【原処分理由書から学ぶ③】長時間労働は月80時間だけではない?原処分理由書から見えた評価のポイント

実際の原処分理由書から見えた長時間労働による精神障害の労災認定で重視される評価ポイントをイメージした水彩イラスト

この記事では、「原処分理由書から学ぶ」シリーズの第3弾として、実際の原処分理由書や審査請求実務から見えてきた、精神障害の労災認定における「長時間労働の評価」のポイントを、個人情報等に配慮したうえで社労士の視点から解説します。

「月80時間を超えていないから、労災は難しいのでしょうか」

精神障害の労災相談では、このようなご相談をいただくことがあります。

長時間労働というと、「月80時間」や「月100時間」といった数字が注目されがちです。

もちろん、労働時間数は非常に重要です。しかし、精神障害の労災認定では、単に時間数だけを見るのではなく、その働き方や業務の負荷も含めて評価されます。

この記事では、長時間労働が精神障害の労災認定でどのように見られるのか、実務上整理しておきたいポイントを解説します。

長時間労働は「月80時間」だけで評価されるわけではありません

長時間労働というと、まず「月80時間」という数字を思い浮かべる方が多いと思います。

たしかに、時間外労働時間は労災認定において重要な要素です。

しかし、精神障害の労災認定では、月80時間を超えているかどうかだけで機械的に判断されるわけではありません。

実務上は、次のような事情もあわせて整理する必要があります。

  • 発症前おおむね6か月間の労働時間
  • 実際に働いていた時間と会社記録との違い
  • 持ち帰り仕事や自宅での業務対応
  • 夜勤や一人勤務の負担
  • 休憩が取れていたか
  • 業務量や責任の重さ
  • 突発対応や緊急対応の有無

つまり、労災申請では「何時間働いたか」だけでなく、「どのような働き方だったのか」まで整理することが大切です。

① 発症前おおむね6か月の労働時間を見る

精神障害の労災認定では、原則として発病前おおむね6か月間に起きた業務上の出来事や心理的負荷が検討されます。

長時間労働についても、この期間における時間外労働だけでなく、業務内容や勤務形態などを含めて総合的に評価されます。

そのため、長時間労働についても、発症直前の1か月だけでなく、発症前6か月程度の働き方を整理することが重要です。

たとえば、

  • 発症前1か月だけ急に忙しくなったのか
  • 2〜3か月にわたって高い負荷が続いていたのか
  • 6か月近く慢性的な長時間労働が続いていたのか
  • 途中で業務内容や責任が大きく変わったのか

によって、評価のされ方は変わります。

「一番つらかった月」だけでなく、その前後を含めた流れを整理しておくことが大切です。

② 実労働時間と会社の記録が一致しないことがある

長時間労働の労災申請で大きな問題になるのが、会社の勤怠記録と実際の労働時間が一致していないケースです。

タイムカード上は定時退勤になっていても、実際にはその後も働いていたということがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • タイムカードを切った後に残業していた
  • 出勤前に準備や申し送りをしていた
  • 休憩時間中も電話対応や利用者対応をしていた
  • 自宅に帰ってから報告書や資料を作成していた
  • 休日にLINEやメールで業務対応をしていた

会社の記録だけを見ると長時間労働に見えなくても、実際にはかなりの負担がかかっていることがあります。

そのため、申請時には、勤怠記録だけでなく、実際の働き方を示す資料も整理することが重要です。

③ 持ち帰り仕事や自宅での対応も整理しておく

精神障害の労災相談では、会社にいる時間だけでは負荷を十分に説明できないことがあります。

特に、持ち帰り仕事や自宅での業務対応が続いていた場合、それをどう整理するかが重要になります。

たとえば、

  • 自宅で報告書を作成していた
  • 勤務時間外に業務LINEへ返信していた
  • 休日にシフト調整や連絡対応をしていた
  • 家で研修資料や会議資料を作っていた
  • 勤務後も仕事の連絡が続いて休まらなかった

といった事情です。

これらは、会社の勤怠記録には表れにくい部分です。

だからこそ、LINE、メール、ファイルの更新日時、カレンダー、メモなどを使って、実際にいつ、どのような業務をしていたのかを整理する必要があります。

④ 夜勤や一人勤務は、時間数だけでは見えない負担がある

介護、看護、警備、宿泊業、運送業などでは、夜勤や一人勤務が大きな負担になることがあります。

夜勤は、単に労働時間が長いというだけでなく、生活リズムの乱れ、睡眠不足、緊急対応への不安などが重なりやすい働き方です。

また、一人勤務の場合には、次のような負担が生じることがあります。

  • トラブルが起きたときに一人で対応しなければならない
  • 相談できる相手がいない
  • 休憩を取るタイミングがない
  • 常に緊張状態が続く
  • 責任が一人に集中する

そのため、夜勤や一人勤務がある場合には、単に勤務時間数だけでなく、勤務中の緊張感や責任の重さも整理しておくことが大切です。

⑤ 休憩が取れていたかも重要になる

勤務表上は休憩時間が設定されていても、実際には休憩できていないことがあります。

たとえば、

  • 休憩中も利用者対応をしていた
  • 電話やナースコールに対応していた
  • 一人勤務で職場を離れられなかった
  • 食事を取りながら記録作成をしていた
  • 休憩時間中も上司や同僚から連絡が来ていた

といったケースです。

実際に休憩が取れていなければ、勤務表上の労働時間よりも負担は大きくなります。

長時間労働を整理する際には、「休憩時間が何分あったか」だけでなく、「実際に休めていたか」を確認することが重要です。

⑥ 長時間労働とパワハラが重なることもある

精神障害の労災申請では、長時間労働だけでなく、パワハラや退職勧奨、配置転換などが同時に問題となることがあります。

たとえば、長時間労働が続いている中で、

  • 上司から強い叱責を受けた
  • 人員不足の中で過大な責任を負わされた
  • ミスを責められ続けた
  • 相談しても取り合ってもらえなかった
  • 体調不良を訴えても勤務を軽減してもらえなかった

という事情が重なることがあります。

このような場合、長時間労働だけを単独で見るのではなく、関連する出来事を一連の流れとして整理することが重要です。

労災認定では、複数の出来事が関連している場合、全体として心理的負荷を評価すべき場面があります。

長時間労働型の労災申請で整理しておきたい資料

長時間労働による精神障害の労災申請では、次のような資料が重要になります。

  • タイムカード
  • 出勤簿
  • シフト表
  • 給与明細
  • 業務LINEやメール
  • パソコンのログ
  • 日報や業務記録
  • 自宅作業のメモ
  • カレンダーやスケジュール
  • 家族に相談した記録

これらの資料をもとに、単に「忙しかった」と説明するのではなく、いつ、どのくらい、どのような仕事をしていたのかを具体的に整理する必要があります。

まとめ:長時間労働は「時間」と「働き方」の両方を見ることが大切です

実際の原処分理由書を読むと、長時間労働の事案でも、単に月ごとの時間数だけではなく、こうした働き方全体の状況が評価されていることが分かります。

精神障害の労災認定では、長時間労働の時間数は重要です。

しかし、月80時間を超えているかどうかだけで判断されるわけではありません。

発症前おおむね6か月の働き方、実労働時間、持ち帰り仕事、夜勤、一人勤務、休憩の実態、業務上の責任、他の出来事との重なりなどを総合的に整理することが重要です。

今回は、原処分理由書から学ぶシリーズの第3弾として、長時間労働の評価ポイントを整理しました。今後も、会社提出資料、一連評価、退職勧奨、復職後の出来事などについて、実務上の視点から順に解説していきます。

こもれび社労士事務所では、長時間労働、夜勤、一人勤務、パワハラなどによる精神障害の労災申請について、出来事の整理、証拠の確認、申請書類の作成までサポートしています。

会社に相談する前の段階でも、まだ労災申請するか迷っている段階でも大丈夫です。

まずは、勤務時間や働き方について、短文や箇条書きで送っていただければ、一緒に整理していきます。

長時間労働による労災申請でお悩みの方へ

長時間労働、夜勤、一人勤務、持ち帰り仕事、休憩が取れない勤務などで体調を崩した場合、労災申請の対象になる可能性があります。

「月80時間を超えていないから無理かもしれない」という段階でも構いません。まずは実際の働き方を一緒に整理していきましょう。

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ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です

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