労災の審査請求で意見書を出した後に口頭意見陳述はできる?書面提出と併用する際の注意点

労災の審査請求で意見書提出後の口頭意見陳述と書面提出の併用を解説するイメージ

労災保険の不支給決定について審査請求を進めていると、 原処分庁の意見書や開示資料を確認した後に、

「意見書や証拠資料を出したあとでも、口頭で意見を述べることはできるのでしょうか?」

と迷うことがあります。

また、

  • 書面を出したら、口頭意見陳述はもうできないのか
  • 口頭意見陳述と意見書提出は、どちらか一方を選ぶのか
  • 口頭意見陳述では、原処分をした労働基準監督署に質問できるのか
  • 質問状は事前に提出しなければならないのか

といった疑問も出てきます。

先に結論

労働保険審査官及び労働保険審査会法では、 「口頭による意見の陳述」と「文書その他の物件の提出」は、別の手続として定められています。

法令上、 意見書・陳述書・証拠資料などを書面で提出した後に、 口頭意見陳述を行うことを一律に禁止する規定は確認できません。

一般論としては、 書面で争点や証拠を整理したうえで、 口頭意見陳述で要点を補足し、 審査官の許可を得て原処分庁へ質問することを検討する余地があります。

ただし、 意見書等の提出期限、口頭意見陳述の申立時期、 質問状の事前提出、期日、提出方法などは、 担当審査官の案内・指定を確認する必要があります。

この記事で分かること

  • 口頭意見陳述と文書提出の関係
  • 意見書・陳述書・証拠資料を提出できる場面
  • 原処分庁へ質問できる範囲と審査官の許可
  • 質問状の事前提出が必要になる場合
  • 書面提出と口頭意見陳述の順序を考えるポイント
  • 法令上分かることと、担当審査官へ確認すべきこと

結論|意見書の提出と口頭意見陳述は、法令上は完全な二者択一とは限りません

労災保険の審査請求では、 書面による主張・証拠提出と、 口頭意見陳述は別々の手続として定められています。

労働保険審査官及び労働保険審査会法13条の3は、 審査請求人等から申立てがあった場合の 口頭による意見の陳述について定めています。

一方、同法14条の3では、 審査請求人等が 証拠となるべき文書その他の物件を提出できる と定めています。

条文上、

  • 口頭意見陳述を申し立てたら文書を提出できない
  • 文書を提出したら口頭意見陳述を申し立てられない

とする規定は確認できません。

法令上、口頭意見陳述と文書等の提出を完全な二者択一とする規定は確認できません。

ただし、実際に届いた確認書面でどの選択肢を選ぶか、 両方の希望をどのように伝えるか、 いつまでに書面を提出できるかは、 担当審査官の案内を確認してください。

労災審査請求の「口頭意見陳述」とは?

口頭意見陳述は、 単に担当者へ電話をして事情を説明することとは異なります。

労働保険審査官及び労働保険審査会法13条の3では、 審査請求人や一定の利害関係者から申立てがあった場合、 原則として審査官が 口頭で意見を述べる機会を与える 仕組みが定められています。

口頭意見陳述の期日や場所は、 審査官が指定します。

また、事件に関係のない事項や、 相当でない内容については、 審査官が陳述を制限する場合があります。

口頭意見陳述は、 「これまでのつらかった出来事をすべて自由に話すための場」 と考えるより、

原処分で何が認定され、何が認定されなかったのか、 どの点に争いがあり、 書面で示した主張・証拠のどこを補足する必要があるのか

を整理して臨む方が分かりやすいでしょう。

口頭意見陳述で労働基準監督署へ質問できる?

口頭意見陳述では、 審査請求人が原処分庁へ質問できる仕組みもあります。

ただし、 自由に何でも質問できるわけではありません。

労働保険審査官及び労働保険審査会法13条の3では、 申立人は 審査官の許可を得て、 審査請求に係る事件に関して、 原処分をした行政庁へ質問することができるとされています。

労災保険の審査請求であれば、 原処分庁は通常、 不支給等の決定を行った労働基準監督署長になります。

確認点 考え方
質問できるか 審査官の許可を得て、審査請求事件に関する質問をすることができます
何でも質問できるか 事件と関係のない質問や、不相当な内容まで自由に質問できるわけではありません
質問状の事前提出 労働保険審査官及び労働保険審査会法13条の3には、 全国一律の事前提出義務は明記されていません。 ただし、個別事件で審査官から提出を求められる場合があります

質問状は必ず事前に提出する必要がある?

労働保険審査官及び労働保険審査会法13条の3には、

「口頭意見陳述を希望する場合には、必ず事前に質問状を提出しなければならない」

という全国一律のルールは明記されていません。

ただし、 これは 「質問状の事前提出を求められることはない」 という意味ではありません。

審査官が、 事件を計画的・円滑に進めるため、 口頭意見陳述の前に質問事項を書面で提出するよう案内することがあります。

審査官から届いた書面に、 「口頭意見陳述の前に質問状を提出してください」 などと記載されている場合には、 その事件における手続案内として確認・対応する必要があります。

質問状の提出期限、形式、質問数、質問できる範囲について、 分からない点があれば担当審査官へ確認しておくと安全です。

意見書・陳述書・証拠資料は提出できる?

労働保険審査官及び労働保険審査会法14条の3では、 審査請求人等が 証拠となるべき文書その他の物件を提出できる とされています。

例えば、精神障害の労災審査請求では、 事案によって、

  • 原処分庁意見書に対する反論・補充説明
  • 出来事の時系列
  • 勤怠資料
  • メール・LINE・チャット等
  • 録音や反訳資料
  • 診療録等の医療資料
  • 会社への相談記録
  • 提出済み資料と新たな資料の対応関係

などを整理することがあります。

なお、 法律上の表現は 「証拠となるべき文書その他の物件」 です。

意見書や陳述書の提出方法、 証拠資料との一体的な提出の取扱い、 提出部数、提出期限などは、 審査官が示す手続案内に従って確認する必要があります。

実際に提出する書面を 「意見書」「陳述書」「補充書面」「証拠説明書」など、 どの名称・形式にするかについても、 必要に応じて担当審査官へ確認するとよいでしょう。

書面の提出期限は決まっている?

同法14条の3では、 審査官が文書その他の物件について 相当の期間を定めて提出を求めることができる 仕組みになっています。

そのため、 すべての事件について全国一律に、

  • 意見書は○日以内
  • 口頭意見陳述の○日前まで
  • 質問状は○日前まで

という一つの期限が決まっているわけではありません。

審査官から提出期限を指定された場合には、 その期限を確認して進める必要があります。

書面を出した後に口頭意見陳述をする意味は?

書面と口頭では、 役割が少し異なります。

方法 整理しやすい内容
意見書・陳述書等 争点、事実関係、証拠、原処分庁の判断に対する反論などを、順序立てて整理する
口頭意見陳述 書面で整理した内容の要点を補足し、審査官の許可を得て原処分庁へ質問する

特に資料量が多い事件では、 すべてを口頭だけで説明しようとすると、 重要な争点が埋もれてしまうことがあります。

そのため一般論としては、

1

原処分庁意見書・開示資料を確認する

2

認定された事実・認定されなかった事実を分ける

3

証拠と主張を対応させる

4

意見書・陳述書等で争点を整理する

5

口頭意見陳述で重要部分を補足する

6

許可を得て原処分庁へ必要な質問をする

といった整理が考えられます。

ただし、 必ずこの順序で進められるという意味ではありません。

実際の提出期限や口頭意見陳述の日程については、 担当審査官の進行・案内を確認してください。

口頭意見陳述は「直接話せば有利になる場」とは限りません

口頭意見陳述を希望する際に注意したいのは、

「直接話せば気持ちが伝わり、不支給が覆りやすくなる」

と単純に考えないことです。

労災審査請求では、 原処分がどのような事実を認定し、 どの資料をもとに判断し、 どの点を理由として不支給としたのかを確認することが重要です。

精神障害の労災であれば、例えば、

  • どの出来事が認定されたのか
  • どの出来事が認定されなかったのか
  • 発病時期をどう判断したのか
  • 心理的負荷をどのように評価したのか
  • 本人・会社・関係者の説明をどう評価したのか
  • 診療録や医師意見がどのように扱われたのか

などを、 開示資料や原処分庁意見書と照らして整理する必要があります。

こんな場合は、口頭意見陳述の前に書面整理を検討したい

特に次のような場合には、 先に資料と争点を整理する意味が大きくなります。

  • 開示資料が大量にある
  • 原処分庁意見書の内容に反論したい点が複数ある
  • 出来事ごとの認定・不認定を整理したい
  • 心理的負荷の評価について確認したい
  • メール、LINE、録音、勤怠等を証拠として対応させたい
  • 口頭で長時間説明することに不安がある
  • 体調上、重要事項をその場ですべて説明することが難しい

口頭で話す内容と、 書面で残す内容を分けて考えることが大切です。

「口頭意見陳述」と「後日書面提出」が別の選択肢になっている場合は?

審査請求の進行中には、 審査官から、

  • 追加して申し立てたいことがあるか
  • 口頭意見陳述を希望するか
  • 後日、意見書・陳述書等を提出する予定か

などを確認する書面が送られてくる場合があります。

書式上、 「口頭意見陳述」と「後日書面提出」が 別々の番号・選択肢になっている場合もあります。

しかし、 その書式上の配置だけから、法令上も必ず完全な二者択一であると判断することはできません。

実際の確認書面の項目番号、表現、提出期限、 選択肢の設け方は、 審査官や事件の進行状況によって異なる場合があります。

例えば、

  • 両方に○を付けてよいのか
  • 口頭意見陳述を選び、余白に「書面も後日提出予定」と書くのか
  • まず書面を提出してから口頭意見陳述の日程を決めるのか

といった具体的な書式・運用については、 担当審査官へ確認するのが安全です。

法令上分かることと、審査官へ確認することを分ける

法令・一般論として確認できること 個別事件で確認したいこと
口頭意見陳述を申し立てる制度がある 申立時期・期日・場所・出席方法
証拠となるべき文書その他の物件を提出できる 意見書・陳述書・証拠資料等の最終提出期限
両手続の併用を一律に禁止する規定は確認できない 書面と口頭意見陳述をどの順序で進めるか
審査官の許可を得て原処分庁へ質問できる 質問状の書式・期限・質問数・質問範囲
審査官は文書等の提出について相当期間を定めることができる 実際に指定された具体的な提出期限
質問状の全国一律の事前提出義務は、法13条の3に明記されていない その事件では事前提出を求められているか

審査官へ確認するときの聞き方

書面提出と口頭意見陳述を両方検討している場合には、 例えば次のように確認すると、 何を聞きたいのかが伝わりやすくなります。

口頭意見陳述を希望しています。

あわせて、開示資料や原処分庁の意見書を確認したうえで、 意見書・陳述書・証拠資料を書面で提出したいと考えています。

書面を先に提出し、 その後に口頭意見陳述を行うことは可能でしょうか。

また、質問状、意見書、証拠資料について、 提出期限、提出方法、必要部数等をご教示ください。

よくある質問

意見書を出した後でも、口頭意見陳述はできますか?

口頭意見陳述と文書等の提出は別の手続として定められており、 書面提出後の口頭意見陳述を一律に禁止する規定は確認できません。 ただし、申立時期や審理の進行、提出期限については担当審査官へ確認してください。

口頭意見陳述を希望すると、意見書は提出できませんか?

口頭意見陳述を希望した人を、 文書等の提出から除外する規定は確認できません。 ただし、個別事件での提出方法・期限は審査官の案内を確認してください。

口頭意見陳述で労基署へ質問できますか?

審査官の許可を得て、 審査請求事件に関する事項について原処分庁へ質問できる制度があります。 何でも自由に質問できるわけではありません。

質問状は必ず事前に提出しなければなりませんか?

労働保険審査官及び労働保険審査会法13条の3には、 全国一律の事前提出義務は明記されていません。 ただし、個別事件で審査官から事前提出を求められる場合があります。 実際に届いた案内を確認してください。

口頭意見陳述の後に追加資料を出せますか?

個別事件で追加提出が可能か、 またいつまで提出できるかは、 審査官が設定する審理の進行や提出期限によって異なります。 提出前に確認するのが安全です。

まとめ|「書面か口頭か」ではなく、それぞれの役割を整理する

労災保険の審査請求では、 意見書・陳述書・証拠資料の提出と、 口頭意見陳述を必ずどちらか一方だけ選ばなければならない、 という規定は確認できません。

  • 口頭意見陳述と文書等の提出は別の手続として定められている
  • 書面提出後の口頭意見陳述を一律に禁止する規定は確認できない
  • 原処分庁への質問には審査官の許可が必要
  • 質問状の全国一律の事前提出義務は法13条の3には明記されていない
  • 個別事件では質問状・意見書等の提出期限を必ず確認する
  • 書式上の選択肢だけで完全な二者択一と判断しない

審査請求では、 単に「直接話したいかどうか」だけで決めるのではなく、

原処分庁意見書・開示資料・提出済みの審査請求理由書を照らし合わせ、 何を書面で示し、 何を口頭で補足し、 何を原処分庁へ質問する必要があるのか

を整理しておくことが重要です。

労災の審査請求について整理したい方へ

「審査請求をしたものの、その後どう進めればよいか分からない」
「原処分庁意見書や開示資料が届いたが、どこに反論すべきか分からない」
「口頭意見陳述を希望するか迷っている」
「意見書・陳述書・質問事項をどう整理すればよいか分からない」

という場合には、 まず不支給理由、原処分庁の認定内容、開示資料、提出済み資料を整理する ところから確認していきます。

こもれび社労士事務所では、 精神障害・パワハラ等の労災申請や、 労災不支給後の審査請求についてご相談をお受けしています。

審査請求の途中段階で、 原処分庁意見書や開示資料が届いた後のご相談も可能です。

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参考資料

※本記事は、労災保険の審査請求における口頭意見陳述・文書等の提出について、 法令および公開資料をもとに一般的に解説したものです。 個別事件の提出期限、質問状の要否・形式、口頭意見陳述の日程、 書面提出との順序等は担当審査官の案内・指定によって異なる場合があります。 実際の手続については、担当審査官から届いた書面や案内をご確認ください。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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