仕事を与えないパワハラで労災認定された裁判例|3か月仕事を与えられなかったケース

仕事を与えないパワハラで労災認定された裁判例|3か月仕事を与えられなかったケース
「仕事を与えられない」
「会議に呼ばれなくなった」
「自分だけ何も任されなくなった」
「事実上、職場で干されているように感じる」
このような状態が続くと、強い不安や孤立感を抱え、メンタル不調につながることがあります。
ただ、暴言や長時間労働と比べると、「仕事を与えない」「仕事を外す」という扱いは外から見えにくく、自分でも「これで労災になるのだろうか」と迷いやすい問題です。
この記事では、仕事を与えないパワハラで労災認定が問題となった裁判例をもとに、どのような点が重視されやすいのかを整理します。
この記事でわかること
- 仕事を与えないパワハラが労災で問題になる理由
- 実際の裁判例で見られた流れ
- 労災認定で重視されやすいポイント
- 自分のケースを整理するときの視点
- 相談前にまとめておきたいこと
仕事を与えないパワハラは、労災で問題になることがあります
メンタル不調の労災では、暴言、叱責、長時間労働だけが問題になるわけではありません。
仕事を外される、役割を奪われる、孤立させられる、周囲から切り離されるといった扱いも、状況によっては強い心理的負荷として評価されることがあります。
「仕事を与えない」という一場面だけで即座に労災と判断されるわけではありません。
しかし、合理的な理由が乏しいまま本来業務から外され、長期間にわたって放置されるような状態が続けば、精神的な負荷は大きくなります。
特に、退職勧奨、配置転換、入室禁止、孤立、周囲との切り離しなどが重なっている場合には、労災申請を検討するうえで重要な事情になります。
裁判例|仕事を与えない状態が続き、うつ病が問題となったケース
ここでは、仕事を与えないパワハラが問題となった裁判例として、中国新聞システム開発事件(広島高裁平成27年10月22日判決)をもとに整理します。
この事案では、うつ病で休職した社員が復職したあと、徐々に本来の業務から外され、最終的に約3か月間、仕事をほとんど与えられない状態が続きました。
その後、うつ病が再発し、労災との関係が争われました。
裁判例の細かい法的判断を読むことも大切ですが、相談前の段階では、まず次の流れを押さえることが重要です。
- 復職後に業務内容が制限された
- 退職勧奨が行われた
- 本来業務から外された
- 入室禁止などにより業務遂行が難しくなった
- 約3か月間、仕事をほとんど与えられない状態が続いた
- その後、うつ病が再発した
この事例で問題となった会社の対応
1. 退職勧奨
まず、復職後の社員に対して、退職を促すような働きかけが行われました。
退職勧奨そのものが直ちに違法になるわけではありません。
しかし、退職を断ったあとに業務から外されたり、職場で孤立させられたりするような扱いが続くと、退職圧力と業務外しが一体のものとして問題になることがあります。
2. 本来業務から外されたこと
次に、本来担当していた業務から外され、周辺的な業務に移されていきました。
会社には業務配分を決める裁量があります。
ただし、合理的な理由がないまま、本人の職務や経験と大きく離れた仕事だけを与えたり、実質的に役割を奪ったりする場合は、精神的な負荷として重く評価されることがあります。
3. 入室禁止や業務からの切り離し
この事例では、基幹システム室やマシンルームへの立入りが制限され、チームの本来業務から切り離されるような状態になりました。
単に「仕事が少ない」というだけでなく、仕事をするために必要な場所や情報から遠ざけられていたことが問題になりました。
職場に席はあるのに、必要な部屋に入れない、会議に呼ばれない、メール共有から外されるという状態は、本人に強い疎外感を与えます。
4. 約3か月間、仕事をほとんど与えられなかったこと
最終的に、約3か月間、仕事をほとんど与えられない状態が続きました。
仕事をしに職場へ行っているのに、仕事がない。
周囲は通常どおり働いているのに、自分だけ役割がない。
このような状態が続くことは、本人の自尊心や職場での居場所を大きく傷つけます。
裁判例でも、このような継続的な業務外しが、うつ病の発症・再発との関係で重く見られました。
仕事を与えないパワハラで労災が認められるケースとは?
仕事を与えないことだけで、必ず労災が認められるわけではありません。
一時的な業務調整や、本人の体調に配慮した軽減措置である場合もあります。
しかし、次のような事情が重なると、労災申請で重要なポイントになることがあります。
- 長期間にわたり仕事を与えられない
- 本来業務から外された理由がはっきりしない
- 周囲の社員とは明らかに扱いが違う
- 会議・メール共有・担当案件から外されている
- 入室禁止やシステム利用制限などにより業務ができない
- 退職勧奨や退職圧力とセットになっている
- 相談しても改善されない
- その後、心療内科・精神科を受診し、休職に至っている
つまり、労災申請では「仕事が少なかった」という一点だけではなく、仕事を外された経緯、期間、周囲との違い、会社の説明、体調悪化までの流れを全体として整理することが大切です。
裁判所が重視したポイント
| ポイント | 見られやすい内容 |
|---|---|
| 業務外し | 本来業務を行えない状態にされたこと |
| 入室禁止・制限 | 業務に必要な場所や情報から切り離されたこと |
| 期間 | 約3か月間、仕事をほとんど与えられない状態が続いたこと |
| 退職勧奨との関係 | 退職を断った後の扱いとして業務外しが行われた点 |
| 体調悪化 | うつ病の再発や受診・休職までの流れ |
仕事を与えないパワハラの見分け方
仕事を与えないパワハラかどうかを考えるときは、次のような点を確認します。
- 本来の職務と関係ない雑務だけが長く続いている
- 周囲は通常どおり働いているのに、自分だけ業務から外されている
- 必要な部屋・システム・会議への参加を止められている
- 仕事を求めても与えられない
- 席だけあり、実質的に放置されている
- 退職勧奨を断った後に扱いが悪化した
もちろん、会社側に合理的な説明がある場合もあります。
しかし、「自分だけ」「長期間」「理由が分からない」「相談しても変わらない」という事情が重なる場合は、慎重に整理した方がよいケースです。
証拠が少ない場合でも、何を集めればよいか
仕事を与えないパワハラでは、暴言の録音のような分かりやすい証拠がないこともあります。
その場合でも、次のような資料を組み合わせることで、状況を整理できることがあります。
- 業務指示メール
- チャット履歴
- 会議案内や共有メール
- 担当業務の変更が分かる資料
- 業務分担表
- 日記・メモ
- 面談記録
- 診断書
- 診療録
- 休職までの経緯
証拠の残し方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
診断書と診療録も重要です
精神疾患との因果関係を整理するうえでは、診断書だけでなく、診療録の記載内容も重要になります。
いつから、どのような出来事があり、どのような症状が出たのか。
その流れが医療記録に残っていると、後から状況を説明しやすくなります。
受診時には、単に「仕事がつらい」と伝えるだけでなく、
- 仕事を与えられていない
- 会議や共有から外されている
- 退職を促された
- 職場で孤立している
- 眠れない、食欲がない、出勤前に涙が出る
といった具体的な事情を、無理のない範囲で医師に伝えておくことが大切です。
また、就労が難しい状態が続く場合、労災だけでなく障害年金の検討が必要になることもあります。
将来的な選択肢を残すためにも、初診日、通院歴、診断名、症状の変化は整理しておくと安心です。
仕事を与えないパワハラを受けたときの対応
1. 体調がつらい場合は受診を優先する
まずは、心療内科や精神科への受診を優先してください。
証拠を集めることも大切ですが、体調が悪化している状態で無理を続けることは危険です。
受診時には、職場で何が起きているのかを、短くてもよいので具体的に伝えることが大切です。
2. 日付入りで記録を残す
「いつ、誰に、何を言われ、どの仕事を外され、どんな体調変化があったか」を、短くてもよいので記録しておきます。
あとからまとめようとすると、時期や順番があいまいになりやすいです。
スマホのメモでも、箇条書きでも大丈夫です。
3. 会社への相談履歴を残す
上司や人事に相談した場合は、その日付や内容も残しておきます。
「相談したが改善されなかった」という流れは、後から状況を説明するときに重要になることがあります。
4. 休職・退職・労災申請を整理する
仕事を与えないパワハラが続くと、休職や退職を考える方も少なくありません。
ただ、退職後でも労災申請を検討できる場合があります。
一方で、退職前後の動き方によって、証拠や会社対応の整理が難しくなることもあります。
不安が強い場合は、一人で結論を出す前に、まず状況を整理しておくことをおすすめします。
労災だけでなく障害年金も視野に入ることがあります
仕事を与えないパワハラによってうつ病などのメンタル不調が長引くと、労災申請だけでなく、障害年金の検討が必要になることがあります。
特に、休職が長引いている方、退職後も症状が残っている方、復職が難しい方は、労災と障害年金を切り分けて考えることが大切です。
労災と障害年金では、見られるポイントが異なります。
そのため、受診歴、症状の経過、就労状況を早い段階から整理しておくことが、将来の選択肢を広げることにつながります。
まとめ|仕事を与えないパワハラは、時系列で整理することが大切です
仕事を与えないパワハラは、外から見えにくい一方で、受けている本人には大きな負担になります。
職場にいるのに仕事がない。
周囲は働いているのに、自分だけ役割がない。
このような状態が続くと、強い孤立感や不安につながります。
裁判例でも、退職勧奨、入室禁止、本来業務からの切り離し、長期間の業務外しが重なり、うつ病との関係が問題となったケースがあります。
大切なのは、「自分だけではない」と知ることと同時に、自分のケースでは何が起きていたのかを、時系列で整理することです。
証拠が十分そろっていなくても、今あるメールやメモ、受診歴、休職までの流れを確認することで、労災申請を検討できることがあります。
会社に言う前でも、相談して大丈夫です
こもれび社労士事務所では、パワハラ・メンタル不調による労災申請について、LINEでのご相談を受け付けています。
「仕事を与えられていないが、これで労災になるのか分からない」
「退職勧奨や配置転換も絡んでいて整理できない」
「証拠が少なくて不安」
そのような場合でも、まずは状況を整理するところから一緒に考えます。
今あるメールやメモだけで、どこまで労災申請が検討できるか、一緒に整理します。
短文・箇条書き・スクリーンショットでも大丈夫です。
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- パワハラ・メンタル労災を会社に言う前にLINEで相談
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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