精神障害者保健福祉手帳の診断書は障害年金に使える?初診日・遡及請求での活用方法

精神障害者保健福祉手帳を取得したことがある方から、
「手帳を申請したときの診断書は、障害年金にも使えますか?」
というご質問をいただくことがあります。
特に、
- 昔の病院のカルテが残っていない
- 20歳頃・障害認定日頃の状態を確認できる資料が少ない
- 初診日がかなり昔で、受診歴の整理が難しい
- 昔と現在で診断名が変わっている
という場合には、過去に精神障害者保健福祉手帳を申請した際の診断書が残っていないか確認することがあります。
結論からいうと、
精神障害者保健福祉手帳の診断書を、そのまま障害年金用の診断書として提出するものではありません。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度であり、障害年金の請求では、原則として障害年金専用の「精神の障害用」の診断書を使用します。
一方で、過去の手帳申請時診断書には、当時の診断名、症状、日常生活状況、受診歴などが記載されていることがあります。
そのため、
初診日や過去の障害状態、受診経過を整理するための参考資料として役立つ場合があります。
この記事では、精神障害者保健福祉手帳の診断書と障害年金用診断書の違い、初診日や遡及請求でどのように活用できる可能性があるのかを、社会保険労務士が実務の視点から解説します。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度です
まず押さえておきたいのは、
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は、それぞれ別の制度
だということです。
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定し、各種福祉サービス等につなげる制度です。
一方、障害年金は、公的年金制度に基づき、病気やけがによって生活や仕事が制限される一定の障害状態にある場合に支給される年金です。
そのため、
- 手帳を持っているから障害年金も必ず受給できる
- 手帳が3級だから障害年金も3級になる
- 手帳がないから障害年金は請求できない
という関係ではありません。
ポイント
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別制度です。手帳の有無や等級だけで、障害年金の受給可否や等級が決まるわけではありません。
手帳用診断書を、そのまま障害年金の診断書に使える?
原則として、そのまま障害年金用診断書の代わりとして使うものではありません。
障害年金の請求では、日本年金機構が定める障害年金用の診断書を使用します。
精神の障害の場合は、
「診断書(精神の障害用)」
を医師に作成してもらいます。
障害年金用の診断書には、
- 傷病名
- 発病から現在までの経過
- 治療内容
- 現在の症状
- 日常生活能力
- 就労状況
- 予後
など、障害年金の認定に必要な項目が設けられています。
そのため、
「昔の手帳用診断書があるから、新しく障害年金用診断書を書いてもらわなくてもよい」
ということにはなりません。
では、手帳申請時の診断書は何に使える?
手帳用診断書が特に役立つ可能性があるのは、
過去の受診歴や障害状態を整理するとき
です。
たとえば、古い手帳用診断書に、
- 当時の診断名
- 初診年月日
- 治療歴
- 症状
- 日常生活上の支障
- 就労状況
などが記載されていることがあります。
このような内容は、現在までの病歴を時系列で整理するときに重要な手掛かりになります。
初診日を確認する参考資料になることもあります
障害年金では、初診日の確認が非常に重要です。
通常は、初診時の医療機関が作成した受診状況等証明書などによって初診日を確認します。
しかし、
- 初診病院が閉院している
- カルテの保存期間が過ぎている
- 受診状況等証明書を作成できない
という場合があります。
そのようなケースでは、初診日を確認する参考資料として、障害者手帳関係の資料などを検討することがあります。
手帳申請時診断書に古い初診年月日や受診歴が記載されている場合は、他の資料とあわせて受診経過を整理する材料になる可能性があります。
ただし、
手帳用診断書に初診日が書いてある=その日が必ず障害年金上の初診日として認められる
という意味ではありません。
受診状況等証明書、紹介状、転院先のカルテ、お薬手帳など、他の資料との整合性も確認します。
カルテがない場合は、手帳用診断書も探してみる
初診病院にカルテが残っていない場合には、
- 紹介状
- 転院先のカルテ
- お薬手帳
- 診察券
- 医療保険の給付記録
- 精神障害者保健福祉手帳関係の資料
などを確認します。
カルテがない場合の初診日の証明方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
20歳頃・障害認定日頃の状態を確認する資料になる?
20歳前から精神疾患や発達障害などで通院している方の場合、
20歳頃の障害状態を確認できる資料がほとんど残っていない
ということがあります。
たとえば、
- 当時のカルテがない
- 病院が閉院している
- 当時の主治医がいない
- 障害認定日頃の診断書を作成できない
といったケースです。
このような場合、20歳頃に精神障害者保健福祉手帳を申請していたのであれば、当時の診断書が残っていないか確認する価値があります。
手帳用診断書に、
- 当時の症状
- 日常生活能力
- 家族からの援助状況
- 就労・通学状況
などが記載されていれば、当時の状態を整理する重要な資料になる可能性があります。
ただし、手帳用診断書だけで遡及請求できるとは限りません
ここは特に注意が必要です。
障害認定日請求(いわゆる遡及請求)では、
障害認定日当時に、障害年金の等級に該当する状態だったこと
を確認する必要があります。
そのため、
「20歳頃の手帳用診断書が見つかった=過去5年分の障害年金を遡及できる」
ということではありません。
障害年金用の診断書を当時の状態について作成できるのか、その他の医療記録があるのかなどを確認しながら、認定日請求の可能性を検討します。
手帳用診断書は「遡及請求の診断書そのもの」ではありません。
ただし、認定日頃の障害状態や治療経過を確認するための資料として重要になる場合があります。
20歳頃の診断書が作れない場合はこちらも確認
障害認定日頃の診断書が作成できない場合には、遡及請求が難しくなることがあります。
一方で、認定日請求が難しいからといって、現在の障害年金まで請求できないと決まるわけではありません。
現在の障害状態による事後重症請求を検討できる場合があります。
20歳頃・障害認定日頃の診断書が作れない場合については、こちらの記事で詳しく解説しています。
自治体に昔の手帳用診断書が残っていることも
手元に診断書の控えがなくても、手帳を申請した自治体に関係書類が保管されている場合があります。
そのため、
「昔、精神障害者保健福祉手帳を取ったことはあるが、診断書は持っていない」
という場合には、
お住まいの自治体の障害福祉担当窓口などへ、
- 過去の手帳申請時診断書が保管されているか
- 本人が写しを取得できるか
- 開示請求等の手続が必要か
を確認してみる方法があります。
保存期間や取得方法は自治体によって異なるため、個別に確認してください。
昔と今で診断名が違う場合にも役立つことがあります
精神疾患や発達障害では、昔と現在で診断名が変わっていることがあります。
たとえば、
- 昔は神経症と診断されていた
- その後うつ病と診断された
- 成人後にASDやADHDと診断された
というケースです。
昔の手帳用診断書が残っていれば、当時の診断名や症状、受診歴が確認できる場合があります。
それによって、
「昔の症状と現在の障害がどのようにつながっているのか」
を整理する手掛かりになります。
診断名が変わった場合の初診日の考え方については、別の記事でも詳しく解説しています。
お薬手帳と一緒に確認すると受診経過が見えやすくなる
昔の手帳用診断書と、お薬手帳の両方が残っている場合もあります。
たとえば、
- お薬手帳から当時通院していた医療機関と時期が分かる
- 手帳用診断書から当時の診断名や生活状況が分かる
- 紹介状や転院先カルテから治療が継続していたことが分かる
というように、複数の資料を組み合わせることで、受診経過を整理しやすくなることがあります。
お薬手帳の活用方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
手帳の等級と障害年金の等級は同じ?
同じではありません。
精神障害者保健福祉手帳には1級・2級・3級がありますが、障害年金とは認定基準や制度目的が異なります。
そのため、
- 手帳2級だから障害年金も2級
- 手帳3級だから障害年金は3級まで
というように、そのまま対応するわけではありません。
障害年金では、障害年金独自の認定基準と診断書の内容、日常生活状況などをもとに判断されます。
障害年金を申請するなら、手帳を持っていた方が有利?
精神障害者保健福祉手帳を取得していなければ障害年金を請求できない、ということはありません。
また、手帳を持っているだけで障害年金が有利になると一律にいうこともできません。
ただし、以前から手帳を取得している場合には、
過去の障害状態を確認できる資料が残っている可能性がある
という意味で、確認する価値があります。
よくある質問
Q.手帳用診断書だけで障害年金を申請できますか?
原則として、障害年金の請求では障害年金専用の診断書が必要です。
手帳用診断書をそのまま障害年金用診断書の代わりにするものではありません。
Q.手帳2級なら障害年金も2級になりますか?
いいえ。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別制度であり、等級もそのまま対応するわけではありません。
Q.昔の手帳用診断書は初診日の証明に使えますか?
初診年月日や受診歴などが記載されていれば、初診日を整理する参考資料になる場合があります。
ただし、それだけで初診日が必ず認められるわけではなく、他の医療資料との整合性も確認します。
Q.20歳頃の手帳用診断書があれば遡及できますか?
手帳用診断書があることだけで、認定日請求が認められるとは限りません。
障害認定日当時の障害状態を障害年金上どのように確認できるかを、その他の医療資料も含めて検討する必要があります。
Q.昔の手帳用診断書をなくしました
手帳を申請した自治体に診断書等が保管されている可能性があります。
本人が写しを取得できるか、自治体の障害福祉担当窓口へ確認してみるとよいでしょう。
Q.手帳を持っていなくても障害年金は申請できますか?
はい。
精神障害者保健福祉手帳の取得は、障害年金を請求するための必須条件ではありません。
まとめ|手帳用診断書は「障害年金用診断書の代わり」ではなく、過去を整理する資料
精神障害者保健福祉手帳の診断書と、障害年金の診断書は別のものです。
そのため、
手帳用診断書をそのまま障害年金用診断書として提出するものではありません。
一方で、昔の手帳用診断書には、
- 診断名
- 初診時期
- 症状
- 日常生活状況
- 受診・治療経過
などが記載されていることがあります。
そのため、
- 初診病院のカルテがない
- 20歳頃の資料が少ない
- 障害認定日頃の状態を確認したい
- 昔と今で診断名が違う
というケースでは、重要な参考資料になる可能性があります。
大切なのは、
手帳用診断書だけで判断するのではなく、紹介状、お薬手帳、受診状況等証明書、転院先のカルテなどとあわせて、受診歴と障害状態を時系列で整理すること
です。
昔の手帳用診断書が障害年金に使えるか分からない方へ
「昔のカルテはないけれど、手帳を申請したことがある」
「自治体に昔の診断書が残っていると言われた」
「20歳頃の手帳用診断書を遡及請求に使えるのか分からない」
という段階でもご相談いただけます。
こもれび社労士事務所では、手帳申請時診断書、紹介状、お薬手帳、受診状況等証明書、診療記録など、現在残っている資料を確認しながら、初診日・障害認定日・障害年金の請求方針を一緒に整理しています。
資料がすべてそろっていなくても、まず確認できるものから整理していきます。
昔の手帳や診断書がどこまで使えるか分からない段階でも大丈夫です。
※精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別制度です。手帳の有無・等級や手帳申請時診断書だけで障害年金の受給可否・等級・初診日・認定日請求の可否が決まるものではありません。個別の受診歴、障害状態、医療資料等を踏まえて判断されます。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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