地方公務員が精神疾患で公務災害を申請するときの流れ|人事課・診断書・治療費・休業補償

地方公務員が精神疾患の公務災害申請に向けて書類や時系列を整理しているイメージ

市役所や県庁などで働いていて、仕事上の強いストレス、ハラスメント、業務量の増加、配置転換などをきっかけに、うつ病や適応障害などの精神的な不調が生じた場合、「公務災害として申請できないだろうか」と考えることがあります。

ところが、いざ申請を考えると、

  • まず上司に伝えるのか、人事課に相談するのか
  • 労働基準監督署ではなく、どこへ申請するのか
  • 診断書は通常の診断書でよいのか
  • 公務災害認定請求書には何を書けばよいのか
  • 精神疾患の場合、どのような資料を準備すればよいのか
  • 認定されるまでの治療費はどうなるのか
  • 病気休暇や休職をした場合の補償はどうなるのか

など、分かりにくい点が少なくありません。

この記事では、地方公務員が精神疾患について公務災害認定請求を検討するときの基本的な流れを、地方公務員災害補償基金の制度・様式を踏まえながら、できるだけ分かりやすく整理します。

地方公務員の公務災害申請全体の流れから確認したい方へ
任命権者を経由して地方公務員災害補償基金の支部へ認定請求する基本的な流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

→ 地方公務員の公務災害申請の流れ|任命権者・基金支部への手続きを見る

この記事のポイント

常勤の地方公務員など、地方公務員災害補償法の対象となる職員の公務災害は、民間企業で働く方が行う労災保険の手続とは異なります。 原則として、所属・任命権者を経由して地方公務員災害補償基金の支部長へ認定請求を行います。

また、精神疾患の場合は、診断書と申請書を提出するだけではなく、発症前の出来事、勤務状況、職場での人間関係、症状の経過、受診歴などを時系列で整理することが重要になります。

非常勤職員・会計年度任用職員の方へ

非常勤職員や会計年度任用職員については、勤務形態や任用条件、自治体の条例等により、常勤職員と適用される制度や窓口が異なる場合があります。 まずは勤務先の人事担当に、どの制度が適用されるかを確認してください。

地方公務員の「公務災害」とは

地方公務員が公務によって負傷したり、病気になったりした場合には、地方公務員災害補償制度による補償の対象となることがあります。

うつ病、適応障害、PTSDなどの精神疾患についても、公務との関連が問題となる場合があります。

ただし、

「職場が原因だと思う」=「公務災害として認定される」

というわけではありません。

精神疾患の公務災害では、発症時期を確認したうえで、その前にどのような業務上の出来事や負荷があったのか、勤務状況はどうだったのか、業務以外の負荷や既往歴などはどうだったのか、といった事情を踏まえて個別に判断されます。

公務災害はどこへ申請する?

地方公務員災害補償基金の案内では、被災職員またはその遺族等が、任命権者を経由して基金の支部長へ認定請求を行う仕組みになっています。

基本的なイメージ

本人

所属・公務災害担当・人事担当など

任命権者

地方公務員災害補償基金の支部

実際に最初の窓口となる部署の名称は、自治体によって異なります。

「人事課」「職員課」「総務課」「給与担当」「公務災害担当」など、勤務先によって運用が異なるため、まず勤務先の公務災害担当部署に、認定請求を検討していることを伝え、必要書類や提出経路を確認するのが基本です。

注意

「必ず直属の上司へ最初に申請しなければならない」「人事課を通さず基金へ直接郵送すればよい」などと一律に考えない方が安全です。 勤務先や管轄支部の手続を確認してください。

市役所・県職員で申請先は変わる?

地方公務員災害補償基金には、都道府県ごとの支部のほか、政令指定都市に置かれる支部があります。

そのため、勤務先となる地方公共団体によって、管轄する基金支部が異なる場合があります。

ただし、本人が最初から基金支部へ直接提出するのではなく、原則として勤務先の所属・人事担当等を通じて手続を確認します。 ご自身の勤務先でどの支部が管轄となるかは、人事・職員関係の公務災害担当へ確認してください。

最初に使う「公務災害認定請求書(様式第1号)」

公務災害の認定を求める際の基本的な書類が、「公務災害認定請求書(様式第1号)」です。

様式第1号には、たとえば、

  • 被災職員の所属・職名
  • 災害発生の日時・場所
  • 傷病名
  • 災害発生の状況
  • 所属部局の長の証明
  • 任命権者の意見

などを記載する欄があります。

ここで重要なのは、すべてを本人が記載する書類ではないということです。

所属部局の長が証明する部分や、任命権者が意見を記載する部分があります。

精神疾患では「様式第1号を埋めれば終わり」ではありません

事故によるケガであれば、「いつ・どこで・何が起きたのか」が比較的明確な場合があります。

一方、精神疾患では事情が複雑です。

たとえば、

  • 業務量が徐々に増えていった
  • 上司から繰り返し強い叱責を受けた
  • 配置転換後に業務内容が大きく変わった
  • 職場で孤立するようになった
  • 会議や業務から外される状態が続いた
  • 職場へ相談したが状況が改善しなかった
  • 一度休職・復職した後に症状が悪化した

といったように、複数の出来事が一定期間にわたって続いていることがあります。

そのため、精神疾患の公務災害では、様式第1号だけにすべてを書こうとするのではなく、必要に応じて別紙や時系列を使って事実関係を整理することが大切です。

様式第1号でも、災害発生の状況について別紙を用いる場合を想定しています。事情が複雑な場合には、時系列表、経緯書、資料一覧などを整理しておくと、提出資料全体を確認しやすくなります。

動画でも解説しています

地方公務員が精神疾患で公務災害を申請するときの流れを、動画で分かりやすく解説しています。

精神疾患の公務災害で整理しておきたいこと

申請を検討する段階では、少なくとも次のような項目を整理しておくと、全体像が見えやすくなります。

  • いつ頃から症状が出始めたか
  • 最初に医療機関を受診した時期
  • 診断名と診断時期
  • 発症前に職場で何があったか
  • 業務量・残業・勤務状況
  • 上司・同僚との具体的な出来事
  • 配置転換・業務変更などの経過
  • 職場へ相談した時期と、その後の対応
  • 休職・復職・勤務配慮などの経過
  • 症状や服薬がどのように変化したか

大切なのは、最初から完璧な文章を書くことではありません。

まず、

「いつ・何があったか」
「その後、症状がどう変化したか」
「それを裏付ける資料があるか」

という3つを対応させて整理していくと分かりやすくなります。

どんな資料を残しておけばよい?

精神疾患の公務災害では、本人の説明だけではなく、客観的な資料も重要になります。

たとえば、

  • メール
  • チャット・グループウェア
  • 業務指示
  • 会議資料
  • 勤務記録
  • 時間外勤務に関する資料
  • 人事異動・配置転換に関する資料
  • 上司や人事担当へ相談した記録
  • 面談記録
  • 診断書
  • 診療記録
  • 服薬内容が分かる資料
  • 当時の状況を知る人の情報

などが考えられます。

ただし、資料が全部そろってからでなければ相談できないわけではありません。

「何が証拠になるのか分からない」という段階で、まず現在ある資料を整理する方法もあります。

資料がまとまっていなくてもご相談いただけます

「公務災害を考えているけれど、何から整理すればよいか分からない」
「人事課へ相談する前に、一度状況を整理したい」
「メールや資料はあるけれど、どれが重要なのか分からない」

このような段階でも大丈夫です。

こもれび社労士事務所では、LINE等で現在の状況を伺いながら、資料・時系列・申請準備に必要な確認事項を整理する支援を行っています。

公式LINEから相談する

オンライン・LINEを中心に全国からご相談いただけます。無理に申請や契約をおすすめすることはありません。

診断書は普通の診断書でいい?

ここも迷いやすいところです。

まず、全国共通の公務災害認定請求書である様式第1号そのものには、医師が診断内容を証明する欄はありません。

診断書等は、認定請求に必要な資料として別に確認・準備することになります。

ただし、実際に求められる診断書の様式や追加資料については、勤務先や管轄支部によって確認が必要な場合があります。

医療機関の通常の診断書を利用できる場合もあれば、支部独自の診断書様式や、精神疾患に関する追加資料を求められる場合もあります。

先に確認しておくと安心です

診断書を自己判断で取得してから「別の様式でもう一度お願いします」となると、本人にも医療機関にも負担になります。

公務災害を申請する予定であることを勤務先の担当部署へ伝え、必要な診断書の様式・記載事項があるかを確認してから医療機関へ依頼する方がよいでしょう。

主治医には何を伝えればよい?

主治医に対して、認定されるような内容を書いてもらうよう求めるものではありません。

一方で、診察の際に仕事上の出来事をほとんど伝えていなければ、診療記録から職場で何が起きていたのか分からないこともあります。

そのため、

  • いつ頃から症状が悪化したか
  • その前に職場でどのような出来事があったか
  • 睡眠・食欲・不安・抑うつなどがどう変化したか
  • 仕事を続けることが難しくなった経過

など、実際に起きた事実を主治医へ正確に伝えることは大切です。

医学的な診断や因果関係については、医師が医学的知見に基づいて判断する事項です。

公務災害と認定される前の治療費はどうなる?

これも、申請を考えている方からよく出る疑問です。

公務災害として認定された傷病については、制度に基づいて療養補償等の手続を行うことになります。

公務災害として扱う傷病については、認定後は原則として共済組合員証・健康保険証を使用しない取扱いとされています。

一方、認定される前の受診について、窓口でどのように取り扱うかは、医療機関、共済組合、管轄支部等への確認が必要です。

認定前の支払方法については、医療機関に請求を待ってもらう、預り金とする、いったん本人が支払うなどの方法があり得ます。

すでに精神疾患の治療を継続している場合や、私傷病としての治療と今回の公務災害として主張する症状悪化の部分が重なる場合は、自己判断で保険証の利用を変更せず、勤務先の公務災害担当、共済組合、医療機関に確認してください。

「いったん全部自費にすればよい」
「共済組合員証を使っても、認定後に必ず全額戻る」

などと一律に判断するのは避けた方がよいでしょう。

休職した場合は「休業補償」も関係します

公務災害として認定された傷病について、療養のため勤務することができず、給与の支給状況などの要件を満たす場合には、休業補償が問題となることがあります。

在職中の休業補償では、原則として様式第7号「休業補償請求書・休業援護金申請書」が用いられます。

様式第7号には、全部休業・一部休業の日数、給与額、所属部局の長の証明、医師の証明などを記載する欄があります。認定請求書である様式第1号とは別の書類です。

ただし、公務員の場合には、

  • 病気休暇
  • 休職
  • 給与の支給状況
  • 給与が減額された期間
  • 短時間勤務・一部休業の状況

などとの関係を確認する必要があります。

「休職したから必ず休業補償が支給される」というものではなく、療養のため勤務できなかった事実、給与がどのように支給されていたか、勤務形態がどうだったかを含めて確認することが重要です。

既往症がある場合でも、公務災害を検討できる?

以前にうつ病や適応障害などで治療を受けたことがある方や、一度休職した後に復職し、その後再び症状が悪化した方もいます。

このような場合、単純に、

「以前から精神疾患があるから公務災害にはならない」

と決めつけることはできません。

一方で、新たな発症なのか、既存の疾患の悪化なのか、いつ症状が変化したのか、その前にどのような公務上の出来事があったのかなど、経過をより慎重に整理する必要があります。

特に、

  • 復職時の状態
  • 復職後の業務内容
  • 配置転換や業務変更
  • 職場から受けていた配慮
  • その後の症状悪化の時期
  • 受診・診断・服薬の変化

を時系列で確認することが重要です。

人事課が協力してくれない場合は?

「職場が原因だと考えているので、人事課へ相談しにくい」という方もいると思います。

また、本人の認識と勤務先側の認識が異なることもあります。

公務災害認定請求書には所属部局の長の証明欄がありますが、基金の様式上も、所属部局の長の証明が困難な場合には基金へ相談する取扱いが示されています。

そのため、勤務先と見解が違うからといって、本人だけで「申請できない」と判断する必要はありません。

ただし、通常の提出経路を自己判断で飛ばして基金へ直接申請すればよい、という意味でもありません。

証明や提出経路について問題がある場合には、勤務先の公務災害担当や管轄する基金支部へ具体的な取扱いを確認することが大切です。

社労士には公務災害のどこまで相談できる?

地方公務員災害補償法は、社会保険労務士が取り扱う法令の一つです。

そのため、公務災害についても、本人から事情を伺ったうえで、申請に必要な書類や資料の整理を支援することができます。

こもれび社労士事務所では、たとえば、

  • 公務災害認定請求書(様式第1号)の作成支援
  • 業務上の出来事の整理
  • 発症・受診経過の時系列整理
  • 本人名義の申立書・経緯書の作成支援
  • 添付資料の整理
  • どの資料がどの出来事に対応するかの整理
  • 診断書を依頼する前に確認しておきたい事項の整理
  • 勤務先・基金支部へ確認すべき手続事項の整理
  • 認定後の療養補償・休業補償等の書類作成支援

などを行っています。

社労士が行うものではない部分もあります

所属部局の長による証明、任命権者による意見、医師による診断・医学的判断などは、それぞれの立場で行われるものです。 また、公務災害として認定するかどうかを最終的に判断するのは地方公務員災害補償基金です。

当事務所では、本人の状況や資料をもとに、申請書類・別紙資料の作成支援、提出準備、必要な確認事項の整理を行います。 勤務先との法的交渉、損害賠償請求、示談交渉、訴訟対応などは業務範囲に含まれません。

「申請できるか」より先に、まず事情を整理する方法もあります

精神疾患の公務災害では、最初から「認定されます」「難しいです」と判断できるとは限りません。

むしろ、

  • 発症時期はいつと考えられるのか
  • その前にどのような出来事があったのか
  • 出来事を裏付ける資料があるのか
  • 診療記録と本人の認識にずれがないか
  • 勤務先側が保有している資料は何か

を一つずつ確認した方がよいケースがあります。

「公務災害を申請する」と決めてから相談する必要はありません。

資料を見ながら、「何が分かっていて、何がまだ分からないのか」を整理するところから始める方法もあります。

精神疾患の公務災害について、LINEでご相談いただけます

市役所・県庁などで働く中で、パワハラ、業務量、配置転換、人間関係などをきっかけに精神的な不調が続き、

「公務災害を考えているけれど、何から始めればいいか分からない」
「人事課に相談する前に、一度整理したい」
「申請書に何を書けばいいのか分からない」
「資料はたくさんあるけれど、自分では整理できない」

という方は、現在の状況を公式LINEからお送りください。

資料がすべてそろっていなくても大丈夫です。
まず現在分かっていることから整理します。

こもれび社労士事務所 公式LINEで相談する

オンライン・LINEを中心に全国からご相談いただけます。
ご相談内容を確認したうえで、必要なサポートをご案内します。
申請や契約を急かすことはありません。

まとめ|精神疾患の公務災害は「時系列と資料整理」が重要です

地方公務員の精神疾患について公務災害を申請するときは、民間企業の労災保険とは提出先や手続が異なります。

基本的には、公務災害認定請求書(様式第1号)などを準備し、所属・任命権者を経由して地方公務員災害補償基金の支部へ認定請求を行います。

ただし、精神疾患の場合、本当に重要なのは申請書の空欄を埋めることだけではありません。

発症前の出来事、勤務状況、職場での対応、症状の変化、受診経過、そしてそれらを裏付ける資料を、時間の流れに沿って整理することが重要です。

「何から手を付ければいいか分からない」という場合には、申請するかどうかを決める前に、まず資料と経過を整理するところから始めても構いません。

参考資料

※この記事は2026年9月時点の制度・公表資料をもとに作成しています。実際の必要書類、診断書様式、自治体内部の提出方法、認定前の医療費の取扱い、非常勤職員・会計年度任用職員に適用される制度などは、勤務先や管轄する地方公務員災害補償基金支部によって異なる場合があります。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です

「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。

※ 個人のご相談(労災・後遺障害・障害年金)/全国対応(LINE・オンライン)
※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です