既往歴があると労災は認定されない?実務でよく問題になる4つのポイント【YouTube動画解説】

「以前からうつ病がある」
「過去に適応障害で休職したことがある」
このような既往歴があると、 「もともとの病気だから、労災は認定されないのではないか」 と不安になる方は少なくありません。
しかし、既往歴や過去の休職歴があるだけで、 直ちに労災が否定されるわけではありません。
実務上重要なのは、以前から病気があったかどうかだけではなく、 今回の仕事上の出来事によって、症状や就労状況がどのように変わったのか を整理することです。
この記事のポイント
- 既往歴があるだけで労災が否定されるわけではない
- 自然経過か、仕事による悪化かが大きな争点になる
- 発症前おおむね6か月の仕事上の出来事が確認される
- 出来事の前後で何が変わったのかを時系列で整理する
動画で確認する
既往歴がある場合に、精神障害の労災申請でどこが問題になりやすいのかを、 4つのポイントに分けて動画で紹介しています。
既往歴があるだけで労災が否定されるわけではありません
過去にうつ病、適応障害、不安障害などの診断を受けていたとしても、 その後に症状が安定し、通常どおり働けていた方が、 職場での強い出来事をきっかけに再び悪化することがあります。
労災の判断では、単に病名や通院歴の有無だけを見るのではありません。
- 仕事上の出来事があった時期
- 出来事の内容と心理的負荷
- 出来事の前の症状や就労状況
- 出来事の後の症状の変化
- 受診、薬の変更、休職、退職までの経過
- 医療記録や勤怠資料との整合性
これらを踏まえて、今回の発症や悪化と仕事との関係が検討されます。
既往歴がある場合に問題になりやすい4つのポイント
1.もともとの病気の自然経過ではないか
既往歴がある場合に、最も大きな争点になりやすいのが、 今回の悪化が仕事によるものなのか、 それとも、もともとの病気の自然な経過なのかという点です。
職場で大きな出来事が確認できず、 以前から症状の悪化が続いていた場合には、 業務による悪化ではなく、自然経過ではないかと見られることがあります。
一方で、特定の出来事を境に、 不眠、不安、抑うつ、出勤困難などが明らかに強くなった場合には、 仕事による悪化として整理できる余地があります。
2.発症前おおむね6か月の出来事が弱いと見られる
精神障害の労災では、 発症前おおむね6か月の仕事上の出来事が重要になります。
この期間に、業務による強い心理的負荷が確認できない場合は、 既往歴がある方ほど、 「仕事による発症や悪化とは言いにくい」と判断される可能性があります。
そのため、次のような出来事は、できるだけ具体的に整理する必要があります。
- 上司からの強い叱責や人格否定
- 継続的なパワハラや無視、排除
- 急な配置転換や大幅な業務変更
- 長時間労働や休日出勤の継続
- 退職を迫る発言や雇用不安
- 重大なクレーム、事故、トラブルへの対応
「つらかった」という説明だけではなく、 いつ、どこで、誰から、何をされたのかを確認することが大切です。
3.職場の出来事より前から悪化していたと見られる
カルテや通院歴を確認した結果、 職場での出来事より前から、すでに症状が強く悪化していたと見られる場合があります。
通院していたこと自体が不利なのではありません。
ただし、仕事上の出来事の前から、 すでに休職が近い状態であったと記録されている場合には、 今回の出来事との関係が弱く見られる可能性があります。
反対に、 通院しながらも通常勤務ができていた、 欠勤が少なかった、 症状が安定していたという事情が確認できれば、 今回の悪化を説明しやすくなります。
4.私生活上の事情が主な原因と見られる
家庭問題、離婚、借金、介護、本人や家族の病気、事故など、 仕事以外の事情についても確認されます。
ただし、私生活上の問題があるだけで、 直ちに労災が否定されるわけではありません。
仕事上の出来事が明確で、 その後に症状が大きく悪化しているのであれば、 私生活上の事情があったとしても、 業務による心理的負荷を整理する意味があります。
大切なのは「今回、何が変わったのか」です
既往歴があるケースでは、 「以前から病気があった」という事実だけに注目すると、 今回の悪化との違いが分かりにくくなります。
次のような流れが確認できるかを整理してみてください。
- それまでは通院しながらでも働けていた
- 職場で明確な出来事があった
- その後に不眠、不安、抑うつ、出勤困難が強くなった
- 受診や薬の変更があった
- 休職や退職に至った
- LINE、メール、勤怠、カルテなどで経過を確認できる
このように、出来事の前後を区切って確認すると、 自然経過なのか、仕事による悪化として整理できる余地があるのかが見えやすくなります。
既往歴がある場合に確認したい資料
状況を整理する際は、次のような資料が役立ちます。
- 発症前おおむね6か月の出来事をまとめた時系列
- 勤怠記録、残業時間、シフト表
- 上司や会社とのLINE、メール、チャット
- 面談記録、メモ、録音、議事録
- 診断書、カルテ、受診日、薬の変更履歴
- 過去の休職歴や復職後の勤務状況
- 症状が安定していた時期の勤務状況
特に重要なのは、 過去の病気をなかったことにする資料ではなく、 今回の仕事上の出来事によって、どのような変化が生じたのかを確認できる資料 です。
過去の病気や通院歴は隠さないことが大切です
既往歴があると不利になるのではないかと考え、 過去の通院歴や休職歴を記載しない方がよいのではないかと迷うことがあります。
しかし、医療記録や健康保険の受診歴などから、 過去の経過が確認されることはあります。
都合の悪い事実を隠すよりも、 次のように分けて説明することが重要です。
以前にも病気はありましたが、その後は症状が安定し、通常勤務ができていました。
今回の職場での出来事の後に、以前とは異なる強い不眠や不安が現れ、 受診、薬の変更、休職につながりました。
過去の状態と今回の悪化を正直に分けて整理する方が、 経過が伝わりやすくなります。
会社から「もともとの病気」と言われた場合
既往歴があると、会社から次のように言われることがあります。
- 以前からうつ病だったのではないか
- 会社の出来事が原因ではない
- 本人の性格や特性の問題ではないか
- 家庭の問題が原因ではないか
会社がこのように説明したからといって、 そのまま労災が否定されるわけではありません。
感情的に反論するよりも、 仕事上の出来事、症状の変化、受診、休職までの経過を 客観的な資料とともに整理することが大切です。
詳しい実務解説はこちら
既往歴がある場合の労災判断について、 自然経過との違いや資料の整理方法をさらに詳しく確認したい方は、 元記事もあわせてご覧ください。
まとめ
既往歴や過去の休職歴があるからといって、 それだけで労災が否定されるわけではありません。
ただし、既往歴がないケースと比べると、 自然経過ではないか、 出来事より前から悪化していなかったか、 私生活上の事情が主な原因ではないかといった点が、 より慎重に確認されます。
大切なのは、 「以前から病気があったか」だけではなく、 今回の仕事上の出来事によって何が変わったのか を時系列で整理することです。
「既往歴があるから無理」と最初から決めつけず、 発症前後の勤務状況や症状の変化を一度確認してみることをおすすめします。
既往歴があり、労災申請に迷っている方へ
こもれび社労士事務所では、 うつ病、適応障害、不安障害、発達障害、過去の休職歴などがある方についても、 今回の仕事上の出来事と症状悪化の流れを整理しています。
まとまった文章でなくても大丈夫です。
「いつ頃から不調になったか」 「仕事でどのような出来事があったか」 を、書ける範囲でお送りください。
ここまで読んで、まだ迷っていても大丈夫です。

まずは、今の状況を整理するところからで大丈夫です
「まだ相談するか決めていない」
「何を書けばいいか分からない」
そんな段階でも大丈夫です。
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