社労士は会社の味方?|個人でも相談できることを業界の実態から解説

「社労士に相談したいけれど、社労士って会社側の専門家ではないの?」
労災やパワハラ、休職、障害年金などについて調べている方からすると、このように感じることがあるかもしれません。
実際、多くの社労士事務所のホームページを見ると、「顧問契約」「給与計算」「就業規則」「労務相談」など、企業向けのサービスが目立ちます。
では、社労士は会社のための専門家なのでしょうか。
結論からいうと、社労士業界の収益構造は企業との顧問契約が中心ですが、社労士の仕事は企業支援だけではありません。
労働者や退職者、年金を請求する方など、個人が直接社労士へ依頼できる手続もあります。
・社労士業界では、顧問契約による売上が平均71.9%を占めています。
・一方、「法人客と個人客がそれぞれ何%か」という全国統計は確認できません。
・労災、障害年金、傷病手当金、不服申立てなどは、個人から社労士へ直接相談・依頼できる分野です。
・大切なのは「社労士かどうか」だけではなく、その社労士が普段どの分野・どの依頼者を中心に扱っているかを確認することです。
▶ 動画でも「社労士は会社の味方なのか」「個人でも相談できるのか」を解説しています。
なぜ「社労士=会社側」というイメージがあるのか
「社労士は会社側の専門家」というイメージが生まれるのには、一定の理由があります。
全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社労士実態調査」では、個人事務所代表・社労士法人代表社員を対象として、顧問契約による売上とスポット受注による売上の割合が調査されています。
| 売上形態 | 平均割合 |
|---|---|
| 顧問契約による受注 | 71.9% |
| スポットによる受注 | 28.1% |
さらに、顧問契約社数は平均33.2社、中央値10社とされています。
この数字を見ると、開業社労士の平均的な収益構造において、企業などとの継続的な顧問契約が大きな位置を占めていることが分かります。
ここでいう「企業向け中心」とは、社労士全体が常に会社と労働者の対立場面で会社側に立つ、という意味ではありません。開業社労士事務所の売上構造において、企業との継続的な顧問契約が大きな比重を占めている、という意味です。
社労士の売上はどんな仕事から生まれている?
同じ2024年度社労士実態調査では、売上を業務別にみた平均割合も公表されています。
| 業務 | 平均売上割合 |
|---|---|
| 手続業務(関連相談を含む) | 41.5% |
| 労働・社会保険相談 | 14.3% |
| 給与計算 | 14.2% |
| 規程作成・改定・整備 | 10.4% |
| コンサルティング | 7.3% |
| 助成金 | 4.8% |
| 執筆・講演 | 2.1% |
| その他 | 5.4% |
このような業界構造が、「社労士=企業の人事・労務を支援する専門家」というイメージにつながっていると考えられます。
この統計から「社労士の仕事の○%が企業向け」「個人向けは○%」とまではいえません。
「手続業務」の中には、企業の社会保険手続だけでなく、労災給付や傷病手当金なども含まれる可能性があるためです。
「個人向け社労士は何%?」という統計はない
ここは、今回調べてみて特に重要だった点です。
全国社会保険労務士会連合会の白書や実態調査などを確認しても、
- 法人の依頼者と個人の依頼者の比率
- 個人から直接受任した案件の割合
- 障害年金を主要業務とする事務所数
- 労働者本人の労災申請を主要業務とする事務所数
- 精神障害・パワハラ労災を主要業務とする事務所数
- 傷病手当金を主要業務とする事務所数
といった全国統計は、確認できませんでした。
そのため、「個人向け社労士は全国で○%しかいない」「全国でも数少ない」といった数字を客観的に示すことはできません。
「企業との顧問契約を中心とする収益構造」と「個人向け事務所の数」は、分けて考える必要があります。
では、個人が社労士へ相談してもいいの?
はい。社労士の業務は、会社から依頼されるものだけではありません。
社会保険労務士法では、労働社会保険諸法令に基づく申請書・届出書等の作成、提出に関する手続の代行、一定の事務代理、労働・社会保険に関する相談・指導などが社労士の業務として定められています。
これらの業務について、依頼者が会社だけに限定されているわけではありません。
そのため、労働者本人、退職した方、障害年金を請求する方、遺族などから直接依頼を受けることもあります。
▶ 1分で見る「社労士は会社の味方?」
個人が社労士へ相談できる代表的な手続
代表的なものとして、次のような分野があります。
1.労災保険の給付請求
仕事や通勤が原因となったケガや病気について、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などの手続があります。
精神障害についても、仕事上の強い心理的負荷などが原因として問題となる場合には、労災保険給付の対象となる可能性があります。
会社が業務上の出来事であることを争っている場合でも、労働者本人が労災保険給付を請求することは可能です。業務上の災害に当たるかどうかは、請求書や資料を踏まえて労働基準監督署長が判断します。
2.障害年金
病気やケガによって日常生活や仕事に大きな制限が生じている場合には、障害年金の対象となる可能性があります。
障害年金では、初診日、保険料納付要件、障害の程度などを確認しながら、診断書や病歴・就労状況等申立書などを準備していきます。
3.傷病手当金
健康保険の被保険者が病気やケガによって仕事を休み、一定の要件を満たした場合には、傷病手当金を受給できることがあります。
退職後の継続給付、復職後の再休職、同一傷病、社会的治癒など、状況によって判断が難しくなることもあります。
4.審査請求・再審査請求
年金や健康保険、労災保険などについて不支給などの処分を受けた場合、一定の要件のもとで審査請求や再審査請求を行える制度があります。
社労士は、これらの手続について、請求書等の作成や事務代理などを行うことができます。
5.一定の労働紛争に関するADR
特定社会保険労務士は、労働局のあっせんなど、法律で定められた一定の紛争解決手続について代理業務を行うことができます。民間ADRで紛争の目的の価額が120万円を超える場合などには、弁護士が同一の依頼者から受任していることが必要となる場合があります。
ただし、裁判の代理や、損害賠償・慰謝料などについて一般的に交渉を代理できるという意味ではありません。
労災を会社が認めていなくても社労士に相談できる?
ここは、個人の方にとって特に重要なところです。
労災保険給付は、会社から社労士へ依頼して行う手続だけではありません。
労働者本人が請求人となる給付について、本人から社労士へ相談・依頼することもできます。
たとえば精神障害の労災では、
- いつ、どのような出来事があったのか
- 症状がいつ頃から現れたのか
- どの医療機関を受診したのか
- 会社や上司とのやり取りがどのように残っているのか
- 勤怠、メール、チャット、録音など、どのような資料があるのか
といった情報を整理していくことがあります。
会社と本人の認識が異なるケースもあるため、単に申請書へ記入するだけではなく、出来事と資料を時系列で整理することが重要になる場合があります。
社労士と弁護士はどう違う?
個人から相談する場合、「社労士と弁護士のどちらへ相談すればいいのか」と迷うこともあると思います。
大まかに整理すると、社労士は労災保険、社会保険、年金などの行政手続を専門分野の一つとしています。
一方、会社に慰謝料や損害賠償を請求したい、退職条件について相手方と交渉したい、訴訟を起こしたいといった場合には、弁護士への相談が必要となることがあります。
「労災保険給付を申請するために、出来事・時系列・資料を整理して行政手続を進めること」と、
「会社に慰謝料や損害賠償を請求して交渉すること」
は、同じものではありません。
何を目的として相談するのかによって、相談先も変わります。
個人で相談したいとき、社労士をどう選べばいい?
社労士には、それぞれ主に取り扱っている分野があります。
そのため、個人で相談する場合には、「社労士であれば誰でも同じ」と考えるより、ホームページなどで実際の取扱分野を確認することをおすすめします。
たとえば、次のような点を見ると分かりやすいでしょう。
- 企業顧問を中心としているのか、個人からの相談も受けているのか
- 自分が相談したい制度について具体的な案内があるか
- 労災であれば、労働者本人からの依頼に対応しているか
- 精神障害の労災や障害年金など、相談したい分野について継続的に情報発信しているか
- 不支給となった後の審査請求などにも対応しているか
- 業務範囲と、対応できないことが明確に説明されているか
特に労災や障害年金では、制度そのものを知っていることに加えて、医療記録、勤務資料、出来事、生活状況などを整理する必要が生じることがあります。
こもれび社労士事務所が個人の相談を中心としている理由
こもれび社労士事務所では、企業の顧問業務を中心とするのではなく、個人の方からのご相談を中心にお受けしています。
主に取り扱っているのは、
- メンタル不調・パワハラなどに関する労災申請
- 障害年金
- 傷病手当金
- 労災・社会保険給付等の不服申立て
- 申請に必要となる出来事・時系列・資料の整理
などです。
これらは、一つの制度だけで完結しないことがあります。
たとえば、メンタル不調によって休職した方について、傷病手当金を受給しながら労災申請を検討する場合があります。
その後も症状が長期化すれば、障害年金が問題となることがあります。不支給決定を受けた場合には、審査請求・再審査請求を検討することもあります。
そのため当事務所では、「労災だけ」「障害年金だけ」と切り離すのではなく、その方の状況に関係する制度を確認しながら、必要な事実関係や資料を整理することを大切にしています。
なお、会社との民事上の示談交渉、慰謝料・損害賠償請求、訴訟代理など、社労士の業務範囲では対応できない事項については、必要に応じて弁護士への相談をご案内します。
「個人向け社労士は珍しい」とは言い切れない
今回、社労士業界の統計や公開情報を調べましたが、「個人向けの社労士事務所が全国に何件あるか」を示す公的な統計は確認できませんでした。
障害年金を中心とする事務所、労働者本人の労災申請を扱う事務所、精神障害の労災を扱う事務所なども実際に存在します。
したがって、当事務所としても「全国でも数少ない」「日本で唯一」といった表現をする考えはありません。
一方で、社労士業界全体では顧問契約による収益の割合が大きいというデータがあります。
その中で、こもれび社労士事務所は、個人の方からの相談を中心に、メンタル・パワハラ労災、障害年金、傷病手当金、不服申立てなどを横断して取り扱う、という方針をとっています。
「会社側か、労働者側か」という言葉だけではなく、誰から相談を受け、何を支援する事務所なのかを具体的にお伝えすることが大切だと考えています。
まとめ|社労士は会社だけの専門家ではありません
社労士業界では、企業との顧問契約が収益の大きな割合を占めています。
そのため、「社労士=会社の顧問」というイメージを持つこと自体は、不自然ではありません。
しかし、社労士の業務は企業支援だけではありません。
労災、障害年金、傷病手当金、不服申立てなど、個人が直接相談・依頼できる分野もあります。
大切なのは、「社労士に相談してよいのだろうか」と一人で迷い続けることではなく、自分が困っている制度や問題を実際に取り扱っている社労士かどうかを確認することです。
こもれび社労士事務所では、個人の方からのご相談を中心に、メンタル・パワハラに関する労災申請、障害年金、傷病手当金、不服申立てなどについて、全国からご相談をお受けしています。
資料がまだまとまっていなくても構いません。
現在の状況や、手元にある資料から一緒に整理していきます。
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参考資料
- 全国社会保険労務士会連合会「2024年度社労士実態調査」
- 全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士白書2025年版」
- 厚生労働省「社会保険労務士法」
- 日本年金機構
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 厚生労働省(労災保険・社会保険審査等)
※本記事は2026年10月時点で確認できる公表資料をもとに作成しています。個別の案件について、労災認定、障害年金の認定、傷病手当金等の支給を保証するものではありません。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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