メンタル労災の認定率はどれくらい?令和7年度は約28%|数字の正しい見方を社労士が解説

メンタル労災の認定率について統計資料を確認するイメージ

メンタル不調による労災についてご相談を受けていると、

「精神障害の労災って、実際にはどれくらい認められているのでしょうか?」
「ほとんど不支給になるのではないですか?」

と聞かれることがあります。

結論からいうと、精神障害の労災は 「ほとんど認められない制度」とまではいえません。

厚生労働省の令和7年度(2025年度)の統計では、 精神障害の業務災害について 3,833件の決定が行われ、そのうち1,082件が支給決定 となっています。

支給決定件数を決定件数で割ると、 約28.2%です。

先に結論

令和7年度の精神障害の労災では、決定された事案のうち約28%が支給決定となっています。

ただし、この28.2%は 「あなたの労災が認定される確率は28.2%」という意味ではありません。

この記事では、メンタル労災の「認定率」と呼ばれる数字の意味と、 個別の労災申請では何が重要になるのかを、 精神障害の労災を取り扱う社会保険労務士が解説します。

🎥 動画でも解説|メンタル労災の認定率は約28%?「どうせ認められない」は本当?

令和7年度の統計をもとに、「約28.2%」という数字の正しい見方と、個別の労災認定で確認されるポイントを動画で解説しています。

令和7年度のメンタル労災は1,082件が支給決定

厚生労働省が公表した 「令和7年度 過労死等の労災補償状況」によると、 精神障害の業務災害について、次の結果となっています。

区分 件数
請求件数 4,958件
決定件数 3,833件
支給決定件数 1,082件
支給決定件数 ÷ 決定件数 約28.2%

出典:厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」別添資料2「業務災害に係る精神障害に関する事案の労災補償状況」表2-1(16頁)をもとに作成。

※上記は、厚生労働省の「業務災害に係る精神障害」に関する集計です。令和7年度は、このほか複数業務要因災害として精神障害4件の支給決定が別表で公表されています。

令和7年度中に決定された事案についてみると、支給決定となった割合は約28.2%でした。

これは、令和7年度中に決定された事案の内訳を示す数字です。 令和7年度に請求した一人ひとりの認定可能性を示すものではありません。

労働局が公表する資料の中には、 この 「支給決定件数÷決定件数」 を「認定率」と表記しているものもあります。

一方、全国版の厚生労働省資料では、 主に「決定件数」「支給決定件数」という表現が使われています。

そのため本記事では、 支給決定件数を決定件数で割った割合を、便宜上「認定率」と表現します。

なぜ「1,082件÷4,958件=21.8%」ではないのか

ここは、労災統計を見るうえで非常に重要です。

令和7年度の請求件数4,958件に対して、 支給決定件数は1,082件です。

単純に割ると約21.8%になりますが、 これを 「令和7年度に申請した人の認定率」 と考えるのは適切ではありません。

理由は、 請求された年度と、支給・不支給が決定される年度が一致するとは限らない からです。

  • 令和7年度に請求しても、決定が令和8年度以降になることがあります。
  • 令和7年度に支給決定された中には、令和6年度以前に請求された事案も含まれます。

つまり、 「請求件数」と「支給決定件数」は、 同じ人たちをそのまま比較した数字ではありません。

そのため、認定状況を見る場合には、 その年度に判断が終わった「決定件数」と「支給決定件数」を比較する方が適切 です。

約28%なら「3人に1人が認定される」という意味?

ここも注意が必要です。

統計上は約28.2%ですが、

「メンタル労災を申請すれば、誰でも約3割の確率で認定される」

という意味ではありません。

労災の判断は、 抽選や確率で決まるものではないからです。

精神障害の労災では、主に、

  • 対象となる精神障害を発病しているか
  • いつ発病したのか
  • 発病前おおむね6か月にどのような業務上の出来事があったか
  • その出来事による心理的負荷がどの程度だったか
  • 会社資料やメール、LINE、録音などにどのような記録があるか
  • 診療録や主治医意見など医学的な資料がどうなっているか
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因がどう評価されるか

などを踏まえて、個別に判断されます。

28.2%は「個人の認定可能性」ではなく、令和7年度に決定された事案全体の中で支給決定となった割合です。

「メンタル労災はほとんど認められない」は本当?

少なくとも、統計だけを見る限り、 「精神障害の労災はほとんど認められない」と一律に言うのは適切ではありません。

令和7年度だけでも、 1,082件が支給決定されています。

1年間に1,000件を超える精神障害の労災が支給決定されていることになります。

一方で、決定3,833件のうち支給決定は1,082件ですから、 支給決定に至らなかった事案も多数あります。

したがって、

「ほとんど認められない」でもなく、
「申請すれば簡単に認められる」でもない。

これが統計から見た実態に近いと考えます。

パワハラによる支給決定は222件

令和7年度の統計では、 どのような出来事が精神障害の労災につながったのかも公表されています。

主な支給決定件数は次のとおりです。

出来事 支給決定件数
上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた 222件
顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた 127件
セクシュアルハラスメントを受けた 127件
仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった 113件

出典:厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」別添資料2・表2-8(27頁)をもとに作成。

※出来事別の件数は、精神障害の発病に関与したと考えられる出来事を、認定基準上の類型に沿って集計したものです。この件数だけで、個別の出来事が認定されやすいことや、認定の可能性を示すものではありません。

特にパワーハラスメントによる支給決定は222件あり、 精神障害の労災で非常に重要な出来事の一つとなっています。

ただし、 「パワハラがあれば労災になる」という意味ではありません。

言動の内容、回数、継続期間、人格否定の程度、 立場関係、業務指導との関係などを具体的に確認する必要があります。

残業20時間未満でも57件の支給決定

精神障害の労災について、

「月80時間や100時間の残業がないと認められないのでは?」

と思っている方も少なくありません。

しかし、令和7年度の精神障害の支給決定を 時間外労働時間別に見ると、 20時間未満の区分にも57件の支給決定があります。

出典:厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」別添資料2・表2-6(25頁)。

精神障害の労災は、 残業時間だけで判断されるわけではありません。

たとえば、

  • パワーハラスメント
  • 顧客等からの著しい迷惑行為
  • セクシュアルハラスメント
  • 退職を強要された
  • 仕事内容や仕事量が大きく変化した
  • 事故や災害を経験した

など、具体的な出来事による心理的負荷も評価対象になります。

ただし、この57件という数字から、 「残業20時間未満の方が認定されやすい」 と読むことはできません。

あくまで、支給決定された事案の中に 「20時間未満」と整理されたものが57件あったという統計です。

現在のメンタル労災の主な認定要件

現在の「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、 原則として次の3つを確認します。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したとは認められないこと

そして、実際に職場で何が起きたのかについて、 会社側の説明だけで判断されるわけではありません。

本人の申立てのほか、 メール、LINE、チャット、勤怠記録、録音、 会社資料、関係者からの聴取、 診療録や主治医の意見などを踏まえて調査されます。

そのため、統計上の28.2%だけを見て個別事案の見通しを決めるのではなく、 ご自身の出来事を認定基準のどの類型に当てはめて整理できるか、 発病時期との関係や資料の状況を確認することが重要です。

認定率より大切なのは「自分の出来事」を確認すること

ご相談の際に 「認定率はどれくらいですか?」 と聞かれるお気持ちはよく分かります。

これから時間をかけて申請する以上、 「可能性がほとんどないのでは」と不安になるのは自然なことです。

ただ、実際の申請を考える段階では、 全国平均の28.2%を見ることより、 ご自身のケースで何が起きたのかを具体的に整理すること の方が重要です。

たとえば、

  • いつ頃から体調が悪くなったか
  • 発病前にどのような出来事があったか
  • その出来事は何回、どの程度続いたか
  • 誰がその場にいたか
  • メールやLINEなどが残っているか
  • 会社へ相談していた記録があるか
  • 精神科・心療内科ではどのように話していたか

などを一つずつ確認していきます。

録音がない、残業時間が少ない、 会社がパワハラを否定している、といった事情があっても、 それだけで結論が決まるわけではありません。

まとめ|メンタル労災は「ほとんど認められない」わけではありません

令和7年度の精神障害の労災では、 3,833件の決定のうち1,082件が支給決定となりました。

支給決定件数を決定件数で割った割合は、 約28.2%です。

そのため、 「メンタル労災はほとんど認められない」 と一律に考えて、申請前から諦める必要はありません。

一方で、この28.2%は、 個人の認定可能性を示す数字でもありません。

大切なのは、

「全国で何%認められているか」だけを見るのではなく、
「自分の場合、発病前に何が起きていて、それをどのような資料で確認できるのか」

を整理することです。

労災申請をするか迷っている段階でも、 まず事実関係を整理してから考えることはできます。

メンタル労災についてご相談を検討されている方へ

「自分のケースが労災の認定基準に当てはまりそうか分からない」
「会社が事実を否定している」
「録音がないので難しいのではないか」
「残業時間が少ないので諦めた方がよいのか」

といった段階からでも、状況を整理できます。

こもれび社労士事務所では、 精神障害・パワハラ等の労災申請について全国からご相談を受けています。

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参考資料

※本記事は、厚生労働省が公表している統計・認定基準をもとにした一般的な解説です。 個別の事案について労災認定を保証するものではありません。 最終的な業務上・業務外の判断は、具体的な事実関係や資料等を踏まえて労働基準監督署等が行います。

ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です

「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。

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