
昔のお薬手帳には、受診歴を整理するうえで重要な情報が残っていることがあります。
1.薬が処方された年月日
処方年月日が記載されていれば、
「少なくともこの時点では医療機関を受診し、治療を受けていた」
ということを確認する手掛かりになります。
特に10年、20年前の受診について本人の記憶が曖昧になっている場合、お薬手帳の日付は受診歴を時系列で整理するときに役立ちます。
2.医療機関名
お薬手帳に処方した医療機関名が記載されている場合があります。
「昔どこの病院へ通っていたか思い出せない」というケースでも、お薬手帳から病院名を確認できることがあります。
病院名が分かれば、
- 現在も医療機関が存在するか
- カルテが残っているか
- 受診状況等証明書を作成できるか
を問い合わせることができます。
3.処方された薬の内容
薬剤名から、当時どのような治療を受けていたかを確認する手掛かりになることがあります。
ただし、薬だけを見て診断名や初診日を確定することはできません。
同じ薬が複数の傷病に使用されることもあるため、薬剤名だけから傷病を推測して初診日を決めることは避ける必要があります。
4.薬局名
医療機関名が分からなくても、調剤薬局名が記録されている場合があります。
当時利用していた薬局が分かることで、受診していた地域や医療機関を思い出すきっかけになることもあります。
お薬手帳だけで初診日を証明できる?
ここは注意が必要です。
お薬手帳があるからといって、それだけで初診日が必ず認められるわけではありません。
たとえば、お薬手帳に平成20年6月の処方記録があったとしても、
「平成20年6月が本当に最初の受診なのか」
は、お薬手帳だけでは分からない場合があります。
それ以前にも受診していた可能性があるためです。
そのため実務では、
- お薬手帳
- 受診状況等証明書
- 紹介状
- 転院先のカルテ
- 診察券
- 医療保険の給付記録
などを確認して、受診歴全体を整理します。
まず確認するのは「もっと古い受診がないか」
お薬手帳が見つかったときに重要なのは、
「このお薬手帳の最初の日付=初診日」
とすぐに決めないことです。
たとえば、お薬手帳の最初の記録が2008年だったとしても、
- 2007年以前から同じ病院へ通っていた
- それ以前に別の病院を受診していた
- 転院後に初めてお薬手帳を作った
という可能性があります。
そこで、
- お薬手帳の一番古い日付を確認する
- そこに記載されている医療機関を確認する
- それ以前に別の病院を受診していなかったか思い出す
- 紹介状や転院歴を確認する
- 病院へカルテ等の保存状況を問い合わせる
という順番で整理するとよいでしょう。
お薬手帳の「最初の日付」と障害年金の「初診日」は同じとは限りません。
お薬手帳は重要な手掛かりですが、それ以前の受診歴がないかまで確認することが大切です。
初診の病院にカルテがない場合、お薬手帳は特に重要
お薬手帳が特に役立つのは、初診時の医療機関から受診状況等証明書を取得できないケースです。
たとえば、
- カルテの保存期間が経過している
- 病院が閉院している
- 当時の診療記録が残っていない
といった場合です。
このような場合には、日本年金機構の「受診状況等証明書が添付できない申立書」を使用し、参考資料を添付して初診日の確認を求めることがあります。
その参考資料の一つとして、お薬手帳を提出することが考えられます。
ただし、初診日の証明方法はケースによって異なります。
カルテがない場合の資料の集め方や、受診状況等証明書が添付できない申立書、第三者証明などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
紹介状とお薬手帳がそろっている場合
お薬手帳とあわせて、転院時の紹介状が残っている場合があります。
この組み合わせは、受診経過を整理するうえで有用なことがあります。
たとえば、
- お薬手帳から2008年頃にAクリニックで治療を受けていたことが分かる
- 紹介状から、その後B病院へ治療が引き継がれたことが分かる
- B病院のカルテにAクリニックでの治療歴が記載されている
といった形です。
一つの資料だけでは不十分でも、複数の資料の内容が一致していることで、受診経過をより整理しやすくなる場合があります。
転院先のカルテも確認する
初診病院にカルテがない場合でも、その後に通った病院のカルテに昔の受診歴が記載されていることがあります。
たとえば、
「○年前よりAクリニックへ通院」
「前医にて○○の治療を受けていた」
などの記載です。
このような記録とお薬手帳の日付・医療機関名が一致すれば、受診経過を整理するうえで重要な資料になることがあります。
そのため、
初診病院のカルテがないからといって、初診病院だけを調べて終わりにしないこと
が大切です。
20歳前傷病ではお薬手帳が重要になることも
発達障害や精神疾患では、子どもの頃から通院しているケースがあります。
ところが、20歳前の受診から長期間経過していると、
- 初診病院のカルテがない
- 当時の診断名を覚えていない
- 受診時期が曖昧
ということがあります。
そのような場合に、子どもの頃・10代の頃のお薬手帳が残っていれば、受診歴を整理する重要な手掛かりになることがあります。
なお、20歳前の初診日の確認については、一定の要件を満たす場合、2番目以降の医療機関の受診状況等証明書などから確認する取扱いもあります。
そのため、20歳前の一番古い病院のカルテがない場合でも、すぐに請求を諦める必要はありません。
昔と今で診断名が違う場合も、お薬手帳を確認する
昔と現在で診断名が違う場合にも、お薬手帳が役立つことがあります。
たとえば、
- 子どもの頃は神経症と診断されていた
- 成人後に発達障害と診断された
という場合です。
この場合、現在の診断名がついた日だけを見るのではなく、昔の症状や治療とのつながりを確認する必要があります。
お薬手帳から過去の治療時期や医療機関を確認し、紹介状やカルテなどと照らし合わせることで、診断名が変わった経過を整理できる場合があります。
古いお薬手帳は捨てない方がいい?
障害年金を将来申請する可能性がある場合、古いお薬手帳はできるだけ保管しておくことをおすすめします。
特に、
- 精神科・心療内科へ長期間通っている
- 転院を繰り返している
- 昔と現在で診断名が違う
- 子どもの頃から通院している
という方は、古いお薬手帳が後から重要になることがあります。
紙のお薬手帳だけでなく、診察券、領収書、紹介状なども一緒に保管しておくとよいでしょう。
写真やPDFにして保存しておくのもおすすめ
古いお薬手帳は、紛失や劣化に備えて写真やPDFにして保存しておく方法もあります。
保存する場合は、
- 表紙
- 医療機関名が分かるページ
- 日付が分かるページ
- 処方内容が分かるページ
などを飛ばさず残しておくと、後から確認しやすくなります。
よくある質問
Q.お薬手帳だけで障害年金の初診日を証明できますか?
お薬手帳だけで初診日が必ず認められるとは限りません。
ただし、日本年金機構の書類上も、受診状況等証明書を添付できない場合の参考資料の一つとして挙げられています。
紹介状、転院先のカルテ、診察券など、ほかの資料とあわせて検討することが大切です。
Q.お薬手帳の一番古い日付が初診日になりますか?
必ずしもそうではありません。
その日以前にも同じ傷病について医療機関を受診していた可能性があるため、それ以前の受診歴がないか確認する必要があります。
Q.薬の名前から診断名を証明できますか?
薬剤名だけから診断名を確定することはできません。
同じ薬が複数の病気に使用されることもありますので、診療記録や紹介状などとあわせて確認します。
Q.昔の病院名がお薬手帳から分かりました。次はどうすればいいですか?
まず、その医療機関が現在も存在するか、カルテ等の診療記録が残っているか、受診状況等証明書を作成できるかを確認してみましょう。
Q.お薬手帳はコピーでも大丈夫ですか?
提出方法については年金事務所等へ確認することをおすすめします。
まずは原本を捨てずに保管し、必要なページをコピーや写真で整理しておくとよいでしょう。
Q.初診の病院にカルテがなく、お薬手帳しかありません
お薬手帳だけで判断せず、転院先のカルテ、紹介状、診察券、健康保険の給付記録など、ほかに初診日を確認できる資料がないか整理します。
カルテがない場合でも、すぐに障害年金を諦める必要があるとは限りません。
まとめ|お薬手帳は「初診日をたどる重要な手掛かり」になります
お薬手帳は、障害年金の初診日を整理するときに役立つ重要な資料の一つです。
特に、
- 初診病院のカルテがない
- 受診した時期をはっきり覚えていない
- 昔の病院名が分からない
- 転院を繰り返している
- 20歳前から通院している
- 昔と現在で診断名が違う
という場合には、お薬手帳から受診歴をたどれることがあります。
ただし、
「お薬手帳の最初の日付=障害年金の初診日」ではありません。
その前に受診した医療機関がないかを確認し、紹介状、受診状況等証明書、転院先のカルテなどと組み合わせながら、受診歴を時系列で整理することが重要です。
昔のお薬手帳はあるけれど、初診日が分からない方へ
「初診の病院にカルテが残っていない」
「昔のお薬手帳しか手元にない」
「このお薬手帳が初診日の資料として使えるのか分からない」
という段階でもご相談いただけます。
こもれび社労士事務所では、お薬手帳、紹介状、受診状況等証明書、転院先の診療記録など、現在残っている資料を確認しながら、初診日・受診経過・障害年金の請求方針を一緒に整理しています。
資料がすべてそろっていなくても、まず手元にあるものから確認していきます。
お薬手帳の写真からでも、まず受診経過を整理できます。
※お薬手帳は初診日を確認するための参考資料の一つであり、お薬手帳を提出すれば必ず初診日が認められるものではありません。初診日の判断は、受診歴、医療記録、その他の提出資料等を踏まえて個別に行われます。本記事は一般的な制度・実務上の考え方を解説するものです。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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