PTSD・適応障害・解離性障害は障害年金の対象?診断名が変わった場合の注意点

「PTSDでも障害年金を受給できますか?」
「解離性障害は障害年金の対象外なのでしょうか?」
「最初は適応障害や抑うつ状態といわれ、その後、うつ病や双極性障害と診断されました。どの病名で申請すればよいのでしょうか?」
精神疾患で障害年金を検討している方から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、障害年金は、診断名だけで受給できる・できないが決まる制度ではありません。
一方で、精神疾患の種類によって障害認定基準上の取扱いが異なるため、傷病名は重要な確認ポイントの一つです。
特に、PTSD、解離性障害、適応障害などについては、障害年金の認定基準にある「神経症は原則として認定の対象とならない」という取扱いとの関係を確認する必要があります。
この記事では、解離性障害・PTSD・適応障害と障害年金の関係、うつ病や双極性感情障害などが併存する場合、診断名が途中で変わった場合、過去と現在の診断名が違う場合の考え方について、社会保険労務士の視点から解説します。
この記事のポイント
- 障害年金は「病名」だけで認定されるわけではありません
- 神経症は原則として認定対象外とされていますが、例外があります
- 初診時と現在で診断名が違っていても、それだけで請求できないとは限りません
- 後から付いた診断名を、年金請求のためだけに過去へ遡らせるものではありません
- 複数の精神疾患がある場合は、傷病名・発症時期・病態・治療経過を整理することが重要です
障害年金は「病名」だけで決まるわけではありません
精神疾患による障害年金について、
「うつ病ならもらえる」
「PTSDだから対象外」
「双極性障害なら2級になる」
というように、病名だけで判断することはできません。
精神の障害では、症状だけでなく、日常生活や社会生活にどの程度の制限が生じているのかなどを踏まえて障害の程度が判断されます。
たとえば、診断書では次のような日常生活上の状況が確認されます。
- 適切な食事ができるか
- 身辺の清潔を保つことができるか
- 金銭管理や買い物ができるか
- 通院や服薬を適切に行えるか
- 他人との意思疎通や対人関係を保てるか
- 安全保持や危機対応ができるか
- 社会生活に必要な手続などができるか
また、仕事をしている場合も、単に「働いている」という事実だけではなく、仕事内容、勤務状況、職場で受けている援助や配慮などを含めて確認する必要があります。
そのため、傷病名とともに、診断書に記載される症状、日常生活能力、治療経過、就労状況などを全体として確認することが重要です。
うつ病・双極性感情障害などは障害年金の対象になり得ます
精神の障害用診断書が使用される傷病には、統合失調症や双極性障害などがあります。
うつ病などの気分(感情)障害についても、症状や日常生活への影響などが障害認定基準に基づいて判断されます。
ただし、ここでも重要なのは、
「その病名が付いている=障害年金が認定される」ではない
という点です。
同じ「うつ病」や「双極性障害」という診断名でも、症状や日常生活上の支障、必要としている援助などは人によって大きく異なります。
PTSD・解離性障害・適応障害は障害年金の対象になる?
PTSD、解離性障害、適応障害などの場合には、障害認定基準上の「神経症」の取扱いに注意する必要があります。
ICD-10では、PTSDや適応障害はF43「重度ストレスへの反応及び適応障害」、解離性障害はF44「解離性[転換性]障害」に分類されています。
これらはいずれもF4群に位置付けられる傷病であり、障害年金では傷病名だけではなく、実際にどのような病態を示しているかを確認することが重要になります。
国民年金・厚生年金保険の障害認定基準では、神経症について、
症状が長期間持続し、一見重症であっても、原則として認定の対象とならない
という取扱いが示されています。
ただし、臨床症状から判断して精神病の病態を示している場合には、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱うとされています。
そのため、
- PTSDだから絶対に障害年金を受給できない
- 解離性障害だから請求しても意味がない
- 適応障害という病名があるだけで必ず対象外になる
と傷病名だけを見て一律に判断するのは適切ではありません。
実際にどのような病態を示しているのか、他の精神疾患が併存しているのか、診断書にどのように記載されるのかなどを個別に確認する必要があります。
診断名が途中で変わった場合はどうなる?
精神科や心療内科では、初診時から現在まで、ずっと同じ診断名が付いているとは限りません。
たとえば、治療経過の中で、
抑うつ状態 → うつ病
適応障害 → うつ病
抑うつ状態 → 双極性感情障害
PTSD → PTSDに加えて気分(感情)障害が診断される
など、診断名が変化することがあります。
こうしたケースで、「初診時と現在の病名が違うから障害年金を請求できない」と直ちに判断する必要はありません。
重要なのは、
- 最初にどのような症状で受診したのか
- その後どのような治療を受けてきたのか
- 症状がどのように変化したのか
- 診断名がいつ、どのような経過で変わったのか
- それぞれの傷病に医学的な関連性があるのか
といった点を時系列で整理することです。
特に、障害認定日まで遡って請求する場合には、認定日頃の状態と現在の状態を分けて検討する必要があります。次に、この点を詳しく説明します。
後から付いた診断名を、そのまま過去に遡らせるものではありません
ここは、障害認定日まで遡って請求する場合などに特に注意したいところです。
たとえば、過去には「抑うつ状態」や「適応障害」とされていて、その後になって「双極性感情障害」と診断されたケースがあったとします。
現在、双極性感情障害と診断されているからといって、
「過去の時点でも当然に双極性感情障害だった」と本人や社労士が判断して書き換えるものではありません。
過去の診療録、診断書、当時の症状、その後の治療経過などを踏まえて、当時どのような病態であったのかを医学的に判断するのは医師です。
障害年金を受給しやすくすることを目的として、
- 「この病名を書いてください」
- 「この病名の方が認定されやすいので追加してください」
- 「過去もこの病気だったことにしてください」
と医師に依頼するものではありません。
一方で、その後の診療経過や過去の資料を確認した医師が、医学的な立場から当時の病態について判断することは別の問題です。
障害年金の書類に申立書を無理に合わせるのでもなく、診断書を受給しやすい病名に合わせるのでもなく、実際の経過を正確に整理することが大切です。
「抑うつ状態」と「うつ病」は同じとは限りません
過去の診断書や紹介状などに「抑うつ状態」と書かれていることがあります。
「抑うつ状態」は、抑うつ気分などがみられる状態を表す表現として用いられることがあり、必ずしも「うつ病」という確定した診断名と同じ意味になるわけではありません。
そのため、過去の医療資料に「抑うつ状態」と記載されている場合に、本人や社労士の判断だけで「うつ病」と読み替えて申立書等を作成することには注意が必要です。
一方、その後の診療経過などを踏まえて、医師がうつ病や双極性感情障害などと診断することはあります。
診断名については、あくまで医師の医学的判断を前提として整理します。
複数の精神疾患がある場合、診断書には何を書く?
精神疾患では、一つだけではなく複数の診断名が付いているケースもあります。
- 双極性感情障害とPTSD
- うつ病と発達障害
- PTSDと解離性障害
- 気分(感情)障害とその他の精神疾患
などです。
日本年金機構の「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」では、診断書の①「障害の原因となった傷病名」欄に、障害年金を請求する傷病名およびICD-10コードを記載する取扱いが示されています。
また、PTSD、解離性障害、適応障害など神経症圏の傷病名が記載される場合でも、医師が統合失調症または気分(感情)障害の病態を示していると医学的に判断する場合には、診断書上、その病態についても適切に記載することが重要になります。
したがって、「障害年金では必ず一つの病名だけを選ばなければならない」と考える必要はありません。
ただし、どの傷病名や病態を診断書に記載するかについては、診療録、発症時期、症状、治療経過などを踏まえた医師の医学的判断が前提となります。
受診状況等証明書と現在の診断書の病名が違っても、直ちに請求できないとは限りません
障害年金の請求では、初診日を確認するために「受診状況等証明書」を取得することがあります。
その際、
「受診状況等証明書に書かれている病名と、現在の診断書の病名が違う」
というケースがあります。
精神疾患では治療経過の中で診断名が変化することもあるため、病名が一語一句同じではないという理由だけで、直ちに請求できないと判断されるわけではありません。
一方で、病名が違っていても問題ないと一律に判断できるわけでもありません。
大切なのは、
- 最初の受診時にどのような症状があったのか
- その後も治療が継続しているのか
- 診断名が変わった経緯はどうなっているのか
- それぞれの傷病の間にどのような医学的な関連性があるのか
を確認することです。
障害認定日頃と現在で診断名が違う場合は特に注意
障害認定日まで遡って請求するケースでは、障害認定日頃の状態と現在の状態を分けて整理する必要があります。
障害認定日頃と現在では、診断名だけでなく、症状や生活状況、治療内容が変化していることもあります。
そのため、
- 障害認定日頃の診療録や診断書
- その時期の生活状況
- その後の治療経過
- 現在の診断名
- 現在の日常生活状況
などを切り分けて確認することが大切です。
「現在この病名だから、認定日当時も同じ病名でなければならない」と考えるのではなく、それぞれの時点の医学的な状態を正確に確認することが重要です。
「認定されやすい病名」に変えてもらうという考え方は避けましょう
障害年金について調べていると、
「この病名ではもらえないのではないか」
「別の病名を書いてもらった方が認定されやすいのではないか」
と不安になる方もいらっしゃいます。
しかし、障害年金のために診断名を変えてもらうという考え方は適切ではありません。
傷病名を診断するのは医師です。
社労士が行うのは、過去の医療資料や受診歴、診断名の変遷、生活状況などを整理し、障害年金の請求にあたって確認が必要な点を整理することです。
特に診断名が複数あるケースや途中で変わっているケースでは、過去の資料を時系列に並べてみることで、確認すべきポイントが見えてくることがあります。
精神疾患の障害年金で申請前に確認したい資料
診断名について迷っている場合は、現在の診断書だけを見るのではなく、これまでの資料を一度確認してみることをおすすめします。
- 受診状況等証明書
- 過去の診断書
- 現在の診断書
- 紹介状や診療情報提供書
- お薬手帳
- 医療機関から取得した診療録
- 病歴・就労状況等申立書
- 休職や就労状況が分かる資料
すべての資料が必要という意味ではありません。
しかし、初診時と現在で診断名が違う、複数の診断名がある、障害認定日頃の病名が現在と違うといったケースでは、資料を時系列で整理することがとても重要になります。
「自分の病名は障害年金の対象外?」と思ったら、病名だけで諦めないでください
精神疾患の障害年金では、
- PTSDと診断されている
- 解離性障害と診断されている
- 適応障害から別の診断名に変わった
- 初診時と現在の病名が違う
- 複数の精神疾患を診断されている
- 過去の資料には「抑うつ状態」とだけ書かれている
- 障害認定日頃と現在で診断名が違う
といったケースがあります。
このような場合、インターネットで病名だけを検索して、
「この病名は対象外らしいから、障害年金は無理だ」
と早い段階で諦めてしまう必要はありません。
一方で、障害年金を受給するために診断名を変更したり、後から付いた診断名を安易に過去へ遡らせたりするものでもありません。
初診時から現在までの受診歴、診断名の変遷、治療経過、日常生活上の支障などを整理したうえで、自分の場合にどのような請求が考えられるのかを確認することが大切です。
診断名が変わっている障害年金のご相談もお受けしています
こもれび社労士事務所では、精神疾患による障害年金について、
- 初診時と現在で診断名が違う
- PTSD・解離性障害・適応障害などが含まれている
- うつ病や双極性感情障害など複数の診断名がある
- 受診状況等証明書と現在の診断書で病名が違う
- 障害認定日頃と現在で診断名が違う
- 診断書を主治医へ依頼する前に資料を整理したい
といったご相談にも対応しています。
現在の病名だけを見るのではなく、初診時から現在までの資料や経過を確認しながら整理していきます。
「自分の病名は障害年金の対象になるのか分からない」
「病名が途中で変わっているので、どう申請すればよいか不安」
という段階でもご相談いただけます。
参考:公的資料
※この記事について
この記事は、精神疾患と障害年金の一般的な考え方を解説したものです。実際の認定は、初診日、保険料納付要件、診断書、日常生活状況、就労状況、治療経過その他の事情を踏まえて個別に判断されます。また、傷病名の診断や医学的判断は医師が行うものです。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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