精神障害の労災申請は女性が52.4%|男女・業種・年代で何が違う?

精神障害の労災申請は女性52.4%|男女・業種・年代の違いを解説するイメージ

精神障害の労災というと、 「長時間労働が多い男性の申請が多い」というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、厚生労働省が公表した令和7年度(2025年度)の最新統計では、 精神障害の労災請求4,958件のうち、 女性は2,597件でした。

女性の割合は52.4%。

つまり、精神障害の労災請求では、 女性が過半数を占めています。

ただし、ここから 「女性の方が労災認定されやすい」 と考えるのは適切ではありません。

実際には、請求件数、支給決定件数、業種、年代、 そして労災認定の原因となった出来事を分けて見ると、 男女でかなり異なる特徴が見えてきます。

この記事では、厚生労働省の最新統計や公的研究資料をもとに、 精神障害の労災における男女・業種・年代・出来事の違い を整理します。

先に結論

  • 令和7年度(2025年度)の精神障害労災請求4,958件のうち、女性は2,597件、52.4%
  • 一方、支給決定1,082件では、女性530件、男性552件
  • 決定件数に占める支給決定件数の割合は、女性26.6%、男性29.9%
  • したがって、「女性の方が認定されやすい」とは言えない
  • 女性の請求割合は、2016年度39.5%から2025年度52.4%へ上昇
  • 20代では請求の62.8%が女性
  • セクハラ・カスハラ・パワハラ・長時間労働では男女構成に大きな違いがある
  • 性別だけでなく、業種・職種・年代・出来事などを分けて見ることが重要

動画で解説|精神障害の労災申請、女性が52.4%

女性52.4%という数字の意味や、男女・業種・年代・仕事上の出来事の違いを動画で解説しています。

精神障害労災の女性割合は52.4%

厚生労働省が公表した令和7年度(2025年度) 「過労死等の労災補償状況」によると、 精神障害に関する労災請求は4,958件でした。

男女別に見ると、

女性

2,597件

52.4%

男性

2,361件

47.6%

女性の請求件数が男性を236件上回り、 女性が全請求の過半数を占めています。

52.4%は「認定された人の割合」ではない

ここは特に注意が必要です。
52.4%という数字は、 令和7年度(2025年度)に受理された「請求件数」のうち女性が占める割合です。

「労災認定された人の52.4%が女性」 という意味ではありません。

指標 男女計 女性 男性 女性割合
請求件数 4,958 2,597 2,361 52.4%
決定件数 3,839 1,992 1,847 51.9%
支給決定件数 1,082 530 552 49.0%

女性の請求割合は10年間でどう変わった?

女性の請求が過半数になったのは、 単年度だけの現象ではありません。

2016年度から2025年度までの推移を見ると、 女性の請求割合は次のように変化しています。

※この表では、年度を西暦で表示しています。2025年度は令和7年度に当たります。

年度 請求総数 女性 男性 女性割合
20161,58662795939.5%
20171,7326891,04339.8%
20181,8207881,03243.3%
20192,0609521,10846.2%
20202,0519991,05248.7%
20212,3461,1851,16150.5%
20222,6831,3011,38248.5%
20233,5751,8501,72551.7%
2024※3,7801,9631,81751.9%
20254,9582,5972,36152.4%

※2024年度は、令和7年度資料に掲載された改訂後の数値を使用しています。

2016年度には女性の割合は39.5%でした。 それが2021年度に初めて50%を超え、 2022年度はいったん48.5%に低下したものの、 2023年度以降は3年連続で過半数となっています。

女性の精神障害労災請求

627件 → 2,597件

2016年度から2025年度までに約4.1倍

同じ期間に男性も959件から2,361件へ増加していますが、 約2.5倍です。

男女とも請求件数は増加していますが、 女性の増加幅がより大きいことが分かります。

女性の方が労災認定されやすい?

1分で解説|女性の方が労災認定されやすい?

女性からの請求が52.4%と聞くと、 「女性の方が精神障害の労災として認められやすいのでは?」 と思うかもしれません。

しかし、公表統計からそのように結論づけることはできません。

請求件数と支給決定件数は、同じ人を年度内で追跡した数字ではありません。
支給決定件数には、前年度以前に請求された事案も含まれます。 そのため、「今年の支給決定件数÷今年の請求件数」で 個々の申請の認定率を出すことはできません。

女性

530件

支給決定

決定件数中 26.6%

男性

552件

支給決定

決定件数中 29.9%

令和7年度(2025年度)は、 女性の請求件数の方が多い一方、 支給決定件数は男性552件、女性530件 でした。

また、その年度に決定された件数を分母にすると、 支給決定件数の割合は女性26.6%、男性29.9%です。

ただし、これを逆に 「男性の方が性別を理由として労災認定されやすい」 と読むこともできません。

男女では、働いている業種・職種、年齢構成、 長時間労働、パワハラ、セクハラ、カスハラ、自死事案など、 請求に至った出来事の構成が異なります。

公表されている年次集計は、 こうした要因をすべて調整した分析ではありません。

したがって、統計から確認できるのは、 「女性の請求は多いが、女性だから認定されやすいとは言えない」 というところまでです。

業種別では「医療、福祉」が最多

次に業種別に見てみます。

令和7年度(2025年度)の精神障害労災請求で最も件数が多かったのは、 「医療、福祉」の1,288件でした。

業種 請求 女性請求 女性割合 支給決定 女性支給
医療、福祉 1,288 986 76.6% 292 238
製造業 720 236 32.8% 158 51
卸売業、小売業 645 353 54.7% 116 50
運輸業、郵便業 419 126 30.1% 104 26
宿泊業、飲食サービス業 247 137 55.5% 64 32

医療、福祉では、請求1,288件のうち女性が986件で、 76.6%を占めています。

支給決定でも292件中238件、 81.5%が女性です。

件数が多い業種=最もリスクが高い、ではない

ここでも、数字の読み方には注意が必要です。

医療、福祉は精神障害の労災請求件数が非常に多い一方、 そもそも女性の就業者が多い業種です。

2025年平均では、医療・福祉の就業者947万人のうち、 女性は706万人で、74.6%を占めています。

医療・福祉で女性の労災請求が多いことだけを見て、 「女性の方が精神障害になりやすい」 「医療・福祉が最も危険な業種」 と結論づけることはできません。

過労死等防止調査研究センターによる過去12年間の認定事案を 雇用者数で調整した分析では、 雇用者100万人当たりの精神障害労災認定件数は、 漁業を別にすると、 運輸業・郵便業15.5件、情報通信業13.3件、 学術研究・専門・技術サービス業12.2件 などが高い水準でした。

つまり、 「件数が多い業種」と「働いている人数を考慮したときに件数が多い業種」は同じではありません。

※上記の雇用者数調整後の数値は、過去12年間の支給決定事案を対象にした研究結果です。 令和7年度単年度の業種別発生率を示すものではなく、 また請求件数ではなく認定事案を用いた分析である点にも注意が必要です。

仕事上の出来事には男女差がある?

精神障害の労災では、 発病前にどのような仕事上の出来事があったのかが重要になります。

令和7年度(2025年度)の支給決定を出来事別・男女別に見ると、 非常に大きな違いが見られる項目があります。

出来事 全体 女性 男性 女性割合
パワーハラスメント 222 82 140 36.9%
セクシュアルハラスメント 127 123 4 96.9%
顧客・利用者等からの著しい迷惑行為 127 98 29 77.2%
仕事内容・仕事量の大きな変化 113 41 72 36.3%
1か月80時間以上の時間外労働 40 9 31 22.5%
休日のない2週間以上の連続勤務 30 6 24 20.0%

※表中の「パワーハラスメント」は、認定基準上の 「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」 という具体的出来事を指します。

セクハラの支給決定は96.9%が女性

セクシュアルハラスメントによる支給決定127件のうち、 女性は123件、男性は4件でした。

女性割合は96.9%です。

もちろん、男性のセクハラ被害が存在しないという意味ではありません。 公表統計上、男性の件数が非常に少ないということです。

カスハラ等による支給決定の77.2%が女性

「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」 (いわゆるカスタマーハラスメント、カスハラ) ことによる支給決定は127件でした。

そのうち女性は98件で、 77.2%でした。

医療、介護、小売、接客など、 女性が多く働く対人サービス分野との重なりも考えられます。

ただし、公表された集計だけから 「業種や職種を調整しても女性のリスクが高い」 とまでは判断できません。

こうした出来事は、女性が含まれる支給決定事案で相当数確認されています。

ただし、1件の事案で複数の出来事が評価されることがあるため、 セクハラとカスハラ等の件数を単純に合計して、 女性の支給決定件数に占める割合として示すことはできません。

パワハラ・長時間労働では男性の件数が多い

一方、パワーハラスメントによる支給決定は、 男性140件、女性82件でした。

また、1か月80時間以上の時間外労働による支給決定40件のうち、 男性は31件でした。

休日のない2週間以上の連続勤務でも、 30件中24件が男性でした。

精神障害の労災を「男女どちらが多いか」だけで見るのではなく、 どのような仕事上の出来事が背景にあるのかを見ることが重要です。

20代では請求の62.8%が女性

年代別にも特徴があります。

年代 請求総数 女性 女性割合 支給決定 女性支給
19歳以下392256.4%114
20代97261062.8%236137
30代1,12260353.7%243127
40代1,34464147.7%294132
50代1,20760249.9%244109
60歳以上27411943.4%5421

請求件数そのものが最も多いのは40代ですが、 男女構成を見ると20代が特徴的です。

20代の請求972件のうち女性は610件で、 62.8%を占めています。

支給決定でも20代236件のうち女性137件で、 58.1%が女性です。

ただし、この数字から 「20代女性は精神的に弱い」 「若い女性だから労災になりやすい」 といった結論を出すことはできません。

年代ごとの業種・職種・雇用形態・出来事などが異なるためです。

女性からの請求が増えた理由は?

女性の精神障害労災請求が、 2016年度の627件から2025年度の2,597件へ増えた理由は何でしょうか。

ここは、確認できる事実と推測を分ける必要があります。

女性就業者そのものが増えている

2025年平均の就業者は、 男性3,702万人、女性3,126万人でした。

前年からの増加は男性3万人に対して女性44万人であり、 女性就業者の母数そのものが増えています。

また、医療・福祉の就業者は947万人で、 そのうち女性が706万人を占めています。

女性からの精神障害労災請求を考える際には、 女性が多く働く分野の就業者数そのものが大きいこと も考慮する必要があります。

セクハラ・カスハラなどの出来事

最新年度では、 セクハラによる支給決定127件のうち女性123件、 顧客・利用者等からの著しい迷惑行為による支給決定127件のうち女性98件でした。

こうした出来事が、女性が含まれる支給決定事案で 相当数確認されていることは分かります。

ただし、 「女性の請求増加はセクハラやカスハラが原因」 とまで断定することはできません。

また、1件の事案で複数の出来事が評価されることがあるため、 これらの件数を単純に足して、 女性の支給決定件数に占める割合として示すことはできません。

認定基準や社会的認知の変化

精神障害の労災認定基準も変化してきました。

2020年にはパワーハラスメントが心理的負荷評価表の独立した項目となり、 2023年の認定基準改正では、 「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」 という出来事が明示されました。

こうした制度変更や、 精神障害の労災に対する社会的な認知の変化が、 請求件数の増加に関係している可能性はあります。

ただし、公的研究でも、 制度変更、啓発、社会環境、仕事上の心理的負荷など 複数の要因が考えられるとされており、 一つの原因だけで増加を説明できる段階ではありません。

統計から「言えること」と「言えないこと」

データから言えること データだけでは言えないこと
女性の請求割合は52.4%女性だから認定されやすい
女性の請求割合は10年間で上昇女性であること自体が増加の原因
最新年度の支給決定割合は男性の方が高い男性だから認定されやすい
医療・福祉の請求件数が最多医療・福祉が最も危険
セクハラ・カスハラは女性割合が高い女性の請求増加はすべてハラスメントが原因
長時間労働関係は男性割合が高い男性の精神障害は長時間労働だけが原因
20代では女性割合が62.8%20代女性が精神的に弱い

精神障害の労災を検討している方へ

今回の統計からも分かるように、 精神障害の労災は 「長時間労働があったか」だけで判断されるものではありません。

パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、 顧客・利用者等からの著しい迷惑行為、 仕事内容や仕事量の大きな変化、 事故や災害の体験など、 さまざまな仕事上の出来事が検討対象になります。

現行の精神障害の労災認定では、 原則として、

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病しているか
  2. 発病前おおむね6か月に、業務による強い心理的負荷があったか
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したことが医学的に明らかとはいえないか

などを確認します。

そのため、 「自分は女性だから」 「医療・福祉で働いているから」 「残業が80時間に届いていないから」 といった一つの事情だけで、 労災になる・ならないを判断することはできません。

まず整理したいこと

  • いつ頃から精神的な症状が出始めたか
  • 発病前おおむね6か月に仕事上何があったか
  • 長時間労働や休日勤務がなかったか
  • 上司・同僚・顧客等からどのような言動を受けたか
  • 配置転換や仕事内容・責任の大きな変化がなかったか
  • 会社へ相談した記録が残っていないか
  • メール、LINE、チャット、録音、日報、シフト、勤怠などが残っていないか
  • 医療機関の診療記録や診断書にどのような経過が記載されているか

まとめ|女性52.4%という数字だけでは見えない

  • 令和7年度(2025年度)の精神障害労災請求4,958件のうち、女性は2,597件、52.4%でした。
  • 女性の請求割合は2016年度39.5%から2025年度52.4%へ上昇しています。
  • 女性の請求件数は10年間で約4.1倍になりました。
  • 一方、支給決定件数は女性530件、男性552件でした。
  • 決定件数中の支給決定割合は女性26.6%、男性29.9%です。
  • したがって「女性だから認定されやすい」とは言えません。
  • 医療・福祉では女性の請求が多い一方、就業者自体も女性が多い業種です。
  • セクハラ・カスハラでは女性割合が高く、パワハラ・長時間労働関係では男性割合が高い傾向があります。
  • 20代では精神障害労災請求の62.8%が女性でした。
  • 性別だけではなく、発病前の具体的な仕事上の出来事を確認することが重要です。

「女性が52.4%」という数字は確かに目を引きます。

しかし、その数字だけを切り取ると、 精神障害の労災の実態を誤って理解する可能性があります。

どの年代なのか。
どの業種・職種なのか。
どのような仕事上の出来事があったのか。
そして、発病前にその出来事がどのように重なっていたのか。

個別の労災申請では、 統計上の男女差よりも、 こうした具体的な事実を一つずつ整理することが重要になります。

精神障害の労災についてお悩みの方へ

こもれび社労士事務所では、 パワハラ、長時間労働、セクハラ、カスハラ、 配置転換、仕事量の増加などによる 精神障害の労災申請についてご相談をお受けしています。

労災認定の可否を個別事情を確認せずに断定することはできませんが、 現在分かっている出来事や勤務状況を時系列で整理すると、 認定基準上どこを確認する必要があるのかが見えやすくなります。

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参考資料

※本記事は、2026年9月時点で確認できる厚生労働省の労災補償統計、 過労死等防止調査研究センターの研究資料、総務省統計局等の公表資料をもとに、 精神障害の労災に関する統計的な特徴を一般向けに整理したものです。

※請求件数・決定件数・支給決定件数は、同じ年度に請求された同一集団を追跡した数字ではありません。 当年度の決定件数には過年度に請求された事案も含まれるため、 当年度の支給決定件数を当年度の請求件数で割った数字を、個々の請求の「成功率」とみることはできません。

※男女別・業種別・年代別の件数や割合は、性別や業種そのものが労災認定の原因となっていることを示すものではありません。 個別の労災認定は、精神障害の発病時期、業務上の出来事、心理的負荷の程度、 労働時間、証拠関係、医学的判断、業務外の心理的負荷や個体側要因などを踏まえて判断されます。

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