労災の情報開示で黒塗りが多いとき|審査請求中に資料を確認する方法

黒塗りのある労災資料とノートを、窓辺の机で落ち着いて整理する様子を描いた水彩画風イラスト

労災の不支給決定に対して審査請求を進める中で、労働局や労働基準監督署に情報開示を求めたものの、資料の多くが黒塗りで、「結局、何を根拠に判断されたのか分からない」と感じる方は少なくありません。

黒塗りには、第三者の氏名や連絡先など、保護されるべき情報もあります。

一方で、個人を特定する情報を伏せても確認できるはずの聴取内容、労基署の質問、回答の趣旨、事実認定や心理的負荷評価の理由まで見えない場合には、開示資料の見方や、審査請求中に利用できる手続を整理する意味があります。

この記事では、「黒塗りを必ず取る方法」ではなく、労災の審査請求で本当に確認すべき資料と、現在の手続で取り得る確認方法を解説します。

この記事のポイント

労災保険の審査請求中は、労働保険審査官及び労働保険審査会法第16条の3に基づき、審査官に対して、原処分庁などから提出された文書その他の物件の閲覧や、一定の写しの交付を求められる制度があります。

ただし、第三者の利益を害するおそれその他正当な理由がある場合には制限されるため、すべての黒塗りがなくなるとは限りません。

この記事で分かること

  • 労災の開示資料で黒塗りになりやすい部分
  • 黒塗りが多いときに、開示決定通知書で確認したいこと
  • 現在の審査請求中に利用できる閲覧・写し交付の仕組み
  • 再審査請求段階での調書閲覧との違い
  • 部分開示の考え方と、開示決定への不服申立てを検討する場面
  • 黒塗りだけにとらわれず、審査請求の争点を整理する考え方

労災の開示資料で、どんな部分が黒塗りになりやすい?

労災の調査資料や開示資料を見ると、一部が黒塗りになっていることがあります。

黒塗りがあると、「都合の悪い内容を隠されているのではないか」と感じることもあるかもしれません。

しかし、開示資料に黒塗りがあること自体は、直ちに不適切とはいえません。

特に、第三者の氏名や連絡先など、個人を特定できる情報や、公開により第三者の利益を害するおそれがある情報は、不開示・黒塗りとなることがあります。

黒塗りになりやすい情報 労災資料での例
第三者の氏名・連絡先 上司、同僚、人事担当者、会社関係者、医療関係者などの氏名、住所、電話番号、メールアドレス
個人を特定し得る属性 所属部署、役職、年齢、勤続年数、職歴、担当業務、家族構成など。他の記載と組み合わせて誰か推測できる場合があります
第三者の私的事情 他の従業員の病気、家庭事情、人事評価、懲戒、退職、休職、相談内容など
会社・取引先に関する情報 顧客名、取引先情報、営業上の情報、業務上の内部情報など
調査・監督事務に関する情報 調査方法、関係者の連絡先、今後の調査・監督に具体的な支障を及ぼすおそれがある情報など
医療資料に含まれる第三者情報 家族、同僚、友人、医療関係者などに関する情報や、本人以外の患者に関する情報

たとえば、同僚が労働基準監督署の聴取に応じた場合、その方の氏名や連絡先、その方を特定し得る細かな属性が保護されることには理由があります。

また、職場の規模が小さい場合には、氏名だけを隠しても、部署・役職・担当業務・時期などから、誰が話したのか推測できてしまうことがあります。

黒塗りの有無より、「何が分からなくなっているか」を確認する

重要なのは、氏名が黒塗りになっていること自体ではありません。

労災の不支給決定に対する審査請求では、次のような内容が確認できるかが重要になることがあります。

  • どのような出来事について聴取・調査が行われたのか
  • 会社や関係者が、どのような説明をしたのか
  • 労働基準監督署が、どの説明を事実として認定したのか
  • 本人の説明と会社側の説明のどこが食い違っているのか
  • 心理的負荷を「弱」「中」などと評価した前提は何か
  • 原処分庁意見書と、調査・聴取内容が整合しているか

氏名や連絡先を伏せても確認できるはずの聴取内容、事実認定、判断過程まで広く見えない場合には、開示決定通知書に書かれた不開示理由と、資料全体を確認する意味があります。

情報公開法では、文書の一部に不開示情報が含まれていても、その部分を容易に区分して除くことができる場合には、不開示部分を除いて開示する仕組みがあります。

ただし、実際に氏名等だけを伏せれば足りるのか、ほかの記載と組み合わせることで第三者が特定されるおそれがあるのかは、文書の内容や職場の状況等によって異なります。

そのため、「黒塗りがあるから不適切」と考えるのではなく、「不支給判断の根拠を確認するために必要な内容まで見えなくなっていないか」という視点で確認することが大切です。

黒塗りが多いときに、まず確認したいこと

「黒塗りを取るべきか」を急いで判断する前に、まず開示資料一式と開示決定通知書を確認します。

開示決定通知書で見るポイント

  • 行政文書の開示請求か、保有個人情報の開示請求か
  • 全部開示ではなく、一部開示決定となっているか
  • 不開示とされた根拠条文
  • 不開示理由として何が記載されているか
  • 不服がある場合の審査請求先・期間に関する教示

同じ黒塗りに見えても、「第三者の個人情報」を理由とするのか、「事務の適正な遂行に支障が生じるおそれ」を理由とするのかで、確認すべき点は異なります。

労災の審査請求で本当に確認したい資料

黒塗りの有無だけに目を向けるのではなく、次の内容が把握できるかを確認することが大切です。

  • 会社や関係者が、出来事についてどのように説明したか
  • 監督署が何を事実として認定し、何を認定しなかったか
  • 「業務指導の範囲内」「心理的負荷は中」などと判断した具体的な理由
  • 原処分庁の意見書と、調査・聴取内容との整合性
  • 本人が提出した資料や説明が、どのように扱われたか

不支給決定に対する審査請求では、判断の前提となった事実や評価を把握して初めて、どこを補充・反論すべきかを整理しやすくなります。

現在の審査請求中でも、閲覧・写し交付を求められる可能性がある

「再審査請求に進まないと資料は見られない」と考えている方もいますが、そうとは限りません。

労働保険審査官及び労働保険審査会法第16条の3では、審査請求人などが、原処分庁その他から審査官へ提出された証拠となる文書その他の物件について、閲覧を求めることができる仕組みが定められています。

対象となる文書の写しや、電磁的記録の内容を記載した書面の交付を求められる場合もあります。

注意点

審査官は、第三者の利益を害するおそれその他正当な理由がある場合には、閲覧や写しの交付を制限できます。

したがって、この制度があるからといって、すべての資料を無修正で確認できる、または黒塗りが必ずなくなるということではありません。

それでも、情報公開や個人情報開示とは別に、審査請求の審理に提出された資料を確認するためのルートがあることは重要です。

実際に閲覧・写し交付を希望する場合は、担当する労働者災害補償保険審査官に対し、対象資料、申請方法、必要書類、手数料、提出先、交付方法を確認するとよいでしょう。

審査官へ確認する際の文案例

審査請求手続において、原処分庁その他の関係者から提出された文書その他の物件について、労働保険審査官及び労働保険審査会法第16条の3に基づく閲覧または写しの交付を希望しています。

申請方法、対象となる資料、提出先、手数料、必要書類および交付の可否について教えてください。

再審査請求の段階にも、調書を閲覧する手続があります

審査官の決定に不服があり再審査請求に進んだ場合には、労働保険審査会で審理が行われます。

労働保険審査会では、法47条第2項および労働保険審査官及び労働保険審査会法施行規則11条に基づき、調書の閲覧を求める手続が用意されています。

労働保険審査会は、公式サイトで「調書閲覧請求書」の様式を公開しています。

ただし、再審査請求に進めば、現在の開示資料の黒塗りが必ずなくなる、または資料をすべて無修正で確認できるという意味ではありません。

また、現在の審査請求段階でも、法16条の3に基づき、審査官に対して提出資料の閲覧や写しの交付を求められる制度があります。

黒塗りを減らすことだけを目的として再審査請求を考えるのではなく、まず現在の審査請求で確認できる資料・範囲・方法を担当審査官へ確認することが重要です。

一部開示決定そのものに不服がある場合

行政文書の開示請求や保有個人情報の開示請求で一部開示決定となった場合、決定内容に不服があれば、開示決定そのものに対する審査請求を検討する場面もあります。

行政機関には、不開示情報が含まれていても、その部分を容易に区分して除くことができる場合には、不開示部分を除いて開示する、いわゆる部分開示の仕組みがあります。

そのため、第三者の氏名や連絡先を伏せれば内容を確認できるにもかかわらず、聴取内容や判断過程まで広く黒塗りとなっている場合には、決定通知書に記載された根拠と理由を確認する意味があります。

もっとも、個別の資料について部分開示が可能かどうかは、他の記載と組み合わせた場合に第三者を特定できるか、調査や監督事務に支障が生じるおそれがあるかなどによって変わります。

「黒塗りだから違法」とは限りません。資料ごとに、不開示理由と、労災の審査請求でその資料が果たす意味を分けて検討することが大切です。

開示決定そのものに不服がある場合の審査請求先、期間、提出方法は、開示決定通知書に記載された教示を確認する必要があります。実際の手続は、決定通知書の記載と管轄機関の案内を確認してください。

開示請求と審査請求中の閲覧は、目的が異なる

情報公開・個人情報開示と、審査請求中の閲覧・写し交付は、同じ資料を扱う場合でも目的が異なります。

制度 主な目的 確認する中心資料
行政文書・個人情報の開示請求 行政機関が保有する文書・本人情報の確認 労働局・監督署が保有する行政文書等
労災の審査請求中の閲覧・写し交付 不支給決定に対する不服申立ての審理に必要な資料の確認 原処分庁などから審査官へ提出された文書・物件

開示請求で黒塗りが多かったとしても、現在の審査請求で何が提出されているか、どの範囲で閲覧・写し交付を求められるかを別途確認する価値があります。

黒塗りが多いときは、資料全体から争点を整理する

黒塗りの一部だけを見て、「不利な資料を隠されているのではないか」と感じることもあるかもしれません。

しかし、労災の不支給決定を争う場面では、黒塗りを減らすこと自体よりも、次のような点を資料全体から整理する方が、結果的に重要なことがあります。

  • 不支給決定の中心となった出来事は何か
  • 本人の説明と会社側の説明のどこが食い違っているか
  • 客観資料で補える部分はどこか
  • 意見書や調査記録に、評価の飛躍や矛盾がないか
  • 追加で提出すべき資料・説明は何か

資料が十分に見えない場合でも、すでに開示された内容、決定書、本人の手元にあるメール・録音・勤務記録・診療録などを照らし合わせることで、審査請求で補うべき点が見えてくることがあります。

動画で解説

労災の情報開示で黒塗りが多いとき|審査請求中に資料を確認する方法

黒塗り資料を受け取った後に、何を確認し、現在の審査請求でどのように資料を確認できる可能性があるかを動画で解説しています。

まとめ|「黒塗りを取る」より、判断の根拠を確認する

労災の情報開示で黒塗りが多い場合でも、第三者の氏名や連絡先など、保護されるべき情報まで開示されるとは限りません。

一方で、氏名等を伏せても確認できる聴取内容や判断過程まで広く見えない場合には、開示決定通知書の根拠・理由を確認し、部分開示の範囲や不服申立ての可能性を検討する余地があります。

また、労災の審査請求中であれば、再審査請求を待たず、審査官に対して提出資料の閲覧や写しの交付を求められる可能性があります。

大切なのは、「黒塗りをすべて外すこと」ではありません。労基署が何を事実とし、どのような理由で不支給と判断したのかを確認し、審査請求で反論・補充すべき点を整理することです。

労災の不支給決定・審査請求でお困りの方へ

開示資料、決定書、原処分庁意見書などを確認し、どこが争点になるか、今の手続で何を確認できるかを整理します。

資料が多く、黒塗りもあり、何から読めばよいか分からない段階でも構いません。まず現在手元にある資料から、判断の骨格と確認すべき点を整理していきます。

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参考資料

※本記事は、労災保険給付の不支給決定に対する審査請求中の資料確認、情報公開および個人情報開示について、法令・公的資料をもとに一般的に解説したものです。個別の資料について、閲覧・写し交付・部分開示が認められるか、開示決定への不服申立てを行うか、どの範囲まで黒塗りが許されるかは、資料の内容、不開示理由、手続の進行状況等によって異なります。実際の手続については、開示決定通知書の記載および担当審査官・管轄機関の案内を確認してください。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

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