労災申請後、労基署から申立書が届いたら?実際によく聞かれる質問と回答の考え方

労災申請後、労基署から申立書が届いたら?実際によく聞かれる質問と回答の考え方
労災申請をしたあと、労働基準監督署から本人あてに「申立書」や「確認シート」のような書類が届くことがあります。
突然書類が届くと、
- 何を書けばいいのだろう
- 不利なことを聞かれているのではないか
- 会社が違うことを言ったらどうしよう
- 過去の通院歴や私生活のことまで書いて大丈夫なのか
と不安になる方は少なくありません。
ただ、労基署から申立書が届くこと自体は、特別におかしなことではありません。精神障害の労災申請では、本人の状況、発症までの経過、業務上の出来事、通院状況などを確認するために、追加の申立書が求められることがあります。
この記事では、実際に精神障害の労災申請でよく確認される内容と、回答するときに意識したいポイントを整理します。
この記事で一番お伝えしたいこと
労基署からの申立書は、「新しい主張をたくさん足すための書類」ではありません。大切なのは、これまで提出した申請書・時系列・診断書・証拠資料との整合性を保ちながら、事実を落ち着いて整理することです。
労基署から申立書が届くのはなぜ?
労基署は、労災にあたるかどうかを判断するために、本人、会社、医療機関などから情報を集めます。
特にメンタル不調やパワハラによる労災では、けがのように一目で原因が分かるものではありません。そのため、次のような点を詳しく確認されます。
- いつ頃から症状が出たのか
- 発症前にどのような業務上の出来事があったのか
- 会社に相談していたのか
- 通院や診断の経過はどうなっているのか
- 仕事以外に大きな出来事がなかったか
- 過去に精神科の受診歴があるか
- 本人の主張と証拠資料が合っているか
つまり、申立書は「本人を責めるための書類」というより、労基署が事実関係を確認するための調査資料です。
ただし、書き方によっては、話の軸がぼやけたり、提出済み資料と矛盾して見えたりすることがあります。そのため、落ち着いて整理することが大切です。
実際によく聞かれる質問
1. 精神的な症状はいつ頃から始まりましたか
これは非常によく聞かれる項目です。
労基署は、発症時期をもとに、どの期間の業務上の出来事を評価するかを確認します。精神障害の労災認定では、原則として発病前おおむね6か月間の出来事が重要になります。
ただ、実際には「この日から急に発症した」と明確に言える方ばかりではありません。
- 眠れなくなった時期
- 食欲が落ちた時期
- 出勤前に涙が出るようになった時期
- 仕事に支障が出るようになった時期
- 初めて病院に行った時期
これらが少しずつずれていることもあります。
その場合は、無理に1日だけを断定するのではなく、「○年○月頃から不眠が出始め、○月頃には出勤に支障が出るようになった」など、症状の流れとして説明することが大切です。
2. 発症の原因と考えている業務上の出来事は何ですか
ここは、申立書の中でも特に重要です。
労基署が知りたいのは、単に「つらかった」という気持ちだけではなく、次のような具体的な事実です。
- いつ
- 誰から
- どこで
- どのような言葉・対応を受けたのか
- その後、仕事や体調にどのような影響が出たのか
たとえば、「上司からパワハラを受けた」とだけ書くよりも、
○月○日、会議室で上司から約1時間にわたり叱責を受けました。その際、「能力がない」「辞めた方がいい」などと言われ、その後、眠れない状態が続くようになりました。
のように、出来事と症状のつながりが分かる形で整理した方が伝わりやすくなります。
ただし、何でもかんでも書けばよいわけではありません。あまりに多くの出来事を並べすぎると、かえって一番重要な出来事が見えにくくなることがあります。
3. 過去に精神科・心療内科を受診したことがありますか
この質問で不安になる方は多いです。
「過去の通院歴を書いたら、今回も持病のせいにされるのではないか」と感じる方もいます。
しかし、既往歴を隠すことはおすすめできません。労基署は医療機関や健康保険の記録を確認することがあります。あとから分かった場合、申立全体の信用に影響する可能性があります。
大切なのは、過去の通院歴を隠すことではなく、今回の発症との関係を整理することです。
- 過去の不調はいつ頃のものか
- その後、通常勤務できていたか
- 今回の職場で何が起きて悪化したのか
- 過去の症状と今回の症状に違いがあるか
このように、過去の状態と今回の発症を分けて説明することが重要です。
4. 仕事以外で大きな出来事はありましたか
これも、不安になりやすい質問です。
たとえば、家庭のこと、育児、介護、金銭面、人間関係などについて聞かれることがあります。
この質問は、「仕事以外の原因で発症したのではないか」を確認するためのものです。
ただ、私生活の出来事が少しでもあれば労災にならない、という意味ではありません。
大切なのは、事実を隠さず書いたうえで、業務上の出来事との関係を整理することです。
家庭内の負担はありましたが、それまでは通常どおり勤務できていました。○月以降、職場での叱責や業務量の増加が重なったことで、不眠や抑うつ症状が強くなりました。
このように、「私生活の出来事があったかどうか」だけでなく、「それが発症の主な原因だったのか」「業務上の出来事によって限界を超えたのか」を整理する視点が大切です。
5. 残業時間や勤務状況はどうでしたか
労基署は、発症前の労働時間も確認します。
特に、タイムカードや勤怠記録と、本人の実感している勤務時間が違う場合は注意が必要です。
- タイムカード上は残業が少ない
- 実際には持ち帰り仕事があった
- 休憩が取れていなかった
- 勤務時間外にチャットやメール対応をしていた
- 自己申告制で正確に残業を付けられなかった
このような場合は、「会社の記録と実態が違う理由」を説明できるかが大切です。
パソコンのログ、メール送信時刻、チャット履歴、メモ、手帳などがあれば、勤務実態を補足する資料になることがあります。
6. 会社に相談していましたか
会社への相談状況も確認されることがあります。
- 上司に相談したか
- 人事に相談したか
- 産業医面談を受けたか
- 相談後に改善されたか
- 相談したことで悪化したか
労基署は、会社が本人の不調や職場の問題を把握していたかどうかも確認します。
相談していなかったからといって、直ちに不利になるわけではありません。パワハラや職場トラブルでは、会社に相談すること自体が怖くてできない場合もあります。
その場合は、「相談しなかった」のではなく、「相談できなかった理由」を説明することが大切です。
7. 現在までの治療経過を教えてください
初診から現在までの治療経過も確認されます。
- 初診日
- 医療機関名
- 診断名
- 通院期間
- 休職の有無
- 薬の処方
- 転院の有無
ここでは、診断書やカルテと矛盾しないように整理することが大切です。
記憶だけで書くと、日付や医療機関名を間違えてしまうことがあります。お薬手帳、診断書、領収書、予約履歴などを見ながら確認するとよいです。
8. 証拠資料はありますか
労基署から、メール、チャット、録音、メモ、日記、勤務記録などの有無を確認されることがあります。
ここで大切なのは、「証拠がないから終わり」と考えないことです。
証拠には、いろいろな形があります。
- メール
- チャット
- LINE
- 録音
- 手帳
- 日記
- 通院記録
- 家族への相談メッセージ
- 勤務表
- パソコンのログ
ひとつだけで決定的な証拠にならなくても、複数の資料を時系列で並べることで、状況が見えやすくなることがあります。
9. 学歴や職歴を教えてください
精神障害の労災申請では、学歴やこれまでの職歴を確認されることがあります。
これを見て、「転職が多いと不利になるのでは」と不安になる方もいます。
しかし、職歴を聞かれる主な目的は、過去の勤務状況や健康保険の加入履歴、過去の不調との関係などを確認するためです。
ここは、無理に良く見せようとするよりも、公的な記録と合うように正確に書くことが大切です。
10. なぜ業務が原因だと考えるのですか
申立書の最後に、今回の精神障害が業務に原因があると考える理由をまとめて書く欄があることがあります。
ここで大切なのは、感情的に強く訴えることではありません。
次の流れが分かるように、淡々と整理することです。
- 発症前は通常勤務できていた
- 発症前の一定期間に、業務上の強い出来事があった
- その後、不眠・抑うつ・出勤困難などの症状が出た
- 医療機関を受診し、診断を受けた
- 仕事を続けることが難しくなった
「どれだけつらかったか」だけでなく、「業務上の出来事から発症までの流れ」が伝わるように書くことが重要です。
回答で一番大切なのは、提出済み資料との整合性です
労基署から申立書が届くと、不安になって、あれもこれも書き足したくなることがあります。
しかし、申立書で一番大切なのは、新しい主張を増やすことではありません。
大切なのは、これまで提出した資料との整合性です。
- 労災申請書
- 災害の原因及び発生状況
- 出来事整理表
- 心理的負荷評価表
- 診断書
- 時系列メモ
- 証拠資料
これらと申立書の内容が大きくずれていると、労基署から追加確認を受けたり、本人の説明が分かりにくくなったりすることがあります。
特に注意したいのは、次のような点です。
- 発症時期が資料ごとにずれていないか
- 一番重要な出来事が途中で変わっていないか
- 既往歴の説明と今回の発症の説明が矛盾していないか
- 私生活の出来事をどう位置づけるかが整理されているか
- 証拠資料と出来事の時系列が合っているか
不安なときほど、文章を増やすよりも、まずは「これまでの資料と矛盾していないか」を確認することが大切です。
一人で書くのが難しいケース
次のような場合は、一人で申立書を書こうとすると、かなり負担が大きくなります。
- 過去に精神科・心療内科の通院歴がある
- 発症時期がはっきりしない
- 会社が事実関係を否認しそう
- 私生活の出来事もあり、どう書けばよいか迷う
- 証拠が少ない
- 出来事が多すぎて、何を中心に書くべきか分からない
- 会社調査後に追加で確認されている
- 書類を見るだけで体調が悪くなる
このような場合は、無理に一人で完璧に書こうとしなくて大丈夫です。
むしろ、最初に全体の軸を整理してから書いた方が、結果的に分かりやすい申立書になります。
こもれび社労士事務所でできること
こもれび社労士事務所では、精神障害の労災申請について、申請前の整理だけでなく、申請後に労基署から届く申立書や確認書類についても、内容の整理を行っています。
特に、次のような点を確認します。
- 労基署から何を聞かれているのか
- 回答の軸がずれていないか
- 提出済み資料と矛盾していないか
- 発症時期・既往歴・私生活の出来事の説明が整理できているか
- 出来事整理表や心理的負荷評価表との整合性が取れているか
「何を書けばいいか分からない」という段階でも大丈夫です。
下書き、スクリーンショット、労基署から届いた書類の写真などをLINEで送っていただければ、まずは状況を確認します。
労基署から申立書が届いて不安な方へ
労災申請後の申立書は、提出済み資料との整合性が大切です。発症時期、既往歴、私生活の出来事、業務上の出来事の書き方で迷っている方は、一人で抱え込まずご相談ください。
短文・箇条書き・スクリーンショットだけでも大丈夫です。
まとめ
労災申請後に労基署から申立書が届くと、不安になるのは自然なことです。
ただ、申立書は、労基署が事実関係を確認するための大切な書類です。
回答するときは、次の点を意識してください。
- 発症時期を無理に断定しすぎない
- 業務上の出来事は、時期・相手・内容を具体的に書く
- 既往歴は隠さず、今回の発症との関係を整理する
- 私生活の出来事も、業務との関係を落ち着いて説明する
- 提出済み資料との整合性を確認する
不安なときほど、書く内容を増やすよりも、まずは全体の流れを整えることが大切です。
申立書が届いて手が止まっている方は、その段階で相談して大丈夫です。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
※ 個人のご相談(労災・後遺障害・障害年金)/全国対応(LINE・オンライン)
※ 「まず整理だけ」でも大丈夫です

